《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

町の中心部の近くに位置し、町の様子が一できる場所にその屋敷は建っている。

ハルナ達は歩いてエントランスに向かっていくと、噴水や水車など屋敷の敷地の中は水の町の名に恥じないくらい、水を上手に使った庭園が施されていた。

エレーナも 同じような境遇ではあるが、個別に発展した別の町の生活様式の違いを楽しんでいる。

一同はエントランスに到著し、目の前の大きな両開きのドアを目にする。

そこには大きなスプレイズ家の紋章が彫られていた。

そんな大きなドアをソフィーネは軽々と開けて、一同を屋敷の中にるように促した。

「ようこそ、スプレイズ家の屋敷へ」

そのまま応接室へと通され、一旦落ち著いた後に話しをすることになった。

低いテーブルを挾んで、ソファーに腰掛けた。

ソフィーネはお茶を運んできて、客人をもてなす。

それぞれの前に紅茶が揃ったところで、エレーナはここに調査に來ることとなった経緯を説明する。

「……というわけで、私達はその集団の存在の確認と、手がかりを探しにこの町まできたの」

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「そうでしたか…… 確かにここ最近、カルローナ様はお目にかかっていないですね」

「それって、問題にならないんですか? 人が行方不明になってるのに!?」

ハルナはソフィーネの無関心な返答に不快を覚え、やや食って掛かった。

「ハルナ様……でしたか? 大切な人ならば心配になるものですが、スプレイズ家の中にはあの方をそう思わない人もいるのも事実です」

それはマイヤが事前に調べた報からも、同じような容を聞いていた。

やはりカルローナは、周囲から好かれていないということが見て取れる。

もし自分がその立場であったならば……いや実際、元の世界で自分がいなくなったことに対して殘っている人々が自分のことに無関心であったなら、それは悲しいことだと思いハルナは我慢ができなかった。

そんなハルナの姿をみて、ソフィーネは続けて言う。

「ハルナ様が仰ることも理解できます。ただ、あの方が周囲にそう思わせるようなことをし続けてきたのだからこそ、この様な狀況でもあるのです」

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確かにほんのしだけしか関わっていないハルナにさえ、カルローナの行には尋常ではないところが見けられた。

家族や一族などその周囲に関わる人では、離れられないとなるとどんなことをされていたか。

今回のアイリスを見ると、想像に難くはない。

ソフィーネ自もハルナの気持ちを理解しているが、近い環境にいたからこそ常識から外れているこの判斷であることも気付いていた。

ハルナも空気を察してか、その場に合わない発言をしたことを反省した。

この話題が落ち著いたところで、マイヤは次の質問をする。

「あなたは、その集団についてこの町で耳にしたことは?」

「そのことなのですが、こちらでも調査は進めておりました。ですが、現時點ではフリーマス家と同等の報しか持ち合わせておりません……」

「ここ最近だけではなく、過去の事件や事故の中で不明な點などもなかったのかしら?」

「はい。疑わしいものや、理由がはっきりとしたものまで再検証しましたが、怪しいものは特に……あ、一つだけございましたわ。はっきりとしていない問題が」

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「――それは、もしかして」

「ウェンディア様の件です」

ハルナがこの世界に來て、一ヶ月半ほどが経とうとしている。ウェンディアがいなくなったのはそれよりも半月ほど前になる。そのため、エレーナは似ていたハルナのことを疑ってしまっていた。

ソフィーネもウェンディアの件とカルローナのことを疑っていたのだが、証拠やその関連が見つからない。

明らかに報不足であった。

だが、その二人のどちらかが重要かを考えた際、迷うことなくウェンディアの調査をするべきであり、そうしてきた。

ここまで、お互いの持つ報を換しあったところでさらに狀況が変化する。

――

外の様子が何やら騒がしくなってくる。

どうやら、この家の主が帰宅したようだった。

「あら、予定外のお早いご帰宅ですね。何かあったのでしょうか……」

ソフィーネは飲みかけたカップをテーブルの上に置いた。

――どこかに隠れなきゃ!?

