《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》
「……結局、あの男はただ使われてただけの下っ端だったのね」
「そこから先にも繋がらなかったし、あの薬草も大した効果はなかったという報告をけているわ」
メイヤが持ち帰った警備隊からの報告を、アーテリア、エレーナ、オリーブ、ハルナで聞いていた。
あれから一週間経つが、コボルトも毎日行なっている森の捜索では出會すことはなかった。
森の侵食については、結局食い止めることは出來ずその周辺を焼き払うことで侵食は止める事ができた。
最終的な被害は、十數平方メートルに及んだ。
町の方では今も報収集を行っているが、有益な報はなかった。
――コンコン
アーテリアはメイドに部屋の室を許可する。
「失禮します。王國より連絡がございまして、本日討伐隊がラヴィーネに到著するとのことです」
「わかったわ、ありがとう。それじゃあ、関所近くの宿舎にご案するように手配を」
「畏まりました」
マイヤはお辭儀をし、討伐隊を迎えれる準備を始めに行った。
「見つかるかなぁ……インプ」
ハルナは心配そうにエレーナの顔を見る。
「どうかしらね。こればっかりは蓋を開けてみないとなんとも言えないわね」
そして、討伐隊は到著しその翌日から四人1組で五隊の討伐隊で森の中を探索していく。
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編は、剣士と霊使い二名ずつで、うち霊使いの一人は火屬。
アンデットに遭遇したことも報告してあるので、その対策でもある。
併せて、アンデットは瘴気を含む力を使ってくるため森の保護についても、最善の注意を払うようにも依頼してあった。
対象を討伐するのは目的であるが、森が大きなダメージを負うことはなるべく避けたいところだ。
ましてや始まりの場所が機能しなくなった場合は風の町……いや、王國にとっても大きなダメージとなるのだから。
しかし、討伐隊が森にって探索し始めて一週間が過ぎたが、魔らしき生は見當たらなかった。
森を行き來する人々の目には、討伐隊の々しい姿が人々を押さえつけるような印象を持つようにもなった。
次第に町の中でも大きな討伐が行われている事が話題になり、人々の話題にもあがり始めていた。
その中には、悪い噂も流れ始めていた。
『この騒はフリーマス家による自作自演で市民を威圧するのが目的ではないか、ただ王國の目を引き付けたいだけではないのか――』
と。
何のために?という考えは生まれない。
こういう際、多くの人は自分を守ることだけや、かけた疑いを楽しんでいるだけである。
特に悪い噂は、拡散される速度は速い。
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アッという間に町中に広がることとなった。
その噂に対して討伐隊も、疑いを持ち始める。
噓の依頼のために、遠く離れた町まで遠征し時間を使っているのだ。
そうだとすると、隊員の士気も下がるため隊長は直接この町を預かっているフリーマス家に問い質すことにした。
討伐隊の隊長は、アーテリアに質問する。
「その、インプやアンデットを見たというのは本當の報告なのですか? お聞きかもしれませんが、町ではよくない噂が流れているようで……」
「例えば……どのような噂かしら?」
「……大変申し上げにくいのですが……王國の目を引くために、あなた様が噓の依頼を流しているだけではないか……と」
「なるほど。 あなたは王國の兵でありながら、わたくしたちの報告よりも市民の噂を重視されるというわけですね」
「あ!……いや決してそのようなことはないのですが……」
「……わかりました。明日までに何も問題がなければ、捜索は終了していただいて構いません。あと、撤退時には報告書もお願いしますわね。依頼した側としても、王國に報告しなければなりませんので」
「は! 畏まりました、それでは」
――バタン
「……王國の兵も質が落ちたものね。人の噂なんかにわされるなんてね」
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「完全に疑った目で見てたわね、私達のこと」
「確かに、インプは依頼があったのだけどその真偽はハッキリとしなかったものね」
「でも、アンデッドの遭遇は実際に目の前で起きたことなのですから!」
四人は、この狀況に違和と苛立ちを覚える。
危険な存在である討伐対象が見つからないこと。
町の住民の一部がフリーマス家を疑っていること。
噂レベルの話に、信頼すべき王國の兵が疑っていること。
そして、いま特に何もできることがないこと……
しかし、ハルナ達はただ待つしかなかった。
依頼したからには単獨でくわけにもいかず、王國の討伐隊を信頼するべく手を出してはいけないと判斷したのだった。
――コンコン
ドアをノックする音がした。
アーテリアは室を許可する。
「失禮します。お客様がエレーナ様とハルナ様にご面會したいとのことですが、如何いたしましょう」
「その方のお名前は?」
「ソルベティ・マイトレーヤ様と申しております」
「ソルベティが!?こちらに通して!」
「畏まりました」
しばらくすると、メイドが訪問客を連れてきた。
「……ご無沙汰しております、アーテリア様、エレーナ様」
「お元気そうね、ソルベティ。どうしたの急に……何かあったの?」
エレーナは問いかける。
「火の町にも、風の町のよくない噂が屆いてきております。その噂の真偽を確かめるべく、足を運んだ次第なのです。それと……」
「それと?」
ハルナは聲をかけ、ふっとソルベティの腰に下がっているものが目にる。
ソルベティは腰の剣を抜き、それを掲げる。
それはよく磨かれて切れ味もよさそうな剣であることは、覚で分かった。
ソルベティはその剣を見つめながら言った。
「この剣はかつて父が所持していたものでした。父は火の町で警備隊の隊長を務めていました。私はその頃の記憶はないのですが、父はある魔の討伐隊に任命され、近くの森へ魔の住処を追っていたのです」
「……魔って?」
「……コボルトです」
――!!
