《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第276歩目 型破りなダンジョン攻略!

前回までのあらすじ

延期いやー(´;ω;`)

コ〇ナ、マジ許すまじヽ(`Д´#)ノ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、にっこにこな笑顔のニケさんとともに、ダンジョンの1つへと向かっていた。

神界でわした『ダンジョンデートをしたい』との約束を果たす為にだ。

「本當にダンジョンなんかでいいんですか?」

「もちろんです! ずっと楽しみにしておりました!」

「デートするなら、もっと良い場所がたくさんあると思うんですけどね?」

正直に言うと、凄く痛い。手がもげそうだ。

というのも、ニケさんはよほどダンジョンデートを楽しみにしていたのだろう。

今はの前で小さくガッツポーズ───所謂、『ぞいの構え』をしている。

それに俺の手も文字通りの意味で巻き込まれているのだ。本當に痛い。

「問題ありません。それに正妻たるもの、旦那様のお勤め先にはきっちりとご挨拶致しませんと!」

「お、お勤め先!?」

それ違いますから! 全然違いますから!

だが、ニケさんは、そのことには全く気付いていない。

それだけ「してる」の効果は絶大で、あのニケさんを浮かれさせているのだ。

とはいえ、本當に痛いので、そろそろ止めてしい。

ただ、今の幸せ絶頂なニケさんに水を差すような真似はしたくない。

結局、ニケさん第一主義の俺は溫かく見守る選択をした結果───。

「歩様、早く行きましょう!」

「......え、えぇ」

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幸せオーラを振り撒くニケさんと、更にきつく巻き込まれる俺の手。

(ぐ、ぐぉぉおおお!? いってぇぇえええ! 気付いて! ニケさん、早く気付いて!!)

異様に張り切っているニケさんとともに、ダンジョンへと向かうのだった。

これが、せめて『ぞいの構え』の格好だけではなく「がんばるぞい!」とでも実際に言ってくれたのなら、多は痛さも安らいだんだけどなぁ......殘念ッ!

■■■■■ (side -ニケ-)

歩様より「してる」と告げられた私の気力はみなぎっていました。

朝、アルテミス様からまたしてもくだらない悪戯をされましても、それを「ふッ。朝からお元気ですね」と鼻で笑って対応出來るぐらいには。

その時のアルテミス様の表ときましたら、実に痛快でした。

おっと、さすがにこれ以上は淺ましいですね。厳しく自省しませんと。

昨日までの鬱々とした気持ちがまるで噓のようです。

やはり私の選択は間違っていなかったのだと改めて思いました。

そう、『してると囁いてもらう』か、または『抱いてしい』とお願いするか、の究極の選択を───。

結局、『してると囁いてもらう』を選んだ訳ですが、本當に悩みに悩みました。

それだけ、「何でも1つだけお願い事を葉えます」の魅力は絶大だったのです。

ですが、歩様の昨夜のご様子から『抱いてしい』は焦る必要は無いのかとも思いました。

というのも、人間のことはまだあまりよく分かっていない私でも、昨夜のことは「私って、し面倒ななのでは?」と思うようなとてもシリアスなシーンだったと思うのです。歩様も、とても真面目なご様子でしたから間違いないでしょう。

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そんな折り、ふとじた違和

私のおに固いものが當たっているような気がしたのです。

これは、つまりあれです。歩様の......ごにょごにょごにょ。

さすがの私でも、その正が何であるのかぐらいは直ぐに分かりました。雑誌に謝!

みっともなく拗ねていた最中でしたが、とても嬉しかったのを覚えています。なんたって、全てのパーツが完璧でおしいアテナ様とは異なり、私ごときの貧相なに歩様が興された結果なのですから。

ただ、その時、こうも思ったのです。

今この場で『抱いてしい』とお願いをする必要はないのでは、と。

シリアスなシーンであっても興されているのです。

それは歩様から控えるよう注意されていた【心読】のスキルからも確かでした。

(ごめんなさい、歩様! 気になって気になって仕方がなかったので、スキルを使ってしまいました!)

ともかく、シリアスなシーンでも興されるのなら、バットの言っていた『ムードのあるシーン』ならば確実に事は功するでしょう。構えていた割には難易度が低めで驚きました。

だから、『してると囁いてもらう』を選んだのです。

それに、今回のお申し出は今までのものとは全く別だったからという理由もあります。

普段から私のお願い事ならば大は葉えてくれる歩様ではありますが、『してる』だけは幾度ともなく斷られてきたのです。今はまだ時期尚早、と。

それが「何でも1つだけお願い事を葉えます」ときたのです。

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し悩みはしましたが、どちらを選ぶべきかは自明の理でした。

だから、『してると囁いてもらう』を選んだのです。

さて、『抱いてしい』のお願いは幾らでもチャンスがあることが分かりました。

となれば、まずはバットの提案通り『歩様のお役に立つ』こと、これを実踐していきましょう。

バット曰く、私の場合はこれが一番自然な形で良いムードを作れるみたいですから。

お役に立つことで、歩様に譽められる。

譽められることで、私も素直に甘えられる。

結果、自然な形で良いムードを作ることができる。

それには、ダンジョンデートはまさに持ってこいの見せ場です。

もしかしたら、もしかして、今夜中には抱いて頂けるかもしれませんね? ふふふ。

完璧な計畫を引っ提げ、ワクワクドキドキしながら、いざ決戦の地へと向かいます。

■■■■■

ここ『王都カルディア』は數百年以上の歴史を持つ由緒正しい都だ。

まだ70年ちょっとの歴史しか持たない『王都フランジュ』とはダンジョンの質も數も桁違いとなっている。

簡単に比較すると───。

ダンジョンの數は単純に倍以上。なんと12個もある。全て稼働中だ。

ダンジョンのランクは最低がCで、上は最高ランクのSSまである。

訳はCが2つ、Bが3つ、Aが4つ、Sが2つ、SSが1つだ。

まさにダンジョン王國と言っても過言ではない程の壯大な規模を誇っている。

ちなみに、王都なのにダンジョンのクリア制限が特に課されていないのも魅力的だ。

その理由はダンジョン資源よりも、腕で、鍛冶師としての技で稼いでいるかららしい。

唯一の制限は、ダンジョンマスターがドワーフ族に限られていることぐらいだろうか。

そんな數あるダンジョンの、俺がチョイスしたのは『Aランクダンジョン』となる。

Aランクダンジョンを選んだ理由は様々だ。

俺の冒険者ランク的に、選べる最高ランクがAランクだったというのが1つ。

ここらでBランク以上のダンジョンを経験しておきたかったというのが1つ。

低ランクでは、張り切っているニケさんがガッカリしてしまうと思ったのが1つ。

そして、將來的な『ある理由』で、しでも多くの金を稼ぎたいと思ったからだ。

「では、行きましょうか」

「はい! よろしくお願い致します!」

早速、ニケさんと手を繋いだままダンジョンへと足を踏みれる。

端から見たら、まるでピクニック気分だと思われるような気楽さだろう。

だが───。

「!?」

中にった瞬間、ゾクリッと悪寒が走った。

今までの低から中ランクダンジョンとは明らかに異なる違和

纏わりつくような嫌な気配というか、ピリピリとしたじる。

息苦しさもしあり、もズッシリと重くじる。得も言われぬ圧迫だ。

(これが高ランクのダンジョンか......ランクが1つ上がるだけで、ここまで違うものなんだな)

驚くと同時に、改めてダンジョンの奧深さを思い知らされた。

ダンジョンのランクもまた、スキルレベルと同様のシステムなのかもしれない。

1つランクが上がるだけで、階層のみならず難易度もグンッと跳ね上がるみたいな。

だからこそ、俺としては何があっても大丈夫なように臨戦態勢で臨みたいところなのだが......。

「歩様、どうされました?」

「い、いえ......あの、もうそろそろ手を放しませんか?」

「え? も、もしかして、ご迷でしたか!?」

「いえいえいえいえいえ! そうじゃないんですが......あの、戦いづらくありませんか?」

「歩様......そんな些細なことまで気遣って頂けるとはなんてお優しい。ですが、ご心配には及びません。このままでも十分余裕ですから」

「そ、そうですか」

ニケさんは余裕でも、俺はそうじゃないんですが!?

元より、俺とニケさんの戦力差は隔絶したものがある。

故に俺にとっては重大時であっても、ニケさんにとっては些事であっても仕方がない。

(うーん。ここはニケさんのヒモと化すのが最善の選択か? なんだか張り切ってるしなぁ)

そう改めて思い直し、ダンジョンを突き進んでいく。

Aランクダンジョンということは、最低でも250階層以上は確実に存在する。

さすがに1日でクリアは不可能だが、本日中に20階層ぐらいまでは突破しておきたい。

俺1人では結構骨が折れる作業ではあるが、今回はニケさんも一緒だ。十分余裕だろう。

(よしッ! 目標は半分以上のダンジョンをクリアすることだ!)

王都カルディアには諸事もあって、2~3ヶ月の滯在を予定している。

となると、1つのダンジョンに約15日前後のペースでクリアというのが現実的だろう。

目標もしっかりと定め、ダンジョンを更に突き進んでいく。

「神界からも見ていて思ったんですが、なかなか趣のあるダンジョンですよね。無骨さの中にも、ひっそりと佇む繊細さと言いますか。相反するものなのに譲り合うように主張し合い、それが反って互いの価値を高めているようにも見えます。技の高さが窺えますね」

「......さ、さすがドワーフといったところでしょうか」

ニケさんの評価が本格的過ぎてよく分からんッ!

ただ、異常に凝った作り込みは目を楽しませる。実際、見ていて楽しいしな。

裝や調度品の數々を見ると、本の城に來たような錯覚すら覚えるほどだ。

まぁ、俺が知ってる本の城とはネズミーランドのシンデレラ城ぐらいなものだけど。

しかし、楽しめたのは最初ぐらいなもので───。

「......」

「......」

いつしか、俺もニケさんも無言となっていた。

異常に凝った作り込みが、今は逆にイライラの原因となっているのだ。

やたら広いわ、部屋の數が無駄に多いわ、曲がり角がとにかく多いわ、などなど。

これで魔の數も多かったら、まず間違いなくクソゲー認定確実な案件である。

(忙しい現代の社會人を舐めんな! ただただ面倒臭いわッ!)

こういうクレーマーが多いからこそ、一本道ゲームが誕生したのかもしれない。

それはある意味、真摯にユーザーの意見を取りれた結果なのだろうが......。

5年以上も待たせ───いや、楽しみにしていたゲームがそれだった時の失

かと言って、時間に余裕のある人を基準にゲームを作られてもねぇ?

閑話休題ともかく。

ひたすらダンジョンを突き進んでいく。

無駄に広い1階層を抜け、またまた広い2階層へと。

2階層も抜け、まーーーた広い3階層へ、ただひたすら黙々と......。

黙々と......。

黙々と......黙々と......。

黙々と......黙々と......黙々と......。

「おや?」

そこで、ふとある疑問が浮かんだ。

「歩様、どうされました?」

「いえ、魔が全く出て來ないな、と」

これはかなりおかしい。

1階層分丸々出て來ないということは稀にある。

特に広いフロアで、次の階層まで運良く最短距離を進んでいれば、の話だが。

しかし、今のところ魔が全く出て來ていない。

そればかりか、雰囲気ばかり不気味で、出てくる気配すら全くじない。

それはここまで全ての階層に共通した、明らかに運が良いとかの次元を越えた不思議な狀況だった。

(どういうことだ? 何が起こっている?)

異常事態に戸うも、その答えはあっさりとしたものだった。

「歩様、魔が出て來ることは決してありません」

「え? どうしてですか?」

「私が既に制圧しょうりしたからですね。ですから、このダンジョンは私の管理下にあるも同然なんです。今現在は全ての階層で魔がリスポーン出來ないようにしてあります」

「......」

開いた口が塞がらない。

相変わらず、やることなすこと無茶苦茶な神様だ。

(というか、そんなことされたら稼げないんですが!?)

現狀を簡単に説明すると、ダンジョンマスターが二人存在していることになる。

現在、このダンジョンの管理者は本來のダンジョンマスターのままだ。

だが、ニケさんは『勝利』の力で、本來の管理者よりも上位の存在となっている。

つまり、本來の管理者は名ばかりで、実際の管理者はニケさんということになる。

(もう何がなんだかわっかんね!)

今頃、ダンジョンマスターは相當慌てているに違いない。

突如、原因不明のウイルス染に見舞われたようなものだからな。

そういう意味では、ダンジョンマスター達にとって、ニケさんは最悪のウイルスに他ならないだろう。

(それにしても......)

ある疑問が沸き上がる。

勝利の力を使うのは構わないが、それで楽しめるのか、と。

ダンジョンデートとはダンジョンの攻略がメインなのでは、と。

だが、その答えもやはりあっさりとしたものだった。

「問題ありません。私は雰囲気さえ楽しめれば、それで十分ですので」

「そ、そうですか」

ダンジョンデート自にそこまで執著してはいないということか?

デートさえ出來れば、それで良いのだろうか?

まぁ、ダンジョンデートそのものが、インカローズに対抗したものだしな。

ニケさんが楽しめている(?)なら、それに越したことはない。

「ただ、そうなると暇ですね」

の出ないダンジョンなど、麺がっていないカップ麺に等しい。

だけでも楽しめるかもしれないが、結局はすぐ飽きる。今の俺のようにな。

いくら楽にダンジョンを攻略出來るとは言え、さすがにこれはこれできついかもしれない。

「そうですね。畏まりました」

「え?」

まさかの返答に困した。

何気なく出た言葉だっただけに余計。

しかし、戸う俺とは対照的に、ニケさんは矢継ぎ早に指示を出してきた。

「歩様、ご準備をお願いします」

「え? 準備? なんのですか?」

「私の手をギュッと握って───いえ、私のを抱き締めてください」

「え? え?......す、すいません。これはなんの準備なんですか?」

「お早く! 出し抜かれます!」

「だから、なんの準備!?」

ニケさんの剣幕に圧され、訳が分からないままハグを敢行。

何をするのか分からないこそ、確認をしておきたかったのだが。

「ふふ。ありがとうございます。宜しければ、もうし強く抱き締めて頂けたら嬉しいです」

一方、俺にハグされたニケさんは本當に嬉しそう。

もしかして、「ハグしてしかっただけなのでは?」と邪推してしまう程に。

しかし、どうやらそうではなかったようだ。

「では、參ります」

「參る? どこにですか?」

「しっかりと抱き締めていてくださいね?───【転移】!」

「ちょっ!? だから、どこに行くの!? 話を聞いて!?」

神様全般に言えることだが、話を聞かない人多過ぎな件!

俺は何も説明されることなく、流されるままに転移させられてしまった。

しばらくして───。

「う、うげぇぇええええ......はぁ......はぁ......はぁ」

急ブレーキを掛けた時のような強い衝撃。

ぐるぐるバットをした時のような足元が覚束ない覚。

それらが同時に押し寄せてきた。

以前、異次元世界に転移した時にもじた、転移特有の気持ち悪さだ。

つまり、これは『転移酔い』というやつなのだろう。

さすがに、あれよりかは多マシだったけどさ?

なんたって、あの時は気絶する程だったしな......HAHAHA。

問題はどこに転移させられたのかに盡きる。

俺は幾分落ち著いたところで、狀況の確認に努めた。

(こ、ここはどこだ? いや、この風景......どこかで見た記憶があるな?)

目に飛び込んで來たのは、多數のモニターらしきもの。

そこは、まるで管制室と言わんばかりの景が広がっていた。

ついでに言うと、口をあんぐりと大きく開けて呆けている住人らしき姿もあった。

(えーっと? もしかして、ここはあれかな?)

あまりにも有り得ない事態に頭が追い付かない。

様々な考えが頭の中で暴走していて、理解しようとするのを拒んでいる。

出來れば夢であってしい。切に思う。

しかし、現実は非だ。

の鉄槌が否が応にも振るわれる。

「そこのドワーフ。早々に攻略の証を差し出しなさい。歯向かえば命はありませんよ?」

「「えええええ!? どうなってんの!?」」

俺とダンジョンマスターのび聲が部屋中にこだました。

■■■■■

マスター部屋に直接転移してしまうという前代未聞の珍事をやらかした翌日。

俺とニケさんは再びAランクダンジョンへとやって來ていた。

今回はデートというよりかは、その......HAHAHA。

「......本當に申し訳ありません」

「まあまあ、そんなに気にしないでください」

冒険者ギルドを出てから、ニケさんはずっとこの調子だ。

原因は昨日の一件である。

ダンジョンマスターよりギルドにクレームがったようだ。非常識だ、と。

普段は溫和なドワーフ族が聲を荒らげる程なのだから、よほどお怒りなのだろう。

それで、厳しいお叱りを『俺が』けることになり、このようなことになっている。

(まぁ、俺が逆の立場だったとしても、ギルドにクレームをれるもんなぁ)

