《After-eve》bake 第8章

は、すっかり雪景。なのに季節外れの雨。道路は雨のせいでシャーベット狀の雪になっていた。年明け早々、気まぐれな天気に悩まされる。

早速、新年の挨拶とお土産をと思いアキさんの家に行った。

しかしアキさんの車が無かった。店の前は、車の跡も足跡さえも無く薄っすら積もった白い雪を雨が溶かしていた。

お正月から何処かへ行ったのか…と思いユウさんの所へ。

夕方に差し掛かる時間だったが、ユウさんは店に居て掃除をしていた。

ユウさんに新年の挨拶を、

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

「おめでとう、こちらこそ宜しく。」

「今日から店、開けるんすか?」

ユウさんにお土産を渡しながら。

「おっ、わざわざありがと。店は、明日から。掃除しないとね。」

「アキさんは、何処か出かけてるんすか?」

「ん〜、みたいだね。暫くは…居ないかな?」し、歯切れの悪そうな言い方でユウさんが言った。

しばらく…か〜。

「用事あった?アキに。」

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「いや、お土産を…」

「そっか」

「ちなみにカオリさんの分もあるんだけど…うーん。」

「なに?連絡すればいいじゃん。居ると思うよ、カオリは。」

何と無く年明け早々、カオリさんに連絡する事に、戸っていた自分。

やはりクリスマスイブの夜から、何処か遠慮気味になっていた。

「カオリ?あっおめでとう。今、何してるの?店にマコちゃん來てカオリにお土産持って來たらしいぞ!ん?あ〜わかった。」

ユウさんが勝手にカオリさんに電話した。

「來るって!貰えるものは貰うとさ」

意外と早くカオリさんが來た。

「うぃっす!おめでと。今年は、『へタレマコ』卒業しなさいよっ!お土産は?」

「そんな事言う人には、お土産は渡しません!」

「あっそぅ!別にいいけど。新年早々、マコと會うのが最後になりそうだね」

「あぅ。また、すぐにそう捻くれるんだから〜。はいどうぞ、今年もよろしくお願いします。」

「ありがと!こちらこそよろしくお願いします。」

「ねぇ、ユウさん?アキさんいつ帰って來るの?」

「さぁー暫くは、ゆっくりするらしいし」

「何処行ったの?」

「姉夫婦の所って言ってたかな〜」

「あ〜ぁ、初詣、一緒に行きたかったなぁ〜。さっ!貰う貰ったから帰るかな!」

「もう帰るんすか?」

「帰る。さすがに正月は、お酒飲み過ぎたから今日ぐらいは、ゆっくりするかな。アキさん帰って來たら遊んであげるわよっ!」

「うわ〜、すげ〜上からですね。」

「そりゃそうでしょ。コクってきたへタレと同等にしないでっ!」

「あぅ!新年早々キツいなぁ〜」    笑)

この街に帰って來た時にじた変な違和は、勘違いだった様にユウさんとカオリさんと楽しく話せた。

冬に雪ではなく雨が降ったのに、何も無かった。

去年は、何かあるたび雨が降っていたのに…。

正月休みも終わり、今年の仕事が始まった。

ただ、まだアキさんは帰って來なかった。

年明けの仕事。それはそれで何かと忙しかった。

そんな中、メールが…

(ねぇ、アキさんまだ帰って來た気配ないんだけど…大丈夫かな?)