エレーナは、反的にそう思った。

そんな姿をみてマイヤは、エレーナを落ち著かせる。

「エレーナ様、落ち著いてください。私たちは何も悪いことをしているわけではないのですから……」

頭では分かってはいる。

しかし、何故か落ち著かず気持ちが焦ってしまう。

「それでは、ティアド様を迎えに行ってきます。皆さまは、このままお待ちいただけますか?」

そういってソフィーネは、部屋を出ていった。

「……もしかして、私達嵌められてない?」

エレーナは、やはり落ち著かない様子だ。ハルナはそんなエレーナの手を握り、背中を優しくさすってあげた。

そうこうしているうちに、ハルナ達がいるドアの向こうから人が近づいてくる音がする。

――コンコン、……カチャ

ノックの後にドアが開く。

「いらっしゃいませ、當屋敷へようこそ」

ってきたのは、ティアド・スプレイズ。

この屋敷の主だった。

続いてその後ろから、ソフィーネが先ほどとは違う雰囲気でってくる。

「突然のご訪問、大変申し訳ございませんティアド様。ご無沙汰しております」

エレーナはソファーから立ち上がり、ティアドに挨拶をする。

「エレーナ様も、お変わりなく。ところでそちらの方は?」

エレーナは心する。

ほとんどの人がハルナをみかけると、ウェンディアと見間違えてしまうのだが、ティアドはそんな素振りも見せない。

ハルナが自分の娘ではないことをティアドは認識しているのだった。

いつのまにか、エレーナは張が解けていた。

「はじめまして、私はハルナと申します。」

「今回、ある人を探しておりましてモイスティアまで參りました」

「そうですか……よろしければどなたをお探しかお伺いしても?」

「私たちは現在、カルローナ様の行方を探しております」

「では、そのご説明は私の方から……」

マイヤは、今までの経緯をティアドに説明した。

今回の霊の契約のこと、カルローナのこと、コボルドのこと、インプのこと、アイリスのこと。

その間、およそ5分程度。

これまでの経緯を的確にかつ疑われることのない構で話を進めていく。

さすがは元軍人であった。

有事には、ひっ迫した狀況での報伝達は正確で簡潔でなければならない。

そうでなければ、自分たちの命にも関わってしまう。

ハルナは見事な説明に心している間に、説明は終わる。

「……以上のことから、今回はモイスティアでの捜索をお許し頂きたく。この件に関し、アーテリア様からティアド様への書狀をお預かりしております」

マイヤはソフィーネに手紙を渡し、ソフィーネはそれをティアドに手渡した。

「事はお伺いしました。それでは、こちらの部屋でもうしお待ちください」

ティアドはソフィーネを連れ、一旦部屋を出る。帰宅してからそのままだった服裝を著替えるべく自室に戻り、手紙の容を確認することにした。

その手紙の容は、ほぼマイヤが説明してくれた容であり、その調査に対して協力をお願いする容であった。

しかし、ティアド自はまた別の悩みがあり、エレーナ達の問題については報がってきてはいるが町として特にそれ以上の対応を行なっていなかった。

それは、その問題に対して人員を割くことができなかったというのが本音だった。

ティアドは手紙を折りたたみ、目を閉じる。

(エレーナ達にその方面の調査をお願いして、報だけ流してもらう……? いや、何か隠し事がある可能も十分にある。そうするとこちらの方からもその調査に加わらせてもらった方がよさそうね……)

ティアドはソフィーネに向かって告げる。

「これからスプレイズ家の者たちに同行し、協力してあげなさい。そして、この件に関して報を収集して。ただ、特にあなたが前に出ることまではしなくてもいいの。あなたが危険とじたら、自の安全の確保に徹しなさい……いいわね?」

「はい、ティアド様」

ティアドの後半の言葉には、優しさをじる。

協力はするが自分の命に関わるような危険は冒さず、その他を犠牲にしても報が得られればよいという考えは間違っていない。

特にを亡くした経験のあるティアドにとっては、今回の件に関しての最優先は報よりもの安全であった。

――もう誰も失わない。

ティアドは常にそれを願い、(周りには止められているが)誰かが傷つくのであればと自分自で行を起こすこともある。

ソフィーネはそのトラウマのような優しさが、酷く心に突き刺さる。

今まで、こんな人を見たことがなかった。

見てきた大人達は、自分自のことばかり。

親が、我が子に対してもそうだった。

ティアドは軍から派遣されたメイドであっても、一員……家族としても認めてくれている。

ソフィーネもティアドのことを、母親のようにじている。

そして、ずっとこの方を守りたいとも思っている。

余談だが、実はソフィーネをティアドの元に行くように命令したのは、當時の隊長であるマイヤであった。

(本當、あの方もどこまで知っていらっしゃるのかしらね……)

