《異世界サバイバル~スキルがヘボいとクラスから追い出されたけど、実は有能だったテイムスキルで生き延びる~》STAGE1 第5話 スキル

「どのくらい登れたかな」

「半分くらいってところじゃないか」

オレと小見川さんは、山の上にある高校の校舎を目指していた。

あそこなら人がたくさんいるかもしれないし、そうじゃなくても、食べや飲み水は確保できる。拠點として使えるかもしれない。

それに、あの山の上まで行けば、周りを見渡せる。

ここがどんな場所なのか、知ることができる。

なにをすればいいかもわからないこの狀況では、とりあえずの目標になる。

「しかし、さっきは本當に運がよかったんだな。ずっと學校の姿が見えない」

「そうだね」

樹が繁っているせいと、あと角度の問題もあるんだろうけど。

さっき見えたとき以外は、校舎が全然見えない。

だから、どのくらい近づいたのかよくわからないのだ。

多分そのせいで、ほかの生徒たちも校舎の存在に気づいていないのだろう。

ただ歩いているのもアレなので、オレたちは換をすることにした。

まずは、この世界に來たときの狀況。

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「私も、教室にいて地震が起こって、立っていられなくて床に倒れたの。誰かが『機の下にれ』ってんで、みんなそのとおりにした。それで、怖くて目をつぶってて、揺れが収まったから目を開けたら――」

ジャングルにいた、というわけか。

柱に頭をぶつけて気絶してた以外はオレと同じだな。

「周りにクラスメイトはいなかったのか」

「近くには誰もいなかった。けど、すぐに東堂くんが発見してくれて、コンビニに移した」

東堂翔平。

サッカー部のエースで、クラスの中心的ポジションの男子だ。

明るくて、績が良くて、人をまとめるのが上手い、リア充の典型みたいな奴。

そういえば、あいつは、クラスメイトのオレへの嫌がらせが度を越しそうになったときに、止めてくれたことが何度かあったな。

もしかしたら、彼も嫌がらせには加わっていなかったのかもしれない。

彼がまとめ役になったのは、うちのクラスとしては運がよかっただろうな。

まあ、オレたちにはもう関係ないことだけど……。

「それから、東堂くんが、スキルがわかってる人何人かでグループを作って、殘りのクラスメイトを探そうって提案して――」

——小見川さんは、勇見たちと一緒に探索していた、ってことか。

「教室にいた生徒も、教室じゃないところに飛んでたのか」

「うん。元いた場所はあまり関係ないみたい」

それもそうか。

の位置関係もめちゃくちゃっぽいしな。

そもそも建は、全部が転移してきてるわけじゃないみたいだし。

人も、もしかしたら、全員が転移してはいないかもしれない。

しかし、その辺は法則がまるで不明だ。

考えるだけ無駄……かどうかはわからないけど、材料がなすぎる。

オレは話を変えることにする。

ずっと気になっていたこと——スキルの話だ。

「スキルは誰が発見したんだ?」

「最初に合流してたのは、東堂くんと勇見くんと獅子戸くんだったんだけど、この三人の誰かが発見したみたい」

東堂はサッカー部。勇見は剣道部。そして獅子戸というのは空手部だ。

東堂を中心に、この三人が二年五組男子の人間関係上のトップスリーと言っていい。

「たしか、東堂くんが〈高速移〉、勇見くんは〈剣技〉、獅子戸くんは〈格闘〉だって言ってた」

「なるほど」

「え、なにかわかったの」

オレが納得の聲をあげると、小見川さんは不思議そうに訊いてくる。

「ああ。東堂の〈高速移〉はサッカー部で腳を使うから。勇見は剣道部だし、獅子戸は空手部。ぴったりじゃないか。オレが『の言葉がわかる』スキルなのは飼育委員だからで、〈治癒〉を使える小見川さんは——保健委員だろ」

「本當だ……」

小見川さんは目を丸くする。

「すごい……すごいよ、仁飼くん!」

本気で驚いたように、そう言ってくる小見川さん。

いや、褒められるのは悪い気分じゃないけど、そんな大したことじゃないでしょ。

なくとも、頭のいい東堂なら、とっくに気づいてそうな法則だ。

それとも、そういうのが出てくる小説を読んでないと、こういう発想は出てこないもんなのか?

それにしても〈剣技〉や〈格闘〉といったスキルは正直羨ましい。異世界に飛ばされるチート主人公なら、やっぱりそういう戦闘系の能力がしいところだ。

こんなことになるとわかってたら、無理してでも運系部活に所屬しておいただろうけど……。

「ところで、みんなスキルに名前をつけてるみたいだけど、それって自分でつけたの?」

「え?」

小見川さんは一瞬、不思議そうな顔をすると、すぐに首を振った。

「ううん。これも東堂くんが発見したんだけど、スキルを使うときに目を閉じると、そのスキルの名前が見えるんだ」

「そうだったのか……ちょっとやってみていい?」

そう言って立ち止まると、オレは目を閉じてみる。

ちょうど今、みるくを抱えているところだ。

こいつの言ってることを理解しようと、耳を傾ければ——。

「——あれ?」

「どうしたの?」

「みるくの聲を聞こうとしたんだけど——なにも聞こえない」

まぶたの裏に文字が見えたりもしなかった。

「ひょっとして、この世界の生きじゃないと聞けないんじゃない?」

「ああ、そうなのかな」

小見川さんの言葉に、オレは納得する。

考えてみれば、大蜘蛛やオオトカゲの聲は、特に聞こうとしなくても勝手に聞こえたのに、みるくの聲はこれまで一度も聞いていない。

まあ、スキルの名前がわかったところで、なにがあるわけでもないだろう。

多分〈言語理解〉とか、そんなじだろうし。

「ごめん、先に進もう」

オレはそう言って、また歩き出した。

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