《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第四話・7
僕の部屋に著くと、香奈姉ちゃんはいつもどおりに適當に床に座った。それにならってか、奈緒さんも香奈姉ちゃんの隣に座る。
男の部屋っていうのは基本的に何もない。これがオタクならの子のフィギュアや漫畫などがあるらしいんだけど、僕はそうじゃないから、そんなものがあるわけもない。
あって、音楽関係の雑誌くらいだ。
「ふぅ。…やっぱり弟くんの部屋が一番落ち著くなぁ」
「そうだね。男の子の部屋にって、ここまで落ち著けるなんてことは、今までなかったな。…あたしも初めてだよ」
香奈姉ちゃんと奈緒さんは、軽くびをしてそう言う。
いいのかな。男の部屋でそんなリラックスして。しかも、そんな無防備な格好で……。
これって、ほかの男子たちに見られたら、非常にまずいんじゃないだろうか。考えただけでもおそろしい。
「そういえば奈緒ちゃんは、今まで彼氏とかもいたことはなかったよね?」
「ちょっと引っかかる言い方だけど。まぁ、そうだね。あの時は、あまり興味もなかったしね」
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「それじゃ、今は違うってことかな。やっぱり弟くんには、興味ありっていうことなんだね」
「興味がなかったら、楓君にあんなものを渡したりしないよ。香奈だって、そうでしょ?」
「當たり前だよ。弟くんは、私の“弟くん”なんだから──」
「あたしだって、こういう事で負けたくないし。だから、あたしはこうするんだよ」
そう言うと奈緒さんは立ち上がり、僕に近寄ってきて手を握ってきた。
「あ、奈緒ちゃん、ずるい。私も──」
香奈姉ちゃんも、奈緒さんに遅れないように立ち上がり、もう片方の僕の手を握ってくる。
二人は、お互いに顔を見合わせると一度頷き、僕の方に向き直る。
ん? どうしたんだろう。何かあったのかな?
そう考えていると、二人は笑顔で僕の手を引き、近くにあった機の椅子に座らされる。
その後、二人は僕が逃げられないように進路を塞いだ。
え……。何、この狀況。見る人が見たら、確実に勘違いされそうなじなんだけど……。
「あの……。二人とも一、どうしたの? なんかいつもと違うような気がするんだけど……」
「ん? あたしはいつもどおりだけど」
「私も普段通りだけど、どこが違うのかな?」
奈緒さんと香奈姉ちゃんの二人は、ずいっと僕に近寄ってくる。
「何というか、その……。斷言はできないんだけど。二人とも、何を考えているのかわからないから、すごく恐いんだよね」
「何を考えているのかわからないって……。あたしは楓君のことを純粋に──」
「弟くんはさ。きっと隆一さんの事で、自分のに臆病になってるんだと思うんだけど、違うかな?」
「それは……」
完全に否定できない僕自がそこにいて、言葉を詰まらせてしまう。
香奈姉ちゃんが言った人の事が原因になってるっていうのは、たしかにある。
「隆一さん? …誰の事?」
と、奈緒さんは、誰のことかわからず思案げに首を傾げていた。
香奈姉ちゃんは、すぐに
「弟くんのお兄さんのことだよ。何をやらせても優秀でね。なんでも卒なくこなす完璧超人なんだ」
そう言って、苦笑いをする。
まぁ、事実なんだから、そこは認めなきゃいけないんだろうけど。やっぱり、僕的には納得できないかな。
奈緒さんは、すぐに理解したのか僕を見て言う。
「なるほどね。そんな完璧超人の兄を持ったら、弟の立場は無いってことだよね」
「完璧超人って言っても、すべてのことがまんべんなくできるってほどじゃないんだ」
「何か欠點でもあるの?」
「兄貴は料理の腕前だけは殺人級で、全然ダメなんだ」
僕は、微苦笑する。
兄貴は料理だけは苦手で、どんなものを作っても壊滅的に不味い。
本人もそれは自覚しているのか、兄は料理をしない。いつも母か僕が作ったものを食べている。
まぁ、兄ができないのは料理くらいで、それ以外には特に苦手なものはないから、完璧超人って言われても遜はないだろう。
「まぁ、男の人の場合は料理が苦手なくらいなら、短所にはならないもんね。それにしても料理なんて、なかなかできることじゃないから、弟くんはすごいと思うよ」
「そうかな? 趣味程度にやってるだけなんだけど……。そう言われると恥ずかしいよ」
「楓君って、料理できるの?」
奈緒さんは、なんだか意外っていうような顔をして訊いてきた。
僕は、恥ずかしそうな顔で答える。
「うん、料理はできるよ。ホントに趣味程度に…なんだけどね」
「趣味程度ってことはないんじゃない? 弟くんの手料理。私のより味しいもん」
