《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

マイヤ、エレーナ、ハルナは、ヴェスティーユが何をしようとしているか本能的に理解した。

キャスメルは怯えてこそいないが、こちらに向けられているその作を無心で見守る。

エレーナはキャスメルの周りに大きな水の壁を作る作にる。

マイヤは、その行を止めようとヴェスティーユに攻撃をしかけた。しかしディゼールもそのきに反応してその行を防ぐ。

一歩遅れて反応したのは、ハルナだった。

正直なところ、キャスメルの重要度はハルナの中で低かった。

王子としてその重要な地位については理解できる。が、しかしこの世界の基準にまだに染み付いておらず、慣れていないのだから。

それよりも、この世界で一緒にいたフウカ、マイヤ、メイヤ、オリーブやエレーナの方がハルナにとっては大切だった。

そんな一瞬の間だったが、事態は進展する。

ヴェスティーユから、黒炎の礫が放たれた。

そのの闇は深く、先程道を塞がれた炎よりも、その明らに高溫で度も高い。

火という屬よりも元素の度だけで、攻撃が可能のようだ。その度はピストルの弾丸のようにく小さく貫通もありそうだった。

エレーナは、水の壁だと容易に貫通すると考えキャスメルを庇うように水壁の後ろに飛び込んだ。

礫は水壁を破壊し、エレーナの背中に著弾する。

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「エレーナ!!」

ハルナがぶ。

キャスメルは倒れ掛かってきたエレーナを抱き抱えるが、格差もありよろけた。

だが、絶対に落とさないように力をれて堪える。

次第にキャスメルの心を、悲しみと恐怖と怒りがり混じったが埋め盡くしていく。

この狀況になってしまったことが、自分のせいだと気付いてしまった。

モイスティアに來てから、キャスメルはエレーナのことを気にっていた。

年上への憧れもあるが、エレーナは時間があるとキャスメルの様子を見に來てくれて相手をしてくれていた。

そのことが嬉しかったし、王子である自分のよくない行を叱ってくれた。

王國では、真剣に叱ってくれたり相手してくれる人はいなかった。

の回りの世話を行ってくれるが、腫れれるかのような対応だった。

今回の家でも、困らせてやりたい気持ちもどこかにあった。

そんな自分の我が儘な行から、エレーナが傷ついてしまった。

今まで、こんな気持ち悪いに浸ったことはない。

初めて験するに、どう処理して良いかわからない。

――どうすればいいの?

――誰か、誰か助けて!

――そうだ、エレーナは?エレーナならなんとか……

目の前には、腕の中でぐったりとして重くじるエレーナ。

背中のローブからはが滲んで、止まる様子もない。

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――弱いから、僕が弱いからなの?

この怒りをどうすることもできない無力が、キャスメルを襲う。

そして小さなの容が満杯となって溢れでる。

「……うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

キャスメルは上を向いてぶ。

持っていきようのないが、聲となって響き渡る。

「……うふふ、くふふふ。ふははははは! いい音だわ。絶びって、何度聞いても最高ね!」

何とか我慢しようとしていたが、あまりの喜びに思わず口に出してしまうヴェスティーユ。

「そうね、わかるわ、わかるわよ。アナタ。弱いからその娘は傷ついたの。そしてもうすぐ死ぬの。アタシに敵わなかったから死ぬの。極々自然で、あたり前の理由なのよ!」

しかし、その言葉はキャスメルには屆いていない。

虛ろな目でエレーナを見つめ、聲にならない意味不明な言葉をつぶやいている。

「……おいおい、あの子壊しちまったんじゃねーの?いっそ、楽にしてやった方がいいんじゃね?」

ディゼールが(なんなら俺が……)と言おうとした際に、マイヤがき出す。

マイヤは仲間が攻撃されたことに対し、行を変えた。

今までは、何とか事を聞こうとしたため極力に被害を出さずに相手のダメージを極限まで奪い、抵抗力を奪うことを目的としていた。

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しかし、エレーナが倒れてしまった今、迅速に救出する必要がある。

この作の速さは今までの比ではない。

――シッ!

