《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》
カルローナは、町を出た森の中の祠の中で発見された。
荷もなく、著の著のままの姿で隠れていた様子。
命には問題ないが、神的に追い込まれている狀態とのこと。
現在、捜索願いが出されていたことと、この町の混を招いた容疑者として、町に向かって輸送中であるとの報告だった。
ただ、さらに離れた別の場所で発見された男は、會話もできず意味不明な言葉を繰り返しているという。
服は著ているものの、刃か何かで切り裂かれた黒いローブが置いてあった。
これは詰め所を襲撃した二名の服裝と酷似しているとの報告だった。
「発見されたのは一名だけ?」
マイヤはソフィーナに問う。
「それ以外の連絡はけておりません。もしかして、仲間割れとか不要になったから処分をした……とかでしょうか?」
「それは調べてみないと、何とも言えないわね」
マイヤは最後のラファエルの”お返し”という言葉が気になっていた。
(もしかして、ラファエル様が……?)
とにかく、この件は一旦保留としておくことにした。
その他の報をまとめると、次の通りだった。
・スプレイズの屋敷の一部を破壊されたが、ちょうど屋敷の中では買いなどで人がない時間帯であったため、人的被害はなかった。
・詰め所での襲撃は、スプレイズ家の発からおおよそ五分後に発生した。訓練された人だと、走って詰め所まで到著できる時間ではあるが目撃者は無し。
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・詰め所での人的被害は、おおよそ二十名。全て警備している兵士であった。そのため、危険をじ室に隠れていたものについては被害がなかった。
・詰め所のソフィーネらが拘束した二名は、生命には問題がないが植狀態となっていて意思の疎通が不可能となった。
これに関しては、スプレイズの家の襲撃は囮であり、詰め所の襲撃が本命。しかも、拘束された二名が対象で口封じであるとの推測に達した。
この推測を変更するには、更なる報を取得しないことには検証も難しいため、このまま保留とすることにした。
時間が経過し、頑丈の造りをした馬車が詰め所の前に停車する。
どうやら、カルローナが連れてこられたようだった。
エントランスは吹き抜けで、二階からはその様子を見下ろすことができる。
り口の扉は、両開きの扉となっている。
扉は開かれ左右に人が立ち、扉を押さえつつも警護に當たる。
開かれた扉からはまず、警備隊の兵士が先頭を歩く。次にロープを手にした兵士が続く。
そのロープの先は、カルローナにつながれている。
手は前に組んで、手首を手錠のように縛られている。
口元には、舌を噛み切らないようにタオル様の生地で縛ってある。
両脇を抱えられ、半ば引きずられるようにして連れていかれる。
その様子を眺める、ハルナとエレーナ。
その姿はラヴィーネの訓練所でみた、あの高圧的な態度をとっていたとは思えないほどのあまりにも変り果てた姿だった。
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いったい何が起きていたのか?
今回の事件との関連については?
それについては、回復したカルローナが真実を告げてくれることを願うばかりだった。
ハルナは橫に目をやると、とある男とティアドが同じくその様子を眺めながら何か話をしている。
男はハルナの視線に気付き、こちらに軽く會釈をする。
ハルナもつられて、會釈を返した。
「ねぇ、エレーナ。あの人知ってる?ティアドさんとお知り合いみたいだけど」
エレーナはハルナの目線の先を追い、その男を確認する。
しかし、自の記憶の中には該當する人は見當たらなかった。
ティアドと話していた男はこちらの話題にしていることに気付いたのか、二人でこちらに向かってきた。
「初めまして、グリセリム・スプレイズと申します」
そういうと顎髭の似合う男は、エレーナとハルナに向けて笑顔で挨拶をしてきた。
「初めまして。わたしはエレーナです。こちらは……」
「ハルナです、初めまして」
グリセリムと名乗る男は、ハルナの顔を見るとやや驚いた表で失禮にならない程度にみつめた。
「……い、いや。こんなに似ている方も珍しいですね。ぱっと見て見間違えてしまいますよ」
ハルナはいつものことで、もう慣れてしまった。
あったことはないが、いつも言われる”あの”人のことだろうと。
そして、次に口を開いたのはティアドだった。
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「でしょ?最初は驚いたものよ。でも違うのはわかるのだけど……」
うふふと笑いながら、男に対してそう告げた。
(え?あんなに冷靜だったのに驚いてたの!?)
そう思うハルナとエレーナだが、あえてここは黙っておいた。
「ティアド様、こちらの方は?」
エレーナは思い切って聞いてみた。
「――おっと、これは失禮しました。自己紹介が遅れましたな。私、ティアド様の従姉弟(いとこ)で、……カルローナ(アレ)の夫です」
「え!? それじゃあ、アイリスのお父さん??」
「はははっ。そうなりますな」
ハルナの言葉に、笑顔で答えてくれるグリセリムだった。
カルローナが見つかったことで、ティアドからグリセリムに連絡をしていた。
マイヤが以前調査調した際には探すこともしていなかったのだが、今回はなぜ応じたのか?
もしかして、本當は家族のことが気になっていたのではないかというハルナの期待でもあったが、それは全くの見當違いなものとなる。
「今回グリセリムを呼んだのは、カルローナに対して何らかの刑が確定した際に、その軽減を願うかどうか確認したかったのよ」
「……そ、それで……どうされるんですか?」
「――今回はそういったことは一切お願いしません」
グリセリムは、エレーナの問いに靜かに答える。
「ど……どうして!?」
「どうして……ですかって? ハルナさん。今回、妻が何をしたのか”まだ”わかりません。しかし、それならば、隠れる必要も脅える必要も何もないと思いませんか?それに、今回の我が娘(アイリス)の件も聞いております。私もね……普通のよい家族になるように努力や説得をしたんですよ、彼に。ですが……ご覧なさい。このような結果です。直接的か間接的かわかりませんが、人が傷ついてしまっているんです!なくとも、自分の娘にまで手を出してるんですよ!!!」
「グリセリム……」
興狀態だった男の名を呼び、ティアドは優しくその背中をさする。今まで抱え込んできた荷を払い落としてあげるかのように。
「し、失禮しました。取りしてしまいましたね……お許しください」
この男は本當は優しい方なのだろう。
その男が、こういう決斷をしなければならないくらい追い詰められていたのかもしれないとハルナは思った。
しかし、今のハルナにめの言葉をかけることはできない。
ハルナの言葉がこの男を癒すことができるほど、全ての事を理解しているわけではなかったから。
グリセリムはティアドに背中を支えられながら、廊下においてある長椅子に導され腰を下ろす。
「有難う、ティアド。もう、大丈夫……」
そういうと、グリセリムは目を閉じて大きく深呼吸した。
大きな聲を聞き、マイヤとソフィーネも駆け付けてくる。
その狀況が落ち著いていることを確認すると、ゆっくりとその中に加わる。
「もしよければ、私の知っている彼のことを聞いてくれませんか?それで、あなた方にもぜひ判斷して頂きたい……」
そういって、グリセリムは、カルローナのことを語り始めた。
「まず、彼は……」
――カルローナ・レイヴェン
グスターヴ・レイヴェンの家に生まれた長であり、一人娘。
カルローナは遅く生まれた娘でもあるため、両親のを一にけて大事に育った。
レイヴェン家は水の町の商業者ギルドに所屬しており、主に食料関係を扱う一家だった。
カルローナが誕生した時期にはギルドでもさほど力を持たず、ギルドの上部にいる商人から無理難題を押し付けられたり、時には損をけ持ったりして商売を続けていた。
ギルド、町の管理者、警備兵、いろんな場面で見下されていた。
家族や従業員、まだ3歳くらいのカルローナが見ている目の前でも、グスターヴは踏み臺にされ続けた。
それでもグスターヴは家族のために我慢し、ひたすら地面にこすりつける程に頭を下げ、作り笑顔で商いを行っていた。
同業者にも「そんなに無理しなくても……」と言われていたが、彼は”娘のために”といって、どんな案件でも一杯にこなしていった。
周りもその真剣な姿に、やがてギルドにも味方が増えていく。
気が付くとグスターヴの地位は上がっていき、ギルドでもかなりの力を持つようになっていた。
それでも彼は、傲慢な態度で接したり弱い者をげたりはしなかった。
面倒見もよく、弱者を助け、社會にも貢獻する商業者として名を馳せた。
ただ、一人娘であるカルローナは父のことを嫌っていた。
弱くてけなかった小さい頃の父の思い出が、心に深い傷痕を殘していた。
家では立派な父親で。従業員からも慕われていた自慢の父親であった。
しかし、外に出れば立派だった父親が、けないくらいに頭を下げている。
言葉はわからなかったが、時にはひどいことを言われていても作り笑いでごまかしている。
