《Umbrella》輝き

ねえ。

私は今、幸せ?

その問いかけにはっきりとうなずくことができ

る。

「雫ちゃん!」

みんなの聲がする。

これは、私のためのものだ。

テーブルに並べられた鮮やかな料理も、

とりどりの飾りも、みんなの笑顔も。

全て私のために。

「あらためて、雫ちゃん。Umbrellaへようこそ!」

乾杯にグラスの中のが揺れた。

きらきら。

この輝く幸せを知らずに生きてきた。

この人たちが與えてくれた。

私に。私のためだけに。

さくらんぼさん特製の人気メニュー、

デミグラスソースのオムライスを食べた。

「...っ、味しい!」

でしょ?と得意気にさくらんぼさんが笑う。

「あーーもう!雫ちゃん大好きー!」

突然エマさんが抱きついてきた。

「出たよ、マジでこいつ酔っ払うとこうだから」

呆れた顔の祇園さんがし笑ってるように見えて私は嬉しくなる。

ぶっきらぼうで冷たいのに、突然優しくなって私を救いあげる。

冷たいのは彼なりの優しさで、その不用な格にしだけ、安心する。

何だろう、この思いは。

分かんないよ。

不意に祇園さんと目が合って、私は慌てて目を逸らす。

「何だよ、言いたいことあるならはっきり言えって」

「あの、さっきはありがとうござ...」

お禮の言葉は最後まで言えなかった。

祇園さんが遮ったのだ。

「俺、そういうの嫌いだから」

彼はそっぽを向いてしまった。

「あー祇園、赤くなってるうー!お禮言われて照れてんだ可いいー!」

「うるせー酔っ払い!」

「何よーあたしの方が先輩だからね!」

「どこがだよ、ただのババアじゃねえの」

「あんたと3歳しか変わんないわよ!」

エマさんと祇園さんの掛け合いが可笑しくて、思わず吹き出す。

さくらんぼさんも笑っていた。

「飲みとってくるよ」

立ち上がったさくらんぼさんが廚房の奧に消えていく。

2人の口喧嘩だけが部屋に響いて、私は目を瞑って天井を見上げた。

今日はいろんなことがあった。

突然のことにびっくりしちゃって迷をかけた。

でも全部話せて良かった。

奧で突然、大きな音がした。

ガラスのようなものが割れた音だ。

私は我に返って置の方を見つめる。

酔いの冷めた様子のエマさんが立ち上がって様子を見に行く。

きっとさくらんぼさんが何かグラスでも落としたのだろう。

そんなふうに勝手に思って、私はメロンソーダをひとくち飲んだ。

部屋に殘された私と祇園さんは、沈黙を守るように何も話さなかった。

私はまた、ひとくち飲む。

祇園さんがあくびをかみ殺した。

「...遅くね?」

ひとりごとのように祇園さんが呟いた。

「ですね...」

私と祇園さんは目を合わせる。

「あの、私見に行ってきます」

立ち上がろうとする私を祇園さんが制した。

「あーもしかすると、やめたほうがいいかも」

「...え?」

「んー何か行かないほうがいい気がする」

よく考えてみれば音がしたのは置の方だった。置にグラスは無い。

微妙な空気を殘して、外はしずつ暗くなっていく。

私と祇園さんはただ黙っていた。

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