《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第73歩目 はじめての模擬戦!妖狐と二人っきり④

前回までのあらすじ

妖狐に正を明かしたら、力を見せてくれと頼まれた

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□□□□ ~妖狐の目標~ □□□□

「のう、主よ。よかったら妾に主の力を見せてはくれぬか?」

妖狐から突然の申し出をけた。

「.....いきなりどうしたんだ?」

「単純に主の力に興味を持ったのじゃ」

「それなら今しがた見てもらった通りだが?」

「そうではない。ステータス上の力だけではなく、本當の力を見てみたいのじゃ」

興味本位というやつだろうか。

妖狐はステータスを閲覧中、ずっと目を輝かせながら譽めてくれていたので興味を持つのは頷ける。

しかし.....目の前にいる妖狐はそれだけではなく、なにかこう真に迫る雰囲気だ。

興味本位とは別に何か目的があると考えるべきだろう。

4年間営業として働いてきて、様々な斷り文句を見てきた俺の直がそう告げている。

「訳を話してくれ。そうじゃないと見せられるものも見せられない」

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「ふむ。まぁ、良かろう。.....妾にはどうしても葉えたい目標があるのじゃ。

その目標のために、どうしても主の力を見てみたい」

「つまりは俺の力を試してみて、お眼鏡に葉うようなら、あわよくば妖狐の目標のために利用しようと?」

「.....むぅ。主は嫌な言い方をするのじゃな」

嫌な言い方・・・。確かにそうなのかもしれない。

し寂しげにしている妖狐の姿に居たたまれなくなった。

尾もシュンと項垂れどこか悲しそうだ。

営業という仕事をしていると、どうしても相手の思のその裏にある真意を読み取ろうとしてしまう。

もしかしたら純粋に俺の力への憧れがあったかもしれないというのに・・・。悪いことをしてしまった。

「.....悪い」

「.....いや、妾もその考えがなかったと言えば噓になるからの。お互い様というやつじゃ」

「そう言ってもらえると助かる。それで妖狐が嫌でなければ、その目標というやつを聞いてもいいか?」

「うむ。妾は強くなりたいのじゃ。誰よりもな。誰にも負けないぐらいに強くなりたい」

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これはまた隨分とアバウトな目標だ。

でもこれで、妖狐が俺のステータスを見てはしゃいでいた理由がわかった。

妖狐は純粋に強さへの憧れが強い。

それこそ勇者のような存在は妖狐の理想の形に近いのかもしれない。

そこに勇者ではないとしても、俺みたいな存在が目の前に現れたら・・・。

ただそれとは別に妖狐が強くなりたいと言う度にどこか一抹の不安がよぎる。

憧れだけではない、なにか別の必死さが伝わってくる。

「.....なんでそんなに強くなりたいんだ?」

「.....妾は今まで多くの死に行く同胞達を目の前で見送ってきた。その都度思うのじゃ。

妾にもっと力があったなら、同胞達を死なすことなく守ってあげることができたのに・・・とな」

そう言うと、妖狐はどこか哀愁漂う雰囲気で遠くを見つめている。

「・・・」

不謹慎にも、そんな妖狐の姿にしさをじてしまった。

いつもの年相応のかわいらしさとは違って、どこか落ち著いた雰囲気を纏う大人びた姿だ。

.....何度も思うが、この子本當に11歳か?

今まで過ごしてきた人生が、妖狐の考え方に大きく影響しているのは間違いない。

この必死さはそこからきているのだろう。

「.....でも先ほど妖狐自が言っていたよな?一人の力には限界があると」

「.....もちろん、それはわかっておる。全てを守れるとは思っておらぬ。だからこそ余計思うのじゃ。

せめて目の前の同胞だけでも守ってあげたい。そのためには今よりももっと強くなりたい。

誰にも負けないぐらい強くなりたい。.....妾はもう目の前で死に行く同胞を見送りたくないのじゃ」

言い終わると妖狐は泣きそうな表にも関わらず優しげに微笑んできた。

その姿がとてもしくて。

その姿がとても気高くて。

その姿がとても力強くて。

そして・・・

その姿がどこか儚げで。

・・・。

こんな優しい子のためになんとかしてあげたいと強く思うようになった。

これも保護の一種なのだろうか。それでもこの妖狐のためなら持てる力全てを出してもいいと思った。

だから・・・

「わかった!妖狐の好きなように俺を利用してくれ!妖狐のために全力で使われてやる!」

「べ、別にこんな時ぐらい.....いや、よく言ったのじゃ。こき使ってやろうぞ!覚悟せい!」

俺のサムズアップに、妖狐は満面の笑みで応えてきた。かわいい。

二本の尾がいつもよりもぶんぶんと激しく振られている姿を見るとしさがより一層増してくる。

・・・。

.....しさ?しさってなんだ???

□□□□ ~利害関係の一致~ □□□□

さて妖狐の力になってあげると言った手前、俺の力を見せるのは全然問題ない。

しかし見せるとは言っても、どのように見せればいいのかが全くわからない。

「う~む」

『~♪どうしたのじゃ?難しい顔をしおって』

ブラッシングされている妖狐はとてもご機嫌だ。

甘えてきてさえいる。なんか犬っぽくてかわいい。

.....と言うか、寛いでいていいのか?力を見るのでは?

「力を見せると言ってもどうしたらいいんだ?」

『なんでもよい。妾に主の力を示してほしいのじゃ』

.....えー。そのなんでもいいってのやめてくれよ。迷うだろ。

「う~む」

『~♪よいのじゃ~♪気持ちよいのじゃ~♪』

「・・・」

妖狐は既にブラッシングの虜になっているようで役に立たない。

ここは一人で考えるしかないようだ。

妖狐の目標は強くなることだ。

しかもそれは己のためではなくて、仲間を守るためのもの。

力を見せるとするなら、俺も可能な限り力を出してあげるべきだろう。

そうなると剣での素振りやでの型はあまり効果的とは言えないはずだ。

かと言って、公園で魔法をぶっ放すのはもっと有り得ない。近所迷もいいところだ。

・・・。

つまるところ手段がない。お手上げ狀態だ。

「う~む」

『あ.....そこ!そこが気持ちいいのじゃ♪もっと強くしておくれ♪』

「.....妖狐もなにか考えろ」

『.....あ!こら!手を止めるでない!はよう続けんか!』

「・・・」

これはなんと言うかあれだ。うん、きっとそう。

俺だけ真剣に考えているのがバカらしい。

だからそっと妖狐に手をばす。そして・・・

「このクソ狐!いい加減にしろ!お前が頼んできたことだろ!」

『ふぬーーーーー!す、すまん!ちゃんと考えるのじゃーーーーー!』

頬をつねられたことで、妖狐がいだ。

その影響のせいか姿もきつねからに戻った。

ちゃんとしているようで、そこはやはりアテナの妹。

には忠実なようだ。勘弁してくれ・・・

ちゃんとしてれば可い子なんだけどな~。もふもふだし。

・・・。

妖狐がに戻ったことだし、話を続ける。

とりあえず俺が思ったことは伝えてみた。

「それで、どうしたらいいと思う?」

「ふむ。.....いっそのこと妾と模擬戦をしてみてはどうじゃ?」

「模擬戦?」

「そうじゃ。當然、主は魔法を使ってはならぬがな。それなら力を示せるであろう?」

確かにそれならこの公園でもできるし、剣.....は危ないから、で力を見せることもできる。

しかし一つの懸念が殘る。いくら力を見せるためとは言っても・・・

「なにが不満なのじゃ?」

「さすがにの子と戦うのはどうかと思ってな・・・」

「・・・」

「ど、どうした?」

妖狐の雰囲気が変わった。

明らかに不機嫌.....と言うか怒っている。が逆立っているのがいい証拠だ。

「.....主は妾を・・・いや、この世界の全てのをバカにしておるのか?

それは優しさではなく、侮蔑なのじゃぞ?もっと言えば男差別なのじゃ。

さすがに我が主とは言え、その発言は見過ごすことができぬ!!!」

「!!!」

妖狐の激怒とも言える態度にすっかり気圧されてしまった。

26年間生きてきたが、ここまでに激怒された経験なんて一度もない。

落ち著いて考えてみれば、この世界はも積極的に冒険者になっている。

命の危険という面においては男の區別なく平等なのである。

つまり戦いにおいても男の區別なんて存在し得ないのであろう。

それをまたしても、日本における優しさのつもりで偽善を振りかざしてしまった。

妖狐が怒るのも無理はない。

「.....こほん。はしたなく怒ってしまってすまんのじゃ」

「.....バカにしたつもりはないんだが、俺こそすまん」

「主に悪気がないのはわかっておるつもりじゃ。きっとそれも主の優しさから出た言葉であろう?」

「・・・」

「ただ.....この世界は主のいた世界とは違う。

主の世界の常識が、時にはこちらの世界では侮辱にあたる可能もある。

優しさが優しさにならないこともあるのじゃ。もうし考えて発言することじゃな」

に説教されるとはけない限りだ。

しかし妖狐の言っていることは正論だ。この世界にはこの世界での常識がある。

「.....ふぅ。妖狐には怒られてばっかりだな」

「なにを言っておる。主人の面倒を見るのは奴隷の仕事なのじゃ」

「これからもこんなけない主人を支えてくれな?」

「當然なのじゃ!妾が側でずっと主を支えてやるのじゃ!だから大船に乗った気でいるがよい!」

そう言うと、妖狐は任せろとばかりにドンッとを叩いた。

───ふぁさ

あ、尾が揺れた。もっふもふ~。

この小さい小さいはとても頼りになる。

どこかのピンチにならないと力を貸してくれなさそうなダメな姉とは雲泥の差だ。

・・・。

妖狐の機嫌も直ったことだし、本題に戻る。

ただ懸念はなくなったのだが、疑問は殘っている。そう本的な疑問が・・・

「妖狐って戦えるのか?言っちゃ悪いが、見た目からしてマスコットなんじゃないかと・・・」

「あ、主は本當に妾をバカにしておるのか!?」

「仕方ないだろ。かわいいんだから」

「.....ふ、ふん!ま、まぁ、かわいいのは否定せぬが、かわいくて強い。それが妾なのじゃ。

ただわがままでかわいいだけの姉さまとは違うのじゃ、姉さまとはな!」

.....あれ?今おもいっきりアテナをdisらなかったか?

姉妹仲がいいのは確かなのだが、妖狐はどうにもアテナに対して対抗意識を燃やしている節がある。

當のアテナは全くそんなことはないのに・・・。これも神故の余裕というやつだろうか。

「と言うても、妾はどちらかと言うと戦闘よりも支援を得意としておる」

「支援?」

「うむ。仲間を結界で守ったり、一時的にじゃが、力を強化したりすることもできる。

使いは冒険者の中でも基本的には支援職と言われておるのじゃ」

妖狐はどうやら符使いらしい。

ステータス欄には職業が奴隷となっているからわからなかった。

奴隷の場合は正解な職業がわからないらしい。鑑定の盲點が見つかってしまった。

しかし嬉しい誤算もあった。

それは妖狐が支援職だということだ。

特に仲間を守る結界はすごく助かるし、魅力的だ。

と言うのも、俺は造形魔法を使用することで防魔法を展開できる。

しかしこの防魔法にも問題がある。一度展開したらその場からかすことができないのだ。

だから次々と階層を変えていくダンジョン攻略にはあまり適していない。

敵が現れ次第、その都度防魔法を展開しないといけないめんどくささがある。

だから妖狐の存在は、これから本気でダンジョン攻略を目指す俺にとってはとてもありがたいものになる。

あとは妖狐の実力がいかほどのものなのかが気になるぐらいだ。

いくら支援できるとは言っても、その力は使用者の力に比例する。

だからあまりにも妖狐が弱すぎる場合、逆に足手まといになる可能があるからだ。

・・・。

奇しくも妖狐が俺の力を見たがったのと同じように、俺も妖狐の力を確認してみたくなった。

利害関係が一致した瞬間である。

「なるほど。侮って悪かった。それなら妖狐と模擬戦をしようと思う」

「うむ。その意気なのじゃ。全力でくるがよい!妾も全力で主の力を見極めてやるのじゃ!」

こうして妖狐と模擬戦を行うことになった。

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後書き

次回、しき大妖怪!

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長くなったので分けることにしました。

このお話の2時間後にもう1話UPします。

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