《未解決探偵-Detective of Urban Legend-》屋上、灰

生まれた瞬間からそうだったのか、ある時からそうなったのか。

今ではもう定かではないが、水島勇吾は人のを視認することができる。

といっても、いわゆるクレアボヤンス、千里眼のようにあらゆる思考、を読めるという類いのものではない。

例えば生が脅かされるような恐怖。

アイデンティティが損なわれるほどの悲しみ。

未來や希がかき消されるほどの失

そんな、人間の脳のデータ許容量を超えてしまうような圧倒的なの発は、まるで現像されたように景観の中に殘留する。

そんなから一部切り離されたを、勇吾は視認することができるのだ。

生きている人の思考やが読めたら不便はありつつも便利だろうが、切り取られたを視認できて得することなどほとんどない。(むしろ苦労することばかりである。い頃は実際の人間と殘留の見分けがつかず、奇人扱いされたものだ)

そんな使えないスキルの唯一の使いどころが、失せ人探しや人間の卑しい側面の追求など“強烈な負の”がつきまとう探偵という職業だった。

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なので、やりたいやりたくないという次元でなく、必然的に勇吾は探偵を生業としていた。

基本は、普通の探偵では扱えないような闇の深い案件を、リスクに見合った形で多高額で引きけている。

警察の手伝いはどちらかというと副業だ。

警察は公務員なので、仕事を依頼されたとしても金払いがあまりよくない。

とはいえ、斷って敵に回しても面倒だからやむなしに引きうけることもあるのだが、ある事件で久我刑事と共闘してからは、結構な頻度で連れ回されている。

この狀況は、正直あまり好ましくない。

とはいえ、適當な仕事をするのはポリシーに反するので、頼まれた仕事は期待される範囲できちんとこなしていた。

だから、今日ほどなんの果もないのは、一職業人としても気分が悪い。

―まあ、対して意味のない報だけどなにもないよりましか。

そう思い、勇吾は久我刑事に尋ねる。

「久我さん。今日僕が呼ばれたのは、現場に殘った殘留を確認して、本當にただの自殺なのか、なんらかの外的要素が加わったのかを調べたかったんですよね?」

何本目かのタバコを咥え直した久我刑事は、鉄柵に背を預け視線だけこちらに向けて頷いた。

「その通りだよ。以前にあっただろ? 洗脳によって意識を奪われて自分から死を選んだ被疑者の事件。あのときは、意識は奪われてなくてもが奪われていなかったから、それが現場に殘っていた。今回も、そういった類いである可能もあるかと思ってね」

話を聞きながら勇吾も思い返す。

思考とは混同されがちだが、本來的に別個の存在だ。

だから、洗脳狀況下で自分を傷つける行を取る際、思考は導されても、まで強制的に変えることはできない。

例えば、思考をられ自ら死を選ぶを選ぶ際にも死が怖くないわけではない。

死よりも怖いことがあるだけだ。

だから、恐怖というはその場に焼きつく。

その殘された恐怖をヒントに解決できたのが久我刑事が示した過去の事件だった。

しかし、今回のケースはそれとは異なる、

現場には、なんのも殘留していなかった。

悲しみも、諦めも、恐怖もない。

數ヶ月前、一つの命が失われたのが信じられないほど、6つの屋上はどれも無に佇んでいた。

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