ブラック盜賊団を撃破した。

捕縛したボスや団員たちの見張りを村の若者たちに任せて、俺はアジトの奧に向かう。

捕らわれているはずの行商人一家を探すためだ。

奧に進むに連れて、異臭がするようになってきた。

「こ、これは……」

２人のが全に剝かれて、橫たわっている。

全が男たちのあれによって汚されている。

盜賊たちにされたのだろう。

年齢は３０代と１０代くらいか。

盜賊たちが話していた容から推測すると、おそらくは親子だと思われる。

し離れたところには、１人の男が橫たわっている。

こちらは服を著ている。

ただし、のあちこちが傷だらけだ。

顔も腫れている。

盜賊たちに暴力をけたのだろう。

彼らは３人ともぐったりとしていてかない。

しかし、どうやら息はあるようだ。

俺はまず、１０代のを起こすことにする。

「おい。しっかりしろ。助けにきたぞ」

「……ん、んん……」

が意識を取り戻す。

こちらを認識する。

「目が覚めたか」

「ひっ！　いやあああ！　だれかっ、助けて！」

はそう言って、暴れまわる。

「いや、俺は助けに來たんだが……」

「ち、近寄らないで！　だれか、だれかーー！」

はなおも暴れまわる。

ペチッ。

ムチャクチャに振り回された手が、俺にヒットする。

ううむ。

パニックで、俺も盜賊団の一員にでも思われているのだろうか。

確かに、俺の顔は爽やかなイケメンというよりは、荒々しい戦士といったタイプではあるが。

落ち著くまで待とうか。

しかし、村の男たちが待っているしな。

それに、このの両親の介抱も必要だ。

し強引にでも、まずは落ち著かせないと。

俺はの腕を摑み、押さえる。

「落ち著け。盜賊たちなら捕縛した。俺は君たちを助けにきたんだ」

できるだけ優しい顔をつくって、そう微笑みかける。

「……え？　助けに……。ほ、本當なの……？」

の腕の力が緩む。

目を見開き、驚いている様子だ。

「ああ。本當だとも。無事で何よりだ」

「あ、ありがとうございます。勘違いして暴れて、ごめんなさい」

がそう言って、頭を下げる。

し落ち著いてきたようだな。

「いいさ。混するのも當然だ。それよりも、君の両親を起こすのを手伝ってくれるか？」

「わ、わかりました」

がそう了承する。

そして、の両親を起こした。

混している様子ではあったが、命に別條はないようだ。

盜賊たちに汚されたを清めて支度をしつつ、し話をする。

彼たちは行商人一家として、各地を巡っていたそうだ。

そして、運悪く盜賊たちに襲われてしまった。

娘の名前はエミリーである。

「さあ。支度ができたのであれば、さっそくこのアジトから出ることにしよう」

俺は彼たちにそう聲をかける。

「わかりました。しかし、私どもには行くあてがありません。馬や高額品は、既に処分されてしまったようですし……」

エミリーの父がそう言う。

「し歩いたところに村がある。まずはそこに案しよう。村の若者たちを、このアジトの中ほどで待たせてある。きっと迎えれてくれるはずだ」

俺はそう言う。

お人好しの村というわけではないが、閉鎖的な村というわけでもない。

行くあてのない行商人一家を一時的に迎えれる程度であれば、してもらえると思う。

多難を示されても、俺が一聲かければ渋々でもけれてくれるだろう。

迷をかけるのは俺の本意ではないので、それは最後の手段ではあるが。

エミリー、それに彼の両親を連れて、アジトの出口方向へと戻り始める。

盜賊たちを捕縛している地點にまで戻ってきた。

村の若者の１人がこちらに気づき、聲を挙げる。

「リキヤの兄貴！　その人たちはいったい？」

「ああ、盜賊たちに捕まっていた行商人の人たちだ。馬車や高額な品を奪われ、行くあてがないそうだ。しばらく、村で迎えれてもらえないだろうか？」

俺はそう言う。

「リキヤの兄貴がそうおっしゃるのであれば、問題ありやせんぜ！」

「バカ！　お前の一存で決めることじゃねえだろうが！」

「でも、村長だってリキヤの兄貴の頼みなら無下にはしないと思うぜ」

「まあ、行き倒れの人をしばらくけれたこともあるし、今回もだいじょうぶなんじゃないか？」

村の若者たちが口々にそう言う。

おそらくはけれてもらえそうだな。

最終決定権は村長にあるようだが、前例もあるようだし問題ないだろう。

「よし。では、みんなで戻ることにしよう」

俺はそう言う。

そして、エミリーや彼の両親、村の若者、捕縛したブラック盜賊団の面々を連れて村への道を進み始めた。