《格闘チャンプの異世界無雙 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無雙する〜》79話 天井裏の不審者

「遅い……」

サキが退出してから1時間ほど経過したが、まだ音沙汰がない。

人を呼んでおいて待たせるとはどういう了見だ?

まさか、俺へ嫌がらせするために敢えて放置しているんじゃないだろうな?

地球でも、その手の人間はいた。

呼んでおいて待たせることで、格の違いでも見せつけようとしていたのだろう。

もちろん例外なく、俺は”対処”してきたけどな。

最強を目指す俺にとって、ただ待つだけの時間など無駄としか言いようのない時間なのだから。

(今回はどうしようか?)

この無駄に豪華な裝に加え、こうして待たされていることにより、俺から領主への評価はすでにかなり下がっている。

まだ一目も見ていないのに、だ。

とはいえ、この世界獨自の事や文化が存在する可能もある。

勝手に帰ってしまうわけにもいかない。

まぁ、仮にコイツが本當に俺を不快にさせたいだけなら……後先考えずにボコボコにするしかないかもな。

俺がそんなことを考えている時、天井から何やらささやき聲が聞こえてきた。

(おい……。どうしてアイツはピンピンしてやがるんだ?)

(分からねぇ……。あのメイドが用意していた茶には、確かに痺れ毒をれたはずなのに……!)

(クソッ!! どうなっていやがる!?)

どうやら犯人はコイツららしい。

普通なら絶対に聞こえないぐらいに小さな聲量だが、俺の耳は特別製なので聞き取ることが出來たのだ。

俺は視線をかし、天井を見る。

一見すると何の変哲もない天井だ。

しっかりとした構造であり、いかにも丈夫そうだ。

しかしよく見れば、ほんのしだけたわんでいる箇所がある。

そのたわみは數ミリ程度。

俺の眼なら見抜けるが、普通は気付けないだろうな。

おそらく、ちょうどたわみの上あたりに人がいるのだろう。

覗きらしき小さなもあいている。

俺はそれを通して、覗き人を見てみる。

(ほうほう……。30歳ぐらいの男といったところか?)

覗きは極小だ。

しかもこちらからは遠く、相手からは近い位置にあいている。

そのため、俺から視認できるのは相手の瞳程度だ。

判斷できるのは年齢や別、それに人種ぐらいだな。

(ひいぃっ!?)

(ど、どうした!?)

(あの男と目が合った! 気付かれているぞ!!)

(バカなことを言うな! そんなわけがないだろう!!)

天井裏からそんなささやき聲が聞こえてくる。

覗き越しに目が合ったぐらいでずいぶんな取りしようだな。

これでは期待できそうにない。

(この場から天井を襲撃して撃破するのは容易だが……)

ここは敢えて放置してみるか。

もしかしたらお仲間でも呼んでくれるかもしれない。

そうなれば、しは楽しめるだろう。

俺はそんなことを考えるのだった。

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