《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第277歩目 宮廷午餐會への招待狀!
前回までのあらすじ
ニケはまだまだだねー┐(´ー`)┌
私だったら持ってこさせるよー(`・ω・´)
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「え? 宮廷午餐會ですか?」
デート4日目。
冒険者ギルドにて、ダンジョンの件でしこたま怒られた後、唐突に告げられた。
ちなみに、宮廷午餐會とは所謂『晝食會』のことを指す。
「はい。王よりぜひに、とのことです」
「それって、お斷りできませんかね?」
モートマ伯爵の顔も立てないといけないので、いずれ伺うつもりではあった。
だが、それはそれ。これはこれだ。
宮廷午餐會とか、イメージ的に堅苦しそうだし面倒臭そうなので、出來れば斷りたい。
もう挨拶だけでいいよ、挨拶だけで。
「私共も竜殺しの様のお噂はかねがね聞いておりますが、今回は難しいかと思います」
「と言いますと?」
「こちらを覧ください」
渡されたのは一枚の招待狀。
それにザッと目を通すと、目を見開くような容が記してあった。
ちなみに、冒険者ギルドは全勇者特別機構の機関であって國のものではない。
故に、冒険者宛の手紙や屆けなどは一度ギルド側で検閲されることになっている。
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「そちらにも記されている通り、ダンジョンの件で『直に』お話があるようです」
直に、とか怖い。
思わず、顔が引きつった。
「お、王様の耳にも屆いているんですか?」
「當然です。ダンジョンは國の重要な資源ですからね。一協力機関である冒険者ギルドとしましては、王に報告しない訳には參りません。......それでもお斷りされますか?」
「......」
「竜殺し様はしやり過ぎましたね」
言葉に詰まった。これはさすがに斷れない。
付嬢さんの言う通り、(ニケさんは)しやり過ぎたようだ。
それに、付嬢さんからは「これを斷ったら、冒険者としてどうなるか分かりますよね?」との無言の圧が飛んできている。ここで無理にでも俺のわがままを貫き通そうものなら、冒険者ギルドを敵に回す恐れがある。
「ハァ......。分かりました。ありがたくおけします、と伝えてください」
「畏まりました。日時は2日後です。ギルド側で馬車を手配しますので、そちらを利用ください」
「ギルド側で? どうしてまた?」
「王より、そうするよう承っておりますので。恐らく、竜殺し様がお斷りされないと見越してのことでしょう」
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「おうふ......」
さすが、モートマ伯爵も認める國王様だ。
一部の隙も無いというか、鮮やか過ぎる見事な手腕である。
これ、うちで対抗出來るのはドールとニケさんぐらいなんじゃ......?
「それと、『お連れの方々もご一緒に』とありますので、皆様にもその旨宜しくお伝えください」
「マ、マジか......」
付嬢さんに営業スマイルで見送られ、俺は冒険者ギルドを後にした。
■■■■■
デートを一旦中止して、魔駆へと戻ってきた。
理由は『宮廷午餐會に向けた準備と誰を連れていくか』を話し合う為だ。
特に重要なのが『誰を連れていくか』である。
一人で行くのが一番無難な気もするのだが、どうやらそういう訳にはいかないようだ。
なんでも、俺より上位の貴族である王様より「お連れの方々もご一緒に」とわれた以上は、そのお連れの方々も連れて行かないと失禮にあたるらしい。
そもそも、相手はこちらのことをあらかじめ調べた上で準備と招待をしているらしく、ご一緒にとわれているのに誰も連れて行かないという行為は、相手側の歓迎の気持ちや面目を潰す行為にもあたるんだとか。それが貴族としてのマナーであり常識なのだという。貴族社會とはそういうものらしい。面倒くさッ!!
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一応、俺も貴族。なんちゃって、だけどさ。
それがマナーであり常識だと言うならば、一貴族として従わざるを得ない。
そこで、急の舞日家會議を開催した訳だ。
「その宮廷午餐會ってのはなんなんだい?」
「そうですね。豪華な食事會、といったじでしょうか?」
「ほほぅ。豪華な食事會ねぇ。アユムっち、酒も當然出るんだろ?」
アルテミス様の瞳が妖しくった。
酒のこととなるとうるさい、実にらしい反応である。
しかし、アルテミス様は何か勘違いをしているようだ。
「出ると思いますが、いつもの宴とは違いますからね?」
「どういうことだい?」
「恐らく、マナーにうるさい堅苦しい食事會になるはずです。ですから、いつものようには騒げませんよ?」
「んなこと知ったこっちゃないよ。あたしは好きにさせてもらうさ。止められるもんなら止めてみなってね。あひゃひゃひゃひゃひゃw」
この傍若無人神様は!!
