《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第四話・4
やっと一人で勉強できる。
そう思い機に向かって勉強しだしたのは、みんなが帰って夕飯を食べた後のことだった。
言うまでもないことだけど、沙さんと理恵さんは替えの下著があったみたいで、しっかりと穿いて帰っていったみたいだ。香奈姉ちゃんから聞いた話だから確かなことなんだろう。よくわからないが。子校に伝わってるジンクスだからなんとも言えないけれど、僕からしたらいい迷だ。母に見つかったら、なんて言われるかわかったもんじゃないし。
香奈姉ちゃんならともかく、なんで奈緒さんや沙さん、理恵さんまで僕に好意を向けてくるんだろうか。僕に好意を向けられても、どんな風に応えればいいのかわからないのに……。
「考えてもしょうがないか……。今はテスト期間中だし、集中しないと」
そう言って、僕はパンツを機の引き出しの中に仕舞い込み、勉強をやり始める。すると僕のスマホから著信がった。
「…ん? 誰だ?」
僕は、近くに置いてあったスマホを手に取り、中を確認する。
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それは、香奈姉ちゃんからだった。
僕は、すぐに電話に出る。
「はい、もしもし」
『あ、弟くん』
「どうしたの? 香奈姉ちゃん」
『今から、そっち行っていいかな?』
「…え。別に構わないけど……。どうしたの?」
『ちょっと、弟くんに話があってね。…いいかな?』
メールではなく通話で連絡をとってくるあたり、よほどの事があるんだろうな。
「いいよ。特に出かける予定もないから」
『それじゃ、すぐにそっちに行くね』
そう言うと香奈姉ちゃんは、通話を切る。
結局、これから來るのか。
こんな時間に香奈姉ちゃんが來ると、絶対にロクなことがないんだよなぁ。
なんかすごく嫌な予がする。
せめて部屋の中の後片付けをしておくか。
理恵さんと沙さんから渡されたパンツのこともあるし。
僕は、ベッドの上に置いていた二人のパンツを鍵のかかった機の引き出しの中にれた。
香奈姉ちゃんとの通話後、しばらくしないうちに家の呼び鈴がなった。
僕は、すぐに玄関に向かいドアを開けた。
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誰なのかは、確認しなくてもすぐにわかる。
玄関先には香奈姉ちゃんがいた。
「やぁ、弟くん」
「どうしたの? 香奈姉ちゃん。話って一何なの?」
「ここだと何かアレだから、弟くんの部屋でもいいかな?」
「え? 僕の部屋?」
「ダメかな?」
「ダメってことはないけど……」
「何か不都合なこととかあるの?」
「いや……。特にないけど」
「それなら、別にいいよね?」
ここでは話せない容なのか。
一何だろう。
「…どうぞ」
仕方がないので、僕は香奈姉ちゃんを家の中にれてあげる。
本當は居間に案する予定だったんだけど、僕の部屋に行きたいって言うんだからしょうがない。僕は、香奈姉ちゃんを連れて真っ直ぐ自分の部屋に向かっていく。
僕の部屋に到著すると、香奈姉ちゃんは僕のベッドに座り軽くびをする。
「ふ~。やっぱり弟くんの部屋が一番落ち著くなぁ」
「僕の部屋に來るなり、リラックスしないでよ」
「しくらい、いいじゃない。それとも、こんな時間に私が來たらまずかったかな?」
「いや……。別にまずくはないけど……」
僕は、そう言って本能的に機の引き出しを見やる。
そこに香奈姉ちゃんたちのパンツがある事を見抜いたんだろう。
香奈姉ちゃんは、僕の視線の先にある機の引き出しを見てニヤリと笑みを浮かべる。
「それじゃ、私が來ても別に問題ないよね」
「う、うん。もちろんだよ」
僕は、心焦りながらそう言っていた。
その笑みは、別の意味で恐いからやめてください。
鍵がかかってるからまだいいけど、機の引き出しの中をがされされたら、僕はおしまいです。
「──それで、話って何なの?」
僕は、ベッドの上でリラックスしている香奈姉ちゃんにそう訊いていた。
香奈姉ちゃんは、機を指差して聞き返してくる。
「その中にってるの?」
「何が?」
「私たちのパンツだよ。弟くんに“あげた”よね?」
「“あげた”って……。貰った覚えはないんだけど……」
「ううん。私たちが把握している意味では、たしかに弟くんにパンツを“あげた”んだよ」
