《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》
アーテリアはエレーナの気持ちに配慮するも、今やらなければならないことを優先させる。
「エレーナ……あなたの気持ちは良く分かったわ。ただ、今は王都に行くことだけに専念しなさい。でないと、他の二人が危険になることも考えられるのよ」
オリーブは急な展開に追いて行かれそうになるが、さすがアーテリアに一目置かれるだけの存在であり、冷靜に狀況を整理する。
エレーナが室してくる前にある程度の説明をけていたことや、この時點でハルナがいないことも平常ではないことが伺えた。
エレーナは落ち著きを取り戻し、これからどうするべきか考える。
いつもいたハルナの代わりに、オリーブがいる。
屬も違うし、行や判斷も違ってくるはず。
それに対し、この三人でどのように行しなければならないか……考えなければならないことは、いろいろとある。
「わかったわ……とにかく、王都に行くことを優先させるわ」
気持ちの整理ができていないが、やらなければならない。もう、日にちの余裕が無いのだから。
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「……アルベルトもオリーブさんも、よろしくね」
そう言ってエレーナは、一人ずつ手を握り協力を仰いだ。
そして、出発當日。
今日は朝から、雨が降っている。
しかも小雨で、傘が必要なのか必要ないのか意見が分かれそうな空模様だ。
馬車はすでにエントランス前に停まっており、その傍にはアルベルトとオリーブが待っている。
遅れてエレーナとアーテリアが姿を見せた。
「お待たせしました。それではいきましょう」
エレーナは最初に馬車に乗り込み、続いてオリーブとアルベルトが乗り込んだ。
者が踏み臺を仕舞い、前の席に座る。
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
アーテリアは馬車の窓に向かって、聲を掛けると中の三人がアーテリアに向かって禮をする。
馬車はゆっくりとき出し、屋敷の門へ向かう。
エレーナは自分の指にはめた指にれる。
これは昨夜、アーテリアから渡された霊の指だった。
なぜか、右手の中指の付けている部分がズキズキと痛む。
サイズが小さいというわけでもない。
ただ、それを外したがらないのはエレーナだった。
自分もやっと、大霊に認めてもらうことが出來るところまできた。
(母親と同じように、自分も加護をけたい……)
い頃からの夢に向けて、いま一つずつ進んでいる。
その思いから、エレーナは指を外すことをためらっていた。
馬車は関所を抜けて、森の中にっていく。
この短い期間で、いろいろなことがあった。
(三人で森の中にったのも……ついこの前だっけか……)
エレーナは、あの時の最後の夜のことを思い出した。
ちらっと前に座るアルベルトに目を向ける。
が、アルベルトは目をつぶっていた。
エレーナは、ガクッと肩を落とす。
その時……
――ヒヒーン!!
馬が急に暴れ出す。
エレーナたちも急に停止した勢いで、椅子から転げ落ちそうになった。
者が必死に馬をなだめる。
「どうした!?」
アルベルトが前の席の窓を開けて問いかける。
「……盜賊です!道が塞がれています!!」
盜賊たちは、六名だった。
どうやら、視界の悪い雨の日に襲ってきたのだろう。
「おい!中にいるやつは降りて來い!!」
「金目のを全部出しな!」
「結構いい馬車ですけど、どこかの偉い方じゃないですか?」
「今日はついてるな!」
盜賊たちは、好き勝手なことを言い始める。
アルベルトが腰を上げて剣を腰につけて、立ち上がろうとする。
しかし、エレーナはそれを制した。
「私の旅立ちの日に、よくも泥を塗ってくれたわね……」
馬車の扉を開けて、踏み臺分の高さを飛び降りた。
森の木々から雨粒が落ちてきて、あっという間にローブが濡れる。
「おい、お前……か?」
「一人で、どうした?もしかして、俺たちに可がってほしいのか!?」
盜賊どもは下品な笑い聲をあげる。
エレーナはロープから杖を出し、前に向ける。
そして杖の先から、大きな氷の粒を作り出し盜賊の一人……いや、後ろにいたもう一人も一緒に吹き飛ばした。
(――痛!!)
指の部分に激痛が走り、その指を反対の手で押さえてその場に蹲る。
殘された盜賊たちは、一瞬何が起きたのか理解できておらず唖然としていた。
そして、意識を取り戻した一人がんだ。
「……せ、霊使いだ!!!」
「お前ら、三人で同時に掛かれ!俺は馬の方を襲う!」
窓から見ていたアルベルトが、エレーナの様子がおかしいことに気付く。
「オリーブさん!エレーナの周りに、壁を作って!」
オリーブはその指示に従い、石の壁を作ってエレーナを盜賊から隔離した。
と同時に、アルベルトが馬車から飛び降り、両手の剣で馬を狙おうとしていた盜賊の腕を切り捨てた。
「――ぎゃああああ!!!」
腕を無くしたことに気付いた、盜賊の悲鳴が後ろから聞こえる。
アルベルトはエレーナに襲い掛かる盜賊に向かって走る。
び聲によりアルベルトの存在に気付いた盜賊は、ターゲットをエレーナからアルベルトに向ける。
三人のうち後方にいた男が、アルベルトに対しスリングショットで攻撃する。
アルベルトは腕につけていたラウンドシールドで、それを弾く。
そのまま一番近い盜賊に當たりし、レザーアーマーで覆われていない下半を切りつける。
「ひっ!助けてくれーーーーー!!!」
逃げようとする一人の盜賊の背中に、ラウンドシールドの後ろに隠してあったナイフを抜いてその背中に投げつけた。
大きな的に吸い込まれるようにナイフは命中する。
先程のスリングショットを持つ盜賊が、至近距離でアルベルトの頭を狙っていた。
「死ね!!!」
盜賊はアルベルトに向けた、引き切ったゴムの指を離した。
石は、引きばされたゴムのような戻る力を利用し放たれた。
――っ!!
アルベルトが回避の作を行おうとするしたが、ナイフを投げたモーションからまだ立ち直れてなかった。
アルベルトを狙う石が、目と鼻の先まで來たその時……
――フッ
石は空気の中に消えていき、アルベルトは質が移していたと思われる空気の流れを眉間にじた。
「……よかった、間に合って」
オリーブはそう告げる。
スリングショットを放った男は、ほんの數秒前まで勝利を確信していた
が、またしても目の前で何が起きたのかわからなった。
「がっ!!!」
後頭部をアルベルトの剣の柄で強打された男は、白目をむいて倒れこむ。
アルベルトはエレーナの元に駆け寄った。
「大丈夫か!?」
エレーナからは返事がない。
手を抑えていることに気付いた。
「手を見せてみろ!」
その手を離そうとすると、ものすごく痛がる。
「ちょっと我慢しろよ……」
「――ウッ」
そういって、抑えてる手を離した。
痛みは指からきているようだった。
アルベルトはエレーナの指から、指を外そうとする。
「――!!」
「外れないぞ!」
あまりの痛さに、エレーナの意識はここで途絶えた。
          
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