そんなことを思いながらティアドの後ろに歩き、ハルナ達が待つ部屋に向かった。

「お待たせしました」

ティアドとソフィーネは、ハルナ達がいる部屋にった。

「今回のモイスティアでの調査を許可します」

エレーナとハルナは、顔を見合わせて喜んだ

「――ですが、條件がございます」

「調査をご承諾いただき謝します、ティアド様。 で、その條件とは?」

マイヤが問うと、その條件が告げられた。

――調査した容を隠さずにスプレイズ家にも連絡すること

――町や住民に被害が及ばないようにすること

そして最後に、

――監視役としてソフィーネを同行させること

3つの條件が提示されたが、エレーナはマイヤと目配せしその條件を承諾することにした。

そうして、ハルナ達にソフィーネが加わりモイスティアでの調査を開始することになった。

3人は今夜は適當な宿をとり、泊まることにした。

スプレイズの屋敷では居心地も悪く、特に泊まって良いとも言われなかった。

「ふー……疲れたわね」

ベットで寢転ぶエレーナは、張続きだった気持ちを解放させる。

「一息著いたら、食事に參りましょうか?」

マイヤが提案し、二人はその意見に迷いもなく賛する。

そして3人はとある食堂へとっていく、その食堂の名前は“霊と自然の恵み”。

周囲を見渡すと、幅広い層の住民がいるようだがし値段が高いためか、ある程度なりがしっかりとしている人が多く見られる。

カウンターとテーブル席があり、エレーナは丸いテーブルの席を選んで座った。

これで店のテーブル席は埋まってしまっていた。

3人はパスタとパンのバスケットとトマトのパスタとチーズとハムの盛り合わせを頼んだ。

「お待たせしました!」

店員が頼んだものを目の前に並べてくれた。

「「味しそう!!」」

ハルナとエレーナは、思わず言葉を口にした。

「うちの食材は、全て自家栽培で食べも飲みも自家製なんですよ!」

と、嬉しそうに説明してくれた。

飲みはワインのような果実酒がピッチャーにってテーブルの真ん中に置かれた。

「パンはお代わり自由ですから、ご遠慮なく。それではごゆっくり!」

お店の店員も明るくてじがよく、ハルナとエレーナはこのお店で正解だったと頷きあった。

食事はハルナがいた世界とし種類が違うが、この世界でも同じようなが揃っていて安心していた。

エレーナはお酒が好きなようで、ラヴィーネでもハルナはエレーナに付き合わされていたのだった。

そして、マイヤがそれぞれのグラスにワインを注ぐと――

「お疲れ様ーーー、乾杯!!!」

エレーナが嬉しそうにグラスを突き出してくる。

ハルナが乾杯を教えてから、嬉しそうに使ってくれるのだった。

マイヤもハルナもそれに付き合ってグラスを突き出す。

そして、乾いたに潤いを與えていった。

……

…………

……………………

目の前のパンの籠がなくなって、もうお腹いっぱいとおかわりを拒否した頃から、徐々にこれからのことが話題に上がり始める。

流石に機報な報もあるため大きな聲では話せないが、これからの事を検討し始めた。

ハルナはいつの間にか、カウンター席が埋まっていることに気付いた。

そのカウンター席のうちの一人が、こちらをチラチラと見ている様子が伺える。

(ぁゃしぃ……)

ハルナはその相手のタイミングを見計らって、エレーナに目配せをする。

それをじとったエレーナとマイヤは話しのテンションは落とさず、気付かれないように目配せして頷く。

「そろそろ出ましょうか、明日から忙しくなりそうですから」

「ねぇねぇ、もう一軒どこか行かない?この町の店を見て回るのも調査の一環だと思わない」

マイヤは呆れた顔で、スッと席を立ち出口へ向かう。ハルナはカウンターの男が気になっていたが、気なエレーナに背中を押されて次の店に向かうように促された。

外に出ると、時間は20時になるところだった。

この世界でもやや飲食街ではこの時間でも人が多く行きう。

ゆっくり飲めてお話しができるところへという事で、大通りの一本中にった道へ進んで行った。

大通りから中にると同時に、マイヤからの合図で一斉に駆け出す。そして、建の間に隠れた。

すると、先ほどの男が走ってきてキョロキョロと辺りを見回している。

誰かを探している様子が見てとれる。

「……どなたか、お探しかしら?」

後ろから聲を掛けられ、”ビクッ”と男のが強張る。

そして、ハルナとエレーナはいつでも対応できるように準備をしていた。

「あ、あのぉ……」

何か話そうとしている、ハルナ達からの場所では暗くて顔が見えない。

男は恐る恐る、こちらに近づいてくる。それに従い、顔に街燈の明かりが照らされる。

「あら、どなたかと思えばキャスメル王子じゃありませんか」

――!!

「えっと……王子って、王様の息子……じゃない?」

「そうね……その認識で間違ってないわ」

ハルナの問いにエレーナは答える。

こんなところにいるはずのないその人は、東國の王子キャスメル・エンテリア・ブランビートだった。

「こんなところで何をなさってるんですか!?」

「……人を探していたのです」

「王子が直接ですか?」

エレーナはし歳下の王子をやや叱るように話す。

このままだと人の目を集めることになりそうなので、マイヤは王子に助け舟を出す。

「とにかく、私たちの宿へいきましょう。事はそこでお伺いしましょう」

一行は他にみられている気配がないかを探りながら、暗闇を利用しながら不自然にならないよう宿へ向かって歩いていく。

          

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