《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第一話・1
僕が通っている高校は男子校で、基本的に向かいにある子校とはあまり接點がない。
だからといって、別に仲違いしているというわけではなく、ただ単純に流を持っていないのだ。
その中でも、子校の生徒とお付き合いしている男子もいるにはいるが、あまり多くはない。
文化祭や育祭のタイミングも異なるから、余計に子との流とかもなくなってくる。
僕なんかは、特にも興味がないから、周りからは無関心人間とさえ言われているが、それを気にしたことはない。
今日は、香奈姉ちゃんとの約束の日だ。ちなみに放課後。
さすがにこの時間になると、大半の生徒たちは下校している。
殘っているのは、委員會や部活に所屬している生徒くらいだろう。
そういう僕も、風紀委員にっていたりする。
風紀委員の仕事である學校の巡回を終えると、僕はすぐに教室に戻って帰り支度をし、教室を後にした。
今日は、香奈姉ちゃんとの約束がある日だが、バイトのシフトはっていないのが唯一の救いだ。
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下駄箱前に到著すると、一人の生徒が廊下の方からやってきた。
「よう、周防。今日、暇か?」
「風見君? どうしたの? いきなり──」
急に暇かと聞かれても、どう答えればいいのかわからないんだけど。
彼の名は、風見慎吾。友達といえば友達なんだけど、他ない話をする程度の中の友達だ。
「いや、実は今日な。子校のの子たちと會う約束をしていてな」
「それで?」
「約束したはいいんだけど、人員が一人足りないんだよ。それで頭數を揃えるのに誰かいないかなって思ってさ」
「それで僕をっているわけか」
「そうそう。──どうだ? もし暇してるなら一緒に行かないか?」
たしかに友達との予定は特にはないが……。
しかし──
「ごめん。今日は、予定があって一緒には行けそうにないんだ。…他の人をってあげるといいよ」
と、言う。
「そうか……。それなら仕方ないな。それじゃ、また機會があったらな」
「うん」
風見君は、そう言って學校の方へと戻っていった。
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何も予定がなければ、間違いなく行っていただろうな。
だけど、今回は違う。
香奈姉ちゃんとの約束がある。
だから、できる限り急いで子校の方に向かわないと。
バンドの集まりだと香奈姉ちゃんから聞いているので、一応ベースを持っていくことにしよう。
ちなみに、ベースは近くの駅の有料ロッカーにれてある。
なんでわざわざそんな場所にベースをれているかというと、學校に持っていったら、確実に先生に沒収されてしまうからだ。
軽音部に所屬しているとかなら話は別だが、そうじゃない場合は私として扱われてしまう。
沒収されてしまった場合、それを取りに行くためだけに先生たちからお説教を食らってしまい、結果的に一時間以上は覚悟しなきゃいけない。
だから、ベースを持って香奈姉ちゃんに會いに行く場合は、こうする方が面倒がなくていい。
今歩いている道をこのまま真っ直ぐに歩いていけば駅だ。
駅にたどり著くと、僕はすぐさま有料ロッカーへ向かい、鍵を開ける。
ロッカーの中には、僕のお気にりのベースがっていた。
僕はベースを取り出すと、それをそのまま擔ぐ。そして、スマホを取り出し時間を確認する。
「そういえば待ち合わせ場所の事は言っていたけど、集合時間の事は話していなかったな。今から行って大丈夫だろうか?」
僕は、三日前の事をふと思い出し、思案げな顔になる。
香奈姉ちゃんは、たしかに績優秀・品行方正・眉目秀麗と三拍子揃っているほどのだが、どこか抜けてる一面があるのだ。
「まぁ、考えたって始まらないか。とりあえず行ってみるとするか」
僕は、そう言って軽くため息を吐いた後、子校の方に向かって歩いていく。
子校の校門の前にたどり著くと、の子が四人、校門前で揃って立っていた。全員が子校の制服を著て鞄を持っているところを見ると、まだ家には戻っていないみたいだ。
その中の一人は、間違いなく香奈姉ちゃんだった。
僕が四人のところに近づいていくと、香奈姉ちゃんが僕の姿に気づく。
「…あ。おそーい! 一、何してたのよ」
「ごめん。楽を取りに行ったから、遅れちゃって……」
「そうなんだ。私は、てっきり來てくれないかとも思っちゃったよ」
「さすがにそれはないよ。香奈姉ちゃんとの約束だからね。約束を反故にしたらまずいでしょ」
「それはそうだけど。わざわざ楽まで取りに行ってたんだね」
「バンドメンバーの集まりって聞いたからさ。一応、楽を持ってきた方がいいと思って──」
「楽って、君はベース擔當なの?」
三人の中の一人が、興味津々の様子で聞いてくる。
そのの子はショートカットで、いかにもボーイッシュな印象のの子だ。
「うん。そうだけど……」
僕は、そう答える。
ショートカットのの子は、僕が擔いでいるベースに興味があるのか、眺めるような仕草で見て
「ふーん。なるほどねぇ」
と、訝しげに言う。
──なんだ?
何か不満があるのか?