「もしかして、香奈姉ちゃんが言ってた“話”って、その事なの?」
「いや、そうじゃないけど。ほかにどんな話があると思ったの?」
「いや……。例えば、勉強を教えてくれるとか──。そんな話で來たのかなぁ…て……」
「まぁ、そうね。一つだけ言うことを聞いてくれるなら、教えてあげない事はないけど」
「それなら、はやく言ってよ。僕にできることなら、やってみるからさ」
その言葉がそもそもの間違いだった。
昔から安請負いするものじゃないって言うけど、香奈姉ちゃん相手だと、どうにも斷れる気がしないのだ。
「それなら、私を抱きしめてキスをしてよ」
「ごめん、無理です……」
「即答で答えるかな、普通……」
香奈姉ちゃんは、落ち込んだ様子で言う。
さすがに事には順序っていうものがある。
「いきなりそんな事言われても、無理だよ。…そもそも、なんで香奈姉ちゃんを抱きしめてキスしないといけないの? いきなりすぎない?」
そりゃ、本心で言ったらそうしたいけど……。
「人同士なら、普通にできると思うんだけどな。拒否するってことは、やっぱり他に好きなの子がいるって事なのかな?」
「そ、それは……いないけど……」
「いないなら、私にキスくらいできるんじゃないの?」
「それとこれとは、話が違うよ。事には順序っていうものもあるしさ。香奈姉ちゃんの言ってた話ってそれなの?」
なかなか本題にらないので、僕は香奈姉ちゃんを押し倒す勢いで詰め寄った。
香奈姉ちゃんは、僕のいに乗ったのか、そのままベッドの上に橫になり、無防備な狀態になる。
「ううん、違うよ。私がしたかった話はね。テストが終わった後の文化祭の事なの」
「文化祭って、子校の文化祭の事かな?」
「そうそう。子校の文化祭の事だよ。男の子が子校にる時って、場券が必要になるでしょ?」
「子校にるわけだからね。それは、どうしても必要になるよね」
ちなみに男子校にる時は、場券なんてものは必要ないけど。
「うん。そこで本題なんだけど、その場券を弟くんにあげようと思ってね」
香奈姉ちゃんは、一枚のチケットをスカートのポケットから取り出した。
それが場券なのは言うまでもない。
テスト前のこの時期から、もう場券を発行して子生徒たちに渡しているのか學校側は……。ずいぶんと手が早いな。文化祭まで、まだ期間があるというのに──
「たしか場券って、一人の生徒につき一枚だけ渡されるっていう特別なものじゃなかったっけ?」
「うん、そうだよ」
「そんな大切なものを僕が貰ってもいいの?」
「全然構わないよ。むしろ弟くんに貰ってほしいくらいだよ」
「たしか文化祭は、テストが終わった後だったよね?」
「うん。まだ早い気もするんだけど一応ね。奈緒ちゃんや沙ちゃんから先に渡されたら、なにかと面倒だしね」
香奈姉ちゃんは、そう言って苦笑いをする。
たしかに、このままだと奈緒さんや沙さんあたりからも場券を渡されそうなじだ。
「そうだね。それじゃ遠慮なく貰っておくよ」
僕は、そう言って場券をけ取った。
ここで場券をけ取っとかないと、香奈姉ちゃんも不機嫌になりかねないし。
それに文化祭前に場券をけ取った男子は、いかなる理由であろうと文化祭に行かなければならないのだ。
場券を渡すという行為自が、そのの子からの告白と同じ効果を持っているからである。
一年生の僕がなぜこんな事知ってるのかというと、兄から聞いたからだ。
「よし。これで私の話は終わったよ。ここからは、さっきの続きをしよっか」
「さっきの続きって?」
「こういう事だよ」
香奈姉ちゃんはそのまま僕を抱き寄せて、キスをしてきた。
その後は、もう無防備かっていうくらいなんの抵抗なくをらせてくる。
僕は、本能的に香奈姉ちゃんの膨よかなに手をやってし弄るがすぐに理を取り戻してるのをやめ、その手を離した。
さすがに、それはまだ早い。
香奈姉ちゃんは、僕の気持ちがわかっているのかいないのか、僕のその手を握ってきて、をらせてくる。
僕はすぐに起き上がり、橫になったままの香奈姉ちゃんを見下ろした。
「香奈姉ちゃん。気持ちはその……本當に嬉しいんだけど、今はテスト勉強をしないと……」
「私とキスをするのは嫌なの?」
そう訊いてきた香奈姉ちゃんの頬が紅している。ドキドキしているのか、息もしだけ荒い。
僕は、ゆっくりと手を離す。
その手には、まだ香奈姉ちゃんののが殘っていて、再びりたいという気持ちになったが、ギュッと握り拳をつくり我慢した。
