《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》7話 ブラックカード
正巳達はスーパーに來ていた。
お買いカートの中には、既に大量の食品類がっている。
「多めにとは思ったけど、し多過ぎたかな……」
半分はフレークと牛だが、他は餅や缶詰、冷凍食品などだ。
いつもは一人で持てる分しか買わないが、今日は二人分の手がある。
「……どうしたんですか?」
"運び手"という意味で期待の目を向けたのだが、伝わらなかったらしい。
片手にネコ缶を持って小首をかしげている。
「いや、にゃん太のご飯か?」
「はいっ! "おごり"という事なので、し良いご飯を選びました!」
そう言って、手に持っていた缶を見せて來る。
その貓缶には、"超高級厳選部位~これで貴方にメロメロ~"と書いてあった。
……何やら"良いモノ"らしい事は分かったが、言い回しが若干古い。
どうやら、ヒトミにはこの貓缶が、どうしようもないほど魅力的に映ったらしい。こちらに見せて來る間も、何処か守るようにして持っている。別に取りはしないし、そもそも俺の金で買うのだが……
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「にゃん太のも良いが、自分のはどうなんだ?」
「じぶんの?」
自分のものを買おうという考えが無かったらしい。
正巳の言葉を聞いてもいまいちピンと來ないみたいだ。
「そう、ヒトミの食べたいとか」
「えっ、私も好きなの選んで良いんですか?」
どうやら、にゃん太のご飯を心配していたらしい。
……普通は先ず自分の事を考えるだろうに、隨分と"のんき"と言うか余裕があるというか……まあ余裕がないよりは良いのだろうが、もうし自分の事を優先させても良いと思う。
ヒトミに『自分のモノを選んで來て良いぞ』と言うと、目を輝かせて走って行った。
……お店の中では歩いてしい。
しして戻って來たのだが、その両手にはピザと貓缶が抱えられていた。
「……隨分と貓缶、増えたな」
「え、いえ……その、プリン味しそうでしたよ?」
……どんな誤魔化し方だよ。
「ああ、そうだな。……悪いが、もう一つカート持って來てくれるか?」
「わ、分かりました!」
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……足の速い事で。
その後、ヒトミがカートを引いて來たのを確認して、レジに進んだ。
一応、プリンは二つ買った。
「それじゃあ、隣に行こうか」
隣には、ホームセンターも併設してある。
……まあ、ホームセンターとは言っても気休め程度のモノで、金店と言った方がイメージに近いだろう。
元々、スーパーの半分はホームセンターだったのだが、利用者がないので閉鎖されてしまった。原因は幾つかあるが、最近ではネットショップが便利な為、若い世代は皆ネット注文で済ませてしまうのだ。
ヒトミは、買いをしてテンションが上がったらしく、スキップをしながら口笛を吹いている。
「にゃん太のお家ですか?」
「ああ、いつまでもダンボールって訳にも行かないだろうしな」
そう言いながら、ホームセンターにって行った。
二列・・ある商品棚には、釘や工などが下がっている。
「……無さそうだな」
「……そうですね」
確認は一瞬で済んだ。
まあ、商品棚が二列・・しかないのだ。
探そうにも、一目で全が見渡せてしまう。
どうやら、更に小したらしい。
以前売っていた、し特殊な工やソファやカーテン類が全て無くなっていた。街が廃れ、寂さびれているのがこのような"変化"として分かるのは、何と無く寂しい。
まあ、首都圏で14~15萬人ほどが平均的に暮らす範囲に、6千人程度しか暮らしていないのだ。過疎度も相當なモノだろう。最盛期には4萬人ほどが生活していたらしいが、そんな事想像できない。
「……不便すぎるだろ」
「……そうですね」
近くのスーパーまで二駅。
し特殊な工が必要となると、ネット注文しかない。
ネットが使えるならまだ良いだろう。
屆くまでの間、し待って居れば良い。
しかし、ネットの使えないお年寄りはどうだろうか?
