《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第一話・6

今日のバイトを終えると、僕は足早に家に向かっていた。

特に急ぐ必要はないのだが、なぜだか早く家に帰らないといけない予がしたのだ。

あの別室に関しては鍵は開けてあるので、奈緒さんたちが先に來るんだったら、母に話を通せばすぐに使用許可を得られるだろう。

僕が早く帰りたい理由は、その奈緒さんたちである。

たちがガサれをし始めないか心配になってきたのだ。

當然のことだが、あの別室の中にもこの間のようなエッチな本がある。

この間、一人で練習をしてた時に出てきたのだ。

僕のじゃないから、それは兄貴たちのものだろう。

奈緒さんが偶然僕の部屋で見つけた時と違い、あの別室で見つけられたら、弁明するのもむずかしいだろうし。

そもそもそんなものを見つけられたら、すごく恥ずかしい思いをする。

早く帰ってエロ本を処理しなければ──。

しかし、早く帰らなければいけないと考えてる時ほど、トラブルも発生するものである。

「──きゃっ!」

と、僕の近くを歩いていた子校の制服を著たの子が躓いて転んだ。

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スカートがめくれ上がり、中から覗いたのは純白の白だった。

しかし、そんなものに見惚れている場合ではない。

「大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です。痛っ!」

の子は、そう言ってすぐに立ち上がろうとしたが、その場に蹲ってしまう。

見れば、膝からが流れていた。

嫌な予が的中したよ。

こうなると他人のふりなんてできない。

必ずこうしてしまうものである。

「これは、ひどい怪我だ」

「どうしよう……。これから予定があるのに……」

「とりあえず、近くの公園に行こう」

僕は、の子にそう言うと肩を貸した。

「ありがとうございます。その──」

「気にしなくていいよ。これは、さすがに放っておけないし──」

風紀委員の悪い癖が學校の外で出てしまうなんて……。

まぁ、近くで起きたことだからしょうがないか。

公園にたどり著くと、すぐに水道に向かう。

僕は、制服のポケットからハンカチを取り出すと水道水に濡らす。

「ちょっとしみるかもしれないけど……。我慢してね」

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そう言って、僕は濡れたハンカチを絞っての子の傷ついた膝にあてる。

