《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

アイリスはフリーマス家の敷地にある治療室にっている。

極度に疲労しているが、命には問題がないとのことだった。

しかし、もう一つの意味で本當に問題がないかは別のため、ドアの中には警備兵がついて見張っている。

オリーブとソルベティは代で毎日見舞いに訪れた。

同期でもあるため、アイリスのことが心配なのだろう。

次第に顔のが良くなることが、唯一の安心材料だった。

森の中で保護してから5日目のお晝、アイリスはようやく目を覚ました。

――う、うーん

アイリスの顔の表き出した。

「あ……アイリス、大丈夫!? 私のこと分かる?」

アイリスは虛ろな目で、オリーブの顔を見る。そのあと、自分の居る部屋が見知らぬ場所であることに気付いた。

「お、オリーブ…… 私、どうして、ここに?」

「それは、また後で説明するわ。 ちょっと待ってて他の人も呼んでくるから」

アイリスは上半を起こし、辺りを見回す。

暫くして、外から複數人が部屋に向かって歩いてくる足音が聞こえてくる。

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まず部屋にってきたのは年齢も同じで、訓練中も仲の良かったソルベティだった。

「ちょっと、アイリス。あなた目が覚めたんだって!」

「ソルベティ……どうしてあなたが?」

「それは、こっちのセリフよ。……とにかく、なんとも無さそうで良かったわ!」

オリーブが近寄り、ソルベティの肩に手を置いた。

「アイリス……あなた、森の中で保護されてずっと寢ていたのよ」

「……え? 森……の……中?」

アイリスの頭の中に記憶が、蘇ってくる。

次第にアイリスの表は曇り、一點を見つめが震え出した。

「ちょ!? アイリス、大丈夫?」

ソルベティがアイリスの両肩を持ち、心配そうに顔を見つめる。

「い……いや。ゆる、許して、許して……お母様……して……」

アイリスはガタガタ震えながら、誰かに許しを乞う。

「大丈夫、もう大丈夫よ。心配しないで」

ソルベティはアイリスを背後から布と一緒に抱きしめて、落ち著かせようとする。

「アイリス。もうし眠ったら?私もそばにいてあげるから……」

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ソルベティはアイリスを橫にし、布をかけた。オリーブは何かに怯えているアイリスの前髪をかきあげ優しくでいる。

その様子を見ていた、エレーナはオリーブに目配せをしてこの場をお願いしハルナと一緒に退室した。

「確か、お母様って言ってた……よね?」

「そうね、確かに言ってたわよ……ね?」

二人は確かめ合った、アイリスの母親のことを。

「――というわけで、アイリスはカルローナのことをすごく怯えていたわ」

エレーナは、アーテリアにアイリスのことを報告した。

「そうね。確認したい部分はあるけれど、まずはアイリスさんが落ち著いてからお話しを聞きかせていただきましょうか」

それとは別にアーテリアはマイヤに、カルローナについて調べるように指示した。

フリーマス家で、アイリスを保護してから二週間が経った。

アイリスはオリーブとソルベティと一緒に、庭に出歩くことができるまで回復した。

次第に笑顔が見え始め、周りと打ち解けることができてきた頃。

アイリスを部屋に呼んで、今までのことを話してもらうことにした。

部屋にはアーテリア、エレーナ、ハルナ、ソルベティ、オリーブと世話役としてメイヤがいる。

「アイリス…… 始めに言っておくけど、私達フリーマスは貴の敵ではないわ。 できればあなたを助けてあげたいと思っているのよ。だから、今伝えられる範囲でいいから、何があったのか聞かせていただけないかしら?」

アーテリアの言葉で、この場の話し合いが始まった。

「はい…… まずは助けていただいたことに謝いたします。あと、ご迷をおかけしたことについてもお詫び致します……」

「いいのよ、無理しなくても…… あなたも辛かったのだから」

アーテリアはアイリスを、そう気遣った。

その言葉を聞き、ゆっくりとした呼吸を何度か繰り返し一つ大きな息を吸って顔を前に上げた。

そして、アイリスは徐々に話し始める。何故、このような狀況になったのかを。

「私は始まりの場所のあの日、霊と契約ができなかったことを母に連絡しました。その翌日、母はラヴィーネまでやって來たのです」

そのことはここに居るみんなが知っている事だった。ただ、アイリスが頑張って伝えてくれるその言葉を遮らないように口にはしなかった。

アイリスの話しではカルローナから契約できなかったことに対して、言葉の暴力をけていた。

そういった行為は今までもあったのだが、今回についてはこれまでにけたことのない言葉で罵られたようだ。

それは親子の間では、絶対使われないような言葉であった。

(私は何故ここにいるのか? この世にいなくてもいいのでは……)

