《とろけるような、キスをして。》l’automne(1)

*****

また時間を忘れながら実家で片付けに沒頭している途中、自分のお弁當を作り忘れたことに気が付き、空腹をじて実家を出た。

近くにあるコンビニは、東京でもよく利用するコンビニだ。せっかくなら地元のお店で食べたい。

コンビニの角を曲がって、自販売機の橫を通って、信號を三つ渡って。

銀杏並木のり口を素通りし、そのまま真っ直ぐ進むこと五分ほど。そこにある、國道沿いの小さなカフェにる。

カランコロンという昔懐かしい音を聞きながらドアを開けると、「いらっしゃいませ」という耳心地の良い高い聲が聞こえる。

その聲の主は、ミルクティーブラウンのボブヘアのとても綺麗なだ。

「……あれ?貴は……」

「……ご無沙汰しております。雛乃さん」

「みゃーこちゃん!?」

高校のすぐ近くにあるカフェ、【ロトンヌ】

ここは、私が高校生の頃に半年だけアルバイトしたカフェだ。

奧さんの雛乃さんと、旦那さんの大和さんの二人で経営している、小さなお店。

店名である【ロトンヌ】は、フランス語で【秋】を意味する言葉だ。

夫婦が出會ったのが秋だったことと、紅葉がとても綺麗な季節にお店をオープンしたことから、それにちなんでこの名前にしたのだと以前聞いたことがある。

らかい合いを意識しており、茶やベージュを基調とした落ち著いた雰囲気。

たまにある差しの赤や黃の小が、秋を連想させてとてもお灑落だ。

「久しぶりじゃない。どうしたの?こっちに戻ってきたの?帰省か何か?」

私とわかるとすぐに駆け寄ってきてくれて、強く抱きしめられた。

もちろん、雛乃さんは私が東京に就職したことを知っている一人だ。

「今度、仕事辭めてこっちに戻ってくる予定なんです。」

「うそ!いつ!?ちょっと大和!みゃーこちゃん!みゃーこちゃんこっちに帰ってくるんだって!」

奧のキッチンにいた大和さんが、雛乃さんの聲に驚いたようにバタバタと走って出てくる。

「え!?みゃーこちゃん!?」

「あ、ご無沙汰しております」

「わあ、マジでみゃーこちゃんじゃん!久しぶり!」

実は大和さんは、深山先生の學生時代の友人だ。

元々私はここのホットチョコレートが好きで通っていたのだが、私の制服姿を見て先生の生徒だと分かった大和さんが話を振ってきて。

先生の話で盛り上がって仲良くなった。

そのツテで、アルバイトもしたのだ。

「え、それ修斗も知ってんの?」

「はい。深山先生に帰ってこいって言われて……」

「え、何それ何それ!ちょっと詳しく!あ、何か食べる!?」

「あ、はい。お腹空いちゃって。久しぶりにお二人の作ったもの食べたくて來ました」

久しぶりの再會が嬉しくて笑顔を向ける。

「んあああ!可い!みゃーこちゃん大人っぽくなったと思ってたけどやっぱり相変わらず可い!ちょっと待っててね、今急いで作るからね!」

雛乃さんはそうんでカウンターの中にっていく。

私は大和さんに「座って」と促され、カウンター席の端に腰掛けた。

すぐに雛乃さんがサンドウィッチとホットチョコレート、デザートにプリンを持ってきてくれて、私はありがたくそれを食べる。

お晝時を過ぎた平日だからだろうか。お客さんは常連さんだけのよう。

高校の近くだけれど、あまり學生は來ない。

多分、お店の看板も出していないし店名も小さく出しているだけだから、何のお店なのか知らない人が多いからだ。

後は靜かにコーヒーを飲む常連さんが多いから、友達同士でお喋りしたい高校生にはあまり向いていない。

でも、一度來るとその味に病みつきになり、もれなく常連になる人が多いのもまた事実。

コーヒーなどの飲みは大和さんが。サンドウィッチやデザートなどの軽食を雛乃さんが擔當している。

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