《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

「當面お前は、霊の力を使うことを許さん。このハイレイン・ミカの名において……な」

突然告げられた言葉は、まったく理解できないものだった。

しかも、聞いたことのない名前を盾にして宣言されてもエレーナにとっては”寢耳に水”だった。

「あの、何故なのでしょうか?いまは、全く痛みが起こらず霊の力が使えました。これは治していただいたからなのではないでしょうか?」

ハイレインは前髪をかきあげ、怪しげな片目でエレーナを見る。

「お前には、そう見えたのか。今のは私の霊の力を通してお前に渡していたのだ」

その言葉を聞き、エレーナとオリーブは驚く。

他者の霊の力を流してもらえることができるということに。

「勘違いしないでしいのだが、誰でもできるというわけではないぞ。今回は、その指があったからだ」

そういうと、ハイレインは自分の手にも同じものがあることを証明してみせる。

「そ……それは!?」

「どうした?驚くほどのものでもなかろう。水の大霊ガブリエル様にお許しをいただければ誰でも授かることができるものだ」

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エレーナは口をパクパクさせて、何か言おうとするが気持ちが言葉となって出てこない。

「……まぁ、そんなに數はないらしいがな」

未だアウアウしているエレーナを余所に、オリーブが話しかける。

「お話しさせていただくことをお許しください、ハイレイン様」

周囲でハイレインを見守る、従者たちはしイラッとする。

(どこの馬の骨ともわからない人が、我らのハイレイン様に話しかけるなど!)

そういう聲が聞こえてきそうな空気だ。

「……よい。どうした?」

ハイレインは、オリーブの発言を許可する。

「私は、今回エレーナ様の同行を許された霊使いのオリーブ・フレグラントと申します。わたくしのような者にも発言の機會を與えていただき、ハイレイン様の寛大な心使いに謝致します」

その言葉を聞き、ハイレインのとなりにいた従者が、フンっと鼻を鳴らす。

「それで、エレーナの痛みの原因については何か判ったのでしょうか……」

「それについては、正直なところはっきりとは判らん。……ただ、お前の霊が暴れておるのが気にはなっておるな」

霊が……暴れてる?」

「そうだ……お前は霊に対して、何か無禮なことをしてはいないか?」

エレーナはここ數日を思い返す。

が、特に思い當たることはなかった。

「はい、特には何も……」

「そうか。だが、今回は私の力で発現させた際には痛みが生じなかったという點からは、やはりお前の契約している霊に何らかの問題があるようだぞ」

(……私の……霊が!?)

エレーナは今までのことを思い出す。

何か、しでも変わったところがないか……

一つずつ、記憶のページをめくっていく。

「……あ。そういえば!」

エレーナは、ここ最近で一番大きな出來事を思い出し、両手を叩いた。

「ん、どうした?」

「わたし、大けがをしていたところをガブリエル様に助けてもらったみたいなんです」

——!!

周りの従者たちが、一瞬にしてざわめく。

中には、”このような小娘が!?”や”軽々しくガブリエル様の名を口にする不屆きものめが!”など、反応は様々だった。

その言葉は全てにおいて、批判的な言葉しか耳にってこなかった。

「黙れ。いつも言っているが、人を見下してみることはやめろ。もしこいつが、お前らよりも強かったらどうする?」

「も……申し訳ございませんでした、室長様」

ハイレインの橫にいる従者の取りまとめ役が詫びているが、やはり中には納得のいかない顔つきをしているものもいる。

ここにいる者たちは、エリート中のエリートが選ばれていた。

エリートとは言っても、実戦経験が富かといえばそうではない。

そして、頭脳が聡明であるかといえば、そうでもない……というところだった。

王都の中にある、貴族同士のよくある派閥爭いの”ガス抜き”のために設置されたような意味合いを含む施設であった。

ただ、それだけの閑職で納得できる貴族ではなかった。

そこで、元王選経験者のハイレインを長にして、救助に関する施設を作った。

そうすることにより、ある程度のプライドが保たれ貴族たちもの満足して従っていた。

逆に言えば、ハイレインの実力は、貴族たちを黙らせることが出來る程の人材である。

ハイレインも貴族の家ではあるが、そういう貴族間の爭いが嫌いだった。

そのため、地位や名譽を爭って競う集団から抜け出して生活をしていた。

だが、有能な人材は國が放っておかず、再度ジメジメとした環境の中にを置くこととなった。

王に、直接頼まれたのだから斷れるはずもない。

それが、また別なところから恨まれる種ともなるのだが……

「——で、お前はガブリエル様にお會いしたと?」

「はい。ですが、その時は気を失っておりまして……その様子を見ていたものから聞いた話だと、瀕死の狀態の私を助けてくださいました」

「そうか……確かに、ガブリエル様の加護には、治癒の能力を持つ。瀕死の狀態から回復させる程の力はないが、私ですら、傷程度の回復はできるのだしな」

エレーナは何か重要なを聞いた気がした。

「あの……それは、普通の……常識的なお話しなのでしょうか?」

自分の知識不足を恥じつつ問う。

「それは、違うな。大霊の加護をけられる人など、そうそういないからな。……そうか、これは事項だったな」

ハイレインは、自分の過ちを妖しい笑顔でごまかす。

タイミングよく、他の従者がハイレインに報告があると室してきた。

その話を側近が聞き、その容をハイレインに伝える。

何とも面倒な方法で伝えているが、これが貴族なりのやり方らしい。

「ほう、もう一人著いたようだぞ……お前はその者を知っているか?」

エレーナはある人の顔を思い浮かべるが、分からない振りをして聞き直した。

「どなたが、お著きになったのですか?」

「モイスティアから……、”ハルナ・コノハナ”という者だ」

エレーナの指をしている手が、ズキッと痛んだ。

          

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