アイリスはその母親からの言葉に、本気で死を考えたという。

そして、ここで新しい報が出てくる。

「モイスティアに帰る途中、私の知らないが乗って來て始まりの場所の近くで止まり、ある霊と契約をさせてくれるといって馬車を降りました。お母様から羽い締めにされ、そこでが手から取り出した黒い霊を私に預けた途端に気持ちが悪くなって、意識が薄れて……」

「そこから記憶がない……というわけね?」

「……はい」

黒い霊、カルローナが連れてきたは一

謎が多い今回の事件。ただ、フリーマス家が狙われていることは確率が高い。

「やはり、あなたのお母様にはお話しを伺う必要はあるわね」

アーテリアが告げる。アイリスは母親のことを聞くと、が強張った。

「アイリスさん……ひとつだけ確認させていただいても宜しい?」

「あ。はい」

「あなたのお母様は、何か悪いことをしている可能があります。 それが証明されると、あなたはお母様と関係が悪くなることも考えられるの。……アイリスさん、あなたはお母様のことはお好き?」

――!?

アイリスは戸う。アーテリアからの質問は、アイリスにとっては意外な質問だった。

記憶を思い返しても、良い思い出などない。一方的な要求だけで、母親としてのけたことはなかった。

だが、母親という事実がアイリスを助ける希でもあり縛る鎖でもあった。

――できるなら、普通の母親であってしい。

アイリスは、い頃からそう願っていた。

しかし、いくら思い返しても、優しく母親らしいことをしてもらったことはひとつもない。

それでも――

「……はい。私はお母様のことをしています」

アイリスは震えた聲で、答える。

――ふぅ

アーテリアはため息をつく。

アイリスからの返事に、ホッとしたのだった。

「わかりました。 あとは私達に任せて…… 大丈夫、悪いようにはしないわ」

その返事を聞いて、アイリスの表は我慢できずに崩れる。

「……ござい……ます……ありがとう……ございます」

ソルベティは後ろからアイリスの肩を抱き、めるように背中をでて気持ちを落ち著かせた。

その日の午後。

調査をしていたマイヤが、アーテリアの元に戻ってきた。

どうやら、一ヶ月ほど前から行方不明になっているとのこと。カルローナの実家にも問い合わせたが特には聞いていないとのことだった。

「そして、その様な事態に誰も驚いた様子はなく、捜索も真剣には行われていない狀況でした」

「それもおかしいわね。 普通心配するものだと思うのだけど……もしかして、何か隠してるのかしら?」

「それはどうでしょうね。 なんらかの罪を犯しているのなら警備兵も調査に乗り出すでしょうし…… 」

「個人的な主観で申し訳ないのですが、今回調査する中でじたことは、居なくなって喜んでいるかホッとしているじがしていました」

マイヤが付け加える。

「このままそっとしておきたいのでしょうね、ご家族は……」

今までの他人からの評価は、こういう時に現れる。

評価ばかり気にしたり、その為に生きていくのもまたおかしな話ではあるが人が集まる中で生きていくにはある程度気にはなるものである。

だが、カルローナに対する他の家族の反応はそういう事なのだろう。

「それともう一つ、気になることが……」

――?

