《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》12話 納屋の車

ヒトミの姿は直ぐに見つかった。

「その車、気になるのか?」

「ひゃっ! なんだぁ正巳さんですか。驚かさないで下さいよ~」

驚かすも何も、単に聲を掛けただけなのだが。

それにしても……

「キャンピングカーか」

「いいですよね」

そう言ってから『ほら、ここに"生活できる車!必要な機能全てあります!"って書いてますよ!』とはしゃいでいる。確かに、キャンピングカーはロマンだが……今ヒトミがこの車に惹かれている理由は、別の所にある気がする。

「家になる車か……これなら、家が無くても大丈夫だしな」

「はいっ! 夜寒くて凍える事もありません!」

「ただ、めちゃくちゃ高いけどな」

「えーと……いち、じゅう、ひゃく――」

そのまま最後の桁まで目で追っていたヒトミは、信じられないといった表を浮かべた。恐らく、車を買うお金で安い家を買える事に気が付いたのだろう。壊れたカセットテープの様に、『こんなにするんですか……』と繰り返している。

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視界の端から店主が近づいて來ている事に気が付いた正巳は、一先ずヒトミをそのままにしておく事にした。

「お待たせしました。おっ、ベゼッタですね。キャンピングタイプの中でも最上クラスで、そちらはフルスペックタイプの5300ccですね。安いタイプもありますが、やっぱりフルスペックは最高ですよね!」

どうやら、このキャンピングカーは中でも高いタイプだったらしい。

「え、ええ……それで、購できる車と言うのを教えてもらっても良いですか?」

この話題を続けると、沼に嵌りそうな気がしたので止めておいた。

「あっ、そうでしたね。ここは一応ガレージを含んでいるんですけど、自分の車は下・にあるんですよね。あ、毎日整備をしているんで、別に積ん車つんしゃしてる訳じゃないっす……ので」

「は、はぁ……」

恐らく、"積ん車"と言うのは、積ん読と同じような意味合いなのだろう。この人と話していると、何となく蕓家とかアーティストと話をしている気分になって來る。

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その後、『こっちにどうぞ』と言った店主の案に付いて行く事にした。

――

店主の後に付いて歩いていた正巳達は、駐車場の反対側――納屋が有る場所に來ていた。にゃん太は疲れてしまったのか、ヒトミの腕の中で眠てしまっていた。

「あっ、一応ここがり口になってるんです」

納屋の扉を開いた店主がそう言って、中へと導する。

「"ここ"って、レトロな車がありますけど……」

「ああ、コイツは置なんですよね。形だけ車してますけど、中は完全なゴミですよ」

そう言って『ハハハ』と笑うが……正直何に笑ったら良いのか"ツボ"が分からない。その為、ヒトミに『凄いよな、これが置なんだって』と振ったが、ヒトミも『そうですね、こんなに大きな置が置けるなんて凄いです!』と良く分からない返しをしていた。

いや、俺の問いかけに対しては、正しい回答なのかも知れないが……

その後、これ以上下手な事を言わないに"案"を頼む事にした。

――

「それじゃあ、はみ出さない様に気を付けて下さいね」

店主曰く、この床は車をダミーとした"エレベーター"となっているらしい。し聞いた所、マンションなどに付いている立駐車場の軀を改造して作ったらしい。

「それじゃあ、降ろします!」

店主は、そう言うと同時に柱に付けられたボタンを押した。

『"ガコン――ウィーン……"』

店主が下矢印のボタンを押すと、機械音と同時に納屋の床全が降り始めた。

「……これは、凄いな」

「ですね、思ったよりも楽しいです!」

ヒトミが目を輝かせている。こういったメカが好きなのかも知れない。

その後も下がり続けた床だったが、不意に黒い空間が見えて來た。

恐らく、ココが"自分の車"なるモノを整備する地下倉庫なのだろう。

……まあ、真っ暗なので見えるのはほんの一メートル四方程度だが。

床が降り切ると、『"ウィーン……ガシャン"』と音を立てて止まった。

「さあ、ココが俺のガレージっす。結構面白いマシン多いんすよ?」

店主はそう言うと、満面の笑みを浮かべて來た。

しかし……

「暗くて見えないですよ?」

「ん、まあそうだな……あの、電気は――」

降りたは良いが、燈りが全くなかったので聞こうとしたのだが、途中でぽつりぽつりとが燈り始めた。自で點くつくりにはなっているみたいだが、時間差はあるらしい。

明りが燈った地下を見渡すと、そこはかなりの広さを持つガレージとなっていた。コンクリの打たれた剝き出しの床の上に、十代以上の車両が並んで居る。所々に棚が設けられており、そこには様々な機材類が収納されている。

