《獻遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな人ごっこ~》「俺、日野さん狙いだから」5

小さな言葉にモヤモヤが募りそうになるが、すぐにマイナスの気持ちを持ってはいけないと消し去る。

なにも考えてはダメだ。

落ち著いて、落ち著いて……。

「日野さんって、いくつでしたっけ?」

「……え」

そう質問をしてきたのは若林さんだった。

なんとなくわかっていたけど彼は天然で、キラキラした瞳で私に歳を聞く。

一度自己紹介しているんだけど、忘れてしまったらしい。

「二十七です」

苦笑いで答えると、藤さんも「さっき聞いたろ」と若林さんを肘でつついた。

「ちょうどよかったです!  日野さんだけ話が合わないのは申し訳ないんで、俺の尊敬する先輩を呼びました!  先輩も二十七歳なんで話が合うと思いますよ」

私のためにそんなことしなくていいのに……と思ったが、対照的に西野さんと松島さんは目を輝かせている。

攻略対象がひとり増えるのがうれしいのだろう。

うれしそうな面々とは違い、藤さんはなにかに気づいたように眉を寄せ、若林さんを睨む。

「……おい、若林。まさかとは思うが、お前が呼んだのって……」

若林さんが悪気なく「それは──」と答える前に、この個室にその人はやって來た。

「悪い若林、遅くなった」

「穂高さん!  お疲れさまです!」

彼が現れた途端、西野さんと松島さんは聲にならないびを上げる。

──穂高さんだ。

彼も東京ABC銀行の行員なのだから、この場に呼ばれてもおかしくない。

「……なんだこれ。おい若林、仕事の相談じゃねーの?」

穂高さんは若林さんを睨んだ後、隣に座る藤さん、そして私たち陣へとやった。

どうしたらいいわからず、ついうつ向いて顔を隠した。

同僚に対する彼はいつもよりし雑な話し方のようで、ギャップがあった。

藤さんは人知れずガックリと肩を落としているが、彼の気持ちはなんとなくわかった。

合コンの場へ急に穂高さんが現れたら……どうなるかは、私でも予想がつく。

案の定、西野さんと松島さんはもう穂高さんのことしか目にっておらず、「穂高清澄さんですよね……!?」と、をすっかり彼にだけ向けて話しかけ始める。

穂高さんは眉間のシワをいったん解き、「そうですけど。どこかで會いましたっけ?」と笑顔を向けた。

西野さんは付にいるから出りしているときに見ているはずだけど、今日の彼は髪型や服裝が違っているため、おそらく気づかないのだろう。

それでもめげずに彼は答えた。

「うちの會社、穂高さんに擔當してもらってるんですよ!  銀行の渉外さんが格好いいって社で有名なんです!  私、付にいる西野です」

「え。どちらの會社ですか?」

「ヨツバです」

穂高さんは數秒だけ止まったが、すぐにらかい笑顔で「そうでしたか。いつもお世話になっています」と返した。

藤さんはいろいろと割りきったのか、「急に呼んですみません。大丈夫ですか?」と穂高さんのそばへ寄って尋ねると、彼は「いいよ」と苦笑いをしたが席に著いた。

席というのは、必然的に、空席だった私の正面になる。

「改めまして。俺の直屬の上司で、東京ABC銀行、丸の支店係長! 『ミスターパーフェクト』の異名を持つ穂高清澄さんです!」

「なんだそりゃ」

「で、先輩。こちらのみなさんはヨツバの社員さんたち、左から西野さん、松島さん、そして日野さんです!」

會釈する西野さんと松島さんの次に、藤さんの手が私を指し示したところで、こちらも観念して顔を上げた。

「……日野さん?」

やっと目が合い、私だと気づいた穂高さんは、大きく目を開いている。

こんな形で顔を合わせることになるなんて、恥ずかしくて顔が熱くなった。

「こ、こんばんは。穂高さん」

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