一同は同時に同じことが頭に浮かんだ。
「その時のことを、たった一人生存された方からお話を聞くことがありました。討伐隊はコボルトの罠にはまり、全滅しかけたところを父は一人で前線に立ち、他の兵を逃がそうと闘していたそうです。最終的には次の隊で仕留めることができたそうですが、父の品は何も見つけることができなかったのです」
「まさか、その剣が……」
「そうです。この柄の紋章と刻まれた名前は”グレイニン・マイトレーヤ”――それが、私の父の名でした」
ソルベティは剣を鞘に仕舞い、ハルナたちに向いて片膝を立てて謝の言葉を告げる。
「この大切な剣を見つけてくださり、謝しております。そしてその恩を返すべく、フリーマス家の危機の力になりたくてやってまいりました」
「お顔をあげてください、ソルベティさん」
アーテリアが聲を掛ける。
「そのお気持ち、謝いたします。ぜひこの子達……エレーナ達に力をお貸しください」
「はい!よろしくお願いいたします!!」
ハルナ達はソルベティの周りに駆け寄り、再開と新しい協力者を喜んだ。
ソルベティは現狀を確認したいとのことで、エレーナ、ハルナ、オリーブたちと森の中を巡回することにした。
今回、アルベルトの代わりにメイヤと、風の町の警備隊から一名同行することになった。
「この森も久しぶりに來たってじね。ほんの一か月くらい前のことなんだけどね」
ソルベティは契約の時の不思議な験を思い出す。
わずかな期間で立派な霊使いと長していた。
そして、顔も知らない父親の唯一の形見が発見されたことにより、ソルベティは霊使いとして一段と強くなっていた。
ソルベティは父親のを知らずに育ってきた。
他の家庭をみて、うらやましく思うこともあった。
――なぜ自分には父親がいないのか
期から寂しい思いをした。
ただ、母親から聞かされていたのは立派な父親の話だった。
自分よりも他の兵士たちの安全を最優先し、時には厳しく時には優しく部下たちを指導していた。
周囲から大変慕われていた父親だった。
しかし、話だけでは父親をじることはできなかった。
実際見た記憶がなかったのだから。
(そんな父親にあってみたい)
ソルベティはずっと思い続けていた。
今回はその父親の生きた痕跡がわかるものを手にれた。
常備していたこの剣である。
人々を守り続けたその剣は、ソルベティの父親が実在していたという証だった。
このことは、ソルベティにとって長年の悩みを晴らすのに十分な出來事であった。
その中で、風の町で起こったフリーマス家の悪い噂。
『今度は私が、エレーナ達を助ける番だ』
ソルベティは直ぐに風の町へ旅立ったのだった。
一向が関所を出て広場を通り森のり口に差し掛かった時、辺りを警戒していたオリーブの視界に見慣れないものが映った。
「――ねぇ、あれは何かしら?」
オリーブはその方向に指を刺す。
森のり口の道から外れたところに人が倒れているのが見えた。
まず、同行している警備隊の一人が駆け付けた。
周囲に問題がないことを確認し、男はエレーナ達を呼んだ。
「この人……確か!?」
「あの不思議な薬草を売っていた行商人ですね」
メイヤが答える。
その様子は腐敗が進んでいるが、服裝はそんなに腐敗していなかった。
首元の損傷が大きく、どうやらを描き切られたらしい。
「……これは、一瞬にしてやられたようですね」
メイヤは腰にショートダガーがそのままの狀態で付いていることにれた。
「それにしても、こんなに腐敗がひどくなるものかしら……ね?」
やはり、今回の一連の流れのうちの一つではないかとエレーナは考えた。
森の草木の浸食、アンデッドの炎が飛び散った際の腐食。
これらは今回の中で、共通している事項のように思えた。
すると森の中から王國の巡回していた討伐隊が表れ、こちらに気付いた。
「どうされました?何かありましたか?」
一人の兵が近寄る。
アーテリアと話しをしていた隊長だった。
「む!?これは……酷い」
死を見て、隊長は口を押える。
「私たちが森の中にろうとした時、発見したのです。既にこのような狀態でした」
「……最初に気付いた方は?」
「私です」
オリーブが一歩前に出る。
「なぜ貴は、ここに死があることに気付いたのですか?」
「え?何故って……周囲を確認するのは基本というか……」
「ちょっと待って。その言い方は、オリーブのことを疑っているのかしら?」