「そうかな? 香奈姉ちゃんの料理に比べたら、全然ダメなんだけどね」
「何言ってるの。料理は弟くんから教えてもらったんだから、そこは自信を持っていいんじゃないかな」
「まぁ、料理くらいならね。多、自信はあるけど……」
ホントに趣味程度にやるくらいなんだけどな。
そこまで言われると、引っ込みがつかなくなっちゃうよ。
「それなら、卑屈になることもないんじゃないかな。弟くんは、なんでも隆一さんと比べちゃうから、自分の良さに気づいていないんだよ。それさえなければ、私も問題なく弟くんのことを好きになっちゃうんだけど」
「そうかな?」
「そうだよ。私は、隆一さんと弟くんのどっちかを選べって言われたら、迷う事なく弟くんを選ぶよ」
「え? 僕を……。いや、僕なんか選んでくれたって、何もいい事ないって……」
「そんなことないよ。弟くんは、隆一さんにはない良さがあるんだよ」
「うんうん。楓君のお兄さんのことはよくわからないけど、楓君にも、良いところはあると思うよ」
「そうなの? あまり実はないんだけどな」
僕は、困ったような表を浮かべ、頭をガリガリと掻く。
僕の良いところって言ったって、自分ではなかなか見つけられないし……。
「…そこだよ」
「え?」
「そういう見栄を張らないところとか、弟くんの良いところでもあるんだよ!」
「そういうものなの?」
「そういうものよ。普通の男の子は、の子に良いところを見せようとちょっとだけ見栄を張ってしまうものなんだよ。だけど、弟くんにはそれがない。──私には、それが一番いいことなんだ」
「どうして?」
「だって、その人の自然の姿が見れるから、どういう人なのかわかりやすいでしょ。かえって、見栄をはる人と付き合うのは疲れてくるし、なにより私が嫌なのよ……」
香奈姉ちゃんの言い分だと、何かしら取り繕う男より、自然の人との際がいいようだ。
たしかに裏表のない人間のほうが、付き合うのにはちょうどいい。
奈緒さんもそれは同だったようで
「…たしかに。あたしも見栄を張る人と付き合うのは嫌だな。だけど楓君となら、全然オッケーだよ」
そう言って、僕に迫ってきた。
「ちょっ…… ︎ 奈緒さん」
さすがの僕も、そればかりは勘弁してほしいと思い、後ずさる。
気がつけば僕の後ろにあったのはベッドで、奈緒さんと香奈姉ちゃんにそこまで迫られていた。
僕は、どうしたらいいものかと思案する。
すると──
ピンポーン。
家の呼び鈴が鳴った。
「あ……。お客さんだ。誰だろう?」
「この絶好のチャンスの時に……」
奈緒さんは、チッと舌打ちする。
「誰だろうね。とりあえず出てみたら?」
「う、うん。行ってみるよ」
ナイスタイミングと思いながらも、僕は二人をその場に殘して部屋を後にし、玄関の方へと向かっていく。
「どちら様ですか?」
誰だろうかと思いつつ、玄関のドアを開けた。
この時、なんでなんの迷いもなく玄関のドアを開けたのかいまだにわからない。
そこにいたのは、沙さんと理恵さんだった。
「やぁ、楓君」
「こんにちは、楓君」
「二人ともどうしたんですか? 今日は、練習はないはずだけど……」
僕は、そう言って思案げな表になる。
そうなるのも當然な話で、沙さんと理恵さんはまだ家に帰っていないのか制服姿なのだ。
目の付け所がいいのか、沙さんは玄関先にある靴を見てフムフムと頷いていた。
「なるほどね。香奈ちゃんと奈緒ちゃんの二人は、ここにいるみたいだね」
「ちょっと、沙先輩。どこ見て言ってるんですか?」
僕は、玄関先に置いてある二人の靴をちらりと見て、そう言った。
そのことには理恵さんも興味あったようだ。
「二人とも、ここに來てるんだね」
「あ、いや、その……」
「別に無理して隠さなくてもいいのに」
「別に隠してるわけじゃなくてですね。今日の予定がっていて、その……」
僕は、なんて言っていいのかわからず困った表を浮かべて、沙さんを見る。
「そんな顔しないの。私たちもバイトくらいはしてるから、ちゃんとわかっているよ」
「し、お邪魔するだけだよ」
「沙先輩、理恵先輩……」
「…というわけで、いいかな?」
「え? 何が?」
「お邪魔してもいいかな? …てか、奈緒ちゃんと香奈ちゃんが來てるんなら、勝手にお邪魔させてもらうけどさ」
沙さんはそう言うと、ズカズカと僕の家の中にっていく。
「あ、沙先輩」
「わたしも、お邪魔させてもらうね」
「え、ちょっと……」
僕が制止するのも聞かずに、理恵さんも家の中にっていった。
まぁ、るなとは一言も言ってないし。はじめから招きれるつもりだったからいいんだけどさ。
僕は、軽く息を吐き二人を見屆けた後、玄関のドアを閉めた。
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