《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第81歩目 はじめてのヘリオドール!

前回までのあらすじ

妖狐の暴走に危うく一線を越えるところだった

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side -ヘリオドール-

□□□□ ~複雑な思い~ □□□□

お約束というやつで、ハンターと呼ばれる一団が妾達を襲撃してきた。

たかが人間如きなんの問題もないし、相手は犯罪者。

なので、さっさと殺してしまおう、そう思っていたら・・・

「俺が相手するから、妖狐とナイトさんはアテナを頼む」

主はそう言い殘すと、目の前に巨大な炎の監獄をあっという間に作りあげてしまった。

「!?」

主の力に驚愕する。

模擬戦で引き分けに持ち込むことができたと言っても、それは主の未さや甘さを突いたり、更には魔法止というハンデを背負って貰った上での結果。

もし仮にそういう弱點やハンデがなかったとしたら、妾は5分と持たずに、いや、恐らくはたったの一撃で破れ去っていたように思える。

羨ましい・・・

妬ましい・・・

好ましい・・・

様々な思いが妾の中を駆け巡る。

勇者というだけで、神の力、神の恩恵とも呼ばれる絶大な力『加護』をいとも容易く得ることができる。

羨ましい・・・

羨ましい・・・

羨ましい・・・

長年死ぬような思いをしてまでようやく手にれたこの力が、勇者であるというだけの存在に簡単に凌駕されてしまう。

妬ましい・・・

妬ましい・・・

妬ましい・・・

いや、主は勇者ではないのにここまでの力を得た。だからこそ・・・

好ましい・・・

好ましい・・・

好ましい・・・

複雑な思いが妾を縛り付ける。

・・・。

妾の目の前で躙劇が繰り広げられている。

ハンターの中には"賞金首"と呼ばれる強者の存在もちらほらと伺えるのに、主の前では赤子も同然。

「.....主は強いのであるな」

「とうぜーん!私の歩だからねー( ´∀` )」

「・・・」

改めて主の強さに驚嘆した。

いや、異世界人の強さに恐れ戦いた。

□□□□ ~わからない~ □□□□

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わからない。主のことが全然わからない。

主は異世界人だから、妾とはものの考え方が違うのはわかっている。それでも・・・。

襲撃してきたハンター達を始末している時の主の表がどこか悲しそうで、なにか心を締め付けられる。

「主はどうしてそんなに辛そうな顔をしているのじゃ?」

「.....人を殺すことに抵抗をじるんだよ」

「抵抗?相手は法を破った無法者ではないか。殺されて當然の存在だと思うが?」

「.....悪いことをしたから殺してもいい。そういう考え方に馴染めないんだ。そもそも俺は異世界人だしな」

わからない。主のことが全然わからない。

主の世界のことはわからないが、それでもこの世界に於いては善を行っている。

例え偽善であろうと善は善。誇ることはあっても、辛そうにしたり、悲しそうにする謂れはないはず。

「そんなに辛いなら、主の代わりに妾が・・・」

「それだけは絶対ダメだ!妖狐だけじゃない。アテナもナイトさんも絶対ダメ!」

「な、なぜじゃ!?」

「俺がその姿を見たくない。イメージしたくもない。だから妖狐達がやるぐらいなら俺がやる」

わからない。主のことが全然わからない。

犯罪者を殺すことなど妾にとっては造作もないこと。

人を殺したことなど一度もないが、それでも犯罪者相手なら恐らくは蟲を潰すかの如く殺せるような気がする。

「妾達にだって、いざ!という時もあろう?」

「ピンチの時は仕方ないとしても、そうでない時にまでする必要はないだろ?無用な殺生はしてしくない」

「.....主は甘いのではないのか?」

「だろうなぁ。.....でもみんなには可能な限り殺しはしてしくはないし、しないで貰いたい。

仮にそういう場面を一度でも見てしまったら・・・」

「.....妾達を見る目が変わるとでも?」

「ないない。そんなことは絶対にない。

もし一度でもそういう場面を見てしまったら、俺はこの先ずっと後悔しながら生きていくんだろうと思う。

この先ずっと自分の力不足を嘆き、恨み、責め続けながら生きていくんだろうと思う。

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そんな生活は真っ平ごめんだ。だから俺の為にも妖狐達は可能な限り殺しはしないでくれ」

わからない。主のことが全然わからない。

今までの主人は己のわがままを葉える為に、奴隷を、他人を苦しませている。でも主は違う。

主は己のわがままを葉える為に、主自が苦しんでいる。今までの主人、いや、人間とはまるで違う。

「.....主は妾に、妾達になにを求めるのじゃ?」

「きれいなままでいてくれることかな?そもそも妖狐達が人を殺しているイメージって全然沸かないんだよな~」

わからない。主のことが全然わからない。

いつかは妾も人を殺す機會には遭遇するだろう。

主の言っていることは不可能なことであり、絵空事でしかない。

なのに、主はまるで子供のようにそれを願っている。

主人としては甘く、頼りにはならない。ただ力を持った大きな子供でしかない。

それでも妾は・・・

そんな絵空事を笑って話し、それを葉える為に一生懸命頑張っている主をとても気にっている。

□□□□ ~思い込み~ □□□□

主はとても頑固者。

なんの得にもならない貞を、ただひたすらニケの為に守り続けている。

今日も今日とて・・・

「なぜ抱かぬのじゃ~!」

「だ・か・ら!俺はニケさんと初めてをしたいんだっての!」

である妾から生行為をしてやろうと願い出ているありがたさを主は全くわかっていない。

今までの男共は妾が奴隷であることをいいことに、それはもうやりたい放題であった。

嫌がる妾に拒否権などはなく、男共が満足するまでただひたすら道のように使われる始末。

それに比べ、主は妾をとても労ってくれている。

その労りようは奴隷としてではなく、かつて言ってくれたように、一人のとしての労りようだ。

妾の嫌がることは一切しないし、なによりも、神罰を恐れずに誓ってくれたことがとても嬉しい。

妖狐族にとって森の神とは絶対のものであり、敬うものとされている。

そういうものだと産まれた時から教えられてきたので、特にその意味を深くも考えずに従ってきた。

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しかし先日、姉さまから九十九尾の末路を聞いて、初めてその意味を理解することができた。

そして同時に、森の神という敬うべき存在が実際にいることも知ることができた。

故に・・・

妖狐族にとって森の神とは絶対に逆らえない存在。

それが真理となっている。

だからこそ、そんな畏敬すべき存在の神罰を恐れずに誓ってくれた主に激した。

だからこそ、そんな畏敬すべき存在の神罰を躊躇わずに誓ってくれた主にときめいた。

だからこそ、そんな畏敬すべき存在の神罰を意にも介さず誓ってくれた主に全てを捧げたいと思った。

『子を宿すなら、主の子がいい』

それが種としての本能だった。

子孫を殘すのは種としての義務である。その相手が好いた男となれば、なお重畳。

主も種としての本能に従い、子孫を多く殘そうと考えればいいものの・・・

「別に貞でなくともよかろう!ニケともすればよいではないか!」

「『初めて』することに意味があるんだよ!俺はロマンチストなんだ!」

「マロンチストよりも現実を見よ!貞であろうとなかろうと関係なかろう!」

「そんな節ないことができるか!俺はニケさんに捧げるまでこれからも貞を貫くつもりだ!」

主は本當に頑固者。

なんの得にもならない貞を、ただひたすら遠くの房ニケの為に守り続けている。

・・・。

ニケとやらが本當に憎らしい。

主の寵を一けているのが妬ましい。

主の想い人であることに胡座をかき、主の為に何もしていないことが腹立たしい。

を一人占めしたいが為に、主のを利用して、主の求不満を誰にも解消させないようにしていることが淺ましい。

憎らしい・・・

妬ましい・・・

腹立たしい・・・

淺ましい・・・

ニケとはなんて下賤な神なのだろう。

人類同様、神の中にも姉さまのような清い神もいれば、ニケのような汚れた神もいるということか。

妾は負けない!ご先祖様が破れた相手だろうとニケのような卑怯者には絶対に屈しない!

誰よりも理解し、誰よりも扶けることができ、誰よりも主の側にいることがふさわしいのは妾である!

おおいにフラグを殘しつつ、そう誓った。

□□□□ ~発覚~ □□□□

主はたまに姉さまにするのと同じようになでてくれたり、ぽんぽんをしてくれたりする。

それはとても幸せな時間で、いつまでもその幸せに浸っていたいとさえ思えるもの。

しかし・・・

───ビクッ!

「「・・・」」

主に突然られると、どうしてもが強張ってしまう。

嫌と言う訳ではない。むしろ嬉しい。それでもどうしてもが反応してしまう。

原因は分かっている。

でも主には言いたくはない。知られたくはない。

だって知られてしまったら・・・

「.....もしかしてだけどさ」

「な、なんじゃ?」

「.....妖狐は本當は男が苦手なんじゃないのか?」

「!」

「前々からずっと不思議に思っていたんだ。変なタイミングでが強張るなって。

最初は警戒されているだけだと思ったんだが・・・。

明らかに警戒されるようなタイミングじゃない時でもビクつくよな?」

知られたくはない・・・

知られたくはない・・・

知られたくはない・・・

「.....こ、この妾が、大妖怪の末裔である妾が、たかが男如きを苦手であると?

そ、そんな訳なかろう?実際こうして、主に問題なくれておるのがいい証拠であろう?」

実際、主にベタベタとくっついているのは事実だ。

主に著することで、妾を意識させ、その気にさせてしまおうとしていたのだから。

「じゃあ、るけどいいよな?」

「!」

───ビクッ!

「「・・・」」

どんなに意識しようと結果は変わらなかった。

意識でどうこうできる問題ではないのだから仕方がない。本質的なものなのだ。

「.....どうしてビクつくんだ?今はちゃんと斷った上でったぞ?」

「べ、別にビクついてなどおらぬ!妾は男など怖くはないのじゃ!」

「.....そうか。男が怖いのか。いや、考えてみれば當たり前か。

俺はずっと勘違いしていたみたいだ。妖狐は特別強い子だと思っていたが、そうじゃなかったんだな」

「・・・」

「もう無理はしなくてもいいんだぞ?今までよく頑張ってきたな。今後は俺が守ってやるから安心しろ」

知られたくはなかった!

知られたくはなかった!!

知られたくはなかった!!!

妾は守ってほしいのではない。

妾はただ・・・

・・・。

主の言う通り、妾は男が怖い。

9の時、そういう知識が全くないままに無理矢理犯された。

最初は男のを満たす為に、毎日道のように扱われることがただただ苦痛なだけだった。

しかしある時、同胞にその意味を教わったことで初めて恐怖した。

そのに憎き人間の子を宿すかもしれないと考えた時、心から後悔し、絶し、そして.....命を斷ちたいとさえ思った。

それからは、男と同じ空気を吸っていると思っただけでも気持ちが悪くなった。

それからは、男が側に寄るだけでも嘔吐しそうになった。

それからは、男にられるだけでも神が壊れそうになり、泣きじゃくった。

今では自分かられる分には問題ないところまで克服できたが、られるのはどうしても怖い。

が無意識のうちに拒絶反応を起してしまう。

それは主であっても例外ではなく・・・

妾はそれが悔しい。

妾はそれが口惜しい。

妾はそれが歯がゆい。

妾はそれが忌々しい。

妾はそれが無念でならない。

好いた男ですら、その辺の有象無象の男達と同じ結果になってしまうということが許せなかった。

だからこそ、言いたくはなかった。

だからこそ、知られたくはなかった。

だからこそ、この後どうなってしまうのかが怖くて仕方がなかった。

でも.....だからこそ.....確認せずにはいられなかった。

「.....そ、それを知った主はどうすると言うのじゃ?」

「.....どうしたらいいかはよくわからない。でも・・・」

「?」

「俺は恐怖癥って訳じゃないんだが、ただと接するのは苦手なんだ。

だから一緒にするなと妖狐は怒るかもしれないけれど、俺も妖狐と似たようなもんかなって」

主はが苦手.....思い當たる節はいくつもある。

いまだに貞ではあるし、散歩の時など會話が途切れると大概謝ってくる。

それと明らかにに免疫がない。それは好ましい一面でもあるのだが・・・。

「だから一緒に慣れていけばいいんじゃないか?俺は妖狐で、妖狐は俺で。

お互いしずつ慣れていけばいつかは克服できると思う。.....多分」

「一緒に慣れていく.....もう妾にれないとかではないのだな?」

妾は守ってほしいのではない。

妾はただ・・・

「.....え?っちゃダメなのか?

俺としては尾だけではなく、他の部分のもふもふも非常に気になるんだが・・・」

「.....くふふ。よい、よいぞ!

一緒に慣れていこうではないか!慣れた暁には妾の全てをることを許そう!」

妾は守ってほしいのではない。

妾はただ二度とれてもらえなくなることが怖かった。ただひたすら怖かった。

でも、主はそうではないらしい。

一緒に慣れていこうと言ってくれた。

一緒に克服しようと言ってくれた。

もふもふという機なのはし気にらないが、それでも妾にりたいとも言ってくれた。

「マジか!特別なのは知っているが、それでもいつかは耳をりたいと思っていたんだ!

ひゃっほ~い!なにかこう目標があると、頑張っちゃうぞ!、ってやる気になるよな!」

主なら耳ぐらい.....それでもこうやる気になるのならご褒としてもいいかもしれない。

単純で、それでも優しい妾の主。

この主なら生涯仕えてもいいとさえ思えた。

だからこそ妾はある決意をした。

□□□□ ~名前を付けてほしい~ □□□□

主に呼び出された。なにやら大事な話があるらしい。

ちょうどよいと思った。妾も大事な話をするつもりであった。

今日妾は一大決心をするつもりだ。

「主、話とはなんじゃ?」

「この前話してくれた妖狐の母親の件だ」

「母上の?」

妾の母上は、風の噂では現在アクアリオ帝國皇帝の側室となっている。

そしていつかは母上を助け出したいとも思っている。

この話を主にしたのはつい最近のことだ。

々考えたんだが.....妖狐一人じゃ、母親の救出は恐らく失敗すると思う」

「.....それでも妾は諦めぬ」

「.....はぁ。そう言うとは思っていたよ」

「・・・」

主がなんと言おうと諦めるつもりはない。

これが妾の目標であり、強くなりたい目的でもあるのだから。

「.....母親救出の件、手伝うよ」

「よ、よいのか!?」

「本音は嫌だ。相手が國ってだけで、もう逃げだしたいぐらいだ」

「な、なら・・・」

「失敗すると分かっているのに、それを他人のフリをして見過ごすことは俺にはできない。

そんなことができるぐらいなら、最初から妖狐を俺の奴隷にしたりはしない。

それに妖狐を見殺しにしたとか思うのもつらい。そんなの寢覚めが悪そうだろ?」

グチグチ言っているが、結局妾の為に力を貸してくれるつもりらしい。

なんと損な格なのであろう。

だからこそ妾はその気持ちが嬉しい。

妾の決斷は間違いではなかったと心から思える。

「ただし!母親の救出については幾つかの條件を出させてもらうからな?」

「條件?」

「一つ、実力行使は最終手段だ。俺の許可無しに勝手に行うことは止。それと実力行使は俺だけが行う」

「なっ!?そ、それでは主だけに罪が及ぶではないか!?」

「守れないなら俺は手を引かせてもらう。それと妖狐が無駄死にをしないよう強手段を取らせてもらう」

主からの有無を言わせない圧力。つまりは"従え"ということだろう。

主人としては甘い甘いと思っていたが、まさかここまで強気に出てくるとは思ってもみなかった。

いや、それだけ妾のことを心配してくれているのかもしれない。

それに強手段とは一・・・。

「二つ、妖狐の母親の気持ちを最優先にすること。これは絶対だ」

「母上の気持ち?どういうことじゃ?」

「実際に會って、気持ちを確認してみるってこと。今の生活が幸せなら、妖狐には諦めてもらう」

「そんなの幸せな訳なかろう!」

「それを決めるのは妖狐じゃない。妖狐の母親だ。それだけはなにがなんでも守ってもらうぞ?」

またしても先ほどと同じ圧力。

妾は自由奴隷であるのに斷ることができない雰囲気だ。

「し、幸せでなかった時は?」

「その時は救出する」

「ど、どうやって?」

「皇帝と渉する。俺は勇者として立ち會うつもりだから、ある程度は融通が効くだろ。.....多分」

「け、決裂したら?」

「皇帝から購する。話し合いがダメなら金で解決する。『地獄の沙汰も金次第』ってやつだ」

「そ、それでもダメだったら?」

「皇帝を力で脅す。『仏の顔も三度』だ。こちらとしては譲歩できるところまで譲歩しているしな。

そもそも妖狐の母親が嫌がっているのに、無理矢理籠の中の鳥にするのは良くないだろ?」

「.....話し合いが通じる相手とも思えぬが?」

「だからと言って、禮儀を欠くことはできないだろ。やれることは全てやる。

その上で決裂したら、相手にはそれ相応の対価を支払ってもらうだけだ。自業自得ってやつだな」

なにをしても徒労に終わると思う。

結局力に頼らざるを得なくなるとは思わないのだろうか。

いや、思わないからこそ、ここまで考えてくれたのだろう。

本當に甘い主人。ここまで無知でお人よしだと心配にすらなる。

でも・・・妾はそんな主をとても好いている。

だからこそ妾は決意した。

この頼りなくも心優しい主をこれから先もずっと支えていこうと。

命ある限りずっと傍らにいて無知な主を迫りくる脅威から守り続けていこうと。

しき主とともにいること。

それが妾の幸せ。

「よかろう。主の條件を全て守ると約束しよう」

「.....あれ?こう言っちゃなんだが、しぐらいは抵抗されるものと思ってたんだが?」

「異論が全くない訳ではない。.....だから條件を守る代わりに一つお願いをしたいのじゃ」

「お願い?」

「妾に名を付けてもらいたいのじゃ」

「.....名前を?詳しく教えてもらってもいいか?」

奴隷に名を與えること。

それは名とはまた別の特別な意味合いを指す。

名は実際どういう影響を及ぼすのかは當人同士にしかわからない。

またそれを口外してはならないとされている。故に実態はほぼ不明なものとされている。

対して、奴隷に名を與えることの影響はほぼほぼ判明されている。

その及ぼす影響とは完全なる所有権の委譲だ。

奴隷は購されることで、國の所有から購した個人へと所有権が移る。

そして購した個人がなんらかの要因で死亡すると再び國へと所有権が戻る。

しかし奴隷に名を與えることで主人が死亡しても國へと所有権が戻ることはない。

いや、戻ることができないシステムとなっている。

そもそも主人が死亡すれば、奴隷もまた死亡してしまうことになっている。

つまり奴隷に名を與えるということは、主人と一蓮托生になる、ということに他ならない。

お互い壯絶な覚悟が必要となる為、基本的には用いられていないものの一つになっている。

ただ制度としてあるだけ。まさに自由奴隷と同じで、有って無きが如し。

「.....そ、そんな説明を聞いて、俺が名を付けるとでも思っているのか?」

「主は甘いのう。妾は既に覚悟を決めた上でお願いをしているのじゃ」

「ど、どういうことだ?」

「例え主が名をくれなくとも、妾の覚悟は揺るがぬ。名を付けてもらったように振舞うだけじゃ」

「はあああああ!?なんだそれ!?じゃあ名前を付けても付けなくても変わらないじゃねえか!」

「それを覚悟と言うのであろう?主の赴くところが妾のあるべきところとなる。

また主が死ねば妾も後を追って死ぬ。ただそれだけじゃ。

結局、結果が同じになるのだからこそ名を付けてほしいとお願いしておるのじゃ」

説明を聞いた時點で、主には名を付けるという選択肢しか殘っていない。

甘い主人の決斷を迫るにはこれぐらいの覚悟を示す必要がある。

優しさとは裏を返せば、優不斷とも言える可能があるのだから・・・

「.....妖狐は俺なんかと一蓮托生になってもいいのか?」

「主以上の主人はいないと斷言できる」

「.....さすがに言いすぎだろ。もっといい主人だっているはずだぞ?」

「出會える可能は?奴隷となれる機會は?主以上であると斷言できる拠は?」

「・・・」

「諦めることじゃな。妾は主の奴隷でいることに満足であるし、主人なら主がよいとも思っておる」

本當は気持ちを伝えたいところだけど、今は主の脳がいっぱいいっぱいだと思う。

これ以上、主に負擔をかけるのは本意ではない。

「.....俺が異世界人なのは知っているよな?

俺はいずれ元の世界に帰るつもりだが、妖狐はその時どうするつもりなんだ?」

「付いていくに決まっておろう?なにを當たり前のことを言っておる」

「.....え?できるのか、それ?」

「今までは半信半疑だったのだが、當てができた。恐らく問題ないはずなのじゃ」

主の懸念など、妾は全てお見通し。

それらを全て考慮した上で決意したのだから。それを覚悟という。

「.....どうあっても逃れるはないのか。全く妖狐には適わないな。恐れった」

「譽め言葉としてけ取っておこうかの」

「.....それで名前ってのはなんでもいいのか?」

「主の好きなようにせい。特に決まりなどはないのじゃ」

いや、本音を言えば希はある。

でも、それは単なるわがままでしかない。

もう既にかなりのわがままを主には通してもらっている。しくらいは自重すべきだろう。

「付けるなら、やっぱりかわいいやつが妖狐も嬉しいよな?」

「.....うむ」

「あ~。それとも大妖怪にふさわしい立派な名前がいいか?」

「.....うむ」

「それともアテナの姉妹っぽく似たような名前にするとか?」

「.....うむ」

「・・・」

「ど、どうしたのじゃ?」

主が、妾の為に々と考えてくれている。

しかし、そのきがいきなりピタリと止んだ。

「.....はぁ。なにを遠慮してんだよ?妖狐らしくもない。名前なんて一つしかないだろ?」

「!?」

「大好きな母親から貰った、この世で一番大切な名前が妖狐にもあるんだろ?それしかありえないだろ」

「!!!」

なんと優しい主人であろう。

まさかここまで思いやってくれるとは思ってもみなかった。

生涯を全て捧げるにふさわしい主人であることは間違いない。

「あ、、るじ。か、、ん、しゃ、す、る、の、じゃ」

「か、謝されることでもないだろ。當たり前のことだ、當たり前のこと」

照れている主の尾のもふり合がいつもよりも優しい。

こういう細かい気遣いも本當に嬉しい。

これでなぜ今まで貞だったのか、甚だ疑問が殘る。

しかし悪い蟲がつかないことを考えれば、妾にとっては行幸以外のなにものでもない。

「それで?妖狐の名前は?」

「ヘリオドール。名は『ヘリオ』。親しき者からは『ドール』と呼ばれておったのじゃ」

「わかった。じゃあ『ドール』。改めてよろしく頼むな」

「別に名でも構わぬのだが?」

「それは斷る。名は謎が多い上に、重すぎるから怖い」

「なぜじゃ!もう妾達は一蓮托生なのだから関係なかろう!」

「だが斷る!」

・・・。

大好きな母上から頂いた大切な名を、優しき主人に再び名付けて貰えたこの幸福

妾の『ヘリオドール』という名は、二人のしき人達の想いで溢れる素晴らしい名となった。

「主!妾と主はいつまでも!どこまでも!ずっと一緒なのじゃ!」

こうして、妾達は長いようで短い旅を終え、目的地である王都フランジュへと到著した。

妾と主の冒険はまだまだ始まったばかり。

しき主とともに、將來のことも含めてステキな想い出を作り上げていこうと思う。

第二部 完

本日の戦利品

①道中の魔の素材 (100萬ルクア)

②賞金首5人 (200萬ルクア)

③魔核20個 (150萬ルクア)

④妖狐の名前 (プライスレス!)

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『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:

年齢:ーーー

別:♀

職業:

稱號:智慧の

力:50

魔力:50

筋力:50

耐久:50

敏捷:50

裝備:殺戮の斧

神ポイント:258340【↑28000】(一ヶ月分)

【一言】ヘリオドール?コンちゃんはコンちゃんだよー( ´∀` )

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アユムの所持金:4564000ルクア【↑4500000】

冒険者のランク:A(クリア回數:5回)

このお話の歩數:約3450000歩(一ヶ月分)

ここまでの歩數:約24778200歩

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『アユム・マイニチ』 レベル:7039【↑509】

種族:人間

年齢:26

別:♂

職業:凡人

稱號:神の付き人

所有:妖狐

力:7049(+7039)【↑509】

魔力:7039(+7039)【↑509】

筋力:7044(+7039)【↑509】

耐久:7044(+7039)【↑509】

敏捷:7299(+7039)【↑509】

裝備:旋風の剣(敏捷+200)

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣//索敵/知/隠

偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有

初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法

初級土魔法/ 理耐/魔法耐

狀態異常耐

共有:アイテムボックスLv.3

パーティー編Lv.1

ダンジョンマップLv.3

検査Lv.3

造形魔法Lv.3

奴隷契約Lv.2

固有:ウォーキングLv.7039 915/7040

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後書き

次回、閑話!

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これにて、第二部が終了となります。

二つの閑話を掲載して後、第三部の神降臨編に突となります。

第三部は『神降臨編』と『勇者登場編』の二つのシナリオをお送りする予定となっております。

これからも「歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~」をよろしくお願いします。

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