そんな父親を、カルローナは許せずにいた。
そこから、力をするようになる。
強い人間として生きていくことを決意する。
そこで目指したのは”霊使い”。
きっかけは、近所の同世代のが、モイスティアで新しく設立された霊使いになるための訓練所にったと耳にした。
霊使いになれば、特殊な力が手にれることができる。
活躍すれば、王家との繋がりも持てるようになる。
更に、王國軍の兵隊と結婚すれば収も安定し生活も安泰となる。
カルローナはグスターヴに、訓練所に所させてほしいと相談した。
それを聞いた父親は、久々にお願いされた娘の頼みごとを何とか葉えようとあらゆる手を使って努力した。
しかし、むような結果になることはなかった。
そして、グスターヴはその訓練所の所長が、スプレイズ家が運営しているところまで突き止めた。
グスターヴはスプレイズ家に面會の機會をなんとか取り付けることができた。
グスターヴは面會の日、カルローナを連れてスプレイズ家を訪れる。
二人は応接室に通され、管理者を待った。
「――お待たせしました」
管理者はそういうと、二人の前のソファーに座る。
「初めまして、カメリア・スプレイズです」
グスターヴは驚く。
カルローナよりひとつふたつくらいしか変わらないが、訓練所を管理している事実に。
「お……お忙しいところ、大変恐です。今回、娘のカルローナを連れてまいりました」
早速要件を切り出すグスターヴ。
手短に失禮の無いように、娘を訓練所にれてほしい旨をカメリアに伝えた。
「――そうなんですね。わかりました」
「それじゃ、れてもらえるので!?」
「まずは、ご本人と話しさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ!」
そういうと、グスターヴはカルローナの背中に手をやりカルローナをカメリアに紹介する。
「カルローナさん……でしたね?あなたは霊使いになって、何をしたいのですか?」
「はい。それは……」
當たり障りのない言葉をカルローナは紡いでいく。
決して、自己のでなく周囲に役立てるためなど、面接における”きれいごと”を口にしていった。
何度か質問と応答をやり取りして、カメリアもその容にうなずく。
「……それでは、カルローナさん。最後に一つお聞きします」
「はい」
ここまでの回答は妥當であった。
さすが商人の子と言わせるくらいの、しっかりとしたよい回答であったと隣にいるグスターヴも心の中で評価している。
カメリアは最後の質問を投げかける。
「あなた、お父様のこと……お好き?」
――!!!!!
一瞬、心の波が荒立ち本能がその回答を答えようとするが、理がそれを抑えて本來この場で答えなければならない最適解を口にする。
「――はい。好きです」
し返答が遅れたじもするが、自の心の中だけなので外見上ではまるで問題のない速さでの反応時間だった。
そのはずだった……
「有難うございました」
カメリアはテーブルの前の紅茶を一口含んで、口の中をらせる。
そして落ち著いて息を吸いこんだ。
「――殘念ながら、あなたを訓練所にけれることはできません」
カルローナは笑顔のまま、何を言われたのか分からない。
次第にが急に息苦しくなるのをじ、手の中に汗が滲む。
本人の代わりに、父親のグスターヴがその理由を問う。
「カ、カメリア……さま。な、なぜ、ダメなのでしょう?何が……いけなかったのでしょうか??」
「カルローナさん。あなた、こんなに父からのが向けられているのに、何故それを無視しているのですか?」
カルローナは何を言われているのか、よくわからなかった。
グスターヴはその言葉に、これ以上何も言えなくなってしまった。
「え……あの、それは、最後の質問の……返事がし遅れたからです……か?」
カメリアは、カルローナに可哀想というの眼差しを向ける。
「あなたは、そのことにすら気付いていないようですね……とにかく、わざわざご足労頂き申し訳ございませんが、けれることができませんので」
そういうとカメリアは席を立ち、二人に一禮して退室した。
カルローナは唖然とした表のまま。
グスターヴはカメリアに謝し、涙を流した。
二年が経過した。
グスターヴの商売は、順調であった。
カルローナも手伝っており、霊使いの一件から人が変わったようだと周りからの聲が聞こえてくる。
ギルドからの紹介で、一人雇ってほしいとの連絡が來た。
彼の名はグリセリム・スプレイズといった。
商売を行っているが、なかなかうまくいかずレイヴェン家で修業をさせてほしいとの依頼だった。
――スプレイズの者か
グスターヴは喜んだ。
つながりが持てるとかではなく、あの時カメリアに気付かされた時からカルローナは変わった。
その恩返しができることに対して喜ぶ。
”恩は遠くから返せ”
グスターヴは従業員たちに、常に言い聞かせている言葉の一つだ。
それは商売の中で、重要な生きるでもある。
グリセリムはぐんぐんと、グスターヴの知識と経験を吸収していく。
そして、一年足らずでグスターヴの側近(右腕)ともいわれるくらいになるまでに長した。
ある日事件は起こる。
グリセリムがる以前、片腕だった幹部が報を流出させてグスターヴの商いに大きな損害をもたらそうとした。
それにいち早く気付いたグリセリムは、それを阻止することに功する。
犯人が元幹部だったことも突き止めて、警備隊に突き出した。
このことをグスターヴは謝し、將來的に店を譲ろうと提案した。
しかし、グリセリムはそれを斷る。
今ではギルドで中心的な位置にあるグスターヴの店を、一年ちょっとの若者に譲るとなると大きな混を招く結果になると判斷。
それに、自分は修行をさせてもらっているであり、いつかは自分の家の商売を継がなければならない。
そういう理由からグリセリムは斷ったが、グスターヴはスプレイズ家からの二度の恩を返さないわけにはいかないと、何かないかと考える。
――!
グスターヴはひらめいた。
「グリセリムよ。うちの娘を嫁にもらってくれんか!?」
そうすれば、スプレイズ家とレイヴェン家は親族となりより繋がりが強くなる。
そして、スプレイズ家に何かが起きた時には親族を理由に助けることができると考えた。
混したのはグリセリム。
まだまだ一人前ではないと思っていたので、家庭を作るのはまだ早いと思っていた。
しかし、仕事ばかりで出會いはなく、この先家庭を持てるのかという不安もあった。
それに、いまのカルローナはとても魅力的なであった。
仕事もでき、気配りもできる。
信頼もあるし、ちょっとした野心家でもある。
グリセリムはカメリアをいころから見ていたので、活発なが好みだった。
「あの……し、考えさせて……ください」
グリセリムは目線をカルローナにやり、その視線に気付いたカルローナはやや照れたようにうつむいた。
グリセリムとカルローナが式を挙げるのは、その日から數か月後だった。
カルローナはグリセリム家でも、しっかりと働いた。
家のこと、店のこと、近所のことも。
頑張りすぎて、無理にでも休むようにも言われる始末だった。
そう――おなかの赤ちゃんのためにも。
待の子供が生まれる。
二人は相談して、名前をアイリスと名付けた。
そこからだった。
カルローナは豹変する。
何が何でもアイリスを霊使いにさせようとするカルローナ。
それを止めようとするグリセリム。
毎日毎日、喧嘩が続く。
グリセリムはグスターヴに相談するも、何かを思い出して怯えたように役に立たなかった。
グスターヴも年を取り、もうカルローナに何かを言うこともできなくなった。
グリセリムは、離婚も考えたがアイリスのことを考えると思いとどまる。
そして、月日が流れアイリスはモイスティアの訓練所にることができた。
そのままラヴィーネの訓練所にも行くことが決まる。
…………………………………………
「……アイリスは今回、霊との契約が立せず……その後、あなた方もご存じの通りの狀況です」
ハルナは、何も言葉にすることができなかった。
いま何か言葉を口にすると、全てが偽善に思える。
何より、のグラスの中の水が溢れそうで零さないようにするだけで一杯だった。
「わたしでは、カルローナの傷を癒すことは出來なかった……ひとりの人も救うことのできなかった……無力な男……です」
「グリセリム……」
ティアドは、ハンカチを出して男の涙を拭う。
そんな中、新たに一つの馬車がエントランス前に停まる。
質素な作りにしてあるが、その素材は一目で高級なものとわかる。
者が扉の前に踏み臺を置き、開かれた扉からひとりの翁人がメイドに連れられて降りてくる。
その人は、グスターヴ・レイヴェンであった。
嫌われ者金田
こんな人いたら嫌だって人を書きます! これ実話です!というか現在進行形です! 是非共感してください! なろうとアルファポリスでも投稿してます! 是非読みに來てください
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