アーテリアはマイヤの目を見て次の言葉を待つ。

「水の町の中で、おかしなきがあるようです」

「それは、どのような?」

「はい。……過去に霊と契約できなかった者たちが集まりを作っているとのこと」

「え?  そこで集まって何をするの?」

とエレーナ。

「そこまでは、まだ報が得られておりません。こちらもあくまでも噂ですがカルローナ様もそこに行っていたとの噂です」

「……今回の件と関連があるのかないのかわからないわね。マイヤは引き続きこの件についてモイスティアで調査を。ただし、の危険が迫るようなことはしないように」

「――畏まりました」

「それ、私達も一緒に行ってもいいかしら?」

「私達って……それって……まさか!?」

「もちろん私とハルナのことよ!」

エレーナの説明だと、カルローナと今回のインプとの関連が強く疑われ、萬が一にも襲われた場合は霊が使えないマイヤだけでは危険になる。

それに、あの戦いでインプに致命的なダメージを與えられたのはハルナだけだった。

にはハルナだけの力では無かったが、ハルナがいなければその力も発揮することはできなかった。

そのことはハルナ自もモヤモヤするところではあったが、役に立つのであればなんとかしてあげたいと、この狀態を納得させていた。

そういう視點から、エレーナはハルナも同行させることを提案した。

「それでは、ハルナさん。……お願いできますか?」

「あ、はい! わかりました」

「それでは、よろしくお願いしますね。ハルナ様」

マイヤはハルナに笑顔を向けた。

――

そしてここは、モイスティア。

マイヤたちは調査のために水の町にった。

ここで手分けをして報を収集するために、マイヤ単獨、エレーナとハルナで二組に別れることにした。

ここからは、手掛かりを見つけ出す必要があるのだが――

「さて、これからどうしたものかしらね……」

「……ウェンディア様?」

ハルナ達の後ろからデジャヴのような聲がかかる。

その呼びかけに反応したのはエレーナだった。

「――もしかして、エレーナ様ですか!?」

その聲を掛けたはエレーナの姿を見て驚いた。

「そうです、エレーナ・フリーマスです。私のことをご存知のようですが……あなたは?」

「た、大変失禮しました……私、スプレイズ家でメイドをしております。『ソフィーネ』と申します」

そのは自分のことを、そう名乗った。

はスプレイズ家、しかもティアドの家に仕えているとのことだった。

そのためウェンディアにも面識があり、ハルナを見間違えていた。

「あら、ソフィーネ。お元気?」

「――!?」

ソフィーネはその聲に驚きを隠せない。

「マイヤさん、お知合いですか??」

「えぇ。ほんのしですけど……ね?」

ハルナの問いに、含んだ笑顔をソフィーネに向けて答える。

ソフィーネは、困する。

本來、ここにいるはずのない憧れの人が目の前に現れたのだから。

「ま、マイヤ様も、えっと……お変わりなく……あのぉ……そのぉ」

「……いいのよ、ソフィーネ。そんなにかしこまらなくても。それにいまは、それぞれの家に仕える同じメイドという立場なのだから……」

(この世界のメイドは、何処かに登録して繋がりがあるのかしら?)

とハルナは思った。

「ところでマイヤさんとは、どういう関係なんですか??」

その質問についてはマイヤが答えてくれた。

マイヤとソフィーネ、それとここにはいないメイヤは、國王軍の訓練施設で一緒に過ごした。

マイヤはソフィーネの指導員であった。

國王軍に隊するまでのソフィーネの生活は荒れており、その力を持て余していた。

ソフィーネの村では彼に力で敵う者もおらず、やりたい放題だった。

しかし、よくある”荒くれ者”というわけではなく、今まで見てきた大人達が自分勝手に生きるその様を目の當たりにしてきたため、は大人を頼ることを忘れ自分より大きなものだけに歯向っていた。

そしてソフィーネの噂は、ある人の耳にも屆くようになる。當時、王國軍へのスカウトを任されていたマイヤだった。

マイヤはソフィーネを訪ねる。が、ソフィーネはマイヤが國王軍という大きな力に所屬していることを嫌い、いつもの様に相手に食ってかかる。

しかし、それを難なくいなしていくマイヤ。

そしてなぜこんなにも初めて會った人に対してまで、敵意をむき出しにして襲ってくるのか?

が、マイヤはソフィーネの不満に最後まで付き合ってあげることにした。

結局、何度挑んでも一発も當てることができず、ソフィーネは初めて自分で敗北を認めた。

『”今は”この人にはかなわない』

――と。

「……そして彼は軍にり過酷な訓練をけ、見事立派な軍人となったのよ」

「立派……ですか? 結局、一度もマイヤ様に勝てた……いや、そのに當てることはできなかったのですけど!?」

そういうとソフィーネは苦笑いをした。

「後から聞いたお話ですが、エリートである軍の諜報部員の中でも、”史上最強”と聞かされた時は普通に納得しましたけどね!」

軍隊の中ではマイヤとメイヤはかなり優秀で、模擬戦闘でも男問わず二人に敵う者はいなかった。

それでも、マイヤとメイヤに可がられたソフィーネは持ち前のもあり、隊の中ですぐにその階級を上げていった。

そして今は軍を離れて、スプレイズ家のメイドとして働いていた。

「やんちゃなお嬢さんが、今ではこんなに立派に……もうわたくし、無量ですわ」

「あの……マイヤ様? 今回は私の思い出話しをされにわざわざこの町までいらっしゃったわけではないのでしょう?」

やや怒り気味で、怒りなのか恥ずかしさなのかわからない耳を真っ赤にして、ソフィーネは話を本當の理由を問いただした。

「そ……そうなのよ。し調べ……んぐっ!」

マイヤがエレーナの口を塞ぎ、目配せで周囲の注意を促す。

「ソフィーネ。どこか、ゆっくりお話しできるところご存知ないかしら?」

マイヤの目から、笑いが消えている。

それをみてソフィーネは、懐かしい軍にいた頃のマイヤを思い出す。

(全然変わってないな、この方は……)

あの頃ののあるにおいが記憶の中で再現される。

こういう時は、重要な任務にある時の空気だった。

「それでは當家にお越しになるのは如何ですか?主人はいま、不在にしておりますが?」

「それは助かります。 エレーナ様、ハルナ様もそれでよろしいですわね?」

二人はマイヤの言葉に同時に頷いて、早々にこの場を離れることにした。

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