《ワールド・ワード・デスティネーション》6
家の裏には路地があった。いくつかの家のブロック塀に囲まれて細長く続く、寂れた通りだ。
そこを歩くと足元には忘れ去られたような植木鉢や雨樋が転がっていて、常にってジメジメとしていた。ところどころは日のが當たらないようになっていて、そこを通ると顔に何度か蜘蛛の巣が付いた。數メートル進むと新しくできたアパートの壁がせり出していて、を曲げて歩かないと通り抜けられないようにまで狹くなってしまっていた。
路地を突當りまで出ると、そこにはいつの間にかオレンジのバリケードでふさがれてしまっていて、し向こう側にローカル線の線路が見えた。昔はそこを通り抜けて線路の向こう側に行くことが出來たのだ。しかし誰か(おそらく鉄道會社だろう)がそこを塞いでしまったようだ。
線路を囲うコンクリートの壁には國鉄時代から殘っているような古い看板が見える。こんな看板だ。
☛右よし
僕はバリケードにもたれて空を眺めた。倉庫の屋や架線に切り取られた臺形のどんよりとした空が見える。
どこか近くの家からテレビの音が聞こえてきた。最後にテレビを見たのはいつだろうと思ったが、それを思い出すことはできなかった。
來た路地の道を歩いて引き返し、大通りまで出た。そこには相変わらずたくさんの人がひしめき合っていて頭がくらくらとした。し歩いて町の電気屋まで行き、テレビコーナーを訪れるとテレビでは北海道を旅する番組をやっていて、あまりぱっとしないの子がメロンを食べている。しばらく眺めていると20臺くらい並んだテレビが一斉に切り替わり、コーヒーのCMにった。僕はそれを眺めてからため息をつき、CMが終わるころには店を出ていた。
日曜日の朝は早起きをしてシャワーを浴び、夜に買っておいたリンゴと牛で朝食を軽く済ませた。簞笥から比較的ましな服を選んで著替え、リビングのソファーに座り込んでライオネルハンプトンのレコードを聴いた。
祖父が音楽好きなのが理由で、家には死ぬほどレコードがある。祖父はその中でもMJQとMiles Davisが好きだといい、僕はJohn McLaughlinとAllan Holdsworthが好きだと答える。
駅で西へ行く列車を待ち、4両編のそれに乗り込む。車は思ったより空いていて座ることが出來た。僕はその列車で終點まで行き、そこで乗り換えて広まで行った。広は呉のすぐ隣の町なのだけれど、そこでまた列車を乗り換えないといけないことになっていたので僕はプラットホームを行ったり來たりして時間をつぶした。しばらくしてやって來たのはいかにもローカル線らしいワンマン列車だった。
僕が12時し前に喫茶店の扉を開けると、奧に彼がいるのが見えた。
「やぁ。」と僕が聲をかけると、彼は読んでいた本から顔をあげて僕をじっと見た。
「呉に住んでるんだ。」
「小さい頃からね。あなたは?」
「福山だよ。岡山の隣の町だ。ここから電車で2時間くらいかかる。」
彼はうなって「よく來る気になったわね。」と言った。
「列車でケツを摺り切らすのに慣れてるんだ。ずっと旅ばかりしてきたからね。」
彼は呆れた顔をして僕に何か言おうとしていたが、結局何も言わなかった。
「晝はもう食べた?」
彼はラミネート加工されたメニュー表を眺めながら僕にそう言った。
「まだなんだ。喫茶店だったからここで食べようかと思って。」
「私も今來たばかりよ。」
彼はトーストとカレーコーヒーを注文し、僕はオムレツを注文した。
僕はオムレツを頬張りながら、彼がその不気味なカレーコーヒーなるものを啜るところをじっと眺めた。おいしいのか、それ。それにどうしてそんなものがあるんだ。
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