マイヤは、後ろ蹴りでディゼールとの距離を取る。

相手はその速さにマイヤが目の前から消えたように見え、ガードする間も無く攻撃を食らい思わず手にしていたマイヤの短剣を床に落とした。

マイヤは、未だにエレーナに向けているヴェスティーユの忌々しい腕を切り落としにかかる。

手にした短剣は、ローブの袖の肘のあたりを下から切りあげた。

しかし、人を切り裂いた獨特のはなく、そこには子供のような手が見えていた。

「チッ!」

ヴェスティーユは舌打ちをして、切られた側の腕をローブの中に引き込む。

狀況が変化することをじ、長居は危険と判斷したヴェスティーユは、相方に告げる。

「ディゼール、とにかく今日の用事は済んだんだ。これ以上、ここにいる意味はないよ!」

「了解、了解……っと。(ったく、自分だけ楽しみやがって)」

吹き飛ばされたディゼールは、ずれたヘルメットを戻しながら起き上がる。

(っていうか、俺も一つぐらいお土産殘さないとね……)

「……ってわけだから、俺たちはこれで帰るわ。そこの人さん、早くあいつの手當てをしてあげないと危ないんじゃねーか?」

マイヤはその意味が、判っていた。だから、その言葉にもじることなく、男に対して警戒を続ける。

「エレーナ!!」

そういって駆け寄ったのはハルナだった。

マイヤは、(不味い)と思いつつも何か起きた時に対処をしようと考えた。

エレーナの狀況も心配だったから。

「ちぇっ。やっぱ、引っかかんねーんだな……」

男はそう口にすると、ナイフをエレーナを迎えに行ったハルナの背中をめがけて放つ。

――キン!

マイヤはそのナイフを手にの中の短剣を投げて、弾いて見せた。

「……しは、あなたも役に立つものだ ね」

そういうとヴェスティーユは小さな掌の上で黒炎の球を作る。

(――しまった!)

マイヤは、判斷を誤った。

ハルナを庇うためとはいえ、最後の武を手放してしまった。

自分であれば武がなくてもなんとか出來るのだが、離れている味方の防はこれでは間に合わない。

もう一つの短剣も床に落ちてはいるが、拾ってからでは間に合わない。

「ハルナさん!後ろ!」

マイヤは、ハルナに聲をかける。

必要以上にを持たせないように気をつけて、聲を掛けたつもりだった。

しかし、ハルナはハッとしてを強張らせながら振り向いた。

これでは、うまく対応が取れない。ましてや、戦闘経験のないハルナには無理な注文だった。

「ゴミは最後まで、始末しないと……ね」

ヴェスティーユは、出來上がった黒炎を放った。

マイヤが飛び込んで助けようとしたが、ディゼールが行く手を阻む。

「退けぇぇーーーー!!!」

ディゼール自は大したことはないが、退けた後では間に合わない。

ディゼール自を蹴飛ばしてハルナ達の盾にしようとしても角度が悪くハルナ達にも當たり防ぎきれない。

マイヤは、ディゼールを腕で払い進行方向から排除した。

弾き飛ばされながらも、ディゼールのヘルメットから見えるその口元には笑みが見える。

「えい!」

フウカが飛び出して、三人を黒炎の軌道上から風の力で外へ押し出した。

ハルナは、一瞬何が起きたのかわからなかった。

 ――ドン

黒炎が何かに衝突する音が聞こえる。

その直前にハルナには聞こえていた。

一杯伝えたい、最後のフウカの聲が。

(――短い間だったけど、楽しかった!)

ゆっくりとした時間の中で、その聲は再生された。

ハルナは自分達がいた、場所を振り返る。

そこには、黒い火柱が上がっていた。

――!!!

