《高欄に佇む、千載を距てた染で》叉
笙しょう
染橋に行く度に、みる夢。
その夢は、再び橋を訪れないと記憶から消えない。しかし橋に行くと、また違う夢を見る事に……
無限ループに陥った自分。
何故、それ程迄に染橋は自分に々な人達の想いを伝えようとするのか。
何処と無く辛く切ない夢ばかり……
半ば夢を見る事には、慣れて來た自分。
思い切ってまた染橋に向かった。
染橋に問うような気持ちを持って。
相変わらず淋しい雰囲気。
いつもより細かく橋を観察してみた。
特に何も無く…… いつもそうだか、これといって何かある訳では無い。初めに來た時、しだけ気配の様な違和の様なをじた気もするが、とりたて何かあった訳でも無くいつもの靜かな橋と橋の周りの景だった。
反対側のかつて街と言うか集落のあったであろう所迄、足を運んだ。
所々に空き家や建があった跡があったが…… 全く人の気配すら無い所だった。
ゆっくり歩きながら橋に戻る。
橋に差し掛かった時……
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人影が……
今迄、人と會う事すら無かったので目を疑った。
もしや…… 霊なのかも。
それとも…… もう既に夢の世界なのか。
竦んで橋のり口から足がかない。
と……
橋の上に居た人が此方に気付いた。
だった。
も此方の存在に気付いた途端、驚き一、二歩後退りした。
數秒間、お互いに見合ったままけない狀態だったが……
「こん…… に…… ちは」
が、し警戒しているじで言ってきた。
「あっ…… こんにちは…… 」
思わず自分も。
不審な人に思われてるのではないかと思い、慌てて話をしてみた。
「あの? ここら辺に詳しい方ですか? 」
「あっ…… いえ…… そういうのでは無いですけど。何かお探しですか? この辺りで」
逆にから質問され、戸った。
何て返せばいいのだろう。
自分の験した不思議な事…… それを伝えた所で余計、不審がられるだけ……
とっさに
「ちょっと気になる事があって…… この橋に來ただけで……  あっ、別に変な…… というか怪しい者では…… 」
「気になる事…… ですか。もしかしてそれって、   ……夢とか 関係無いですか? 」
そのの言葉に、驚き固まってしまった。
「何で? 夢の事」
「えっ? 夢…… 見たんですか? もしかして」
が自分が発した『夢の事』と言う
言葉に過敏に反応した。
「実は…… 私も夢を見たんです。何度か…… ここに訪れてから。この橋に関係する人達の夢を…… 」
「あっ、それです。自分もこの橋に來てから夢を見て…… 貴方もでしたか〜〜  余りにも不思議な夢で正直戸って…… 」
「わかります。夢なのに夢じゃ無い位、リアルで…… 不思議な覚」
「自分は、三回程見ましたが……  でも自分だけじゃ無いと分かって、しホッとしたというか。余りにアレなんで、他の人に言っても…… 」
「そうですね。私も自分だけと思っていたんで……  私も三回です、夢を見たのは。でもやっぱり何か変ですよね? 何かあるのですかね、ちょっと怖いじするけど…… 」
お互いに同じ経験をしてると分かり、急に親近が湧きそれぞれが事の経緯、夢の容を教えあった。
は、自分よりし歳下。デザイン関係の仕事をし、仕事と趣味を兼ねてカメラ片手にあちこちの風景等を撮って回っている人だった。
たまたま訪れた染橋。
寂れた古い橋は、にとって良い被寫だったのだろう。
夢を見出したのは、自分とほぼ同じ時期。ただ、夢の容は自分の見た夢と違っていた気がした。
夢を見た後、この橋に來ると夢の記憶が消えていくので曖昧ではあるが、ただ何となく夢を見たという事は記憶にある。
が見た夢と違うと思ったのは、が見た夢は男がメインの夢だという事。
自分が見た夢は、を中心にしてる気がしていたと微かに殘る記憶にあった。
ただ、どちらもこの橋に関係する事だったり、この橋がはっきり映り込む様な夢だったという事は共通していた。
同じ夢で男主観、主観の立場で見ているのかと思ったが、最後に見た夢は、まだ記憶にある。
それと照らし合わせても、別の夢の様だった。
偶然にこの橋を訪れた二人。
それぞれが全く違う別の夢を見て、そして偶然なのか必然なのか…… この橋で出逢った。
「正直、夢を見て此処に來て帰るとほぼ夢の記憶が消えていくので はっきりとした事は言えないけど、どの夢も切なくて哀しい夢ばかりで。何か、この橋にあるのでは?何かを伝えたいのか? と思い、今日はじっくり周りも見てみたんですけど…… 」
「何かありましたか? 」
「特に何も…… 何なんでしょうね、偶々此処に來た私達だけなんでしょうか」
「夢を見るだけで、他に何かある訳でも無いですしね」
「また今夜も夢を見るのですかね」
「……」
「あの…… 一応、連絡先聞いてもいいですか? 」
が自分に訊いてきた。
「あ、はい」
とりあえず連絡先の換し、その場を二人とも後にした。
今夜は、どんな夢を見る事になるのだろう。あのと出逢った事で、また何か起こるのだろうか……
靜かな夜を迎えた。
笙《しょう》  終
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