「っ……!」

の子は、傷口がしみたのか痛そうな顔をしていた。

とりあえずは止まったから、これで問題はないだろう。

僕は、もう一度ハンカチを濡らして絞ると、今度はの子の膝に巻く。

「ごめん。絆創膏はないから、応急になっちゃうけど……。その代わり、このハンカチは君にあげるよ。家に著いたら、その時にちゃんと治療するといい」

「そうします。ここまで、ありがとうございます」

「いや、禮には及ばないよ。それじゃ──」

僕は、そう言って先に公園を後にした。

そういえば名前を聞き忘れてしまったが、まぁいいか。

あまり興味もないし。

一つ気になったのは、香奈姉ちゃんと同じ子校の制服だった事くらいだろうか。

それを思うと香奈姉ちゃんは今、どうしているだろう。今もバイト中だろうか。

今日もあの別室で練習するから、気にしてもしょうがない。

とりあえずは、家に帰ろう。

別室に近づくとギターを弾く音とドラムを叩く音が聞こえてくる。

僕が別室にると、奈緒さんと沙さんが先にっていて、練習していた。

制服姿だったから、學校が終わってすぐに來たんだろう。

「ヤッホー、楓君!」

「やあ、楓君。この部屋、遠慮なく使わせてもらってるけど、いいのかな?」

「別に構わないですよ。他に誰も使わないし。僕も練習しようと思ってここに來たわけですから」

「ありがとう」

「それじゃあさ。一回合わせてみる?」

と、沙さん。

「そうだね。一回やってみようか」

「決まり。それじゃ、やってみよう」

「え……。ちょっと待って。まだ準備が……」

僕は、慌ててベースを手に取る。

「焦らなくていいよ、楓君。私たちも、し前に著いたばかりだから」

沙さんは、笑顔でそう言っていた。

しかし制服姿でドラムの練習してたら、どうしても下の方が気になって仕方がない。

子校の制服ってスカートが短いから、がにになるとき下著が丸見えになってしまうのだ。

今も、ピンクの下著がちらちら見えている。

まぁ、子校だからの子しかいないし、そんなに気にならないんだろうな。

僕も気にしないでおこう。

「もうし待ってね。今、終わるから」

僕はそう言って、ベースのチューニングをし直す。

すると部屋のドアが開き、香奈姉ちゃんと理恵さんがってくる。

「ごめん、遅れてしまって……」

「──ごめん、みんな。待った?」

それに答えたのは、奈緒さんだった。

「ううん。あたしたちは、ついさっき來たばかりだよ。だからそんなに待ってないよ」

「そっか。よかった……。バイトがし長引いてしまって、なかなか抜けられなかったんだ」

「うん。ちょっと忙しかったんだよね」

「そうなんだ。大変だったね」

どうやら香奈姉ちゃんと理恵さんは、バイト先が一緒らしい。

言うまでもないが、香奈姉ちゃんと理恵さんも制服姿だ。

「──ちょっと待っててね。すぐに準備するから」

そう言って、香奈姉ちゃんも理恵さんも準備しだす。

この際、文句は言わないけど、部活じゃないんだから、制服姿で練習っていうのもどうかと思う。

そういう僕も、人のことは言えないんだけどさ。

その後、僕たちは普段どおりに練習に勵んだ。

もちろんエロ本に関しては、彼たちには、見つからなかったので安心した。

練習が終わり夜になると、香奈姉ちゃんたちが僕の部屋に來るようになった。

特に用件はなさそうなんだけど、香奈姉ちゃんたちはリラックスした様子で僕のベッドの上や用意した座布団の上に座っている。

たまに母が心配そうな様子で來ることもあるが、何がそんなに心配なのか僕にはよくわからない。

「やっぱ、楓君の部屋って來ると安心するなぁ」

「なんかそうだよね。男の子の部屋なのに不思議だよね」

「うんうん。男って野獣のイメージがあったからね。楓君を見ると安心する」

と、三人の先輩たちは、そう言ってくつろいでいた。

いくら練習後で疲れてるからって、みんなだらけすぎだ。

あまりにも無防備すぎてスカートの中が丸見えになっている。

お願いだから、そこまで無防備な格好はやめてください。

僕だって、男だよ。そんなあられもない格好をされたら、たまったものじゃない。どんなに意識したくなくても意識しちゃうよ。

一番クールそうでまともな奈緒さんも、安心してるのかベッドの上に寢そべってるし……。

これに対して怒るのは、當然香奈姉ちゃんである。

「ちょっと三人とも。くつろぐのは自由だけど、弟くんの目の前だよ! もうし、シャキッとしようよ」

「えー。せっかく休めると思っていたのに……。私たちだって、香奈ちゃんみたいに“弟くん”に癒されたいよ」

「私は別にそういうわけじゃ……」

「隠さなくてもいいって。わたしたちには、よ~くわかっているから」

「だから、違うのに~」

