《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第三話・6

──その日の晝休み。

僕は、いつもどおり慎吾と屋上で弁當を食べていると、慎吾の方から口を開いた。

「そういえば、さっきの奴の報を集めてきたぜ」

「誰なの?」

「名前は、田沼秀平っていうらしい。かなりの自信家で績優秀者らしいぜ。いつも學校でトップ10りしてる奴だ。それだけに周囲からの信頼は厚い」

「なるほど」

學年のトップ10か。僕なんか學年で100位以っている程度だ。それが羨ましいとは思わないけど。

勉強なんてものは、スポーツと違って人と競うものじゃなく、自分自につけるものだから、妬ましいとも思わない。

「最近、運命の出會いをしたとかって言って、そのの子に言い寄っているみたいだぜ」

「それが北川先輩ってわけか……」

僕は、呆れ気味にそう言う。

「そういえば、北川先輩って西田先輩と仲良かったよな。──だったら、今から連絡取れるか?」

「取れないことはないけど、今、何してるかわからないよ」

「とりあえず連絡してみてくれ。出なかったら後で連絡してみればいいだろ」

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「それはそうだけど……」

そう言いながら、僕はスマホを取り出して、香奈姉ちゃんに電話をかける。

さすがに晝食の最中で出ないかと思っていたんだけど、予想外にもすぐに繋がった。

『──もしもし。どうしたの? 弟くん』

「ああ、いや。大した用はなかったんだけど、香奈姉ちゃんの聲が聞きたくて」

『そうなの? 私は、てっきり奈緒ちゃんに用件があるのかなって思っちゃったよ』

「あ……。やっぱり、バレた?」

「だいたいの見當はつくよ。──それで、奈緒ちゃんに言い寄ってくる男子生徒のことは何かわかった?」

「はい。…名前は、田沼秀平っていうらしいです。男子校での績は優秀で、他の男子生徒たちからの信頼は厚いみたいです」

『なるほどね。簡単に諦めてもらうことは難しいってことなのかな……』

「そうみたいです。どうしようか?」

『それなら、私に任せてくれるかな?』

「何をするつもりなんですか?」

『それは、後からのお楽しみってことで』

「そうですか。──それなら香奈姉ちゃんに任せます」

『オッケー。私にドンと任せなさい!』

香奈姉ちゃんのその言葉を聞いて、僕は通話を切った。

「何て言ってた?」

しばらくしないうちに、慎吾から聲をかけられる。

僕は笑顔を浮かべ、慎吾の質問に答えた。

「…とりあえず、香奈姉ちゃんに任せてみることにしてみたよ」

「大丈夫なのか?」

慎吾は、心配そうな表でそう言ってくる。

僕は微笑を浮かべ、言葉を返した。

「香奈姉ちゃんのことだから、きっと大丈夫だよ」

「そうか。それならいいんだけどな」

慎吾は、笑顔でそう言っていた。

──そしていつもどおりの放課後。

學校の校門前には、言うまでもなくあの二人がいた。

香奈姉ちゃんと、奈緒さんだ。

周りの男子生徒たちも、彼たちが何しにきているのかわかっているのか、僕を見て羨ましそうな表で見てくる。

香奈姉ちゃんと奈緒さんは、僕の姿に気づいて聲をかけてきた。

「あ、弟くん。一緒に帰ろう」

「楓君。待ってたよ。一緒に帰ろうか」

そう言って二人とも手を差しべてくる。

「えっと……」

さて、僕はどっちの手を取ったらいいんだろう。

そうして悩んでいると、二人はそれぞれ僕の手を取った。

「何を悩んでいるの? はやく帰ろう」

「あたしも一緒に付き合ってあげるから。一緒に帰ろうよ」

二人は、そのまま僕の手を引いて歩き出す。すると──

「北川先輩」

聞き覚えのある聲が、奈緒さんを引き止めた。

振り返るとそこにいたのは、登校時に出會った男子生徒──田沼秀平だった。

「また君か。今日は何の用? 告白の返事なら、あの時にしたはずだけど」

「俺は『諦めない』って言ったはずです。どんな手を使ってでも北川先輩を振り向かせてみせます」

田沼は、そう言って奈緒さんに迫る。

奈緒さんは、田沼の姿を見てため息を吐く。

「ホントにしつこいね、君も。あたしは、君のことなんて好きでもなければなんでもない。…だからあたしのことは、諦めてくれないかな」

「北川先輩に興味なくても、俺は──」

田沼は諦めたくないのか、ずいっと奈緒さんに近づいていく。

僕は、すぐに奈緒さんを守ろうと前に立とうとしたが、その前に田沼に立ちはだかった人がいた。

香奈姉ちゃんだ。

香奈姉ちゃんは、めずらしく厳しい表を浮かべぴしゃりと言った。

「これ以上しつこくつきまとうと、ストーカーになっちゃうよ。君は、そんな風になりたくはないよね?」

「それは……」

田沼は図星を突かれたのか、香奈姉ちゃんの顔を見て言葉を詰まらせてしまう。

まぁ、香奈姉ちゃんにストーカー呼ばわりされたんじゃ、何も言い返せないだろうな。普通に考えて……。

田沼は、香奈姉ちゃんと奈緒さんの二人と一緒にいる僕が気に食わなかったのか、僕のことを指差して言った。

「周防楓! お前は西田香奈先輩と北川奈緒先輩のどっちが好きなんだ!」

、どこで僕の名前を知ったんだか。

そうツッコミをれたかったが、敢えて言わないでおく。

どっちが好きかと言われても、僕は香奈姉ちゃん一筋だし。それを変える気はない。香奈姉ちゃん本人には、恥ずかしくて言えないけれど。

「どっちが好きと言われても、こんな人が多くいるところで言えるはずがないよ」

「まさかお前、二ってことはないだろうな!」

「それは100パーセントないよ。僕は──」

そう言いかけたその時、奈緒さんと香奈姉ちゃんがそれぞれ僕の腕をがっしりと摑んできた。

「二はないけど、今はこんな関係だよね」

「そうそう。あたしも、楓君を諦めるつもりはないよ。隙あらば香奈から奪うつもりだよ」

「ちょっと奈緒ちゃん! 私の大事な弟くんを奪うだなんてひどくない? 弟くんは、私の弟くんだよ」

「そう? こういうのは早い者勝ちだと思うけど」

「む~。奈緒ちゃんってば……。私だって」

二人とも、ノリノリである。もしかすると香奈姉ちゃんは、初めからこれがやりたくて、『任せて』と言ったのかな。

奈緒さんの発言には無理があると思うんだけどな。噓なのは一目瞭然でわかるし。──でもまぁ、田沼秀平を諦めさせるには、このくらいのことをしなければダメだと考えれば、仕方のないことなのかもしれないが……。

「そういう事だから、あたしのことは諦めて」

「そんな……」

田沼は、呆然とした様子で僕たちを見ていた。

「行くよ。楓君」

「あ、うん」

香奈姉ちゃんと奈緒さんの二人は、田沼に興味をなくしたかのように歩き出し、そのまま僕の腕を引っ張っていく。

僕は、田沼のことが気になり、ふと後ろを振り返る。

そこには、周りにいた男子生徒たちの數人かが田沼の側に駆け寄り──

「元気だせよ」

と、彼を勵ましている様子が見けられた。

さすがに、もう諦めてくれたかな。みんなの前でフラれたわけだし。

まぁ、彼ならきっと大丈夫だろう。

変にプライドが高いみたいだから。

他の子を見つけて、また新しいを見つけるだろう。

「ほら、楓君。そっちばっか見てないで、はやく帰ろうよ」

「うん。…そうだね」

「彼のことが気になるの?」

と、香奈姉ちゃん。

香奈姉ちゃんの言うとおり、僕は田沼のことを気にしてる。

「うん。ちょっとね……」

僕は、バツが悪そうにそう言う。

彼は、この後どうするんだろうかと考えると、気になってしょうがないのだ。

「気にしたって、しょうがないと思うよ。彼には悪いけど、奈緒ちゃんは彼には興味がないってことなんだし」

「そうそう。あんなのは、気にする必要はないよ。あたしは、彼には興味がないからさ。言いたいことを言っただけだよ」

奈緒さんは、そう言って微笑を浮かべる。

やっぱり奈緒さんは、については興味がないのか。

僕と人同士のフリをしてほしいっていうのは、他の男避けのようだ。

「そうなんだ。それなら、いいんだけど……」

「とにかく、弟くんは彼のことは気にしなくていいんだよ。それよりも、私たちのことを気にしてくれないとね」

「香奈姉ちゃんたちのことって?」

「私か、奈緒ちゃんか。…弟くんは、どっちがいいのかな?」

「どっちって言われても……。そんなの選べないよ」

「まぁ、今はそれで許してあげるよ」

「フ……。そうだね。今は、それで許してあげようか」

奈緒さんと香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言うと僕の腕を引っ張っていく。

なんだか、わけがわからないんだけど……。

その後、田沼秀平が奈緒さんをつけまわす行為はぱったりと止んだのは言うまでもない。

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