《とろけるような、キスをして。》二日目(2)

「そうだ。今朝ね、晴姉ちゃんにも、仕事辭めてこっちに戻ってこようと思ってるって伝えたよ」

「そうか。四ノ宮先生、何か言ってたか?」

「なんでもっと早く相談してくれなかったのかって、すごい怒られた」

「ははっ、四ノ宮先生らしいわ」

朝、起きてすぐに晴姉ちゃんからの著信があった。

"昨日は酔ってて也子の話聞けなかった!ごめんね!何か話あったんだよね?"

姉ちゃんに、昨日先生に話したことをそのまま相談したら、

"今すぐ帰ってきな!私も也子が働けるように深山先生と一緒に掛け合ってみるから!私たちに任せて!"

と、鼻息荒く宣言してくれた。

そして今度からはもっと早くに相談するようにと念を押されてしまった。

「でも心配してくれてるのがわかるから、ちょっと嬉しかった」

「そっか。良かったな」

「うん」

社會人になると、本気で私のことを心配して叱ってくれる人なんて一人もいなかった。

姉ちゃんや深山先生のような存在がどれほど貴重でありがたいか。

この歳になってやっと気が付いた自分がけないし、恥ずかしい。

「飛行機は最終便だっけ?」

「うん。えーっとね、夜の……十九時の便」

「それって向こうの家に著く頃には何時なの?」

「東京まで飛行機で一時間半くらいあるから……そうだなあ、そこから電車乗っても二十二時までには著くと思うけど」

頭の中でざっくりと計算すると、先生は急に心配そうな目つきになる。

「おいおい、大丈夫か?そんな遅くに外出歩いて」

「うん。二十二時って言ったって人通り多いし、大丈夫だと思うけど……」

「いーや、心配だ。電車乗ってる間はいいけどさ、降りて歩いてる時間があるなら俺は心配だ」

「そんなこと言ったってもう飛行機は変えられないし。大丈夫だよ」

「……」

東京でのアパートの最寄駅は、そこそこ大きな駅で。アパートまでは徒歩十分の距離だ。

街燈もあるし、近くに二十四時間営業のコンビニもあるし遅くまでやっている薬局もある。人通りもある道だから、大丈夫なのに。

それでも先生は納得してくれなくて、最寄駅に著いたら先生に電話することになった。

「いい?ちゃんと電話しろよ」

「わかったよ」

お父さんのように私を心配してくれる先生にどこかむずい気持ちをじながらも、嬉しいものは嬉しい。

歳の差で言えば兄弟の方が近いだろうか。

「さて。じゃあ次はどこに行く?」

「どこって言われても。もうあんまり時間無いよ?」

この街から空港までは車で一時間ほどかかる。現在午後二時。一応會社にお土産を買わないといけないし、飛行機は十九時発。チェックインする時間も含めたらできれば十七時くらいには空港にいたい。

となると十六時にはもう出ないといけない。

「うーん、みゃーこはどこか行きたいところある?」

「行きたいところ?……どこでもいいの?」

「うん」

「……じゃあ───」

私たちは席を立ってお店を出て、また車に乗り込んだ。

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