《とろけるような、キスをして。》二度目の帰省(3)

*****

元々掃除は嫌いじゃない。だから始めると時間を忘れてしまったりする。先ほどの面接も然り、今の掃除も然り。何かに熱中すると、周りが見えなくなってしまうのは昔からの悪い癖だ。

ふと気が付いたのは、スマートフォンが著信を知らせた時だった。

「……もしもし?」

『あ、みゃーこ?今どこ?』

それは先生からの電話。

「まだ実家だけど」

答えて何回か會話をしているうちに外から車の音がした。

先生が來たのか。そう思って電話しながら玄関から顔を出すと、案の定そこにはスマートフォンを耳に當てた先生の姿が。

ひらひらと手を振ると、その端正な顔立ちは急にムッとした表になる。

「こら、誰か確認してから出ないと危ないだろう」

電話を切った先生は、開口一番にそう叱ってきた。

「ごめん。先生來たのかなって思って」

「うん。そうだとしても最近は騒なんだから、ちゃんとインターホン出てからにして」

「はぁい」

素直に返事をしてから、「る?今掃除してるから埃っぽいかもしれないけど」と家の中を指さす。

「うん。お邪魔します」

「どうぞ」

玄関にるように促して、私は家の中に戻った。

「掃除してたって?一人で?この家全部?」

「うん。だってこっちに帰ってきたら私ここに住むから。今のうちから整理しておかないと」

「なるほどね。それなら俺も手伝うよ」

「……ううん。大丈夫。ここは両親との思い出がいっぱいだから。それを思い出しながら一人でゆっくりやりたいなって、思って」

「……そっか。そうだよな。俺が無神経だったわ。ごめん」

「ううん。ありがとう」

先生の方は用事が終わったらしい。

窓から外を見るともう薄暗くなり始めていた。

続きはまた明日にしよう。

「先生、晩ご飯何食べたい?」

「うーん、みゃーこの得意料理が良い」

「得意料理……わかった。買い行っても良いかな?」

「ん。行くか」

先生の車に乗り込み、近くのスーパーへ。

先生がカートを押してくれて、私はその橫で食材をカゴにれていく。

「なんかこういうのって、夫婦みたいだな」

「なっ……変なこと言わないでよ。ほらっ、お見にいくよ」

「はいはい」

締まりの無い表の先生。何がそんなに嬉しいのか。

コーナーで挽を手に取り、カゴにれる。

得意料理と言えるほどのクオリティかどうかはわからないものの、泊めてもらうお禮だ。

どうせなら頑張って味しいって言われたい。

「何作るの?」

「……ハンバーグ」

子どもっぽいかな。そう思いながら言うと、

「お、やった。俺ハンバーグ大好き」

と嬉しそうな顔。

「俺チーズりがいい」

と一人でチーズを探しに行く先生を後ろから追いかける。

付け合わせの野菜も買って、先生の家にある調味料を聞いて足りないものを買って。

明日の夕食分の買いも済ませておく。

「酒は?飲むか?」

「でも先生飲めないんでしょ?ならいいよ」

「弱いだけで酒は好きなんだよ。せっかくだからみゃーこと一緒に飲みたいし」

「んー……でも先生は明日も仕事でしょ?飲むなら明日の夜にしようよ」

「あ、それもそうだな」

どうやらあまりお酒に強くない割に家にビールはあるらしい。なんでも學生時代の友人が置いて行ったんだとか。

「じゃあ明日は唐揚げも追加しようか?」

「お、いいね。最高じゃん」

も追加で買って、スーパーを出た。

    人が読んでいる<とろけるような、キスをして。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください