《遙か夢こうのデウス・エクス・マキナ》第六章 第二話 蒼い流星、灰の古星

「ふんぬっ!」

巨大な槍の穂先が目の前に飛んでくる、それをすれすれのところまで引き寄せをずらし避ける。通り過ぎた槍の穂先よりもを前に出し槍の柄の部分を脇下に抱え込む、そのままマキナの膂力を生かし持ち上げ重力に任せ地面へと叩きつける。

「ぐべっ!?」

相手の苦悶する聲を聴きつつ腰に攜えた短剣を素早く取り出し首元にある脈ケーブルを思いっきり切りつける。するとプシューと音とともに敵のハドワーカーのきが徐々に鈍くなり終いには停止する。

「私の勝ちー」

「しょっ、勝者!イゼ選手ぅ!」

縦席でどや顔をかましを張るイゼ、観客はあまりにも一瞬のことで脳の処理が追い付いてなかったのか一瞬の靜寂があったもののその後すぐに歓聲へと変わった。

観客に向かってどうもと言わんばかりにマキナの腕を振るイゼの様子に楓は苦笑いするのであった。

「イゼちゃんお疲れ様、一瞬だったね」

控室で水を飲むイゼのところに楓がやってくる。

「ん…まぁね!相手が隙だらけだったからだよ~」

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「本當に…?」

楓も試合の様子は見ていたが一瞬のうちに槍を摑み相手をたたき伏せるマキナの様子を見ていたが、通常の機の反応速度ではなかった。その後のケーブルを切斷するシーンでもスラスターを使っていたとはいえ相當の速度である。

「今日はこの試合だけで終わりだね、あとはまた明日」

「そっかぁ…殘念、もっとけると思ってたのに」

「あはは…」

苦笑いする楓はイゼにこの後のことを聞く。

「イゼちゃんはどうする?このまま試合見ていく?」

「ううん、楓の手伝いする」

「了解」

とのことなので一旦反重力車に戻りマキナのメンテナンスをしていく、今回の試合は頬の部分をかすっただけなので磨くだけであとは関節周りのメンテナンスぐらいである。イゼもニコニコしながら手伝ってくれたおかげですぐに終わった。その後晝食を取り再びコロシアムへと戻ってきた、朝より観客が増えており立見席ぐらいしか殘っていないほど大盛況である。ちょうど決著がついた様子であり歓聲が湧き上がっていた。

「勝者!圧倒的勝利、純平選手ッ!」

「あれが純平さんの乗る機かぁ」

「ビーストフレームか…珍しいの使ってるね」

ビーストフレームとは裝甲の下にある骨組み部分が二足歩行ながらも貓背の様態になっておりまるで獣のような姿勢を取るのがデフォルトの狀態であり、より頭が前めに出るのが特徴的でありその姿勢を取る機がビーストフレームと呼ばれている。因みにマキナなどの人間と同じような立ち姿をする機はヒューマンフレームと呼ばれる。

「モデルは…狼かな?」

「かっこいいねぇ、まぁマキナのほうがかっこいいけどね!」

対戦相手の機の様子を見ると無殘にも四肢をもがれ最後に頭部を取られたようだ、あのぽけぽけした純平とは思えない戦いぶりである。パフォーマンスも込めてるのだろうか、実際に戦いは見てはいないものの観客の盛り上がりようもイゼの時と比べて一段と盛り上がっている。

「今日の試合は…あと7戦もあるっぽいね」

「殘りの試合も楽しみだね」

先ほどの試合の機も片付けられ次の機がコロシアムってくる、このまま殘りの試合も二人は観戦していき今後の対策を練っていくのであった。

次の日、この日は2試合あり朝の夕方の試合である。この日の試合もイゼは難なく敵の攻撃を躱しつつ反撃で短剣を相手の機に叩き込みつつ2試合とも勝利を収めることができた。

「えへへ、今回も楽勝だったね!」

「マキナとイゼが強すぎるだけだよ…」

2試合とも楓は見ていたがやはり全的な能力を見てもマキナは頭一つ抜きんでていることがわかる。その戦いぶりはスマートながらも力任せな荒々しいものであった。

だが、次の試合はそう簡単にはいかないだろう。トーナメント表に目を落とす、次は準決勝でありそこに書かれていた次の対戦相手の名はイシュワル・ノックズ。年齢にして62歳、機戦で幾つもの戦場を生き抜いてきた老兵である。楓も生活してきた中で數度は彼の武勇伝を耳にしたことがある、そんな老兵が今度の対戦相手なのである。

なぜこんなところにいるのか、とっくに引退しているものだと思っていたのだが。何にせよ次の試合は簡単に終わることはできないだろう、この後兵裝の再確認をしなければ、そう考えた楓はイゼにノックズのことを簡単に説明しすぐに格納庫へと戻り対策を練ることを進めた。

すると楓とイゼが話していたところに一人の老人がやってくる。噂をすれば、イシュワル・ノックズだ。ほどよい付をしており顔にしわが多いものの、とても60代には見えない。

「お前さんが次の対戦相手か…」

「う、うん…初めまして、イゼです…」

「初めましてだな、ノックズだ。ふむ…先に言わせてもらおう、お前さんは儂に勝てない」

「へっ…?」

イゼの目がまん丸になる、それもそうだいきなり対戦相手が現れて挙句の上に勝てないと言われたのだ。ポカーンとしてしまったイゼの背中を楓が軽くひじで押して意識を戻させる、はっと意識を取り戻したイゼはノックズに向かって反論する。

「そっ、そんなことやってみなくちゃ分からないじゃない!私は勝つもん!」

「ふん、お前さんの戦い方を見ていたらわかる、お前さんじゃあ勝てん。なんでかわからんうちには一生勝てんじゃろうな、じゃあな」

「むうぅぅぅ…」

そう言ってノックズは雑踏の中へと去っていった。次の瞬間イゼが楓の方向を勢いよく向く。

「楓!」

がっと楓の肩を摑むイゼ。

「な、何!?」

「帰っていっぱい考えよう!」

「そ、そうね。有名人だから報は々あるだろうし…」

鼻息を荒くするイゼを先頭に急いで反重力車へと走っていくのであった。

帰ってきたイゼたちはまずは兵裝の確認からすることにした。今まで短剣オンリーで戦ってきたもののあのノックズには今まで使ってきたもの以外を使い不意を突こうという話に至った。そのためハドワーカーの前腕部のパイルバンカーに裝甲を追加し同時にシールドを裝著、また腰部分のスカート裝甲をショックガンのエネルギーパックに換裝。部の上側には小型ながらもそれなりの威力を持つショックガンを裝備。とりあえず裝備はこれで行こうという話となった。

あとはどうノックズと戦うかだが彼の武勇伝や畫に戦いが収められたものを発見し、それらを見て研究することで対抗しようということになったのであった。

次の日の夕方、準決勝戦前。

「楓、準備できたよ!」

「オッケー…ふぅ、間に合ったぁ」

イゼはすでにマキナに乗り込み準備萬全の様子だ。楓も急ピッチで進めた換裝により疲労の様子が見けられる。そうこうしているうちに場を促すアナウンスが放送される。

「それじゃあ行ってくるね!」

「うん、行ってらっしゃい。頑張ってね」

両者がコロシアム場し構えを取る。相手の機名稱はナイツキラー、どこが禍々しい印象をける機である。畫で見た通り大鎌を構えておりその姿勢からは隙をじ取ることはできない。

「では行くぞ小娘」

「ふぅ…よし、行くぞ!」

「勝負開始ィ!」

試合開始のサイレンが鳴ると同時に両者がき出すのであった。

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