《高欄に佇む、千載を距てた染で》友誼

第四話

淋しさを日に日にじて來ている、

亜紀と真樹。

ほんの一歩が、踏み出せない二人。

ただ、思わぬ形で……

淋しさが まとわりついている中、悲しい

知らせが二人に……

中學の恩師の訃報。

とても思いれのある先生。

小さな中學校で、割と手が掛かった亜紀と真樹。そんな二人に良くしてくれた大事な先生だった。

その恩師の突然の悲しい知らせ。

亜紀も真樹もショックをけた。

その恩師は、一度別の學校に転勤になったが二年程前に再び二人の中學校に戻っていた。

月日をじる二人。

中學を卒業して8年程。

思わぬ形で故郷に帰ることになった。

あまり故郷に近寄らなかった二人。久々の故郷は、より寂れて何もかもが古めかしく……

亡くなった恩師は、人がある先生。

沢山の人がお見送りに來ていた。

お通夜の時、多くの人の中に同級生や知り合いがいた。

あの崇も來ていた。

真樹は人混みの中、探した。

亜紀の姿を……

見つける事が出來なかった。

『來ていないのだろうか? 大事な先生なのに…… 』

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次の日、告別式。

多くの方々で先生を送った。

その人達の奧の方で…… 亜紀が一人、ひっそりと居た。

高校卒業して以來、久々に見る亜紀の姿。すっかり大人のになっていたが真樹の目には、何も変わっていない亜紀の姿だった。

すぐ真樹は、亜紀の所へ。

真樹は、何も考えずただ亜紀の元へ。

途中、崇に呼び止められる。

それでも崇を振り切り……

一瞬 、崇に呼び止められた時、目線を変えてしまったせいで亜紀を見失った。

必死に捜したが……

真樹の必死な様子を見た崇が真樹の所へ來て事を訊く。

「亜紀が……  亜紀がいた。亜紀が來ていた。だから…… 逢いに…… 」

呆然とした表で、呟く真樹。

崇も真樹に會うのは久しぶりだった。

なので思わず聲を掛けたが、真樹は…… 崇に目もくれず亜紀だけを捜していた。

し落ち著いた真樹と崇は、話をしながら歩いた。

懐かしい町で昔の思い出話を。

恩師が亡くなった事もあり、中學校へ行ってみた。

「こんな小さな學校だったかな? 」

真樹は、自然に校舎の裏に足が向いた。

昔よく亜紀といた校舎裏の雑木林。

あの時より木が生い茂っていたが、靜かなじ、あの時よく見た大きな木が當時のままだった。

より亜紀の事を考える真樹。

『もっと捜せばよかったかな? 』

真樹の両親から亜紀の親は、この町から出て行ったと、だいぶ前に聞かされていた。

『実家も、もう無いし。帰ってしまったのかな? 何となく私と目が合った気はしたんだけど…… 避けられたのかな…… 』

崇は、真樹が雑木林を眺めている姿をただ見ているしか出來ない位、真樹の獨特な雰囲気をじてた。

「もう一度、捜してみようか? 亜紀」

崇が真樹の雰囲気に耐え切れず言った。

「もう…… いないかも。それにもうし此処に居たいし……  ここ、亜紀との大事な場所だし。はぁ〜〜  ごめんね亜紀。私が見栄っ張りだから……  素直に亜紀に逢いに行けば…… ごめん」

「真樹のせいじゃ無いよ。お互い大人になったんだから々事あるんじゃない? 」

「あなたが言わないでくれる! 私に告白しておきながら亜紀と付き合う人が」

真樹がめずらしく強く崇に言った。

「昔の事、持ち出すなよ。良いじゃん高校の時、付き合ったんだから。ていうか、もう一回付き合わない? やっぱり真樹が良いみたい俺は」

「馬鹿じゃない。興味ない! 相変わらずいい加減で軽いんだね」

「何だよ、昔はラブラブだったくせに」

「そうね、私が馬鹿だった。アンタにフラフラしたせいで……  もう帰って! もう話す事無いし」

「亜紀と同士仲良くやりたいの?

キモっ! いつまで友ごっこやるつもり? 」

「アンタに関係ない事! アンタがめちゃくちゃに……  もういい! 帰って! 」

雑木林の中、大きな木の影。

亜紀は、聞いていた。

真樹よりも先にこの雑木林に來て、帰ろうとした時に真樹と崇の聲。

とっさに隠れた亜紀だった。

亜紀も昔を思い出しこの場所に足が向いていた。

今、出て行けば……

真樹とまた昔の様に……

ただ…足がかなかった亜紀。

『ごめんね真樹。私がわがままだから……

普通に真樹に會いに行けば…… なんて事ないのは、わかってるんだけど。ごめん。

強がってはいるけど肝心な時、勇気が…… でない。けない…… 」

しばらく雑木林を見ていた真樹だったが靜かに去って行った。

木のから見ていた亜紀。

真樹の背中を見て…… 涙が頬を伝っていた。

亜紀が真樹に対して初めて涙した。

聲がれそうな亜紀は、必死にをかみしめ……

かつての亜紀の様に、強い眼差しで真樹の歩いて行った方を見ていた。

日が傾きだした頃そっと亜紀は、町を出ようと……

染橋に差しかかった時、橋の反対側の欄干に…… 真樹が佇んでいた。

目が合った二人。

あまりに突然で聲も出せず、も表現出來ず……

きっかけさえも失った二人。

目を逸らし川を見ながら歩く亜紀。

それを見て俯きながら歩く真樹。

橋の真ん中辺りに來た時、風が吹いた。

以前も、こんな風が吹いたじが……

と思う二人。

風で髪が靡《なび》いたままの亜紀。

その亜紀の腕を

いきなりガッチリ摑んだ…… 真樹。

立ち止まる二人。

亜紀は、髪を直さず顔も合わせないままだったが……

「ずっと、ずっーと…… 一緒だって約束したよね…… 亜紀。亜紀は昔から約束は破った事ないよね! 

ごめんね。遅くなって。私、すぐ余計な事考えて行が遅いから……       やっと逢えた。會いたかった…… ずっと……」

真樹が亜紀の腕を必死に摑みながら……

摑んだ腕に、涙がボロボロ落ちていた。

「……なんだよ〜〜  いきなり摑んでボロボロ泣いて……

やめてよ〜〜 私も泣かす気〜〜? 大人になっても泣き蟲なんだから真樹は…… 」

髪で隠れた顔だが…… 涙が伝っていた亜紀が続ける。

「馬鹿 崇は? 帰った? アイツのせいだな! 男に振り回されるなんて最低だね、うちらは…… ごめんね真樹。  會いたかったずっと…… 」

風が吹いた後の染橋は、靜かで……

……

夢が覚めた。

若かりし頃の友、淡い

羨ましく思った。

何故、染橋に関わる夢をまた観たのか。染橋は、何かを伝えようと…… して

いるのだろうか。

あの橋と何も関係の無い自分に……

第四話   終

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