幅広い年代層――若者は當然として、お年寄りまでもが流出する地域になってしまったみたいだ。まあ、別に賑やかになってしい訳では無いが、人が減る事で不便になるのは勘弁してほしい。
……せめて、コンビニがしい。
「そうだな、コンビニがしいな……」
「えっ! コンビニですか?」
"コンビニ"と聞いた為だろう、ヒトミが反応した。
「いや、やっぱりコンビニが有ると便利だよなって」
「そうですね……コンビニなら、ある程度の仕事は分かります!」
「ん?」
「え?」
"しい"という話をしていたのだが、ヒトミの頭の中では"出來るか"の話になっていたみたいだ。途中で勘違いに気が付いたのだろう、取り繕う様にして、上手いとは言えない口笛を吹き始めた。
そんな様子を見ながら、言った。
「――そうだな、まあコンビニをするのも有りかも知れないな」
そう呟くと、ヒトミが引きづりそうになっていた袋をけ取った。
――ヒトミは、自分で選んで來たピザと貓缶の袋を其々持っていたのだが、大量の貓缶をれた袋はし重すぎたらしい――
「あっ、その袋……」
「いや、袋にが空いても困るし、それに俺もにゃん太の飼い主だからな」
し強めに言うと、ヒトミは渋々ながらも引き下がった。
その後、指が千切れそうになりながらも、如何にか帰宅した。
――
帰宅後、にゃん太が『みゃー』と鳴いて近寄って來たので、ヒトミに抱き上げて貰っている間に食品類を仕舞った。貓缶は床下収納に仕舞ったのだが、今回の買いで収納の半分ほどが埋まってしまった。
「良い?」
「一つだけな」
貓缶を手に聞いて來たので、個數を指定して許可した。
……好きに任せたら、幾らでも與えそうだ。
「はい!」
元気に答えると、にゃん太を連れてリビングに行ってしまった。
「……さて、と」
一息つくと、腰の位置まで積まれた雑誌の山に目を向けた。
月に一回ある"資源ごみ"の日の為に、こうして雑誌は一つにまとめているのだ。
この山の中に、目的のモノがある筈だ。
「確か、下の方に……」
積まれた雑誌の山をずらして、下の方を確認する。
通常よりも良い紙の為だろうか、若干重い。
「あっ……まじかよ」
し力をれたタイミングで、雑誌の山が崩れた。
「橫著するもんじゃないな……」
ぶつぶつと呟きながら、崩れてしまった雑誌をまとめ始めた。
「これか……」
すっかり散らかってしまったが、そのおで探しが見つかった。
「"ブラックカード會員様へのサービスのご案"――ね」
手に取ったのは、二つ折りの厚紙で出來ている案冊子だ。
案・・冊子と言っても、その中には一言しか書かれていない。
「"用の際はご連絡ください。何時でも、何処でも、ご対応致します。"って、最高にブラックだよな、うん。ブラックカードだけに……」
下らない事を口にしつつ、書かれている番號をスマフォへと打ち始めた。
この冊子は、寶くじが當たった際に銀行側から貰ったものだ。
銀行としては、その場でカード作の手続きをしたかったらしいのだが、一度持ち帰って考えるのが癖になっていた為、その場では斷っていた。
何となく、擔當者は焦っていた気がするが、仕事が片付いていなかった俺にはそんな事に構う余裕はなかった。
そして、その後すっかり忘れていた。
……記載の有った番號に掛けると、一コールおいて出た。
「ご用命に預かりましたっ! こちら以前ご案させていただいた――」
どうやら、俺の掛けた番號は俺専用の番號だったらしい。
それにしても、契約すらしていないというのに、未だに繋がるとは……
「――それで、この度のご連絡は"契約"頂けるという事で宜しいでしょうかっ?!」
必死な様子が電話越しに伝わって來る。
「んー、その前に聞きたいことが有って」
「はい! 何なりと!」
……何となく、尾を振る子犬を想像してしまった。
「えっとね、買いとかでお願いできるのは知ってるんだけど――」
「はい、車から別荘、飛行機まで」
……規模がでかい。
「いや、今回は店を開く"手伝い"もお願いできるのかなって」
そう、今回連絡したのは"コンビニ開業"の手伝いをしてしいのだ。
的には、商品の仕れ先とか値段の付け方とかそう言った事なのだが……
「お店を開くという事は、起業支援という事でしょうか?」
「まあ、そうだね」
若干ニュアンスが違うが、間違えでは無い。
「目的は、資産運用、相続対策などございますが、どの様な目的でしょうか」
