《Umbrella》ひそかな乙 ―エマ―
馬鹿なだと思うかもしれない。
だってこれは葉わない願いだ。
それでも、私はあきらめられないの。
はじめて彼を見たのは高校生の時だ。
かなり派手な友達とつるんでいた私は、勉強なんてろくにせずに、遊んでばかりいた。
だからまさか、まさかね。
學校帰り、たまたま寄ったレストラン。
コーヒーの香りがして背の高い、その彼に
私はひとめぼれをしたのだ。
しばらく通いつめて、彼は私の5歳年上だということや素敵なあだ名があることを知った。
『さくらんぼさん』
「最近、よく來てくれるね?」
初めて話しかけられた時のことを今でもしっかり覚えてる。
たかが高校生の小さな心を知られたくなかった私は思わず口走った。
「バイト募集とかしてませんかっ!?」
しかしUmbrellaで働くことになって、やっと私は知るのだ。
岸川 鶴さん、彼のことを。
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