エレーナは靜かに怒りを抑えながら、隊長に向かって問う。
今までの不満が噴出しそうになるのを、必死で堪えながら。
「えぇ。……はっきりと申し上げれば、そういうことです。それと、あなた方がお持ちの武も預からせていただけますでしょうか?」
隊長は片手をあげると、ハルナ達を他の隊員が取り囲む。
「霊使いの方々も、怪しいきをされない方がよろしいと思いますよ」
嫌々ながらも警備隊の男はショートソードと盾を、メイヤはロングソードを、エレーナはいつも持ち歩いている杖を渡した。
ソルベティもこの大切な剣を怪しい人に渡すことを躊躇ったが、腰の剣をベルトから外し剣を鞘から抜けないようにロックして渡した。
更に隊長は、死からショートダガーを取り外した。
「ちょっと、それどうするつもりなの?」
「こちらは、我が隊が預からせていただきます。死については、王國で検証いたします」
「ここは風の町の管理よ。検証はこちらがするはずです!」
「いやいや、フリーマス家は々と隠していることもありそうですし、そちらがやると都合の悪いことは誤魔化すかもしれませんしねぇ」
エレーナは何か言い返そうとしたが、メイヤに発言を制止された。
その行に満足した隊長は、自が優位的立場にあることを実したのか口元に笑みが生じた。
隊長は、ハルナ達の武を回収し一同を森の中にるように指示をした。
森の奧に向かって數分。
どこに連れていかれるのか、見當がつかない。
「私たちをどこへ連れて行くつもりなの?」
「もうしですよ。それまで黙ってついてきてください」
エレーナの背中に剣の先が當てられた。
これ以降発言することが許されないまま、相手のむ場所に到著した。
「……ここは」
最初に森の異変をじて、草木を焼き払った場所だった。
「……ここまで、上手くことが運ぶとは思ってもみませんでしたよ」
――?
ハルナは、この隊長の発言の意味がすぐには理解できなかった。
エレーナ達は、構えながらその先の言葉を待っていた。
「私自はあなた方に何の恨みも無いのですが、この仕事をこなすとしの間遊んで暮らせるだけの報酬がいただけるのでね」
「ひとつだけ聞いても良いかしら?」
メイヤが問う。
「これで最後なんですから、ひとつくらいは答えてあげましょう」
「……これは王家からの指示?」
一同は息を飲んでその答えを待つ。
「いえ、それは違いますね。依頼人は言えませんが、王家からではありません。反対に王家に知られればこの私の首は繋がっていませんからね」
メイヤは、チラリとエレーナを見る。
「……そう。それを聞いて安心したわ。あなたはもういいわ、あとは一生出ることのできない冷たい部屋の中でこの愚かな行為を反省なさい」
「――? 何を言っているんですか?これから貴達が……ぶっ!?」
メイヤは素早いきで、低い勢から隊長の懐にりその顎に向かい掌底を突き上げた。
その衝撃で男のは宙に舞い、無防備な勢で喰らったためけも取れないまま地面に叩きつけられた。
他の兵士もそのきに反応することも出來ず、何が起きたのか理解できず立ち盡くしていた。
エレーナは水で、殘りの兵士達のを縛る。オリーブは尖った石を宙に浮かべ、兵士達を狙い抵抗する意思を奪う。
ハルナは兵達に奪われた武を取り返し、警備兵、エレーナ、メイヤ、ソルベティに渡した。
ソルベティは、け取った大切な剣を抱き締めた。
「……殘念だったわね。私、の方が得意なのよ」
意識なく橫たわっている男に向かい、メイヤは告げた。
「さて、このおバカさんが何か裏のありそうなことを言ってたわね。帰ってゆっくりとお話しを伺おうかしら」
エレーナはそういうと、一緒にいた警備兵に応援を連れて來るように依頼した。
警備兵はこの四人をロープで縛り、きを取れなくして急いで応援を呼びに戻った。
その時――
「ハル姉ちゃん!何か來るよ!?」
フウカがハルナに告げた。
その言葉には、今までにない張があった。
ハルナ達は、それぞれの背中を合わせるように四方を警戒する。
前方の地面が紫に変していくのが見える。
コボルトが作った火の玉よりも濃度の高い瘴気のようだ。
その瘴気は渦を巻き、異次元と繋がり何か生が姿を現わす。
「……あ、あれは!?」
――イ、インプ!!
エレーナは驚きの聲を上げた。
          
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