《殺しの學》新たな事件と殘された謎

丁度その時、自車の助手席に座る澤の元に電話が掛かってくる。相手は萩原聡子の自宅前の電柱にを隠すようにして、周囲の様子を伺っているラジエルだった。

「ラジエルです。丸山翔は萩原聡子と同棲していることが分かりました」

パトカーのサイレンの音をバックに報告したラジエルに対し、ラグエルは越しに疑問を投げかけた。

『どうしてパトカーのサイレン音が聞こえるのでしょうか?』

「殺人事件が起きました。の第一発見者は萩原聡子。彼の腕時計には盜聴が仕込まれていますよね? だからその盜聴電波を拾い報を手しました。現場に臨場した警察の話によると、リビングで殺されていたのは、丸山翔。殺害方法は鋭利な刃による刺殺。現場からは、一連の通り魔事件と同様、ダークっていうナイフが発見された。検死の結果、死後十分程が経過しているとのことです。おそらく丸山翔は、午後一時三十分頃に殺害されたのでしょう。以上です」

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『つまり、連続通り魔が丸山翔を殺したということですね。ラジエル。どこに隠れて電話しているのかは分かりませんが、そこから離れてください。あの時計に仕込んである盜聴は、半徑八十メートル以なら電波を飛ばすことができます。萩原聡子の自宅から東に五十メートル歩いた所に、廃墟ビルがあります。そこに潛伏して、盜聴電波を拾ってください。そして何か分かったら、連絡してください』

「了解」

を潛めるラジエルは、気配を消し東に向かい歩き始めた。

「まさか丸山翔が殺されるとはなぁ」

丸山翔殺害の知らせを聞いたレミエルは運転しながら呟く。すると助手席に座る澤は顎に手を置いた。

「これで犯人は全てのナイフを使い切りました。そして、今回はこれまでの通り魔事件とは異なり、人を殺している。そのことが意味していることが分かりますか?」

「これまでの通り魔事件は、丸山翔殺害のための布石に過ぎないってことか。仮にそうだとしたら、回りくどいな。最初から標的が分かっているのなら、先々に殺す」

「そうですね。裏を返せば、犯人は殺すべき標的が分からなかったのでしょう。つまり、これまで起きた三件の通り魔事件は、標的を絞り込むための餌だった。そう仮定すれば、納得できます」

「もしくは、標的をジワジワと追い詰めて、最後に殺すっていうやり方か。俺とは違う殺しの學だな」

「ジワジワと追い詰める?」

運転中の外國人男の聲を聞いた澤の脳裏に、板利輝の証言が浮かぶ。

「ここだけの話。七曲りっていうホストクラブは、裏で覚せい剤を売っている。覚せい剤売買の元締めは丸山翔。その事実を暴こうとした刑事は三年前の無差別殺傷事件で命を落とした」

続けて澤は、三件の通り魔事件の被害者の名前を思い出した。最初の被害者は萩原聡子。第二の被害者は安田友。第三の被害者は渋谷花蓮。

「やっぱり犯人のやり方は回りくどいですね」

頬を緩め自信満々な澤に対しジョニーは首を捻った。

「どういうことだ?」

「三件の通り魔事件の被害者の名前です。彼達の苗字の頭だけを読めば、ハヤシになるんですよ。三年前の無差別殺傷事件の唯一の死亡者である林警部補を暗示している。ホストクラブ七曲りで覚せい剤の売買が行われていたとしたら、あの事件に殘された謎は解けます」

「殘された謎?」

「今朝話しましたよね。三年前の事件の被疑者のからは覚せい剤の分が検出されたって。そして覚せい剤の出処は判明していない。そして、ホストクラブで覚せい剤売買を行っているとみて、捜査していた林警部補は、あの事件で殉職した。ここまで言えば、三年前の事件の真相は見えてきますね」

「三年前の事件の黒幕は丸山翔。おそらく丸山は、村上に幻覚を見せる程強力な覚せい剤を注して、林警部補を無差別殺傷事件の被害者として殺した。もしもこれが事件の真相だとしたら、犯行機は……」

「林警部補を殺されたことによる復讐。そして彼には妹がいたようですね。その妹が一連の事件の犯人かもしれません。もっとも時計店の店主、橫山は林警部補の馴染だから容疑者としてカウントされるかもしれませんが」

「容疑者は四人。大倉春香。宮本栞。橫山勉。渋谷花蓮。こいつらの中に犯人がいる。丁度四人だから、二人ずつ調べようか。俺は橫山と渋谷について調べる」

車は赤信號で停まり、その車澤は首を縦に振った。

「分かりました。それでは僕は宮本栞と大倉春香について調べます。それと橫山に確認してください。手した寫真の中に、兇を買ったがいないのか」

「了解」

信號は青に変わり、ジョニーの運転する自車は、右折した方向にあるコンビニの駐車場に車を止まった。そして澤は助手席から降り、そのままジョニーの車は走り去る。

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