《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》20話 無理な事

月を見ながら溫泉に浸かっていた正巳は、が火照って來た処で持って來たシャーベットに手を付けた。そのシャーベットは、レモンシャーベットだった。

レモンをくり抜いて、中が丸々シャーベットになっている形だ。

持って來た木のスプーンを使って中を掬すくう。

ひんやりとした心地よさの後にじる酸味と甘み……

恐らくハチミツが量含まれているのだろうが、思わず『シェフを連れてこい!』と口走りたくなる様な、絶妙な味わいだ。

あっという間に食べてしまった正巳だったが、満足して再びをゆっくり浸そうとした所でふと、小さく『カリカリ……』と音が聞こえる事に気が付いた。

初めは風か何かで音が出ているモノだと思っていたが、余りにも綺麗なリズム・・・だった。風であればこうは行かないだろう……

気になってしまっては仕方が無い。

湯から立ち上がった正巳は、軽くお湯を払うと部屋に続くドアをスライドさせた。すると、いつからそこに居たのか、子貓のにゃん太がそこに居た。

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見ると、小さく部屋と繋がっている障子張りの扉が開いていた。

恐らく、にゃん太は僅かな隙間をすり抜けて來たのだろう。貓のらかいと言う。何となく、にゃん太のぽってりとした『型』に目が留まった。

ぽってりしたにゃん太が、隙間を抜けて來るイメージが湧かなかったが、恐らくは想像を超えて來るのだろう。

「どうした?」

「みゃぁ」

眠いのだろうか、晝間に比べると寢ぼけているようにも見える。

「お前も風呂にりたいのか?」

「みゃ……」

小さく鳴いて、正巳の手の平を舐めている。

「おっと、子貓に溫泉を飲ませると不味いだろうからな」

にゃん太を持ち上げた正巳は、蛇口をひねってお湯を出した。

この蛇口からは、水道水を溫めたお湯が出て來る。湯舟に溜まっているお湯は、源泉を引いている為、若干ぬるっとするのだ。その為、上がる時とる前にはこのお湯でを注ぐ。

お湯を桶に溜めた正巳は、適溫になる迄水で割ってから、にゃん太と桶を持ち上げて歩いて行った。そして風呂にると、風呂の淵に置いた桶の中に、にゃん太をれた。

「みゃぉ~」

「きもちーなぁ」

不思議な事に、にゃん太は水に浸かる事をしも嫌がっていなかった。

これ自は、昨日にゃん太を洗った時に分かっていた事だったが、改めてお湯につかってまどろむ子貓を見ていると、不思議に思えて來る。

「お前も好きか~風呂」

「みゃぁ~」

その後、お湯でにゃん太をマッサージしてやり、足の指がふやけて來た処で上がる事にした。にゃん太を洗いはしたが、昨日洗った為か、そもそも外を歩くような事が無かったからなのか大して汚れていなかった。

にゃん太をよく拭いてから、自分もを拭いて著替えた。

再び船を漕ぎ始めたにゃん太を寢床に戻し、正巳もベットに向かおうとした所で、ヒトミのが半分以上布団から出ている事に気が付いた。

「おいおい……本當に寢相悪いな」

(ベッドに寢た時には、確実に落ちるだろうなぁ)

――と思いながら、布団を掛け直した。一応も移しようとはしたのだが、再びほどけ始めていた帯が『らぬ神に……』と言っていた気がして止めた。上に布団が掛かってさえいれば問題は無いだろう。

最後にもう一度にゃん太の様子を確認して、自分のベッドに向かった。

その後、普段の數倍寢心地の良い寢床にった正巳は、幾分も経たないに夢の中へと落ちて行った。夢の中で、正巳は広い海を泳いでいた。

見渡す限りの海は心地良く揺れている。

海に潛った正巳は、そこに神殿が有るのを見つける。

神殿の中にると、そこは誰も人がいないながらも、祭壇に置かれた神がある。

その神を手に取った正巳は、そのまま神殿の奧へと進む。

は正巳に力を與え、魚の様に泳ぐ力を與えてくれた。

神殿の奧へと進んだ正巳は、そこにクラゲが浮いているのを見つけた。

クラゲは、まるで正巳がいないかのように自由に泳ぎ回り、しく點滅した。

そのクラゲに見ってしまった正巳は、登って行こうとするクラゲを手にしようと手をばした。しかし、手をばした後には何も殘っていなかった。

哀しくなった正巳だったが、ふと手の平を見るとクラゲの紋様がっていた。

――……瞼にじるに目が覚めた。

視線の先に有るのは天井。

レースのカーテンから薄日が差し込んで來る。

「そうか、俺はこっちベッドに寢たんだったな……」

この部屋には、和室と洋室がある。

今正巳がいる寢室は洋室で、夜食を食べてヒトミとにゃん太が寢ているのが和室だ。

和洋折衷のつくりではあるが、基本的な外観は和風となっている。"和"をベースとして、現代人に合わせて"洋"を取りれているらしい。

今の時代、和風のトイレなど使い辛い以外無いので、正しい判斷だろう。

しの間じっとしていた正巳だったが、頭が冴えて來たので著替えてしまう事にした。時計を見ると、時刻は朝の6時をし過ぎた処だった。

著替え終えた正巳は、軽くストレッチをすると部屋を出た。

「……こうなったか」

そこには、布団の橫・で丸くなったヒトミがいた。

……完璧に布団からはみ出している。

昨夜布団を掛けた筈なのに、それらは全て脇に退けてしまっている。

それだけでは無い。問題なのは帯が無くなっているという事で――

「にゃん太……」

帯を探して見回すと、布団の中ににゃん太が居た。

……帯に包まって。

にゃん太を起さない様に移させると、ヒトミを抱え上げて布団に戻した。

帯を取り上げると、にゃん太が起きてしまいそうだったのでそのままにして、車のカギを持って外へ出た。部屋のカギはカード式のオートロック型なので、カードを手に取るとそのまま歩き出した。

――

朝早いにも拘らず、宿の従業員は皆が忙しそうにしていた。

途中で出會った將に挨拶をすると、し外出する事を伝えて出て來た。

「……さて、電話と買いだな」

こんなに早くに外出するつもりはなかったが、やる事が決まっているのであれば、早く済ませた方が良いだろう。やる事を済ませてしまえば、それだけ余裕が生まれる事になるのだ。

コンシェルジュへの電話は、24時間対応だった筈なので問題無いとして、問題は買いだ。當然こんな朝早くから電気屋が開いている筈がない。となると――

「……コンビニかな」

確か、コンビニでも下著は売っていた筈だ。

帰りに、ヒトミ用の下著を買って帰ろう……

車に乗った正巳は、作を思い出しながらかし始めた。

――20分後。

コンビニを見つけた正巳は、買いを済ませていた。

買って來たのは"下著"だが……

の下著を買うのは流石に無理だった。こう、神的な問題で無理だった。

その為、買って來れたのは男の下著だ。

無いよりはましだろうと思う事にして、取り敢えず我慢して貰う事にした。

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