ハルナのに強い痛みが走る。

の中の臓が、引き剝がされるような痛みが生じる。

その痛みよりも、もっともっと強いが痛みとして脳に伝わる。

この世に來て、一番近な存在が消失してしまった。

「――イヤアアアああぁああぁああぁ!!!!!」

ハルナはのままぶ。

自分の死よりも辛く、鋭い痛みが全を突き刺していく。

「んー、とってもいいわぁ……この近年では最高級の音よ」

うっとりとした至福の聲で、そう告げる。

ディゼールはその様子を、汚いを見るような目付きでヴェスティーユをみる。

マイヤは、もうけなかった。

何かをするべきかわかってはいるが、味方の中で失ったものが大き過ぎた。

これ以上被害を拡大させないためにも。

「それじゃ、あたし達は用事も済んだし帰るから。皆さんごゆっくりー」

「楽しかったぜ、また會おうぜ!人のねーちゃん!!」

二人は、“任務完了”と言わんばかりにスッキリとした口調でエントランスの扉を開けて出る。

――――――――――――――――――

マイヤは、気絶したキャスメルからエレーナをけ取り、耳元に近寄って聲を掛ける。

が、返事はなく、呼吸も短く弱くなっている。

した量が多過ぎたのだった。

こういう狀態は任務の際に、何度も見てきた。

その対象が、助かることがないことも。

この世界では、醫療がそんなに発達していない。

負傷した治癒が不可能な四肢の切除や合などは行われていたが、輸や抗生質などの知識はなかった。

せいぜいあっても効果が不明な薬草のようなものだった。

マイヤは、ハルナに目を向けた。

火柱が上がっていた場所にうずくまり、痕跡が何か殘っていないか探している。

マイヤはエレーナを綺麗な場所で橫にした。

れてた髪やローブ姿も整えて。

そしてゆっくりと、ハルナの方へ向かう。

「ハルナ……さ……ん」

後ろからハルナの肩に手を當てて、めの言葉をかけようとした――

――!!!!

マイヤは思わず手を引いた。

ハルナのが高熱を帯びていた。

「ハルナさん!」

聲を掛けるも、反応はない。

ハルナのからは、が発せられる。

――!?

あまりの眩しさに、目を細めるマイヤ。

ハルナのに包まれたまま、その場に立ち上がって見せた。

(これは……一!?)

