《未解決探偵-Detective of Urban Legend-》屋上、灰

なんの前れもなく人は死ぬ。

例えば午睡の晝。人口度200%を超える駅のホームで足をすべらせて。

例えば夏の夜。夜涼みにと向かったコンビニの帰り道で通り魔に出くわして。

例えば、學式の朝。期待と不安に彩られた通學路で、居眠り運転のトラックに押しつぶされて―。

ほんの數日前には思いもよらないかった手段、方法で人は簡単に命を失う。

理不盡な話だ。

でも納得できないわけではない。

元より、この世に存在するあらゆる生はなんの理由もなく発生する。

たとえ樹形図で示されるような因果関係があったとしても、その個である必要、その瞬間に生じる必然は存在しない。

つまりそれは、原因はあっても理由はないということ。

そして、裏を返せばいつその存在が失われても不思議ではないということだ。

生と死はタイミングが異なるだけで、機會と質量は絶対的に等価である。

その証左として、世界はいまだって、刻一刻と発生と消失を繰り返しているのだ。

…だから。

―たかだか一つの命が消えたくらいで、こんなにもやっきになって原因を探るのは人間くらいのものだろうな。

あがらないモチベーションに膏薬のように理屈を塗りつけながら、水島勇吾は目前に広がる灰景を右から左に、左から右に眺めた。

自分が立つ3階建のビルの屋上は、三方がそれよりも高いビルに囲まれている。

手をばせばれられる距離にはコンクリートの壁面がむき出しになっており、眼下には自転車やバイク、看板、ゴミ箱、エアコンの室外機所狹しと並ぶ。

間を隔てる鈍の鉄柵は、多の意志さえあれば簡単に超えられる程度の高さで、そっとれると錆びた金屬特有のざらつきがあった。

渋谷駅から徒歩10分圏にもかかわらず、周囲は驚くほど靜まっている。

…そのほか、視界が捉えるものは他にもあるが特筆すべき點は特にない。

観察方法をいくら変えたところで、なにもないところにはなにもない。

無は無であり、ゼロはゼロで、その事実はプラスにもマイナスにもなりえないのだ。

…つまるところ、いま自分は無駄なことをしているわけだが、人生ときに無駄だとわかっていることをさも意味ありげに続けなければいけないことがある。

とりわけ、仕事においてはよくあることだ。

10分前からすでに決まっている答えを元に留めて、勇吾はもう10分かけて萬が一を億が一にかえるべくじっくりと辺りを見回した。

そして、改めて取り澄ました顔をつくり、傍からに控えていた依頼人にを込めないように伝えた。

「・・・ダメですね、久我さん。ここもなんの手がかりもありません」

そういうと、久我刑事は失を隠すことなく肩を落とした。

「…てことは、全滅か。うーん、打つ手なしだなぁ」

くわえていたタバコを地面に吐き捨て、踵ですりつぶす。

膝をつき、吸い殻ケースにしまう橫顔には憔悴と焦燥が混ざりきらずに滲んでいた。

基本的に薄格の勇吾もこれにはなからず同する。

朝の10時から始めて、ここが6箇所目になる。

秋口から3ヶ月に渡って続いている“連続投自殺事件“。

全部で6人、6箇所の現場がある中で、ここが最後の場所だったのだ。

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