《問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『霊使いで再起しました。』》

『私は、この辺りで待つことにしよう。出なければ、人間どもが騒ぐことになるだろうからな……』

コボルドは、そういって一つ鈴をクリエに手渡した。

その鈴は中に”玉”がっていなかった。

不思議に思うクリエは、素直にコボルドに聞いてみた。

「あのぉ……これは?」

『我々にしか聞こえない音で鳴る鈴だ。代々コボルドの長にけ継がれているものだ。不思議なことにその音は我らしか聞こえないらしい。しかも、どこにいてもある程度の距離なら聞こえてくる。……何かあったら鳴らすがいい、すぐに駆け付けよう』

「ありがとうございます!」

クリエは半信半疑で、その鈴を振ってみる。

が、何も音がしない……

『大丈夫、聞こえるから……』

「――あ」

試しに振ってみたのがバレて、クリエの耳が真っ赤になる。

「クリエ様。そろそろ、宿場をさがしませんと日が落ちてしまいます」

「そ、そうですね……そろそろ行きましょう、ハルナさん!」

「え?……あ、はい!」

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カルディの言葉に、照れが一瞬にして吹き飛んだ。

急に振られたハルナも、対応が追い付いていない。

ハルナのには、その位疲労が溜まっていたのだ。

(とにかく今は休みたい……)

ハルナは心から、そう思った。

すっかり日が落ちて足元も見えなくなってきていた頃に、宿場の明るいが見えていた。

ふもとからゆっくりとしたペースで歩き始め、三十分もしたところで、ハルナたちは東側にもあった宿に到著することができた。

宿のり口は、日本風になっており暖簾がかかっている。

カルディは、その布を手でかき分けて宿の中にっていった。

「すみません、今晩泊まりたいのですが部屋は空いていますか?」

カルディが中にり、誰もいない店中に向かって聲を掛けた。

カウンターの橫のり口の先からは、人がいる音が聞こえる。

すると、そのり口から一人のエプロン姿の老婆が現れた。

「いらっしゃい、何人だい?」

「急ですみません……四名なんですけどぉ」

カルディに続く、クリエが答えた。

老婆はカウンターに行き、大きな予約臺帳の紙をめくる。

「……今だと、一部屋しか空いてないね。四人が寢れないわけじゃないけど、二人は床に寢ることになるよ。それでもいいかい?」

ハルナたちは顔を見合わせて、問題ないことを確認し合った。

その結果を、老婆に告げる。

「……そうかい。それなら、一晩一人銀貨五枚だね。四人で銀貨二十枚……前払いだよ」

カルディが代表して、代金を渡す。

「……十七、十八、十九、二十っと、確かに。部屋は、そこの階段を上がったところの目の前の部屋さ。カギはかからないからね。食事はこの奧で食べることが出來るが、別料金だからね。外で食べてもいいし、持っているものを食べてもいい。好きにするがいいさ……それと」

説明を聞きながら、二階に進んでいたが老婆の最後の言葉に足を止める。

「……あんたたち山を越えてきたんだろ?魔の臭いがプンプンするよ。まずは風呂にでもはいって、その臭いを落とすんだね」

そういうと、老婆はまた食堂の方へ戻っていった。

どうやら、一人でこの店を切り盛りしているようだった。

ハルナとしては、先ほどの魔の臭いがとても気になる。

(どんな臭いなのよ、一!?)

階段を上がりながら、ゆっくりと自分の周りの空気を鼻で吸い込むが、この宿屋の木と埃の匂いしかじなかった。

いっそのこと、近なソフィーネに聞いてみることにした。

「ねぇ……ソフィーネさん……」

「やはりお気付きになられたのですね……とりあえず、部屋にりましょう。その後で、対策を」

「は、はい……」

貝階段を上り、四人はドアの前に立つ。

念のため、周囲を確認してから、カルディが部屋のドアを開ける。

を部屋のなかにいれ、中の狀況を確認する。

何もないことを確認し、クリエたち中にるように指示する。

部屋は既に暗く、備え付けのオイルランプに明かりを燈してく。

これで、お互いの顔が見えるようになった。

ハルナはベッドの上に座りかけたが、先程の臭いが気になり椅子の上に腰を下ろした。

その隣に、クリエが寄ってきて座る。

落ち著いたところで、早速ソフィーネがハルナに話しの続きを持ち掛ける。

「ハルナ様、先程のお話しの件ですが……」

(相當、臭うんだな……こりゃ)

ハルナは、鼻をピクッとかして自分の臭を確認する。

「既にお気付きの通り、この店の者……かなりの練者である可能があります。油斷なさらないよう、他の方もお気をつけください」

「……やはり、ソフィーネ様もそう思われましたか?この微かなコボルド殿の香りを嗅ぎ分けるとは……ただ者ではないと睨んでおりました

「ほぇ……なんでそんなことがわかるんですかぁ!?やっぱりハルナさんも、すごい方なんですねぇ!!」

クリエは、ハルナのことをキラキラとした尊敬のまなざしで見つめる。

ハルナはその視線に困するが、自分の臭いのせいでないとわかってホッとした。

気持ちが落ち著くと、意識の上に上がってくるのは空腹だった。

「とりあえず、お風呂にって汗を流して下で食事にしませんか?」

ハルナは、新しく提案する。

するとカルディは一瞬驚きの表を見せ、納得する。

「なるほど……避けてばかりではなく、相手のところに飛び込んで報を探るというわけですか……流石です、ハルナ様」

何がどう勘違いされたのか分からないくらいに、キョトンとするハルナ。

「では、そうと決まれば早速行に移しましょうか?」

そうハルナをフォローをしつつ、ソフィーネは事態を進めることにした。

          

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