黒炎の柱が上がっていた場所に手をかざして、を照らす。

焼き焦げた黒い煤がの力で渦上に舞い上がり、浄化されての粒子に変化する。

ハルナ(?)はその舞い上げたの粒子を、の前で合掌の形の両手に隙間に作った空間に集めた。

するとの粒子が不規則に球狀に回転し、の玉が生まれる。

回転の円周が徐々に小さくなっていき、雪のような形狀となった。

始まりの場所でみた、あのだった。

はハルナの周りをクルクル回り、ハルナの肩にとまった。

すると、はフウカのような人型になった。

しかし、まだ意識はない狀態だった。

その様子を眺めていたマイヤは、今までに見たことのない現象に聲が出せない。

不思議な景に、ただ眺めることしかできなかった。

それに、こののオーラは邪悪ではないが、普通の人では耐えられない程の力だ。

だが、必死に意識を保ってこの現象を確認する必要があった。

マイヤは気力を振り絞り、聲を掛けた。

「失禮ですが、大変位の高い霊様と推測しますが……」

ハルナのようでハルナではない。

何か憑依したようなじだと、マイヤは推測していた。

『あなたは、ハルナさんのお仲間ですね。私の名は、“ラファエル”。風の霊です』

マイヤの呼吸が止まる。

普段なら一生お會いできるのものでもなく、伝承の中だけの存在が、こうして目の前にいるのだから。

霊は言葉を続ける。

『あなた方は、魔の使い達を相手によく戦ってくれました。その行に、より時間を本來の正しい歴史へと導くことができました』

マイヤは、唖然とする。

エレーナもハルナもキャスメルも取り返しのつかないダメージを負ってしまったのに。

それがあたかも、予め決まっていた行であるような言葉だった。

心の奧から、押さえの効かない怒りが込み上げてくる。

「それは、既に決まっていたということでしょうか?エレーナ様もハルナさんもこうなることが當たり前の――!!」

ラファエルはマイヤの言葉を手を上げて奪う。

空気の振を止め、言葉を遮った。

『ごめんなさいね、うまく伝えられてなかったみたいね。お詫びとしてこれからあなたの心配を取り除いて差し上げますわ』

ラファエルは、空から杖を取り出した。

そして杖を正面に構えて、ある人を呼ぶ。

『――“ガブリエル”、お久しぶりね。聞こえてる?ちょっときていただけないかしら……?』

待つこと數秒。

水の渦が目の前に出現し、その中にまた新たな水の人型が現れた。

『……あなただけよ、アタクシをそんなに気軽に呼び出すなんて。で、なに?隨分と久しぶりなのにまた面倒なこと押し付ける気?』

その人型は全て水で構されており、まさに水の人形だった。

『うふふ。でも、分でも來てくれるのは嬉しいわ』

ラファエルは、悪気のない笑顔で応える。

『無駄な挨拶はいいよ、もぅ。(どうせ拒否権ないんだろうし)早く用事を済ませて、ゆっくりしたいんだけど……今回のご用件は?』

『んもぅ、つれないわね。では、そこの助けてあげてくださらない?その方はあなたの水の霊を宿してるようなの』

ガブリエルは、橫たわるエレーナの姿を間近でみる。

どうやら、近眼のようだ。

『ん?……あー、このじ、何度かじたコトあるわ。もしかして、アーテリアの娘?』

『そうよ。ただ、まだ、繋がりが薄いみたいなの。今の狀態だと私の元素では霊が消えてしまいそうだから、同じ水のあなたにお願いしたいのよ』

『そうね、努力の跡は伺えるけど、もうしこの娘には頑張ってしいね』

そういうと、ガブリエルはエレーナのに手を當てる。

青白いが心臓を中心に、脈を伝わり流れていく。

――トクン……トクン

止まっていた心臓がまた脈を打ち始めた。

エレーナの青白い顔が、赤みが戻っていく。

『はい、これで大丈夫よ。……もう帰っていい?』

とその時、エレーナの杖から霊が飛び出してきて、ガブリエルの前に浮遊している。

ガブリエルは、掌に霊を乗せた。

『…………』

『え?あなたにはまだ早いよ』

どうやら、霊と會話しているようだった。

『…………』

『うーん。言いたいことはわかるけど、アレは特別だからね』

『…………』

『失敗すると、あなたの存在は消えてしまうかもよ?それでもいいの?』

『…………』

霊は強い意志を示すためか、力強く周りを回る。

『わかった。しだけ手助けしてあげる。ただし……』

ガブリエルは、そのことをエレーナの霊に伝えると霊の上で指をる。

霊にがふりかけられていった。

『……これでよし。あとはあなた達次第だからね。上手いことやりなさいよ!それじゃアタクシは帰るからねー』

『ガブリエル、ありがとう。またよろしくね!』

ラファエルにそう言われたガブリエルは、しかめっ面したまま、水の渦に消えていった。

『あと、そこの年も酷く神的な傷を負っているわね』

そういうと、壁に持たれて気絶しているキャスメルの頭に手を乗せる。

そこから黃が溢れ、キャスメルの頭から赤いガラス玉のようなものを引っ張りだして握り潰した。

次々と目の前で起こる、説明のできない現象に頭が追いつかない。

ラファエルがキャスメルに何かをしたことは、見てとれた。

何をしたのか聞いておかなければと、マイヤは思いを口にする。

「大霊ラファエル様、……今のは一?」

『え?あぁ。今のはこの出來事で生じただけ消したのです。この経験はこの方にとって今後大切なものになります。ですので、記憶はそのままに、不要な恐怖のだけを取り除かせてもらいました』

マイヤはまたしても、困する。

そういうことができるものかと。

この力は知られると、大変なことになるのではないか?

そう思っていると、ラファエルから聲がかかる。

『今見たことは、ハルナやアーテリアの娘に伝えてください』

――え?

『そうすることにより、自分の役目、自分達力を信じて更に長する契機になるはずです。そうなるもならないのも、あなた方次第ですよ』

ラファエルがハルナの顔でマイヤに微笑む。

『もしも、その荷が重いのならば記憶を消して、‘楽’にして差し上げることもできますけど?』

マイヤは、生まれて初めてゾッとする覚を覚える。

伝説上の霊は、平気でそういうことができるのだと。

『――勘違いしないで頂きたいのですが、誰にでもそういうことをしている訳ではありませんのよ?そういうことをして喜んでいるのは、あの悪魔たち。私はそういう困難を乗り越えることができるのが人の良さと思っていますし』

ラファエルは、スッとハルナのを解放する。

『あなた達のそういうところが好きなのです』

ラファエルの支配から解けた崩れるハルナのを浮かせて橫にし、マイヤの元まで持っていく。

マイヤはハルナのを抱きかかえる。

『それでは、後はお願いしますね』

そう言うと、ラファエルはもう一度杖を出した。

ハルナをおしく見つめた後、マイヤの方に向かって

『私の大切な者にしてくれた、お返しをしてこなくちゃ……ね』

と言って、ウインクをする。

ラファエルはの粒となり、どこかに転移した。

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