《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

『そこからだ……我々が人間を襲撃の対象としたのは』

コボルドの長は話しを終えると、下にうつむいたまま目を閉じた。

この場所からは言葉が消え、風が草木をこすり合わせる音が不規則に続いている。

本來なら心地が良い音も、いまコボルドから聞かされた話しの容の前にかき消されてしまっている。

「あの、なんて言ったらいいか……」

ハルナの心の葛藤が、自然に口に出てしまった。

どうやって助けてあげるべきか、どうすればその辛い記憶から救ってあげることが出來るのか。

その手段が今のハルナには、何も思いつかなかった。

憐れむ視線が気に食わなかったのか、コボルドは怒った口調で返す。

『別に何かをしてもらいたいわけでも、同してもらいたいわけでもない。お前たちが人間を襲う理由が聞きたいといったから話しをしたまでだ……』

首を振り、やれやれといった態度をとり他の人間の姿を見渡す。

しかし、明らかにコボルドに対して同しているのが態度から見てとれる。

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「ごめんなさい……ごめんなさい、コボルドさん……ごめんなさい」

涙を流しながら、クリエは何度もコボルドに対して謝っている。

コボルドはしだけ、ハルナたちにこの話をしてしまったことを後悔した。

「人間も悪い者ばかりではないのです。そこは誤解しない……」

『そんなことはわかっている!そんな人間を信じ切っていた自分たちにも、腹が立っているのだ!』

コボルドの長はんで、ルーシーの言葉遮った。

『しかし……もう後戻りはできない』

そういってコボルドは手を前に出し、掌に炎を出して見せた。

そこには、真っ赤な炎の中に黒いをしたものが混ざっている。

「こ……これは、まさか!?」

エレーナたちにとっては過去に、何度か見覚えのある現象だった。

『これは霊様の力を裏切った罰ではないかと考えている。私のにも同じようなで、浸食が始まっているのだ。時々だが、自分の記憶をなくしてしまう……恐ろしい病気なのだ』

袖をまくると、三箇所以上に黒い痣が皮を浸食しているのが見えた。

その部位には、を覆う剛がごっそり抜け落ちている。

エレーナはハルナと目を合わせ、お互い頷く。

「フーちゃん」

「わかった!」

フウカは、コボルドの前に行き黒に浸食された腕を眺める。

『あ。霊様…… な、何をされ!?』

「ちょっとそのままにしてて。痛くないからね……多分」

『え?あ?それは……ちょっと!?』

そういうと、フウカは黒い皮を當てる。

コボルドはビックリしてピクッとを一瞬こわばらせたが、何ともないとわかってじっとその様子を見守る。

『あ……あ……』

その様子を眺め、コボルドは言葉にならない聲をあげる。

ルーシーたちも、初めて見る信じられないこの景を黙って見つめていた。

フウカの當てたの中で、コボルドの腕から黒いものが霧狀になりの中で蒸発していく。

「はい、おわり!えっと、他には?」

フウカが、次の場所を確認する。

コボルドは信じがたい出來事に、初めは黒だった皮をそっと手ででた。

呆けている長に、隣にいたコボルドががした。

『な……なにをする!?』

『長は、これで助かるんです!これでもう、この病気に怯えなくて済むんですよ!!』

コボルドは、嬉しそうに服をはぎ取っていく。

そこには、中に広がる黒いものが、を蝕んでいたことがわかる。

フウカはコボルドのを一周し、一通りその場所を確認した。

「はい。それじゃあ、いっくねー!!」

フウカは全ての、皮に浸食していた黒いものを全て蒸発させてみせた。

浸食された場所には、はないがこの狀態であれば直に生えそろうことだろう。

『有難うございます、霊様!』

二匹のコボルドは、フウカに向かって地面にひれ伏して謝した。

「や……やめてよ。ちょっと……はずかしいから」

フウカは照れて、いつも通りハルナの後ろに姿を隠した。

「これで大丈夫ですかね?フーちゃんも黒い影は見えなくなったって言ってますし」

『あなたは一?』

「普通の霊使いですよ?」

ハルナの代わりにエレーナが、自信満々に答えた。

「いやいやいや…… 普通の霊使いはそんなことできないでしょ!?」

ルーシーが正気を取り戻し、エレーナの言葉に返した。

「そうですよぉ。それって元素の力では……ないですよね?」

クリエが、目の前で起きたことを驚きを抑えながら検証した容を話す。

「あれ?お話ししていませんでしたっけ?話せば長くなるんですけど……」

とハルナが話しを始めようとしたとき、遠くから聲が聞こえる。

「……さまー!ハルナ様―!」

この聲はソフィーネだ。

聲は徐々に、近づいてくる。

コボルドは警戒するが、エレーナが仲間であることを告げて安心させた。

「ハルナ様、狀況が変化しました。現在西の王國が、森に火を放っています」

「えぇ!?あと一日くらい時間があったんじゃ?」

「はい。アーリスの報はそうでしたが、早めに行を開始したのではないかと予測します」

「どうして、わかったんですか?」

ルーシーは報を確認する。

渉を待っている間、アーリスと私でし先に進んで様子を見に行っていました。その途中で尾よりも東側のルートで黒煙が上がり火が放たれていることが確認できました」

一同は、頂上付近をみると山から黒煙が昇っているのが見える。

その下には赤い炎が黒煙に映り、火のが舞い上がる。

『な……何という……ことを!許さんぞ、人間どもめ!!!』

          

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