《獻遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな人ごっこ~》「めちゃくちゃ甘ったるいエッチがしたい」1

居酒屋を出てから──。

A4のファイルがる通勤用のバッグを肩に掛け、五センチのヒールのパンプスを履いた足のまま、私は穂高さんとラブホテルに來ていた。

まだ足がもつれて、自分がなにをしようとしているのか実が湧いていない。

「日野さん酔ってる?  大丈夫?」

私の意識がはっきりしていることは見てわかるはずなのに、彼はわざわざ確認をれた。

「……う、うん。大丈夫」

穂高さん、どういうつもりなんだろう。

本當に私とエッチをする気なのだろうか。

彼はきっと経験富なのだと思う。

TLみたいなエッチが好きというのは意外だったけど、慣れているからこんなにスマートにできるのだ。

私は経験あると言ってもすべてがトラウマのようなもので、穂高さんを満足させられる自信はまったくない。

……というか。

仕事以外でまともに會ったのは今日が初めてなのに、そんな狀態で、私も彼も今から本當にエッチをする気なの?

なんだか自分が自分じゃないみたい。

穂高さんは無理やり関係を迫ったわけではなくただ提案をしただけなのだから、私は斷れなかったというわけではない。

きっと、私も好奇心に逆らえなかったのだ。

TLみたいなエッチがしてみたい。

お互いを思い合える幸せなエッチがあるというのなら、しでいいからその気持ちよさを味わってみたい。

穂高さんなら、と思ってしまった。

「シャワー浴びる?」

「うん」

心の準備をする時間が必要だと思い、彼の言葉に従ってシャワーを浴びた。

 

しかしシャワー中も、水の音にかき消されることなく変わらずの鼓が鳴り続けている。

代で彼を待っている間も、ドキドキして死にそうだった。

シャワーを終えて、私と同じバスローブ姿で戻ってきた穂高さんは、し顔が火照っていた。

彼は掠れた聲で「おまたせ」とつぶやく。

今まで見えなかった足首や筋のある男らしい腕、ワックスのとれた艶のある髪。

いつもの穂高さんじゃない。プライベートの穂高さんだ。

それも、夜の。

「日野さん。大丈夫?」

「あっ……」

私の座るベッドに彼も片膝を乗せ、こちらへ迫る。

見つめ合いながら、今さらだけど怖くなってきた。

こうやって迫られると命令が飛んできて、それがどんなものかいつも怯えていた。

染み付いたその覚がまだ抜けない。

「キスしてもいい?」

ピクンとが揺れる。

今にも押し倒せる勢の彼は、溶けそうな瞳で私を捉え、許可を求めてきた。

いはあったけど、嫌な気持ちはなかった。

キスを尋ねてくれるくらいだから、暴なことはされないという安心さえ覚える。

「……うん」

頬にれられ、まるで気持ちを確認するような視線を向けられる。

私のリハビリに協力してくれているようなものなのに、まるで彼と人になったのだと錯覚しそうだ。

「ん……」

甘い口づけが始まると、がビクビクと疼きだす。

穂高さんという相手があまりにも素敵だからかもしれないが、が繋がっているだけで気持ちよくなってきた。

暴ではない、私を尊重するようなキスにどう対応したらいいかわからず、苦しくないのに息ができない。

「んっ……穂高、さ……」

莉」

思わず息を飲む。

低い聲で名前を囁かれ、その甘さに吐息がれた。

「穂高さん……」

莉も名前で呼んで。TLみたいに」

そうだ、今から始まるのはTLみたいなエッチだ。

「……清澄くん」

ぼうっとなりながらつぶやいてみると、〝清澄くん〟は「それでいいよ」と微笑み、キスを再開する。

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