「全然嫌じゃないよ。…でも今は、テスト期間中だしさ。自重しないと」
「わかったよ、もう……。仕方ないなぁ」
香奈姉ちゃんは、そう言って微苦笑する。そして、すぐにベッドから起き上がり
「──それで、どこがわからないの?」
そう言ってきた。
その時にれた服も、すぐに直す。
僕は、機に置いてあったページを開いたままの教科書を手に取り、それを香奈姉ちゃんに見せる。
「この問題なんだけど、どうしても解けなくて……。香奈姉ちゃん、わかるかな?」
「ん~。どれどれ──」
香奈姉ちゃんは、教科書を手に取ると、僕が指し示した問題に目を通す。
難しそうな表を浮かべてないので、僕が見せた問題なんかも、簡単にわかってしまうんだろうな。
案の定、香奈姉ちゃんは、僕に答えではなく解き方を教えてくれた。
「これはね。こうすれば、簡単に解けるよ」
「なるほど……」
僕は、すぐに香奈姉ちゃんが教えてくれた解き方をノートに書いていく。
香奈姉ちゃんは、間髪れず次の問題を見て
「弟くん、この問題は?」
と、言ってくる。
そこから先はテスト範囲外の問題だったので、僕は靜かに首を振る。
「そこは、今のところいいんだ……。そこは、まだ教えられていないし」
「そっか。…殘念」
そうは言ったものの、香奈姉ちゃんは殘念そうな表をしておらず、むしろ笑顔を浮かべていた。
「なんで笑顔を浮かべているの?」
「弟くんって、意外と積極的なんだなって思ってね」
「それって……」
「やっぱり、私とスキンシップははかりたいんだなって」
「っ……!」
香奈姉ちゃんのその言葉に、僕は赤面してしまう。
「その顔はやっぱり図星かな? ホントは私とエッチな事をしたいんでしょ?」
「それは……。したくないって言えば噓になるっていうか……」
あんな無防備な格好されたら、誰だってそうなるって……。
「そうだよね。弟くんも、男の子だからね。そうしたいのは、よくわかるよ。私も、弟くんともうしスキンシップをはかりたいし」
「え……」
僕は、香奈姉ちゃんの言葉に唖然となってしまう。
よく見れば、香奈姉ちゃんの方はまだ足りなかったのか、どこか求不満そうだった。
「…見てわからないかな。キスだけじゃ足りないって言ってるんだよ」
「いや……。これ以上はさすがにまずいと思うよ……」
「わかってるよ。今は自重しないといけないよね。でも……」
「香奈姉ちゃん……」
僕は、もぞもぞしている香奈姉ちゃんを見る。
もっとスキンシップがしたい気持ちはわかるんだけど、これ以上は、付き合っているとか人同士とかの次元を超えているような気がするからやめておく。
香奈姉ちゃんは、僕の教科書を持ち、何かをおねだりするような面持ちでこちらを見ていた。
「…それで、弟くんは今、何がしたいのかな?」
「何がしたいって言われてもなぁ。テスト期間中だから、真面目に勉強したいかな」
「そっか。それじゃ、勉強しないといけないね」
「香奈姉ちゃんは、いいの?」
「ん? 何が?」
「勉強しなくて大丈夫なの?」
「私は、予習復習は済ませているから大丈夫だよ。それに──」
「それに?」
「──それに、テスト期間中は弟くんと一緒にいる時間がないからね。しでも多く弟くんとスキンシップをはかって、充電しておかないと」
そう言って、香奈姉ちゃんは僕に抱きついてくる。
「わっ! ちょっと……。香奈姉ちゃん!」
はっきり言って、これはもう勉強どころじゃない。
香奈姉ちゃんが帰るまでは、我慢するしかないみたいだ。
僕は、思わず両手をホールドアップして抱きついてきた香奈姉ちゃんを見下ろしていた。
「──充電完了っと」
しばらくして、香奈姉ちゃんは笑顔でそう言う。
ストレスでも溜まっていたんだろうか。
「香奈姉ちゃん。一何を……」
「ん? なんでもないよ。ただ弟くんに抱きついて充電しただけだよ。…ダメだったかな?」
「いや、ダメなことはないけど。いきなりそんなことされたら、びっくりしちゃうから──」
「そうなの? いきなりごめんね。こっちもわけありでね」
「そうなんだ」
「聞きたい?」
「いや、別に……」
僕は、本當は何があったのか聞きたかったが、聞くのをやめた。
香奈姉ちゃんの事に僕が立ちるのは、どうかと思ったからだ。こうして香奈姉ちゃんが來てくれるだけでも、ありがたいし。
だから、敢えて聞かないことにしよう。
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