「どうしたの? 奈緒ちゃん」
僕が口を開くより早く、香奈姉ちゃんが訊いていた。
それに対して、奈緒と呼ばれたショートカットのの子は、厳しい表を浮かべ僕を見る。
「いや、なんでもないよ。彼は経験はあるのかなって思ってさ」
「それは……」
「バンドを組んだ経験はないよ。ただベースの腕前はすごく上手なんだよ」
香奈姉ちゃんは、僕の事を擁護するかのようにそう答える。
奈緒は、呆れたようにため息を吐く。
「それだけじゃ、ダメなのよ」
「奈緒ちゃん?」
「腕前は勿論の事、バンドメンバーとしてやっていくにあたって必要な事を覚えてもらわないと、あたしたちは上には行けないのよ! …その事、ちゃんとわかってる?」
「それはよくわかってるよ。だけど今の私たちは、バンドとしてやっていくのに重要なメンバーが欠けているんだよ」
「それが、彼ってこと?」
「うちのバンドには、ベース擔當はいないでしょ?」
「それは……。たしかにベース擔當の人はいないけど……」
「だったら、別に構わないよね」
「別にいいけど……。だけど……」
奈緒は、それでも不満があるのか、僕を見る。
なんとなくだけど、奈緒さんの言いたい事が理解できてしまうのは何故だろう。
奈緒の側にいた二人のの子は
「まぁまぁ、奈緒ちゃん」
「香奈ちゃんが決めたことなんだしさ」
と言って、奈緒をなだめていた。
この二人のの子もバンドメンバーなのは確実だ。
僕は、香奈姉ちゃんを含めた四人のの子を見て、すぐにある事に気付いてしまう。
それは、香奈姉ちゃんが結したバンドメンバーには、男が一人もいない事だ。
「──ところで弟くん。今日は、バイトは休みなの?」
「はい。今日は、バイトのシフトはってないです」
「よかった。それじゃ、今日は弟くんの家でバンドの打ち合わせをしたいんだけど、問題ないかな?」
「僕の家でですか?」
「ダメかな?」
香奈姉ちゃんは、おねだりするみたいなじで聞いてくる。
──困ったな。
両親は共働きだから家にはいないが、兄貴の方はどうなんだろう。わからない。
わからない事を考えてたってしょうがないか。
「特に問題ないかとは思うんだけど……」
「それなら決まりだね。そういう事だから、これから弟くんの家に行きましょう!」
「おー!」
「え……。それは……」
どうして、そうなるんだ。
兄貴が家にいたら、どうするつもりなんだよ。
僕のそんな懸念なんか聞いてない風に、香奈姉ちゃんと三人のの子たちは歩いていく。
そもそも香奈姉ちゃんは、僕が引き止めたって聞かないからどうしようもないんだけどさ。
こうなったら、神に祈るしかない。
神さまお願いします。
どうか、家に兄貴がいませんように──。
僕の悪い予は見事に的中した。
家に帰ってくると、そこには兄貴がいたのだ。
「楓か? それに香奈も一緒か」
「こんにちは、隆一さん」
僕が口を開くより早く、一緒にいた香奈姉ちゃんは挨拶をした。
それに合わせたかのように、三人のの子たちも會釈する。
兄貴の名前は、周防隆一。この周防隆一こそが、香奈姉ちゃんに多大な影響を與えた人である。
そういう僕も兄貴の影響をけ、ベースを弾く練習をしているが。
この辺りでは有名なバンドを結し、野外ライブなどを中心に活している。
「そんなにぞろぞろと何の用なんだ?」
「ああ、これはね。ちょっと訳ありで……」
「ま、どうでもいいけどな。俺は、これから出かけるから、戸締りはきちんとしろよ」
「またバンドメンバーの集まりかい?」
僕がそう聞くと、兄貴は不快げに言う。
「お前には関係ないだろ。とにかく、俺は出かけるからあまり近所の人に迷かけるなよな」
「わかってるよ。そんなこと──」
「だったらいいんだけどな。才能のない奴がどんだけ頑張っても無駄なんだから、お前も諦めて別の道を行くんだな」
「………」
「…ちょっと。そんな言い方ってないと思うんだけどな」
と、香奈姉ちゃん。
「俺は、事実を言ってるだけだ。香奈だって、そのくらいはわかっているはずだろ? 楓には、才能もなくバンドメンバーにも恵まれていない。こういうのって、メンバーに振り回される場合が多いんだよ。…だから俺は、あの時お前を──」
「そうだね。…でも、私はそれを斷った。それに私には、今のメンバーがいるの」
「………」
香奈姉ちゃんの言葉は、兄貴にかなり響いたようだ。
そりゃ、彼に告白して斷られたくらいだから、何も言い返せないのは當然か。
「まぁ、練習するなら好きに使ってくれ」
兄貴は、そう言って居間を後にする。
「いいの? あんな事言って?」
「気にすることないよ。ミーティングなら、あの場所以外には考えられないからね」
「あそこって?」
「弟くん。あの場所は、今使えるかな?」
「もちろん使えるよ」
「それじゃ、ミーティングはその場所でしようか」
「う、うん……」
「どんな場所なのか、気になるけど。香奈ちゃんがそう言うなら──」
「それじゃ、ついてきて」
そう言って僕は、居間を後にした。
あの場所には防音効果があるので、バンド活にはもってこいの場所だ。
香奈姉ちゃんは、その場所の事を知っているから驚きはしないんだろうけど、三人のの子たちはどうだろうか。
連れて行ったら、きっとビックリするに違いない。
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