《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第三話・8

家に帰ると僕は、家族に見つからないように自分の部屋に向かっていった。

部屋にたどり著くと、僕はすぐに押れの中のとある場所に奈緒さんのパンツを隠す。ベッドの下にしようとも思ったけど、香奈姉ちゃんや沙さん辺りがしそうで怖かったので、敢えてやめておく。

それにしても、穿いていたパンツを渡してくるなんて、奈緒さんは何を考えているんだろう。好きな男の子に穿いていたパンツを渡すのは子校のジンクスらしいが、け取った僕の方としては、家までの帰り道が落ち著かなかった。こんなものを渡されても、恥ずかしさだけがこみあげるだけだ。

奈緒さんはあの後、何事もなかったかのように僕の側を歩いていたが、張とかしなかったんだろうか。僕は思いっきり張してたけど……。

とにかく、今日はバイトのシフトがってなくてよかった。

奈緒さんのパンツを鞄にれたままバイトなんかしてたら、仕事に集中できなくて店長や先輩に注意をされていたことだろう。

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「──さて。今日も、練習頑張るか」

そう自分に言い聞かせ、僕は部屋に置いてあるベースを手に取り部屋を後にしようとする。

そこに急に部屋の扉からノックの音が聞こえてきた。

「はい」

僕は、すぐにそれに応え部屋の扉を開ける。

すると、そこには香奈姉ちゃんがいた。

「あ、弟くん。ちょっと話があるの。──今、いいかな?」

香奈姉ちゃんは、自然な流れでスススッと僕の部屋にってくる。

「いや、今は……」

僕は、慌てた様子で部屋の中を見やり言う。

「ダメかな? すぐに済むんだけど──」

どうせハッキリと『ダメだ』と言っても、部屋にってきたあたりで僕に拒否権はないだろう。

僕は、諦めた様子で香奈姉ちゃんを見て訊いていた。

「…話って何なの?」

「…んとね。奈緒ちゃんの事なんだけどね。弟くんのことになるとなんだか落ち著かない様子なの。何か知らない?」

香奈姉ちゃんから、奈緒さんのことを言いだされた時にビクッとなってしまったのは、言うまでもない。

「僕は何も知らないけど……」

僕は、平靜を裝いそう言っていた。

奈緒さんは、自分から言うって言ってたし、僕の方から何かを言うのは間違っている。だから敢えて何も言わないでおこう。誤解されても困るし。

「いや、知ってるよね?」

「え……」

僕は、香奈姉ちゃんのムーっとした表を見て呆然となる。

「奈緒ちゃんから聞いたよ。──弟くんに穿いていたパンツを渡して告白したってね」

「それは、その……」

報が伝わるのが早い。

奈緒さんは、すぐに香奈姉ちゃんに言ってしまったのか。僕に告白したことを……。

「それで、今も奈緒ちゃんのパンツを持っているのよね?」

「え……。いや、それは……」

「やっぱり持っているんだね」

「いや……。だから……」

僕は、弁明しようとするが言葉が出てこない。

香奈姉ちゃんは、そんな僕の態度を見てショックをけたみたいだ。恥ずかしそうにギュッとスカートの裾を摑む。

「うう……。これだと完全に私の負けじゃない……。子校のジンクスで勝負してくるなんて……。奈緒ちゃんがそうしてくるなら、私もこうするしかないじゃない」

「どうしたの? 香奈姉ちゃん──」

僕が問いかけた瞬間、香奈姉ちゃんは急に僕に抱きついてきて、そのままベッドの方まで押し倒す。

「どうもしないよ。弟くんには、ちゃんとしてもらわないといけないからね」

「ちゃんとしてほしいって、何のことを言っているのかわからないんだけど……。奈緒さんのパンツのことなら、明日返すつもりだし」

ベッドに押し倒された僕は、香奈姉ちゃんを見る。

「そんなことしても無駄だよ。弟くんは、わかってないよ。子校のジンクスの意味を──」

香奈姉ちゃんは騎乗位の狀態で僕の顔を見ると、スカートの中に手をれて、穿いていたパンツをゆっくりと下ろす。

「ちょっ…… ︎ 香奈姉ちゃん!」

「ん? 何?」

「何しようとしてるの?」

「何って、私のパンツを弟くんにあげようと思って」

「いや、いらないから! はやくパンツを穿いてください」

僕は、慌てて目隠しをした。

今さら目隠ししたって、遅すぎる気もするけど……。

騎乗位の狀態でパンツをぎ出したものだから、その拍子でスカートの中が丸見えになっていたのだ。パンツをいでいる狀態だから、スカートの中はノーパンである。

「あら……」

香奈姉ちゃんの反応は薄く、見られたからといって恥ずかしがる様子すらない。

相手が僕だからなのか、香奈姉ちゃんは笑顔を浮かべていた。

「今さら隠したってしょうがないし、私のは、もう見慣れてるでしょ。──だから平気だよ」

香奈姉ちゃんは、そう言うといだパンツを僕の手に押し付けるように握らせる。

「香奈姉ちゃん、これは?」

「このパンツは、弟くんにあげる。──前にも言ったけど、弟くんは私以外のの子を好きになっちゃいけないんだよ。…わかった?」

「いや、ちょっと待って。香奈姉ちゃんしか好きになっちゃいけないってのはまだわかるけど、このパンツは一何なの? たしかに奈緒さんからも、パンツをけ取ったけど、これには何の意味があるの?」

