《デザイア・オーダー ―生存率1%の戦場―》「序章」(3)

機械都市突には、外周金屬壁にを開けるために地上からの砲撃が必要不可欠だ。しかし目標を程にれるということは、イコールで『オール・プレス』粒子砲の程にるということだった。加えて、砲臺に『デス・ボート』のような高機をさせることは不可能であったため、撃破されることを前提とした使い捨て自走式砲臺が準備されたのだ。

「よし、今のうちに突破する。急げ」

ブラックオメガ1――という呼稱も他の機がいなくなった今では何の意味もさないが、彼らの機はこじ開けられた突口へ一直線に進んでいく。

しかしその時、小隊メンバーを保護していた薄青のバリアに異変が生じ始めた。小刻みに明滅が繰り返され、今にも消失してしまいそうだ。

『クソッ……粒子壁の展開がそろそろ限界だ……。この狀態でドでかいの一発喰らったら守り切れねえぞ、気をつけろ!』

粒子壁を必死に維持する茶髪の年は、額から大量の汗を流しながら苦しげにぶ。

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依然として敵の猛攻は続いている。衝撃が立て続けに『デス・ボート』を襲って、小隊メンバーたちを左右へ振り回す。

そんな時、『オール・プレス』の低層壁面に設置されていた近距離用防砲臺から撃ち出された、真っ赤なエネルギー砲弾がブラックオメガ1の機前方から迫る。直撃すれば、砲弾は防粒子壁を容易く貫通し、機は撃墜されるだろう。

縦手の年は砲弾をなんとか回避しようと咄嗟に舵を右に切るが、機きが追いつかない。『デス・ボート』はドリフト狀態に陥り、砲弾に対して真橫を向いた狀態で突っ込んでいく。砲弾の直撃まで數秒の猶予もない。直撃すれば全てが終わる。

何か回避策はないかと小隊の誰もが瞬間的に考えを走らせたが、何か思いついたところで実行に移すまでの時間はなかった。

ただ一人を、除いて。

「――やっとわたしの出番ね」

狹い機の中、仲間を押し退けて立ち上がった

が持つ淡い橙を纏った鋭い大剣の一太刀が、迫るエネルギー砲弾をいとも容易く弾き飛ばした。

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を鏡で反したかのように高速で近くの地面へ著弾した砲弾は、ブラックオメガ1通過後すぐに大発を引き起こし、機後方には急激に火炎が広がっていく。指揮長の年は、人間離れしたの一連の作に心の中でそっと舌を巻き、彼をじっと見つめた。

は『デス・ボート』の側面、開いたドアの前に堂々と立っていた。

の丈ほどもある大きな剣を攜え、吹きつける強風に怖気づく様子もなく。

後ろで結んだ彼の長い髪が猛烈な勢いの風圧ではためく。大きな瞳に小振りな長は低く、全的にい印象をける

だが、この場で誰よりも圧倒的な力と存在を誇示してみせたのは彼だった。

年たちとは本から違う存在だ。無茶な左右移を繰り返す『デス・ボート』の中で立ち続け、顔一つ変化していない。

『き、きき金屬壁、突破しますっ! ――やった! やりました! 侵功です!』

危機を乗り切った『デス・ボート』は凄まじい勢いを保ったまま、機械都市部へと侵する。味方の支援砲撃によって生じた金屬壁の歪んだ大を抜けると、舗裝されたアスファルトや大小様々なビル、信號、歩道や電燈、ガードレールなどによって形された都市風景が現れる。

だがどこを見ても酷く荒廃していた。人類が使わなくなった街は急速に風化してしまったようだ。

猛烈な攻撃をかいくぐった『デス・ボート』は大きな音を立てながら機の舵を橫に切り、衝撃を吸収して靜止する。停止地點周辺は倒壊寸前のビル群に囲まれているエリアだった。

『やったぁ~。こ、こここれでぼくの役目は完了――』

「気を抜くな、神楽!」

『へ――』

座席固定の拘束を解き、素早く地面に降り立った指揮長の年は、完全に安堵している縦手に鋭く警告を送る。同時、『デス・ボート』に向けて二方面からライフル弾サイズのエネルギー銃弾が多數浴びせられた。敵意の証であるかのような、をした真っ赤な弾丸は『デス・ボート』の薄い外裝甲を一瞬で貫通し、引きちぎられたような形に歪んだが無數に開けられていく。この機はもう帰り道では使用できないだろう。

「全員、ただちに散開! 神楽は運転席にを隠せ!」

敵攻撃から逃れるため、指揮長の年は鋭く指示を出す。『デス・ボート』から飛び降りた小隊メンバーたちは全員素早く地面に降り立つと、手頃な遮蔽を隠して次の指示を待つ。

戦場で軽口を叩たたき、変わり者である彼らにおいても、指揮長の命令は絶対だ。

だが、ただ指揮長だからという理由で従っているわけではない。従うに値する価値があると、彼ら自が判斷した。

ただ一人、大剣を手にした異質なだけは指示に従わず、無防備なまま、損傷した『デス・ボート』に寄りかかり、事態を靜観していた。

遮蔽を隠した指揮長の年は、顔を出して素早く敵の姿を確認しようとする。

銃聲が止み、再び靜まり返った都市。人間や他のたちが全くいない廃墟と化した街の中、鈍い金屬音と共に何かがを移する気配。

そして――年たちは邂逅を果たす。

廃ビル群のから姿を現したのは、野生のように四足で歩行する機械の獣。

を構する金屬は鈍く輝き、かす駆音が微かに響く。

の生きであれば頭部にあたる部分からは、代わりに二本の銃が生えていて、非常に不快を覚える禍々しい外見をしていた。

機械生ドレッドメタル。

金屬のを持ち、目の前の四足型や『オール・プレス』のように多種多様な姿形をした彼ら。人類を殺戮し、躙し、恐怖に陥れた醜悪な存在。

――その機械生ドレッドメタルこそ、年たちが現在対峙している敵であり、排除の対象だった。

小型の四足機械生ドレッドメタルは二ずつ、二方向から距離を詰めてきていた。だが、この程度の敵の數なら容易く制圧できるはずだ。

そう踏んだ年は、小隊メンバーに指示を出す。

冷酷な聲で。

ただ絶対的な従屬を求める。

「……全員注目。キミたちに與える指示は一つだけ。――ボクに従え」

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