《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第四話・3
結局、いつものメンバーが僕の部屋に集まってしまったか。
テスト期間中とはいえ、各々が一人で勉強するのには無理があったのかな。
だけど僕の部屋で勉強會をするのには、しだけ抵抗がある。
何故なら、テスト期間中に男の部屋をがされする行為は絶対にしないだろうと思っていたのだ。
ところが奈緒さんは、周囲を見回して僕に訊いてくる。
「ねぇ、楓君。この間渡したアレはどこにあるのかな?」
「え? アレって? 一何のことですか?」
そんな事をいきなり言われても、當然、何のことだか僕にはわからない。いや、何のヒントもなくアレって言われてわかるわけがないだろう。
「わかってるくせに」
それでも奈緒さんは、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
それに対して、過剰に反応したのが沙さんだ。
「なになに? 何があるの?」
沙さんは、興味津々といった態度で奈緒さんに訊いていた。
奈緒さんは、沙さんにもわかりやすいように説明する。
「楓君の部屋の中には、とっても大切なものがあるってことだよ」
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「大切なものって……。そう言われても、全然想像がつかないんだけど……。一何のことなの?」
まぁ、“大切なもの”って言われても、わかるわけがないよな。ヒントもないわけだし。
香奈姉ちゃんの方はというと、微妙な表を浮かべて奈緒さんを見ている。
その顔は、アレがなんなのかを悟った表だ。
何か言いたいんだけど、香奈姉ちゃん自も同じことをした手前、言い出しにくいんだと思う。
「沙にも、子校に伝わってるジンクスくらいはわかるでしょ?」
「子校に伝わってるジンクスってまさか……。伝説とさえなってる、あのジンクスのこと?」
沙さんは、だんだんと顔を赤くして聞き返していた。
その反応を見る限りだと、何のことなのかは理解したらしい。
かくいう僕も、ジンクスという言葉で、奈緒さんの言うアレが何なのかを理解したのだが。
子校のジンクスを聞くってことは、奈緒さんが何を探しているのかは、すぐにわかることだ。
「沙が思っているとおりだよ」
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「えええーー ︎ …もしかして、好きな人に告白するときに渡すって言われてるの子のパン──」
沙さんは、恥に顔を真っ赤にする。
「ちょっと待ってよ。いくら好きな人に告白するからって、そんなものを渡すだなんて不真面目のいいところだよ」
と、理恵さんが言う。彼もまた、恥に顔を真っ赤にしていたが、それでもまだ、理知的な反応ができるみたいだった。
さすがにの子のパンツを男子に渡すなんて行為は、あり得ないと言った態度だ。
奈緒さんは、先にそれをやってしまった経緯があるからか、理恵さんを見て不思議そうな顔をする。
「…そうかな。あたしは、しだけわかるような気がするけど」
「何でわかるのかな?」
「う~ん……。斷言は出來ないんだけど、告白した男子には、浮気してほしくないっていうか。他の子を好きになってほしくなくて、自分だけを見てほしいという気持ちが出てくるんじゃないかと思うんだよね。だからその、告白時にアレを好きな人に渡すっていうジンクスが生まれたんじゃないかと思うんだ」
「それは、わかるけど……。その……アレを好きな人に渡すのは、わたしにはし抵抗があるかも……」
理恵さんは、穿いているスカートの裾を摑み、そう言う。
「うん。それは、私にも無理かもしれないなぁ……。さすがに恥ずかしいしさ」
同じ想だったのか、沙さんもそう答える。
まぁ、穿いているパンツを男の子に渡す行為自、躊躇うのは普通のの子の反応だ。パンツをいだら、普通にノーパンになるわけだし。
「そうかな? 私なんて、何も躊躇うことなく渡せるよ」
と、香奈姉ちゃん。パンツを僕に手渡すことなど何とも思ってないのか、恥ずかしげもなく言い切る。
香奈姉ちゃんのその反応を何となく察していたのか、沙さんが言った。
「そりゃあ、香奈ならね。他の男子ならともかく、楓君に渡すんなら、何も躊躇うことはないでしょうね」
「ちょっと! それって、どういう意味?」