「奈緒ちゃんから聞いてないの? そのままの意味だよ」

「そのままの意味って……?」

「──好きな男の子に告白する時、穿いているパンツを渡して告白すれば高い確率でうまくいって、両思いになれるんだよ」

「あ、それは奈緒さんから聞いたような」

「だから私からも、渡しておこうかなって思って──」

「いやいやいや……。香奈姉ちゃんは、無理しなくてもいいんじゃないかな」

香奈姉ちゃんのパンツは、さすがにけ取る気はない。…ていうかけ取る勇気がないよ。

兄貴になんて言われるかわからないし。

そもそも奈緒さんのパンツをけ取ったのも、これはどうしようかと思っているくらいなのだから。

「どうして? 奈緒ちゃんのパンツをけ取ったんだから、私のパンツくらいけ取れるでしょ?」

「いや、だから。何でパンツをけ取らないといけないのかなって」

「つまり私のは、無理ってこと?」

そこで何故か、涙ぐむ香奈姉ちゃん。

何で泣きそうな顔になるのか、よくわからないんだけど……。

「いや……。無理ってことはないけど、何もパンツを渡す必要はないかと思うんだけど……」

「弟くんは、奈緒ちゃんのパンツはけ取ったんでしょ?」

「たしかにけ取ったけど……。すぐに奈緒さんに返すつもりだし」

「そっか。…でも、それはすぐに返さない方がいいよ」

「どうして?」

子校のジンクスにはね。渡したパンツを返された時のことも言われていてね。──渡されたパンツは、その人のの証でね。それを返すってことは、その人のけ取れないっていう意味になるんだよ」

いや……。の子のパンツ一枚が、どれだけのが詰まってるんだろう。

そもそも、告白する時に渡されるパンツを、男がどれだけ大事にできるんだろうか。

「それじゃ、いつ返せばいいの?」

「奈緒ちゃんのパンツは、返さなくてもいいんじゃないかな」

「え……。何で?」

僕は、思案げな表を浮かべる。

いくらなんでも、の子のパンツをこの部屋に置きっぱなしにするのはまずいでしょ。

母が見つけてしまうかもしれないし。

「奈緒ちゃんは、弟くんの好きな人がわかっていて告白したんだと思うよ。だから返さなくてもいいと思う。──ただし、大事にすることかな」

「ん? 何を?」

「弟くんは、私のパンツ同様、奈緒ちゃんのパンツを大切に保管すること。それだけは絶対に守ってね」

「いや、何でパンツを大切に保管することを前提に話をしてるのかな? 僕は、変態になるのだけは嫌だよ。母に見つかる前に、奈緒さんのパンツはしっかり返すつもりだからね」

「あーあ……。奈緒ちゃん可哀想。せっかく勇気を出して弟くんにパンツを手渡したのに、弟くんが無駄にしてしまうんだね」

「いや……。さすがにの子のパンツを、僕が持っているわけにはいかないでしょう」

「男の子なら責任を取って、私と奈緒ちゃんのパンツくらい大切にするべきでしょ!」

香奈姉ちゃんは、きっぱりと言い放つ。

僕は、香奈姉ちゃんのものまで大切にしなきゃいけないのか。

僕は、ため息を吐く。

「──とりあえず、そのパンツを穿くつもりはないんだよね?」

「うん。私の好きな人は弟くんだから、しっかりと私のパンツを大切にしてほしいなって……」

「僕に拒否権は?」

「ないよ。奈緒ちゃんのものをけ取ったんなら、私のパンツくらいけ取れるでしょ?」

「それは……」

こうも言い切られてしまうと、僕の方も返答に困る。

どうにも香奈姉ちゃんに頼まれると、嫌とは言えない僕がいる。

「…わかったよ。そこまで言うなら、香奈姉ちゃんのものも預かっておくよ」

「預けるんじゃないよ。…私のは、弟くんに“あげる”んだよ。私は、奈緒ちゃんのものとは違うんだからね!」

うーん……。

奈緒さんのものと、香奈姉ちゃんのものがどこまで違うのかはわからないんだけど……。

いや、そもそも子校に伝わっているジンクスって一なんなんだろうか。そんなものなくても、正直に想いを伝えればいいだけなんだけどな。と、僕は思うんだけど……。

僕は、香奈姉ちゃんのパンツを渋々け取った。

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