《Umbrella》フラッシュバック

そこにいたのは、青くんだった。

大人になったように見えて面影は彼そのものだ。

どういうこと?

何でここに...?

その一瞬で、全てを思いだした。

あ、あ、

手が震える。

耳鳴りが酷くて、何も聞こえない。

行きう人の姿が遠くにじる。

気持ち悪い、助けて。

これは、恐怖だ。

ずっとずっと忘れようとしてた。

だけど忘れられない、焼き付いた過去。

青くん、あなたが怖くて私はーーーーー

驚いたように私を見つめる彼が、口を開こうと

する。

あ、やめて。

何も言わないでーーーー

気がつけば、私はその場に座り込んでいた。

呼吸が荒々しくなっていく。

過呼吸だ。

どうしよう、止まらない。

上手く息が吸えなくて、吐けなくて、苦しい。

目眩が、頭痛が、一気に襲ってきた。

青くんが私に手をばすのが見えた。

私はぎゅっと目を瞑る。

「おい!大丈夫かよ」

聞き覚えのあるぶっきらぼうな聲がした。

「ゆっくり息吐け。俺はここにいるから」

彼の手が私の背中をさすって、落ち著かせる。

祇園さんだーーーーー。

自分でもびっくりするくらい、安心した。

祇園さんの聲を頼りにゆっくり目を開く。

私の意識が戻ったのを確認して、祇園さんが

立ち上がる。そして、青くんの方を向いた。

「あんた、何」

祇園さんの聲がいつもより尖っている。

「こいつに何したんだよ」

青くんはしばらく黙っていた。

気まずそうな表で、言葉を探しているように

見える。

苛立った様子で、祇園さんは顔を背けた。

私の手を摑んで立ち上がらせる。

「帰るぞ」

青くんは何か言いたげだった。

だけどそれを聞く力は私には無い。

私はただ祇園さんに手を引かれてそこを去った。

「西野さんホントめんどくさいね」

帰り道の途中、振り向きもせずに祇園さんが

言った。

私はただ、ごめんなさいとつぶやく。

「別に。1人で抱えこまれるほうがよっぽど迷

祇園さんが大きなため息をついた。

「あいつにいじめられてたのか?」

「違うんです。あの人は関係なくて」

「じゃあ何だよ」

私は何も言えなくなった。

いじめの件であんなに迷をかけた。

これ以上、この人たちに何も背負わせることは

しちゃいけない。

「何でもないです」

私は笑って誤魔化した。

Umbrellaに戻り、祇園さんがドアノブに手を

かけた。

「あのさ、」

祇園さんが私の目を見る。そして言った。

「迷かけろよ。辛いって言えよ。

 さくらんぼさんも俺らも、ずっとその言葉を

 待ってんだから」

もう、何なんだ。

祇園さんがよく分かんない。

冷たくあしらうのに、そうかと思えばこうやって優しくなるのだ。

そうやって優しくするから、弱い私はすぐに

崩れる。

中で待っていたさくらんぼさんとエマさんは、

何かを察したように私たちを出迎えた。

ごめんなさい。

今から迷をかけます。

だけど、彼らはけ止めてくれる。

ダメな私を、どうか救って。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください