《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

「グ……グスターヴ様!」

グリセリムは長椅子から立ち上がり、急いでエントランスまで降りていく。

エントランスの馬車は、駐車場の広場に移していった。

そこにメイド二名と、シンプルな紫のローブを羽織ったご老人が口に立っていた。

背中はやや曲がっていたが、杖を用いることにより自の足で立つことはできる。

段差は人の手を借りなければ不安定であるが、平坦な床での歩行は問題がなかった。

しかし、扉は空いているがなかなかってこない。ることを戸っているようにも見える。

グリセリムはご老人を気遣いゆっくりと近寄り、視力の落ちたご老人の近くに顔を寄せて話しかけた。

メイドは顔を近づける相手のことを知っていたので、その行為を制することなく見守った。

「グスターヴ様、グリセリムです。ご無沙汰しております」

名前を呼ばれた老人は顔をあげ、やや白く濁った眼で名を呼んだ人をみる。

「……ぉお、グリセリムか。久しぶりじゃな。近くに住んでおるのに、なかなか會う機會がないのぉ」

「グスターヴ様もお元気のようで何よりです……それに、ご足労頂きありがとうございました」

「いや、こちらこそ知らせをもらって助かった。あれでも、我が娘だからな……」

グスターヴを呼んだのは、グリセリムだった。

ティアドから連絡をけた際に、親且つギルドの長であるグスターヴに一報れていた。

グスターヴはギルドに所屬しているメンバーだけでなく、その家族に対しても便宜を図っていた。

家族の大切さを知る人、だからこそ。

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「しかし、我が子は……」とギルドでは誰もが思うことであったが、口にするものはいなかった。

遅れてやってきたティアドも、グスターヴに挨拶をする。

「このような場所までご足労頂き、有難うございます」

「これはこれは、ティアド様。この度は我が娘の愚行によりご迷をおかけしておりまする……」

「いえ、まだ取り調べを行っておりませんので事がはっきりとしておりません。……ともかく、正式な結果と報告が出るまでお待ちください」

ティアドはご老人にそう告げて、隣のメイドに合図をし詰め所の奧にある待機室までお連れするように促した。

メイドはグスターヴの背中に手を添え、導を開始する。

數回杖の音がエントランスに響き、遠ざかろうとしたその時。

「娘と會うことは……可能ですかのぉ?」

ティアドは警備隊を呼び、確認する。

本來では容疑者と家族を面會させることは難しいが、何かあった場合、ティアドは責任を取るとのことで面會が可能となった。

條件としては警備隊の立ち合いの元、家族のみということで、家族はグスターヴとグリセリムとなった。

しばらくして、面會の準備ができたと待機室に連絡があった。

グスターヴはグリセリムに付き添われて、面會室へ向かった。

面會室の中にはテーブルがあり、仕切り版のようなものはない。

こちらからのり口にはテーブルが二腳用意されている。二人はそれぞれに著席し、テーブルの向こう側の扉が開くのを待つ。

――カチャ

目の前の扉が開き、前後を警備隊に挾まれた狀態でローブのフードで顔を隠されたまま室する。

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腕はに固定されるようにロープで縛られ、手首も同様に縛られて前の警備隊が握っていた。

警備隊に支えられ、ゆっくりと椅子に著く。

フードをめくられて、その顔を確認させられる。

「この者……カルローナ・スプレイズで間違いないか?」

「はい、間違いありません」

警備隊からの質問に応じたのは、グリセリムだった。

カルローナは顔を伏せたままだったが、グスターヴは衰えた視力でその顔を眺めている。

「……カルローナ」

老人は、震えてしゃがれた聲でつぶやいてしまう。

その聲に反応するように、伏せた顔が徐々に目の前を向く。

「お……おとう……さま……」

「カルローナ……おぉ……カルローナ……」

娘の口から父と呼ばれるのは、何年ぶりだろうか。

その喜びをかみしめるように、涙聲で何度も繰り返し娘の名を呼ぶ。

「……助けてお父様。……帰りたい、昔のようにみんなで仲良く暮らしたい……あぁ、アイリス……ごめんなさい……アイリス」

ようやく落ち著いてきたのか、カルローナはまともな言葉を話し始めた。

「……カルローナよ、我が最の娘よ。まずは、この取り調べに対し、しっかりと協力しなさい。そして、噓偽りなく全てを語りなさい。自分の起こした言は取り消せぬが、その後の行が己の価値を決めるものだよ」

その言葉を聞き、カルローナは頷いた。

「そして、お前が無事に帰ってくることを信じて、いつまでも待っておるよ……私のカルローナ」

そこで、時間が面會の時間が終了となり、奧のドアから合図するノック音が聞こえる。

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立ち上がり、二人の警備隊に連れられカルローナが退出する。

その背中に、グリセリムが初めて言葉を掛ける。

「……カルローナ。アイリスは無事だ。また一緒に暮らそう……三人で」

小さく頷いたようにも見え、再び被せられたフードのから一粒涙が零れ落ちるのが見えた。

數日後、王國へ報告を行いその返答があり、カルローナの取り調べが始まった。

王國への報告に対する返答の容は、次の通りだった。

”本事案はまず、モイスティアで調査を終え一度王國へ報告が必要である。その後、その結果を元にさらに王國で取り調べを行うか刑を決めるかの判

斷が行われる”

とのことだった。

その報を聞いて取り合えず、すぐに極刑にならないことに一同は安心した。

取り調べを擔當する、警備隊員が椅子に腰を掛ける。

そして、テーブルの上に火のついたろうそくを手前において準備を整え話しかけた。

「では、話してもらおうか。いったい何があったのかを……」

――――――――――――――――――――――――

あの日、アイリスから始まりの森で契約できなかった連絡をけ、カルローナはモイスティアからラヴィーネに公共馬車を借り切って向かっていた。

その道中、休憩所においてカルローナに接近してきた人がいた。

黒いローブを纏った、不審な二人組だった。

「……あんた、カルローナさん……だろ?」

カルローナはその聲かけにじることなく、無視をする。

「おいおい、話くらい聞いてくれよ……ったく。」

「そんな話し方だからダメなのよ、アンタは。 ……カルローナさん、あたし達は今の霊使いの制度に疑問を持って何とかできないかと考えてるんだけど……

「……あなたたちの戯言を聞いている暇なんてないの。消え失せなさい」

そういうと、カルローナは馬車に乗り込もうとした。

「……あんたの娘、霊との契約に失敗したんだろ? 俺たちなら、霊使いにしてやれることができるんだけどねぇ」

カルローナの乗り込みかけたきが止まる。

(お!喰らいついた)

男が心の中で笑い、それを逃さずにもう一人が聲を掛けた。

「あたし達、もう數日ここにいるからさ。もし必要になったら帰り路にでも聲を掛けてよ」

その言葉を聞いてから、カルローナは馬車のドアを閉めて者に出発させた。

何か引っかかると思いつつも、先ほどの者たちの言葉が耳に殘った。

馬車はラヴィーネに到著し、アイリスと合流する。

アイリスから、霊使いになるための條件を聞く。

それによると、あと2回けることもできるが、次にまた選ばれるとは限らない。

カルローナはアイリスを一旦宿に帰して、一人でフリーマス家ともう一度契約の機會を與えてもらう渉をすることを決意する。

(確か、あの家はスプレイズ家に頭が上がらなかったはず……)

その理由はハッキリとはわかっていないが、つけ込める隙があるなら利用しない手はない。

そうして、馬車をフリーマス家に向かわせた。

結果は、……失敗。

流石のカルローナも王國の名を出されたら、従わない訳にはいかない。

引っ込みがつかず、威圧的な態度をとってしまったがそこは問題ないと考えた。

しかし、アイリスをこのまま置いておく訳にはいかない。

もしかして自分の行いにより、居場所をなくしてしまっただけでは……

その思いを振りほどいて、カルローナはアイリスを連れて帰ることを決意する。

自分の夢でもあった、霊使い。今は娘にその思いを託している。

今回のことで、その機會を逃してしまったが大きい。

またしても、失敗。

様々な思いが頭の中を巡り、一つの言葉が記憶の中から浮かび上がる。

――行きの途中で出會った二人組

その馬車の移の途中で、カルローナはアイリスに問う。

「あなたは、まだ霊使いになりたいの?」

「……お母様がむのであれば」

「そう……」

カルローナの中で、何かが外れる音がした。

途中の休憩所に立ち寄る。カルローナは馬車から降りると、それを見た二人組が近づいてくる。

「……ごきげんよう、カルローナ様」

「挨拶はいいわ。ところでこの前の話しは本當なの?霊使いにできるって」

小さい方のローブを著たフードの中に隠れた表が緩む。

「わかりました。それでは、さっそく移しましょう。場所は始まりの場所で」

「あそこは、國が管理している場所。その場所に何か起きた場合、厄介なことになるのよ。他の場所でできないの?」

「そうですか、できればその場所がよいのですが。……それではその近くで儀式を行いましょう」

「私たちは単獨で、移します。始まりの場所のり口で落ち合うことでよいかしら?」

二人組の男の方はやや不機嫌な顔をしたが、もう一人がそれに対して答える。

「えぇ。では、始まりの場所の付近で合流しましょう」

そういうとカルローナは馬車に乗り込み、者にラヴィーネ方面へ戻るように伝える。

馬車はラヴィーネのり口から離れた場所に停車する。

本來の道では警備隊に見つかる恐れがあるため、森の橫道からっていくことにした。

そして、アイリスに確認しながら始まりの場所まで徒歩で向かった。

「そろそろ……種を用意しとかないとね」

ヴェスティーユはそう告げると、やや広い草木の広場で立ち止まった。

「出でよ……悪魔の従者よ」

黒いエネルギーの塊が、渦を巻いて球狀を形する。そこからさらに変形し、小さいな悪魔が姿を現す。

その姿が降り立った場所の草木は枯れ、濃度の強い中心部は既に砂漠化していた。

それは近隣の生命力を吸い盡くすかのように徐々に拡大していく。

ヴェスティーユはインプを掌に載せ、それをもう一方の手で重ね合わせつぶしていく。

開くと、掌の中には始まりの場所で見られたの玉のような大きさの黒いが出來上がる。

「こんなのれられたら、普通の奴だと一瞬にして気がおかしくなってしまいそうだな……」

その様子を隣で見ていた、ディゼールが脂汗を流しながら口にした。

この小さな容積に、それ程の悍(おぞ)ましい瘴気が漂っている

「……ふふふ。霊もインプも不安定で変わりないものよ。所詮、エネルギーの塊なのよ」

そういうと、ヴェスティーユは懐の瓶に出來上がったエネルギーれて蓋をする。

瓶を懐にしまい込み、二人組は待ち合わせをしているカルローナを探しに歩き始めた。

始まりの場所の周囲を歩いていると、人影を見つけて近づく。

待ち合わせをしていた、カルローナとアイリスだった。

ヴェスティーユは、周囲を警戒するも他の人の存在は見當たらない。

「お待たせしました。そちらが、今回契約される方ですか?」

「そうよ、私の娘……アイリスよ」

(怖い怖い……自分の娘かよ……。まぁ別にどうでもいいんだけどな……)

「それで、どうすれば?」

「今回は特別な方法で霊と契約しますので、し辛いかもしれません。でも、ご安心を。徐々に慣れてきますので、そうすればになじんできますから」

懐から、先ほどの瓶を取り出して見せる。

それを見たアイリスは、震え出した。

「……お母さま……あれは?……怖い」

後ずさりするアイリスの後ろに立ち、カルローナは止める。

――!?

