《幻影虛空の囚人》
「學兵か?……いや、違う…ゼロの力に指向を與え、超高出力レーザーとして出したのか。」
「ちっ、わざわざ口に出して分析するほどの余裕があるとは……なっ!」
再びレーザーを出するも、今度は複數のレーザーを1本にまとめ威力の向上を図った。 
「おっと、これはしまずいかな?」
天野が対峙している敵……ツロフはエネルギーシールドを展開し、レーザーをけ止める。
「防いだか。つまり、この攻撃は効くという事だな?」
「ちょっと痛い程度だな。私の守りをかいくぐって當てたとしても大したダメージにはならん。」
「さすがは神様……いや、守人もりびとと言った方が正しいのか?」
彼……ツロフに聞こえるよう呟いてみると、彼の表がいた。
「守人もりびとの存在を知っているとは……誰のれ知恵だ?」
「私自わたしじしんが発見したに決まっているだろう?あまり舐めないで頂きたいな。」
もう一人の自分に教わったことではあるが、という言葉は飲み込んだ。同じようなものだろう。
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「そうかそうか…であれば、これも當然知っているだろう?」
──剎那。
視界からツロフが消えたかと思うと、無數のツロフの幻影が現れた。幻影の一つ一つに天野自が纏っているものと酷似した蒼のエネルギーが迸っており、それがただのまやかしでないと言うことを語っている。
「……ああ、當然知っていた。それに、その幻影……當てつけのつもりか?」
天野は瞳に蒼い炎を宿すと、あるはずの無い地面に深く足を踏み込んだ。
すると、天野の纏う蒼き炎が滾り、こちらもまた無數の幻影が姿を現す。
「ほう?贋作の力にしてはなかなかやるじゃないか。」
「そっちこそ、本來守らないといけないの力を借りるなんてやっていいのか?」
「どちらにせよここにあるのは力の斷片に過ぎない。本來の力の24分の1の力をさらに薄めて借りているだけだからな。」
「そんな小さな力でもこれだけの迫力と存在を持っているとはな…ふふ、やはりしいぞ、ゼロの力!」
「それをさせない為にオレがここにいるということを忘れてもらっては困るな!」
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次の瞬間、2人の姿は無數の幻影の中へと消えていった。
幻影たちはその一つ一つに意思が宿っているかのようにき、拳や腳を使った打撃に加え、ゼロの力を解き放つレーザーや多重複雑な魔法陣を展開し、空間そのものへ作用する力で幻影を消滅させていたりと、多岐にわたる方法で幻影同士の爭いが発していた。
そんな中で、ふたつの現もまた激しい攻防を繰り返していた。
天野はツロフの眼前へと迫り、ゼロの力で生した刀を振り下ろす。
が、振り下ろした刀はツロフの実ではなく、直前にれ替わった幻影へと直撃、幻影が霧散するのみであった。
「チッ……!」
追撃を危懼し、天野自も幻影と自分の位置をれ替える。瞬間移のようなものだ。
転移した直後、転移前に自分がいた辺りからとてつもない衝撃波が発せられた。おそらくゼロの力を凝、結晶化させたものを発させたのだろう。
「全く、末恐ろしいやつだ……」
「お前もなかなかのものじゃないか?」
「その通り、だっ!」
やはり、背後を取ってきた。
ツロフなら……彼と同一の魂を有するものならばそう來るだろうと思っていた。
ノーモーションで振り抜いた刀でツロフに攻撃を與える。決定打にはならないだろうが、ダメージを與えることは出來るだろう……
と、思っていたのだが。
「殘念だけど、そう簡単にやられる訳にはいかないんだな。」
────読まれていた。
ツロフはゼロの力で構された刀を、同じくゼロの力を纏った手のひらでけ止めていた。
「そして、ゼロの力の絶対量はオレの方が強い。」
ツロフが天野の刀に力を込めると、膨大な力の流に耐えきれなかった刀がパキンと折れる。
「莫迦な……紛いとはいえ同じ力のはずだ……!」
「フェイクとオリジナルだぞ?まさか、力のぶつけ合いで勝てると思ったのか?」
「デタラメが……!」
「デタラメ、か。ならもう一発サービスしてやろう。」
最後の言葉は、上手く聞き取れなかった。
突如腹部に走った鈍い痛みに思わずいてしまう。ツロフが突如出現させた刃が、天野の腹部を貫いていたのである。
「………っ」
聲にならない嗚咽がれ、思わずよろめいてしまう。
「やっと人間らしい反応を見せてくれたか、全く……」
ツロフは天野の鳩尾あたりに突き刺されていた刃を引き抜くと、天野のに続けざまに拳を叩き込む。
天野が纏うゼロの力は、その上位互換であるツロフの力によって々に打ち砕かれていった。
數多くいた天野の幻影も、一人、また一人とその姿を消していった。
対してツロフの幻影は次々に天野の周囲へと集まり、実のツロフに倣うように天野のへと拳を打ち込んでいく。
天野の纏っていた力はその輝きを失い、天野を守る鎧としての役割を徐々に失っていっている。
ツロフが、その幻影が打ち込む拳の一発一発が天野のを抉り、臓を潰し、骨を砕き、脳を揺さぶる。
あまりの連撃に、天野はその意識を手放す寸前であった。
「ここまでやってもまだ意識は保っているようだな……贋作とはいえ、腐っても同じ力というだけあるな。」
拳の勢いを一切殺さず、そう思案するツロフだったが。
「調子に……乗る……な、よッ!!」
「なっ───!?」
突如として、天野を中心とした大発が起こった。
蒼い閃と激しい衝撃波。
ツロフが咄嗟に展開したシールドをもってしても防ぎ切る事ができず、強すぎる発の威力に片腕を奪われてしまう。
が、すぐに二重、三重目のシールドを展開し、なんとかそれ以上のダメージを食い止めることに功した。
「ちっ、まさかゼロバーストを使うとは……やってくれたな。」
「こちらとしてもまさかこれを使うことになるとは思っていなかったよ。」
ゼロバースト。それは、集合點「ゼロポイント」の力をそのに宿すもののみが使うことの出來る起死回生の一撃である。自が纏うゼロの力の9割以上を外側に向けて解き放ち、強烈な発を巻き起こす。
同時にこれは世界そのものの崩壊をも招きかねない一撃でもあり、ゼロの力を得ると同時にそのものが無意識に理解する"じ手"の一つでもある。
「じ手を使ったな……天罰が下るぞ。」
「天罰?さっきまでの連撃で十分味わったさ。それに、お前自が天罰を下す側だろうに。」
放出した力を滾らせ、再びゼロの鎧を纏った天野が挑発してみせた。
ゼロポイントの力とは、無であり無限である。その力の一端でも殘されていれば、いくらでも復活が可能なのだ。
「言ってくれるじゃないか……ならばもう一度同じ目に遭わせてやろう。」
「その腕で出來るとでも?」
天野が嘲る。
「もちろんだ。腕一本失った程度でお前に負けていては、守人もりびとの仕事が務まらないからな。」
「私とて下っ端の守人もりびとなんぞに負けていられない。ゼロポイントのオリジナル…その全ての力が集中する神格領域への到達こそが私の悲願なのだからな。」
「……神格、領域?一何の話をしているんだ?」
「おっと、ゼロポイントの守人もりびと様にも知られていない報だったとは。口をらせてしまったかな?」
「お前がどこでそんな報を摑んだのか知らんが……ひとつ忠告しておくぞ。神格領域などという世界は存在しない。あらゆる世界はヒトの目に見える現世、ヒトの目に見えない虛世、そして今我々がいる狹間……この三つしか存在しない。」
「狹間、という空間だったのか、ここは。計類が全て狂ってしまっていたから分からなかったよ。」
その天野の態度に、思わず驚いてしまうツロフだった。
「狹間の存在すら知らずに、一どうやってここまで……」
「何をブツブツと喋っている?」
天野の拳がツロフの眼前まで迫っていた。
「……チッ!」
避けるのは無理だ。
そう即斷したツロフはバーストで奪われた左腕の回復に使っていたエネルギーをそのままシールドの展開に流用した。
力を練りきれていなかったせいか、展開したシールドからはミシミシと不穏な音が聞こえてくる。
「この程度のシールドなら、これで貫けるよな?」
ツロフがかろうじてけ止めた天野の一撃。それに気を取られすぎたあまり、彼がもう一方の手でかに充填していた超高出力レーザーの存在を見逃していた。
「……見事だ。これは、私も覚悟を決める必要がありそうだな。」
ツロフはそう呟くと、展開していたシールドを消滅させる。
「─────!?」
天野はツロフが咄嗟にとった行に驚いてしまう。ツロフは制を整えなおすために一度転移をするだろうという読みが外れたからだ。
(───いや、これならむしろ好都合だ。)
天野の拳がツロフの顔面を捉える。
ツロフの頬に直撃した拳は、そのまま頬骨を砕いていく。
ツロフが痛みに顔を歪めるのが見て窺えた。
が、その表はすぐに不気味な笑いに覆い隠された。
「……?」
「オレが覚悟を決めたんだ。お前にも覚悟を決めてもらうぞ?天野。」
「一何を…………っ!?」
天野が左手で充填していたレーザーが、何故かツロフの手の中にある。
シールドに流用していたエネルギーを再び左腕の修復に回したのか、ちぎれたはずの左腕はゼロポイントエネルギーで構された腕へと置き換わっていた。
そして、その左拳から溢れんばかりにり輝く力は。
天野の側頭部に向けられており────
「ぜよ」
ツロフの掌から解き放たれたレーザーが、天野の頭を穿った。
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