理恵さんにそう言われ、香奈姉ちゃんは返す言葉を失ってしまったみたいだ。

「ところで楓君。さっき、あの部屋でこそこそと何か隠してたみたいだったけど、何を隠したの?」

「え ︎ そんな大したものじゃなくて……」

奈緒さんにそう言われ、僕はギクッとなってしまう。

するとそれに反応したのが、沙さんだった。

「なんか怪しいなぁ~。変なものでも隠したんじゃないの?」

「そ、そんなことないよ。隠し事できるような狀態じゃないし」

僕は、焦り気味にそう言っていた。

これ以上、彼たちにエロ本がある事を知られたらまずい。

たとえあれが兄貴のものであっても後ろめたいし、僕と兄貴が同類に見られてしまうのも、なんか嫌だ。

香奈姉ちゃんは、焦り気味の僕を見てずいっと迫ってくる。

「弟くん。ホントの事を言ってくれないかな。私たちに隠し事って、絶対によくないと思うんだ」

うう……。

香奈姉ちゃんにまで疑われているなんて……。

たかだか兄貴のエロ本の事で、ここまでになるのか。

「ちょっと待って。僕は、別に隠し事なんてしてないよ。兄貴のものの事でちょっとどうしようかなって考えてただけだよ」

「隆一さんのものの事? それって、一なんなの?」

「そんな大したものじゃないよ。…だから、あまり気にしないで」

「気にしないでって言われると、なんだか余計に気になるんだけど……」

「気持ちはわかるけど、兄貴のものだから、僕もあんまりれたくはないんだ。後で怒られたくはないからね」

「そっか。それなら、仕方がないよね。何なのか気にはなるけど、私も怒られたくはないし、やめておこう」

「──と、もうこんな時間か。そろそろ家に帰らないと」

理恵さんは、僕のベッドの側に置いてあった置き時計を見てそう言った。

時間はすでに21時になっている。

門限とかのある家なら、怒られてもおかしくのない時間だ。

「あ、ホントだ。もう21時か。帰ったら、宿題しないと」

「そういう事だから、わたしはそろそろ帰るね」

「うん。気をつけてね、理恵」

「香奈ちゃんもね。いくらしの弟くんが近くにいるからって、油斷しすぎないようにしないとね」

「もう! そんなんじゃないわよ」

しのって、僕と香奈姉ちゃんはそんな関係じゃないし。

たしかに、今度の日曜日に買いに行く約束はしたけど。

三人の先輩たちは、各々鞄を持つと、部屋を後にする。

僕は、玄関先まで見送ることにした。

「それじゃ、また明日」

「うん。また明日ね」

奈緒さんと理恵さんは、そう言って家を後にした。

沙さんは、「あ、そうだ」と言って、何かを思い出したかのように僕のところまで歩み寄ると

「香奈ちゃんのこと、ちゃんとエスコートしてあげないとダメだぞ! それじゃあね」

そう言って、僕の頬にキスをして足早に家を出る。

僕は、呆然と立ち盡くしてしまう。

それを見ていた香奈姉ちゃんは、ものすごい殺意を放ち僕に言った。

「いつの間にか沙ちゃんと仲良くなったんだね」

「いや……。これは名取先輩がいきなりしてきたことで、僕にはさっぱりで……」

「ふーん。そうなのね」

香奈姉ちゃんは、ムスッとした表になる。

なんだかよくわからないが、これはむくれてるのか?

「──とりあえず、私も帰るね」

「それじゃ、近くまで一緒に行ってあげるよ」

「いらないよ」

「え?」

「他のの子に鼻の下ばしてる弟くんとなんて、一緒に歩きたくないから」

いや……。それは、なんか違うんじゃないのかな。

僕は、別に鼻の下をばしているわけじゃない。

「いや。別に鼻の下をばしてなんか──」

「それは自分のに聞いてみて。今日も奈緒ちゃんとかに見惚れていたでしょ?」

「見惚れてた? いや、あれは見惚れてたっていうよりも、無防備すぎて目のやり場に困ってたっていう方が正しいと思うよ」

「そうなの?」

「うん。僕の部屋の中で、男は僕だけだからね。あんな無防備な格好されたら、そりゃあ……」

「そっか。私の勘違いだったか」

「何を勘違いしてたの?」

僕は、思案げな表で首を傾げる。

「こっちの事だから気にしないで。それじゃ、私もそろそろ失禮するね」

「送っていくよ」

「ううん。今日はいいよ」

「どうして?」

「とにかく、今日は一人で帰りたい気分だから」

そこまで言われたら仕方がないな。

僕は玄関のところで立ち止まり、香奈姉ちゃんに言った。

「そっか……。それなら仕方ないね。それじゃ、香奈姉ちゃん。また明日ね」

「うん。また明日」

香奈姉ちゃんは、僕の家を後にした。

そこまで怒ってはいないようだからいいけど、日曜日の買いは大丈夫なんだろうか。なんだか心配になってきたよ。

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