《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

「到著でございます、ハルナ様」

「有難うございます、長旅お疲れさまでした」

「それでは、荷はわたくしが運んでおきますので、メイヤ様は手続きをお願いしても?」

「はい、ではハルナ様……參りましょう」

メイヤは馬車の扉を開け、ハルナに降りる様に促す。

足場の段差を數段降りて、ハルナは初めて王都の地に降りた。

続いてメイヤが降りてきて、エントランスの近くにいるメイドにティアドから預かった書簡を手渡し取次ぎをお願いする。

メイドはその書簡を持ち、建の奧へと消えていった。

馬車の方では、ソフィーネは重い荷を軽々と運んでいる。

次に乗り込んで下ろせば、荷降ろしの作業はお終いのようだ。

同じタイミングで、先ほどのメイドが白いローブを羽織った他の人を前にして戻ってくる。

その人はやや早歩きで、何か急いでいるじがした。

「ハルナ様……でしょうか。我が室長がお呼びですので、お部屋にお連れする前にご案させて頂きます」

その人はこちらに伺うともなく、勝手に事を進めていく。

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相手は、自分よりも格下であると言わんばかりに。

メイヤは、アーテリアからの書簡をこちらの室長に手渡すように言われていたため手間が省けると判斷した。

「ハルナ様、ご一緒しますので參りましょう」

その言葉にうなずき、ハルナは白いローブの人の後を追って進んでいく。

時間はし戻り、別の場所——

「それで……お前は、この人を知っているのか?」

再度ハイレインは、エレーナに問いかける。

知っているが、あのような別れ方をしどのような顔で會えばよいのか。

一方で知らない場所で、ハルナと一緒という安心もある。

葛藤しているエレーナに、厳しい聲が飛んできた。

「……何故黙っておる。室長様の問いに答えなさい!」

ハイレインの隣にいる人から、脅しを込めた聲で返答を急かされる。

「……はい。知っております」

「そうか……」

ハイレインは何か先ほどまでとは違う、エレーナの波立つを読み取る。

(もしかして原因は……これか?)

「よし。ハルナとやらをここに通せ」

「畏まりました……」

部屋に伝えに來た従者はお辭儀をし、ハルナをこちらの部屋に導しに戻った。

「お前は、そのハルナとやらと仲が悪いのか?」

「いえ……悪いというか……良いというか」

そんなはっきりしない返答に対し、オリーブが答える。

「そのようなことはございません!先日のモイスティアの事件の時も、お二人はとても活躍されていたと聞いております!そのようなお二人の仲が……悪いはずが……悪いなんて信じられません……」

オリーブが勝手に発言したことを、側近の従者はまた苛立ちを覚えるが、ハイレイン自は喜んでいた。

「そうか、お前たちは……信頼されているのだな」

ハイレインは、ほんの一瞬仲間のことを思い出し、自分の過去を懐かしんだ。

家や貴族のしがらみもなく、ただ仲間と旅をしていた日々。

決して楽なものではなかったが、信頼し助け合い目的を達していく。

あの充実は、もう久しく味わっていない。

(いや、もう味わうことはできないだろうな……)

そんなことをじながら、次の言葉を発する。

「そういえば、先ほどガブリエル様にお會いした……いや、治癒してもらったと言ったか?その後には、何か変化をじなかったか?」

「いいえ、特には何も。個人的に気になっていることですが……」

「なんだ?何でもいい、言ってみろ」

片目を出した方の瞳からは、喜びのが伺える。

今の周りの従者は気にし過ぎているのか、ハイレインに対して自分の意見を言わない。

今日王都についたばかりのこの娘たちは、気軽に何でも話しかけてくる。

それがハイレインにとっては、うれしい出來事だった。

「はい。痛み出したのは、指を付けてからなのです。この指は母親のアーテリアが所有しているものでした。以前この指を付けさせて頂いたときは、外すことが出來たのですが、今では外すことが出來ません」

——!

「外せ……ないと?」

「はい……」

エレーナの指が外せないことは、初めて聞く報だった。

勿論、指が外れない理由は知っている。ハイレインの指に付けられた指もそうだから。

ハイレインは年齢の割には満なの前で、腕を組んで考える。

(外れない指……霊の暴走……ガブリエル様との接……)

キーワードが頭の中で、パズルのピースのように存在する。

ただ、それら全てを繋げる理由がどうしても見當たらない。

(引っかかる……何か見落としていないか……)

——あ

ハイレインは、足りなかったパズルのピースを探すためにひらめいた。

「お前はどうやって——」

と、その時……

「——失禮します。ハルナ様をお連れしました」

その言葉にハイレインの発言は途切れてしまった。

側近の者が、その従者に室の許可を出す。

従者の後を追って、二人の人が扉のから姿を現す。

窓からのによって、その表が映し出された。

ハイレインはエレーナからハルナの方へ向き直し、客人に対して挨拶する。

「ようこそ、ハルナ。私がこの施設を管理する総責任者のハイレイン・ミカだ」

そういって、ハイレインは握手を求める手を差しべる。

「初めまして、ハイレイン様。ハルナと申します、よろしくお願いします」

ハルナは、ハイレインの差し出された手を取り挨拶する。

ハイレインは手を握ったまま、その後ろの人に聲を掛けた。

「お前は……メイヤ……か?」

メイヤはスカートの端をつまみ、一禮する。

「ご無沙汰しております、ハイレイン様。只今、フリーマス家でお世話になっております」

「そうかそうか!今は、フリーマスの家にいるのか!……ん?なぜ、モイスティアから來たのだ?」

メイヤはそう來ると思い、アーテリアからの書狀をハイレインに手渡した。

本來なら、側近の従者がけ取るのだが、今回は直接ハイレインがけ取る。

従者たちは、エレーナの際には反抗的なオーラを出していたがハルナの時には全くその気配を出していなかった。

それは、その後ろに元諜報員であるメイヤがいたことを知っていたからだ。

貴族たちは知っている。

諜報部に圧力をかけ、その結果その家が衰退してしまった過去を。

彼らは、”なんでも”知っている。

諜報部に歯向かうことがどういう結末になるか、間接的にも知ってしまった。

それに加え、武力でも敵わないことも知っている。

そこから貴族の間では、”諜報部には目を付けられない様に”という風が広まっていった。

ゆえに、ハルナの行が不愉快であっても元諜報員をその後ろに付けてきたものに対して、それを表や口に出すものはいなかった。

ハイレインはその書狀を開き、読み始めた。

……

「そうか……」

読み終えて、書狀を畳む。

ハイレインは先ほどの疑問とは別に、もう一つ追加したいパズルのピースを増やすべくエレーナに質問する。

「先ほどお前に仲が良いか悪いかを聞いたが、聞き方を変えよう」

ハルナはその言葉にきょとんとした顔で見つめる。

「——エレーナ。お前は、この”ハルナ”が憎いのか?」

          

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