そういう意味ではダンジョンマスターを非難することは出來ない。

というか、転移そのものを考慮していなかったシステム側に落ち度がある。

(いや、これもさすがに無理があるか)

通常、外部からマスター部屋には直接転移出來ないようになっているらしい。

それを可能としたのは、ひとえにニケさんの『勝利』の力のおかげなのだ。

となれば、ニケさん以外に直接転移などという力技を行使する人は他にいないはず。

システムも何もあったものじゃない。落ち度はさすがに言い過ぎか。

「今回は怒られてしまいましたが、直接転移出來たニケさんは凄いです。自慢の彼ですね」

ありきたりだが、軽くフォローをれておく。

これはあくまでデートだ。

いつまでも落ち込まれていてはどうしようもない。楽しくいこう。

「歩様......今度こそ、今度こそお役に立ってみせますね!」

「ありがとうございます。ですが、ほどほどでいいですからね?」

そういう訳で「名譽挽回のチャンスがしい」と言われ、本日もダンジョンデートとなった。

早速、ダンジョンに足を踏みれる。

「ん?」

「......」

すると、ニケさんは昨日同様『勝利』の力を発したようだ。

周囲から魔の気配が無くなり、不気味な雰囲気のみが漂う結果となった。

正直、これもどうかと思うが、ギルドからの注意は無かったので良しとしよう。

そもそも、こんな異常事態を自由に作り出せるなんて誰も想定出來ないだろうしな。

「面倒ですが、ダンジョン攻略は1階層毎にしていくのが基本なんです」

「なるほど。1階層毎ですか」

「というか、ニケさん以外の人はそれが普通であり、そうせざるを得ないんです」

ニケさんに、『普通の』ダンジョン攻略を簡単にレクチャーしていく。

「確認しますが、1階層毎なら誰にも文句を言われないのですね?」

「それはそうですが......一応言っておきますね。たとえ1階層毎でも、転移はダメですよ、転移は」

何事も先手先手が重要なのだ。

後手後手になると、またしてもとんでもない行に出るかもしれないしな。

「承知しております。転・移・は・使いません」

「ありがとうございます......ん? 転移は?」

だが、俺のレクチャーの仕方が悪かったようだ。

再び、ニケさんによる型破りなダンジョン攻略が始まってしまった。

「歩様、危険ですから下がっていてください」

「え?」

おもむろにそう語ったニケさんは、なにやら天井をキッと睨んだ。

俺もそれに釣られて天井を見るが何もない。

......なにをするつもりだ?

「はぁぁあああッ!」

「!?」

突如、ニケさんがその場で構え出す。

肩幅に足を開き、まるで「押忍!」と気合いをれているかのよう。

グッと固く握られた拳には、力が、魂が、生き様が宿っているようにも見える。

しばらくして───。

「やぁッ!!」

気合いのった耳障りの良い聲。

それと同時に、目にも留まらぬ速さで繰り出された拳。

その拳からはシュバッと空気を切る音だが、実際はゴォオオと凄まじい衝撃波が放たれた。

───ドッカァァアアアアンッ!!!

「ちょっ!? ま、まさか!?」

天井と衝撃波がインパクトした瞬間、轟音が鳴り響いたと同時に天井にはが......まるで「來いよ! 來いよォ!」と、某首無し騎士が怪しげな雰囲気でっているように、そこにはポッカリとが空いていた。

「ふぅ。これなら問題ありませんよね? では、參りましょうか」

「......」

まさか、天井をブチ抜いて階層移を行おうとは誰が予想しようか。

翌日、當然ながら冒険者ギルドからめちゃくちゃ叱られた。俺が。

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