ある意味、想定といえば想定の答えだった。
だからこそ、アルテミス様は絶対に連れていくことが出來ない。
王様に無禮を働くだけならまだ良いが(いや、それすらも本當は良くないけどさ?)、何を仕出かすか分からない以上、絶対に連れて行きたくない。
こうなったら諦めてもらう他は───いや、諦めさせるしか方法はないだろう。
「......そうですか、分かりました。では、ニケさんに止めてもらうとします」
「ちょっ!? アユムっち!?」
驚愕で、目を見開くアルテミス様。
「ニケさん、一緒に來て頂けますか?」
「當然です。元は私が招いた事態ですからね。喜んで拭い───もとい、お供をさせて頂きます。アルテミス様のことは全てお任せください」
「うッ......」
さすがのアルテミス様も、こうなってしまってはどうしようもないはず。
微妙に険悪な関係(ニケさんが一方的にだが)になっているからこそ効果は絶大だ。
作戦が功してドヤ顔になりそうになったのを必死に我慢して、俺は改めて尋ねた。
「アルテミス様、そういう訳ですが......どうしますか?」
「あぁ、もう! 分かった分かった! あたしは止めておくよ! 白けちまったからね!」
「そうですか。アルテミス様は遠慮される、と」
「但し! その日は朝から魔限酒造を開放してもらうからね? 分かったかい、アユムっち!」
「わ、分かりました」
転んでもただでは起きないとは......。
さすがというか、抜け目ない神様だ。
とりあえず、これで心配事の種が1つ減った。
「はいはいはーい! いきたい、いきたい、いきたーい( ´∀` )」
と思ったら、次なる心配事の種がやって來た。
アテナが行きたがるのも、もはや想定済みだ。
そして、それを止めるが無いのもまた......。こればっかりは仕方がない。
但し、釘はちゃんと刺しておかなければならない。
「別に構わないが、ドレスの著用は絶対だからな?」
「えーr(・ω・`;)」
「えーr(・ω・`;)じゃない。當然だろ? そういう場なんだから。それが嫌なら連れて行かない。いいな?」
「ぶー(´-ε -`)」
渋々だが、どうやらけれるようだ。
神らしからぬ意地汚い食が、ドレスを著たくないというわがままに勝った結果だろう。
「ふふーんだ。べつにいいもーんヽ(o・`3・o)ノ」
しかし、アテナの世話を長年してきた俺だからこそ分かる。
この駄神こそアルテミス様同様、転んでもただでは起きない奴だということを。
「......ニケさん。當日はアテナのことを厳しく頼みます。こいつはきっと「行ったもん勝ち。後はどうとでもなる」ぐらいのことを考えているはずですから」
「 Σ(・ω・*ノ)ノ」
「そうなのですか、アテナ様?」
「そ、そんなわけないじゃーんr(・ω・`;)」
「......図星なのですね? さすがは歩様です。アテナ様のことはお任せください」
「ふぇぇ(´;ω;`)」
舐めんな、駄神!
伊達にお前の婚約者(仮)を押し付けられている訳じゃないんだからな!!
■■■■■
ここまでで、俺・アテナ・ニケさん3人の出席が決まった。
まだ確認していないのは、ドール・モリオン・ヘカテー様・インカローズの4人だ。
さすがに騎士団全員を連れてはいけないから、そこは我慢してもらおう。
「妾も供に、と言いたいところじゃが、無理であろうな」
「あぁ、うん。そうだろうな。悪いが留守番を頼む」
「うむ。それは構わぬ。構わぬのだがの......」
もじもじとして、非常に歯切れが悪い。
いつもずけずけと遠慮なくを言うドールらしくない態度だ。
「どうした?」
「べ、別にねだる訳では無いのじゃが、その......」
「ねだる?」
「い、いや! 何でもないのじゃ!......こほん。主よ、いくら食事會と言うても危険が無いとは限らぬ。用心して行くが良い」
ははーん。そういうことか。
そうだよな? ドールとしては気になるところだよな?
これだけでドールの真意に気付けた俺はドール検定1級の資格保有者。
素晴らしい主人として譽められてもおかしくないほどだ。
一方、ドール検定3級のアテナは───。
「コンちゃん、どーしたのー(。´・ω・)?」
「べ、別に何でもないと言うておろう」
「あー! わかったー! おみやげがほしーんでしょー! そーでしょー?(o゜ω゜o)」
「ハァ......。全く違うのじゃ。土産などどうでも良い」
「照れないのー! だいじょーぶ! お姉ちゃんにまっかせなさーい( ´∀` )b」
分かっているようで、まるで分かっていない。これぞ、アテナクオリティ。
ドールが「やれやれなのじゃ」と、深い溜め息を吐いているのが良い例だ。
「勝手にすれば良い。姉さまのことだから、期待せずに待っているのじゃ」
「おっけー! 期待しててねー(`・ω・´)」
しかし、俺は知っている。
こんなどうしようもないバカな姉だが、ドールはとても気にっていることを。
悪態を吐いてはいるが、2本の尾だけはブンブンと嬉しそうに振られていることを。
「嬉しそうだな?」
「はぁ? 主の目は節なのではないか? 姉さまならいざ知らず、どこをどう見たらそのように見えるのじゃ? 寢言は寢てから言うが良い」
「辛辣過ぎるだろ!?」
別にドールはお土産がしいのではない。
姉に、アテナに、一番に気に掛けてもらえたのが嬉しいのだろう。
本當、素直じゃないというか、意地っ張りなお狐さんである。
そんな意地っ張りなドールさんに、俺からのささやかなプレゼントだ。
「まぁ、安心しろ。ドールの分のドレスもちゃんと用意してあげるからさ」
「ふんッ! 妾は別にドレスがしいなどとは言うておらぬ。分かったような顔をするでない」
「じゃあ、いらな───」
「だがの! 主がどうしてもと、そこまで言うのならば貰わぬでもないのじゃ」
しいんだな? しいんですね? しいんだよな!?
本當、素直じゃないというか、意地っ張りなお狐さんだな!!
「はいはい。用意しますので、どうか貰ってやってください」
「くふふ。まぁ、良かろう。ありがたく思うことじゃな」
「......生意気ですね。下僕としての躾が必要なのでは?」
「まあまあ。そういうことを言いたくなるお年頃なんですよ」
不穏なことを言うニケさんをなんとか宥め、これでドールの件は一件落著だ。
ドール1人だけドレス無しとか、仲間外れは良くないからな。
せっかく用意するなら、著る著ないは別として、まとめて揃えるべきだろう。
「あたし(の分のドレス)はいらないよ、アユムっち」
「あッ......」
す、すいません!
アルテミス様のことは、これっぽっちも考えてはいませんでした!!
■■■■■
その後、インカローズに參加の有無を確認したところ不參加とのこと。
貴族のマナーに則った堅苦しい食事會なんて真っ平ごめんらしい。気持ちは分かる。
それに、留守番となったドールの面倒を見てくれるとも......家を守る房パネェな!?
さて、そうなると殘りはモリオンとヘカテー様の2人だけとなるのだが───。
「アユム。我は......我はやっぱりお留守番なのだ?」
モリオンからの悲壯な訴えに心が痛む。
姉妹のうち、誰かが留守番となったら、モリオンもお留守番。
今までの経緯からして、モリオンがそう考えるのも仕方がない。
そして、無知であるモリオンを留守番にすることが最も合理的な選択肢であることも。
そう、合理的。合理的ではあるのだが......本當にそれでいいのだろうか?
「とーぜーん! モーちゃんはお留守番だよー。いい子にしててねー(o゜ω゜o)」
「うぅ......わ、わかったのだ」
「だいじょーぶ。だいじょーぶ。モーちゃんのおみやげもあるからねー! あーははははは( ´∀` )」
こ、この駄姉は......。
いつも思うことだが、妹格差が酷過ぎる。
行きたいと願う末妹モリオンの背中を押してやることなく、諦めろと一刀両斷にするとか鬼かよ。
むしろ「ドールが大好きなら、お前が一緒に留守番してろ」と聲を大にして言いたい。
まぁ、仮にそう言ったところで、アテナは絶対付いてくるんだろうけどさ?