……資産運用では無いし子供はいないので、相続対策でもない。
「えっとね」
「はい?」
「いや、住んでる所が不便でね」
「はい、住居のご案も出來ます」
「いや、引っ越す気はないんだ。それで、コンビニって便利でしょ?」
「……ええ、っとはい。確かに私共の次に便利かも知れません」
「で、作ろうと思って」
「……へっ?」
いや、『へっ?』って、上流階級向けのサービス提供者としては、なからず不味い気がするのだが……まあ、俺は特に気にしないから良いけども。
「コンビニを作りたいんだけど、手助けして貰える? って事」
改めてしてしい事を伝えた。すると、息を吹き返したのか反応があった。
「は、はい! 勿論何でもご用意させて頂きます」
「コンビニでも?」
「勿論です!」
「そっか、良かったー」
どうやら、頼めるらしい事が分かって安心した。
ホッと一息ついていると、恐る恐ると言った様子で聲がした。
「あのぅ、ご契約頂けるという事ですが、ご都合の良い日が有れば……」
どうやら、契約書は直接取りわすらしい。
「何時でも大丈夫だけど、コンビニも早くしいからな……」
「それでしたら、一週間後の今日など如何でしょうか? その日に専用ブラックカードとコンビニ一式、それに契約を行うという事で」
……"コンビニ一式"って何だろうか、何となくおもちゃのイメージしか出來ない。
「それでお願いします。場所は――」
「ご住所でしたら、この電話の発信元で宜しければ、そちらにお邪魔しますが」
発信元と言うのは、俺が電話を掛けている場所――自宅の事だろう。
「GPS追跡か……」
「ご明察です。 ――個人報は世界トップクラスのセキュリティで守られていますので、ご安心ください。決して個人報を外部に洩らす事はありません。それが、國際警察機構やそれに類するあらゆる機関に対しても同様ですので」
恐らく、予め暗記している"マニュアル"なのだろう。
何となく、この"擔當"の人柄が分かって來た。
この人であれば心配は無いだろう。
何となく天然がっている気はするが、信用できる人だ。
……多分。
その後、一週間後到著前に連絡を貰う事にして、電話を切った。
電話を切ると視界の端に、にゃん太とそれを抱えるヒトミの姿が見えた。
俺の視線に気が付いたヒトミは、にゃん太を顔の前に持ち上げて、隠れるようにした。恐らく、盜み聞ぎがばれて気まずく思ったのだろう。
誤魔化すにしても、もうしうまい方法があるだろうに……
苦笑いしながら、ヒトミに言った。
「就職先決まりそうだぞ」
俺の言葉を聞いたヒトミは、一瞬きょとんとしていたが、じきに言葉の意味を理解したのか目を見開いて驚いていた。
「えっと、今日は――お誕生日ですか!?」
わたわたしているヒトミに、苦笑しながら言った。
「いや、誰のだよ」
【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】
完結!!『一言あらすじ』王子に処刑された聖女は気づいたら霊魂になっていたので、聖女の力も使って進化しながら死霊生活を満喫します!まずは人型になって喋りたい。 『ちゃんとしたあらすじ』 「聖女を詐稱し王子を誑かした偽聖女を死刑に処する!!」 元孤児でありながら聖女として王宮で暮らす主人公を疎ましく思った、王子とその愛人の子爵令嬢。 彼らは聖女の立場を奪い、罪をでっち上げて主人公を処刑してしまった。 聖女の結界がなくなり、魔物の侵攻を防ぐ術を失うとは知らずに……。 一方、処刑された聖女は、気が付いたら薄暗い洞窟にいた。 しかし、身體の感覚がない。そう、彼女は淡く光る半透明の球體――ヒトダマになっていた! 魔物の一種であり、霊魂だけの存在になった彼女は、持ち前の能天気さで生き抜いていく。 魔物はレベルを上げ進化條件を満たすと違う種族に進化することができる。 「とりあえず人型になって喋れるようになりたい!」 聖女は生まれ育った孤児院に戻るため、人型を目指すことを決意。 このままでは國が魔物に滅ぼされてしまう。王子や貴族はどうでもいいけど、家族は助けたい。 自分を処刑した王子には報いを、孤児院の家族には救いを與えるため、死霊となった聖女は舞い戻る! 一二三書房サーガフォレストより一、二巻。 コミックは一巻が発売中!
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