アイリスは、驚いた。

母親が何をしているのかわからなかった。

「お……お母さま!?」

カルローナは後ろから羽い絞めにする。

ヴェスティーユは、フードの下から笑みをこぼし瓶の蓋を開けた。

黒いは不規則なきで浮遊し、狙いを定める。

そして、アイリスの元をめがけて突進した。

「え?……助けて……誰か……!?」

――スッ

―――!!!!!!

の中にった途端、衝撃波が生じた。

後ろにいたカルローナは吹き飛ばされ、気を失ってしまった。

―――ぅぎゃぁああぁあぁああ!!!!

苦しみもがくアイリスは、中から何かを追い出そうと掻き毟りのたうち回る。

「……だすげで……おがぁざ…ま……」

痛みに耐え、這いつくばりながら、気絶しているカルローナ方へ向かう。

母親ならこの痛みから、助けてくれると信じて。

しかし、カルローナは反応することがなかった。

「ぅぅ……お……がぁ……さ……」

助けを求めてばした手も母親には屆かずに、アイリスの意識はそこで途切れてしまう。

「おい……大丈夫なのか?」

「人を殺しても平気なくせに、何言ってんのよ!……大丈夫よ、気を失ってるだけだって。闇のオーラがを徐々に制圧しているのよ。こういう時は無駄に抵抗するほど痛みが増すのよ」

「そ……そういうもんなの?」

「とにかく、この子はそのままにしておいて、この森の元素を吸い盡くしてくれるといいわね。さて、このオバさんをさっさと運ぶわよ。聞きたいことがいろいろとあるんだからね」

カルローナは意識を失っている間、夢を見ていた。

姿は見えないが、アイリスがまだ赤子でずっと泣いている。

母親へ助けを求める泣き聲。

(……アイリス、どうしたの?……お腹空いたの?……それとも眠いの?)

カルローナは泣き聲の姿を探す。

しかし、泣きやむことはがなくいつまでも続いていた。

起きているのか、眠っているのか。

はっきりとしない時間が続く。

時々、何か聞かれている。

自分でない誰かがそれに答えているが、その聲はまさしく自分の聲。

それは本當に自分なのか?

……わからない。

知らない人たちが、自分の前に跪いている。

自分でない自分が、誰かに命令している。

でも、何も考えなくていいんだ。

このまま、目を閉じててもいいんだ……

……ぁぁ、ねむい

……このまま……もう……起こさないで

急に視界が開ける。

目の中にが差し込む。

どのくらい眠っていたのか……

――!?

(……が……かない)

カルローナのは衰弱しきって、腕を上げることも困難なほど衰弱していた。

に目が慣れてくると、目の前にあの二人組の姿がぼんやりと映る。

「ようやく起きたのね」

「こ……ここ……は……」

聲を出すだけでも、酷く疲れる。力を振り絞り、二人組に問う。

「ここは、アンタが用意してくれた隠れ家だ。ここでいろいろと活させてもらったが、ちょっと事が変わってね」

――?

ディーゼルの言葉の意味が、よく分からない。

(私が用意したとは、一?)

息を整え力を貯めて話しかけようとするカルローナを、ヴェスティーユは手を挙げて制した。

「……あなたは、何を言っているか分からないでしょうね。頭の中をしいじって、らせてもらったわ。周りから見れば、全てあなたが指示したかのようにするために……ね」

「……それじゃ今までありがとな。まだ食料とか殘しておくから、食べれるようなら食べな。そして、けるようになったら狀況を確認してみるといい」

「その事実をけ止めることができれば……ね。それじゃ、あたし達はここで」

カルローナに背を向けたまま後ろで手を振り、部屋から出ていく二人組。

いま、自分のに何が起きているのか。

緩み切った頭を必死に活させ、狀況を整理する。

まず、やらなければならないことは……

い頃の父の言葉が甦る。

『――困ったときは、食事でお腹を満たしなさい。そうすれば幸せな気持ちになって、いい考えも浮かんでくるさ!』

なぜ、こういう時に嫌っていた父親の言葉が浮かんできたのか。

そういえば、困ったときはいつも父親が、聲を掛けてくれていた。

うっとおしかった。

近寄ってほしくなかった。

聲を聞くのも嫌だった。

よく考えてみると、商売が軌道に乗り始め忙しい時期だった。

家には人の出りが激しく、相談に訪れるひとりひとりに真剣に対応していた。

それでも、自分のに何かあるといつもそばにいてくれた。

そして、優しい言葉をかけてくれて、生きるヒントも教えてくれた。

(私は、お父様の何が嫌いだったんだろう……)

もう、それすらも思い出せない。

ここ數年ずっと、顔も見ていない。

どうして、いま助けに來てくれないのか。

(私が遠ざけていたのね……)

カルローナは涙をぬぐい、大きく息を吸い込みとめる。

今出せるありったけの力で、椅子から降りた。

――ドタっ

を支えきれず倒れこむ。

それでも、全を使ってを引きずって食べがある場所を目指す。

ようやく手にしたのは、數日経ってカチカチになったパン。

気の多い場所のようだが、カビが生えていないのは幸いだった。

飲みもなく、そのパンを口にくわえる。

噛み切ることも、一苦労だった。

何とか咀嚼し、それを飲み込む……

――!!

胃からけ付けられず、嘔吐する。

その際にの中が切れてしまったのか、赤いが混じっている。

カルローナは、小さく噛みちぎりしずつ飲み込むようにした。

は戻そうと反応するが、必死にそれを抑えこむ。

時間をかけて、何度か繰り返す。

そして、目を閉じて眠りで回復する。

目が覚めることにホッとし、また食事をとる。

數日間繰り返し、ようやくかせるようになった。

筋力は衰えているが、くことはできる。

ここを出て、誰かに助けを求めよう。

そう考えた時、どこからか発音が鳴り響いた。

近代では大きな爭いはなかった。

しかし、この発音は大きな建を破壊するには十分な発量で生じた音だった。

二階程の高さを上り、小さな小屋のような部屋にでる。

外に出ると、ここはかつてギルドの保管庫として、山を削って作られたものだった。

現在では、耐久の問題で放置させられていたものだった。

そこから遠くをみると水の町でも目立って見える、ティアドの屋敷から煙が出ていた。

よろけながら、なんとか町の中まで歩いていく。

そこから見上げた、屋敷は2階の一部が完全になくなっていた。

町の住人はざわめく、その中で信じたくない言葉が聞こえた。

「どうやら、スプレイズ家の爭いでカルローナの命令で襲撃を行ったらしい……」

と。

(違う…!……私じゃない!!)

ぼうとするが、ここで聲を出すと見つかってしまう可能がある。

――カルローナは逃げ出した

に隠れ、うす汚い通りの中を選んで。

ようやくたどり著いたところは、先ほどの保管庫の中。

何が起きているのかもうわからなくなった。

そして、なぜ逃げなければいけないのかわからなくなった。

確かに、本家のティアドに対して嫉妬をしていた。

だが、何かをするという愚かな行為までは考えていなかった。

(このままでは、見つかってしまう……とにかく、この町から逃げ出さなければ)

保管庫の中を歩き回ると、隠してあった扉が見つかる。

その扉を開け、奧に進んでいくとそこは、祠になっていて森の中につながっていた。

(どうしよう……これから)

食料はもうすぐ底をついてしまう。

それよりも、アイリスはどうなったのか。

私のせいで、グリセリムや父が疑われてはいないか。

その狀態で幾日が、過ぎていく

幸いなことに、まだこの場所は見つかっていない。

(もう疲れたわ……)

地面に橫たわり、目を閉じる。

深い眠りに著こうとした

――その時

「おい!誰かいるのか!!」

カルローナはその問いに返す力もなかった。

瞼も重く、開かない。

誰かが近づいてくる、気配はじる。

「――人だ。人がいるぞ!!」

そこでカルローナの意識は途切れた。

          

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