カオリさんが心配になって自分に。

確かに、年が明けてもう一週間以上経っている。でも、何かあればユウさんには連絡行くだろうし。

もうし様子を見るしか出來なかった。

ただ変わらない日々が続いた。

もう15日。

15日と16日は、アキさんにとって大事な日。おそらく亡くなった彼の所へ毎月、毎月行っているのだろうと勝手に思っていた。明日が過ぎれば…多分アキさんは、戻ってくる。

1月17日。

カオリさんが電話してきた。半分泣きながら…。

「何で?なんで、帰ってこないの?ねぇ、マコ?」

自分にそう言われても…でも気持ちは、わかったというか自分も同じ気持ちだった。

アキさんの店へ。

お店の駐車場が、雪ですっかり埋もれていた。何か…嫌なじがして、その場で茫然と…。

「マコちゃん…」

カオリさんが來た。

やっぱり二人とも気になってしまい、ユウさんの店へ。

勿論、まだ店が開く時間では無い。

ドアも閉まっていた。カオリさんが電話してユウさんに開けてもらった。

暗い店にると同時にカオリさんが、

「ねぇ!変だよ。何か知ってるの?アキさん何処なの?ねぇユウさん!」

ユウさんは…

靜かにテーブルに積まれていた椅子を下ろし…自分らに座らせた。

「アキは、…もう帰って來ない。」

えっ、何を言ってるんすか?ユウさん!

カオリさんも突然の事で、聲がでない。

「実は前から、アキには言われていた。まだアキは、ツラいって。もうし一人で、々整理したいって。年明け早々、マコちゃんとカオリに言うのは悪いから、し後で言ってくれって。」

「でも…帰ってくるんでしょ。そのうち帰ってくるんだよね?」

カオリさんがユウさんに詰め寄りながら。

「わからん!それは、アキ次第!」

カオリさんは、それ以上ユウさんを責めずに店を飛び出した。

自分は、ユウさんに詳しく話を聞きたかったけど

「マコちゃん。カオリ…頼む。アキも、そう言ってた。」

ユウさんも凄く辛そうだった。

とりあえず、自分も店を出た。

カオリさんは、とっくに居なかったが 

行き先は…

[After-eve ]

膝下まで積もってる雪を進み、店のドアと自宅用のドアを開けようとするカオリさん。開かないドアを目の前に、茫然としていた。

何かを…つぶやきながら。

自分は、店の窓を覗いた。

キレイに並べられていた、革製品もパンが並べられていた大きめなダイニングテーブルも…何もかも、無かった。

あまりの景に、自分もカオリさんさえも…が出ない程。ただ立ち盡くすだけだった。

『何故?なぜ何も言わずに…アキさん。

…ひどいですよ、アキさん。』

壁際の雪の中から、ボードが見えた。

おもむろに取り上げた。

「本日のパン  売り切れました。」

と、書かれたボード。

とても見覚えのあるボード。

このボードで、何度アキさんのパンを食べ損なった事か…。

ボードの裏に、何か描かれた痕が。

掠れた文字を目を凝らして…。

「何、見てるの?」カオリさんがを無くしたままで訊いてきた。

「何か、書いてありますよね?A.f.t.e…rかな?」

「After-eve でしょ!」

「いや、でも何か長いんですよね?After e.v.e…ん?y.t…hin…g?かな?」

「何?もう一回言って!」

カオリさんが、白く積もった雪に書き出した。

「eve    ything?かな。変だな、ちょっと調べます。」

スマホで似た単語を調べようと…。

『everything』

「『After-everything』ですかね?えっと直訳すると…『すべての後』かな?」

「えっ、これが本當の店の名前とかですかね?」

「第2候補じゃない?私には「イブの後』って意味って言った様な…」

「え〜!自分には、アフタヌーンからイブニングの営業時間だって…」

お互い目を合わし…

「やられましたね。二人とも。」

「く〜っ!最後の最後まで騙しやがって。あのパン屋め〜!」

「やっぱりただのパン屋じゃないって事で…」

「コラっ!マコのくせに、パン屋って言うなよ!アキさんの事。」

……

カオリさんは、一人で歩き出した。

すぐに振り返り、

「行かないの?」と訊くカオリさん。

「何処?」

「ユウさんとこに決まってるでしょ!

パン屋の悪口、言いながら飲むの!行かないの?別にいいけど。」

「…行きます。お供します。とことん」

[After-everything]の店の前には、自分とカオリさんだけの足跡だけが殘っていた。いつまでも…。

第8章     終

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