「ここが、俺の車を収納している倉庫です。本當は換気出來るようにして、ここで塗裝とかもしたいんですけど、流石に鉄筋の構造に手をれるのは怖くて……それに、ここで作業すると時々酸欠になるんですよね」

そう言う店主の後ろを見ると、何かの計測があった。

見回すと、同じ様なモノが幾つも等間隔に取り付けられている。

その計測をよく見ると、下の方に"CO2"と書いてあった。

どうやら、二酸化炭素を計測する裝置みたいだ。

「……大丈夫なんですか?」

「ああ、普通にしてれば大丈夫なんだけどね。ほら、作業をし始めるとやっぱり多機材使ったり、気付いたら長時間居るなんて事もあるんで……その為のアラートですね」

そう言ってから、『ははは、流石に眩暈がして、意識飛んだ時にヤバいと思って買いました』と続けた店主に呆れながら、早速車を見せて貰う事にした。

「それで、売って貰えるのはどの車ですか?」

そう聞くと、早速近くの車両に歩き出しかけていた店主が、ハッとして戻って來た。

「いや、すみません。コブラの裝途中なのを思い出しちゃって……っと、こちらへどうぞ。えっと一応、一番安定して楽しい・・・車がこちらでして」

店主はそう言うと、一臺の車を紹介してくれた。

が外せるタイプの二人乗りのスーパーカーで、曰く『手で開閉する形だったのを、自で開閉できるように改造しました。エンジンも積み替えてるんで、軽くスポーツできますよ』との事だった。

隨分楽しそうに紹介して貰ったのだが、遠慮しておいた。

ヒトミも興味深げにしていたが、々とヤバイ気しかしないし、多が詰める方が助かる。そもそも、ヒトミは何のために実家に戻ろうとしているのか、そもそもの理由を忘れているのではないだろうか。

「えっ、この車カッコいいのに……」

そう言っているヒトミに若干ため息を付きながら、店主に言う。

「すみません、もうし積める車ありますか? あと、燃費が良い車だと助かります」

そう言うとようやく"目的"を思い出したらしく、『そ、そうですね、積めるのも大切だし、それに仕事クビになったから、お金大切ですよね!』等と言っていた。

確かに、燃費が悪いと燃料代がかさむ。しかし、燃費が良い車がしい理由はそこじゃない。単純に、頻繁に補充しないといけないと面倒だからだ。

ヒトミとのやり取りを聞いていた店主は、『それなら……』と言って次の車を案してくれた。その車は、所謂いわゆるSUV車――多目的スポーツ車だった。

「この車は、ある會社のコンセプトカーの依頼をけた時に作ったんですけど、燃料系統を複數にしたせいで沒にされたんですよ。結構良い線行ってると思うんスけどね」

どうやら、複數種類の燃料を扱えるようにしたせいで、車の形を先方がんでいるモノから変えてしまったらしい。

「まあ、コイツを作った費用も全部貰えたんで、何だかんだで得しましたけど」

そう言って笑う店主を橫目に、改めて確認した。

若干高めの車高、ぱっと見では6~8人乗れるようなサイズの車。ゴツゴツした形のそれは、如何にも頑丈そうな雰囲気を出している。

「……因みに、もう一臺紹介して貰うとしたらどれですか?」

複數の候補の中から選ぶのは基本だ。

正巳の言葉をけた店主が『えっ、コレ以上ですか……』と、何故かきょどっている。どうやら"これ以上の車を見たがっている"と勘違いしたらしい。

「そ、それじゃあ……コイツはどうでしょうか」

……どうやら、とっておきがあったらしい。

心の中で(ほら、こういうことが有るから短絡的に決めちゃいけないんだよ)と呟いていた正巳だったが、店主が紹介して來た車両を見て言葉を失った。

特に車に詳しい訳でも、飛びぬけて好きな訳でもない。しかし、この車は一目見るだけで目が奪われた。それ程完されたモノだった。

らかな脇腹、それに沿う様にしてれられたスリット。車と一となったウィング、全てが流麗であり無駄が無い。それこそ、この車両を前にしているだけで"風"をじるほどのしさだった。

「……」

思わず、『これをくれ!』と言いそうになるのを抑えつつ、隣のヒトミを見た。ヒトミは特に興味を惹かれなかったようで、一瞥すると先程のガッチリとした車両の前まで戻っていた。

「紹介しておくと、コイツは車両でありながらも車両じゃない。所謂水陸両用車なんですけど、完全に水中に潛る事が出來るんです。酸素ボンベも裝備しているんで完璧です」

……なんと、水中も走れる車だったらしい。

「……」

再びしくなって來た所で、ヒトミが言った。

「正巳さん、その車だと荷乗らないです」

その一言で我に返った。

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