「香奈は、意中の相手に対する好意が前面に出ているから、わかりやすいのよ」
たしかに沙さんの言うとおり、香奈姉ちゃんは、そういうところはわかりやすいけど。
「ほら、沙にも言われたね。あたしも同じことを言おうと思ってたんだよね」
「そんなこと……。奈緒ちゃんだって、人のことは言えないじゃない」
「ん? 何のこと?」
奈緒さんは、よくわからないと言いたげな表を浮かべて首を傾げる。
あくまでもシラを切るつもりらしい。
そんな奈緒さんを見て、香奈姉ちゃんはすっかりむくれてしまい
「惚けたって無駄なんだからね。…奈緒ちゃんは、弟くんにその……アレを渡して告白したでしょ」
「うん。たしかにアレを渡して告白はしたよ。香奈には負けたくはないからね」
「私だって、負けるつもりはないんだからね」
香奈姉ちゃんのその言葉に反応したのは、沙さんだった。
「ええ ︎ 奈緒ちゃんが、楓君に告白 ︎ しかもパンツを渡して ︎ …それって、いつの事なのよ?」
「え。いつの事って言われても……」
奈緒さんは、そう言って僕の顔を見る。
僕の顔を見ても、あの時の事は言わないよ。
「あれだけには興味ないって言ってた奈緒ちゃんが、そんな大膽な事するなんて……」
と、理恵さんが呆然となる。
奈緒さんの格からして、それは予想外のことなんだろう。
「…いや。あたしだって、の一つくらいはしてみたいよ」
「この間の男の子は、どうだったの?」
「誰のこと?」
奈緒さんは、怪訝そうな表を浮かべる。
「奈緒ちゃんのことをしつこくつきまとっていた男の子だよ」
「あの時の彼のことだね」
奈緒さんは、香奈姉ちゃんに言われて誰のことかすぐに思い出したらしい。
「そうそう。その時の男の子だよ。その人とは付き合おうとか思わなかったの?」
「その男の子は、あたしとは好みが違う気がしてさ。合わなそうだったから、最初からお斷りしていたんだよね。それに、あの男の子は好きだから付き合おうとか言うんじゃなくて、別の理由もありそうだったし……」
「別の理由?」
「うん。言っちゃ悪いんだろうけど、自分の世間とかプライドを保ちたくて、というのが見え見えだったんだよね。ハッキリ言って、そんなのは、あたしにとっては迷なだけだしさ」
「の子は、純粋にをしたいだけなんだよね。だから、そんなくだらない理由で付き合わされたんじゃ、たしかに迷だよね」
沙さんは、憤慨した様子で言う。
「そうだね。本命がいる子にとっては、ホント迷な話だよね。は、の子全員の憧れなんだし」
か……。男の僕が聞いていても、実がないなぁ。
そもそも、男の僕がこんな事聞いていてもいいのかな?
そう思いながら奈緒さんを見ていると、奈緒さんは微笑を浮かべて
「…それで楓君は、あたしのアレをどこに仕舞ったのかな?」
と、再度聞いてきた。
「え……。いや、あの…その……」
言うまでもなく僕は、口籠ってしまう。
奈緒さんのパンツの隠し場所(仕舞ってある場所)を訊かれても、みんなのいる前で言えるわけがない。
「そんなに難しい質問かな?」
「アレって言われても、みんなの前で言うのはその……」
「そっか。…そりゃ、そうだよね。あたしの大事なアレだから、答えづらいのは當然か……」
「私は、弟くんがアレをどこに隠してるのか、知ってるよ」
「え……。香奈は、知ってるの?」
「もちろん! 何年、弟くんと馴染をやってると思ってるのよ。弟くんの考えることくらい、簡単にわかるんだから」
「ちょっ…… ︎ 香奈姉ちゃん!」
「私と奈緒ちゃんのパンツは、この中にあるに違いないよ!」
僕の制止を聞かずに、香奈姉ちゃんは真っ直ぐに部屋の押しれを指差した。
──殘念ながらハズレです。
そんなところを探しても、出てくるのは音楽関係の雑誌や機材などだ。
香奈姉ちゃんは、僕の許可などお構いなしに押れの戸を開け、中をしだす。
「いや、さすがに人の家の押しれをガサれするのは、どうかと……」
沙さんにそう言われたが、香奈姉ちゃんはやめるつもりはなく。
「平気だよ。弟くんの部屋だし」
そう言って押しれをガサガサと漁り始める。
こうなると、誰が何を言っても無駄である。
「何かあった?」
僕は、思案げな表でそう訊いてみた。
すると、香奈姉ちゃんは不満そうな顔をして僕を見てくる。
「何もないじゃない! 私と奈緒ちゃんのパンツはどこにあるのよ!」
「そんなこと言われても教えることはできないよ……。あれって、他の人に見せるようなものじゃないし」