「......ありがとうなのだ。ア......ア......お姉ちゃん、お願いします、なのだ」
しょんぼりしているモリオンの姿には哀愁が漂っている。
そんなモリオンを「私も一緒だよー☆」と一生懸命にめているヘカテー様。
この2人の関係こそ、本當の姉妹のように思えてならない。姉妹はしいなぁ。
(うーん)
改めて思う。
このままでいいのか、と。
無知だから、合理的だからと閉じ込めていて、それで本當にいいのか、と。
だからこそ、俺は決斷した。
「モリオン、別に來てもいいぞ」
「えー!?  モーちゃんにはまだ早くなーい?r(・ω・`;)」
「お前が言うな」
「歩様!? ほ、本當によろしいのですか? モリオンではさすがに......」
「......なんじゃと? 主、正気か? トカゲには些か荷が重いと思うがのぅ」
「あひゃひゃひゃひゃひゃw いいね、いいねぇ! アユムっちは本當に面白いねぇ!」
俺の言葉に一様に驚く───いや、否定的な反応を見せる皆々。
ただ、アルテミス様だけは「いいじゃないか。連れてってやりなよw」と好意的だ。
面白がっているだけだろうが、こういう時味方をしてくれる存在の何とも頼もしいことか。
當然ながら、當の本人であるモリオンも驚いて目を見開いている。
「ほ、本當にいいのだ!?」
「あぁ。但し、お利口さんにすること。ヘカテー様の言うことをちゃんと聞くこと。これを守れるなら、だ」
モリオンのことはヘカテー様に任せるのが一番。
教育係としてし悔しいが、俺が言って聞かせるよりも遙かに効果的だからな。
「守る、守るのだ! 約束するのだ!」
「ということで、すいません。ヘカテー様もそれで宜しいですか?」
「いいよー! まっかせてー☆」
「くぁー! アユム、ありがとうなのだ!!」
「良かったねー、モーちゃん☆」
モリオンの、2人の喜ぶ姿を見て、なんだか俺も嬉しくなってきた。
俺の決斷は決して間違ってはいなかったはずだ。
そもそも、モリオンは冒険をしたくて俺に付いてきた。
それは、広い世界を見てみたい、様々な経験を積んでみたい、とも言い換えられる。
故に無知だから、合理的だからと閉じ込めておくのは、そんなモリオンの夢や意向を無視しているに他ならない。
それに、モリオンは竜族のお姫様でもある。
今後どうなるかは分からないが、やはりお姫様として社の知識や経験は必要だろう。
そう意味では、今回の宮廷午餐會は良い経験になるはずだ。
相手が全種族一溫厚なドワーフ族というのも、社デビューには打ってつけだと思う。
「いえーい☆」
「いえーい、なのだ!」
「いえーい( ´∀` )」
ハイタッチして喜びを分かち合っている姿は実に微笑ましい。
ちゃっかりと加わっているアテナは鼻に付くが。
せめて、姉らしいことの1つでもしてやってから加われよッ!
「......」
そんな3人を羨ましそうにジッと見つめる1つの影。
「ね、ねぇ、アユムっちさ」
「どうしました?」
「やっぱり、あたしも行っちゃダメかね?」
「......」
アテナ達に刺激されちゃったかー。
本音を言えば、「ダメです」と言いたい。
いくらニケさんが一緒とは言え、出來ることなら連れて行きたくない。
心配事の種はないほうが良いに決まっているからだ。
しかし───。
「......ダメかい?」
「うッ......」
アルテミス様は儚げで寂しそうな表、潤んだ瞳に上目遣い、祈るような形で両手をの前で組む───まるで男にびるような魅的な態度で同行をお願いしてきている。
お願いという形を取っているのは、一度不參加を決めたのでバツが悪いからだろう。
そういう意識があるだけ、アテナよりかは常識というか恥心はあるほうだと思う。
(......)
と、そこまで俺が考えるであろうことを計算していると思われるのがアルテミス様だ。
俺に好意があるのは確かなのかもしれない。
人だし、びてくる姿にはグッと來るものがある。
だが、どうにもこうにも胡散臭いというか計算が含まれているように思えてならない。
アルテミス様とは、アテナとはまた違った意味で一筋縄いかない神様なのである。
とは言え、答えは最初から決まっている。
「......アテナ同様、ドレスの著用は絶対。モリオン同様、騒ぎを起こさず大人しくすること。『契約やくそく』出來ますか?」
俺とアルテミス様は(決して対等とは言えないが)良きビジネスパートナー。
故に『契約』は互いを信用する為の、互いを(良い意味で)縛る為の一種の約束事。
そして、これを破ることは、それ即ち俺とアルテミス様の関係がそこで終わることを指す。
そんな俺の強い意思が伝わったのか、アルテミス様は───。
「うん、する♡」
しも逡巡することなく、それどころか乙の顔を見せてきた。
というか、それ絶対わざとやってますよね!?
かわいいけど! かわいいけどさ!!
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