「たしかにそうだけど……。だけど、私や奈緒ちゃんのパンツは持ってるんでしょ?」
「うん、持ってるよ。さすがに、どこに仕舞ってあるかまでは言えないけど……」
「そっかそっか。大事にはしてるんだね」
「そりゃ、香奈姉ちゃんと奈緒さんのパンツだし。…雑に扱うことはできないよ」
「そっか。ありがとうね」
僕の言葉が嬉しかったのか、奈緒さんは微笑を浮かべていた。
そんな嬉しそうな顔されても、僕は恥ずかしいだけなんだけど……。
母に見つからないようにするのも大変だし。
「ふーん。なるほどね。香奈ちゃんと奈緒ちゃんのパンツは大事に持ってるんだ」
と、沙さん。
とても不機嫌そうな顔をして、僕にずいっと迫ってくる。
「いや……。えっと……。その……」
僕は、思わず沙さんから向けてくる視線を逸らしてしまう。
沙さんは、そんな僕の態度が気にらなかったらしい。
「私からのいは斷ったくせに、奈緒ちゃんのいには乗ってしまうんだ。楓君にも、好みのの子がいるってわけか」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
「それなら、私にも考えがあるよ」
もはや僕の話など聞いていないのか、沙さんは自分のスカートの中に手をれ、中でごそごそとし始めた。
しかし、何かをする前に僕は、これからやろうとしている沙さんの兇行を止める。
「──沙先輩。何をするつもりなんですか?」
「決まっているでしょ。楓君に、私のパンツを渡そうと思って──」
「ちょっと、待ってくださいよ。さっきまで男の子にパンツを渡すのは、恥ずかしいって言ってたじゃないですか。…いまさら、撤回するんですか?」
「撤回するつもりはないよ。…やっぱり、他の男の子にられただけで、拒絶反応を起こすし……。でも、楓君ならいいかなって思ってさ」
「お願いだから、僕にパンツを渡そうとするのは勘弁してください。母にバレると々大変なんで……」
僕は、ため息混じりにそう言った。
「それなら、見つからないような場所に隠せばいいじゃん」
「いや……。さすがにの子のパンツを3枚以上持つのは完全に変態になるから、それだけは勘弁してください」
「変態なんてことはないよ。の子のパンツを複數枚持ってるってことは、それだけの子たちから好意を向けられてるってことだよ。むしろモテてるってことを自覚してほしいくらいだよ」
「そうだね。むしろ本命だと思ってもらってもいいかもね」
「それじゃ、奈緒さんや香奈姉ちゃんのパンツは……」
「うん。なくとも、バレンタインの本命チョコと同じくらいの意味があると思っていいよ」
奈緒さんならともかく、香奈姉ちゃんがそう言うか。
僕は、ふいにパンツを渡された時のことを思い出してしまう。
奈緒さんも、バレンタインに本命チョコを渡すような気持ちでパンツを渡してきていたってことなのかな。…てことは、沙さんもそれと同じ気持ちで僕に渡そうとしてきてるのか。
現に今、沙さんは目の前でパンツをぎだしたし。
それを見て、赤面している理恵さんがいた。
沙さんは頬を赤くして、穿いていた白のパンツを僕の目の前にチラつかせ、意味深な笑みを浮かべる。
「ほらほら、私のパンツだよ。しくないのかな?」
「いりません! はやくそれを穿いてください」
僕は顔を背けて、け取ることを拒否した。
すると沙さんは、ずいっと僕に詰め寄る。
「そんな強がっちゃって。楓君ったら、可いんだから」
「そうだよ。の子のパンツは、素直にけ取らなきゃダメだよ」
と、香奈姉ちゃんは、沙さんの行を助長するように言う。
「こんな破廉恥なこと、ホントはしたくないんだけど、沙ちゃんがそうするならわたしも……」
傍にいた理恵さんも、僕に詰め寄って恥ずかしそうにパンツをぎだす。そして、パンツを僕の目の前にチラつかせた。
「いや……。理恵先輩は、そんなことしなくても──」
「楓君は、黙ってあたしたちのパンツをけ取るしかないね」
「私たちの好意がどれだけのものなのか、これでわかったでしょ? 弟くんが思っているよりも簡単なものなんかじゃないんだからね」
目の前で困り果てているのに、そんなこと言うのかこの2人は──。奈緒さんも香奈姉ちゃんも、のライバルが現れたというのになんだか嬉しそうだ。
──まったく。テスト勉強はどうするつもりなんだか。
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