あの日…初めて

「手を握る練習をしましょう」

としいセシリアさんに言われて手を握られた。

もちろんの人に手を握られたことは無かった。人生で初めてかも知れない。

夜會でも僕はずっと1人隅っこに小さくなりボソボソ料理を食べ目立たないように徹していたから。わざわざ僕に聲をかける令嬢もいないし僕もかける気はなかった。夜會は嫌いだった。

セシリアさんの白くて細い指、らかな手りに張して震えるが、そんな僕を優しく包み込むように握られるとバカみたいにドキドキした。

こんな禿げに優しくするなんて。同でも嬉しいけど。いや同か。

練習で毎日手を握られるようになった。

その度に張する。赤くなるなと言われるが無理というもの。

夜會參加には相変わらず気が乗らない。

そんな時池の掃除をしないかとわれた。

貴族が自ら掃除するなんて聞いたこともない。彼は作業著に著替えていた。

銀髪のふんわりした髪のは束ねられポニーテールにされうなじが見えていた。作業著姿でもしいプロポーションだった。男なら皆やはり惚れるだろう。

しチクリとする。

「お似合いです…」

「ありがとう！作業著なんて著る機會ありませんからね！掃除もやってやるわ！ローレンス様も早くお著替えになって！」

「は、はいっ！」

と急いで僕も作業著に著替えるが全く違和ない平民みたいになった。顔も地味だし。禿げているし。

池に向かうと最近新しくった庭師のウォルトくんが挨拶した。赤で顔も可い方だ。セシリアさんを見てニコリと笑顔になる。

直的に彼はセシリアさんに興味があるなと思った。こんな人なのだから當たり前だろう。

もしかしたら手を出されるかもしれない。

モヤっとした。

「……今日はよろしくね。皆で力を合わせて大掃除よ」

「危ないので奧様方は池のほとりの草むしりくらいでお願いしますね」

と元気に気遣われる。

「あら。池にもれるけどね」

「ですが…汚れちゃいますし。おしいお顔も」

とニコリとするウォルトくん。後ろから付いてきたリネットさんがしむっとしている。

そのままウォルトくんに連れられてほとりの草むしりをして行く。結構びていた。

ぶちぶちと草をむしるセシリアさん。

他の使用人は池にり藻をかき集めたりして大人數でずぶ濡れになり頑張っている。

「奧様…草は本から抜かないと」

と見本を見せて優しく指導するウォルトくん。リネットさんはますます不機嫌。ハラハラしたけどチクリとが痛む。

だってセシリアさんとウォルトくんは中々お似合いだし指導と稱して接近している。

セシリアさんも可らしい子が好きかも。

僕なんか絵面的にもうアウトだ。

しゅんとして2人から離れて草を寂しくむしる。

するとセシリアさんがやってきた。

「まぁまぁ！ここら辺にも！頑張りましょう！」

と側に來てむしる。何故こちらに來るのか？

ウォルトくんと話していればいいだろうに。

チラリとウォルトくんを見ると彼はもの凄い顔で僕を睨んでいた！！ビクリとするとセシリアさんが

「どうしましたの？」

「いっ、いえ、な、なんでも…」

と言う。あれは彼からの警告？

やはりセシリアさんを狙っているのだろうか。僕が邪魔だから。

草むしりが大終わる。他の使用人たちは池の藻を取り去り綺麗な水になった。

最初の汚さが噓のようだ。

式布を広げてリネットさんがバスケットにサンドイッチに紅茶を用意してくれた。

セシリアさんと2人食べる。

他の者も羨ましげに見たりしていた。

なんだか悪いなぁ。こんな人と。全く釣り合わない僕となんて楽しくないだろう。自信なんて持てないよ。

「だいぶ綺麗になってきたし魚を新しくれましょう。とりどりの」

「はい…」

観賞用の魚たちも用意していたからもうすぐれて見ようとセシリアさんと話す。

「浮かないですわね？元気を出して！」

と本日の手繋ぎ練習で手を重ねられる。

ドキリとやはり慣れなく赤くなる。

「まぁ…まだ赤くなって！夜會はもうすぐですよ？どうしたら慣れてくれるかしら？」

さわさわと手をマッサージのようにされるとますます赤くなる。

ついでにツボ押しされ気持ちよくなる。

こんな禿げ男が貴方にときめいてごめんなさいっ！と全力で心の中で謝罪する。

セシリアさんはニコリと

「午後からも頑張りましょう！池の回りに花を植えて見るのもよろしいかも！夏になれば綺麗な花が咲きますわ！

労働の後のお食事は味しいですよ！」

と微笑み嬉しそうに想像するセシリアさん。

しく可らしい。

張なのか心なのか判らないがセシリアさんが心も綺麗な人なのは確かだった。

しかし事件は起きた。ようやく池の掃除も終わり魚をれて前より格段にうちの汚い池は綺麗になる。

お禮を言おうとセシリアさんを探すと木の下の裏手にウォルトくんがセシリアさんを捕まえての告白をしていた！

その側にギリギリとハンカチを加えてリネットさんが睨み付けている。

リネットさんはセシリアさん付きの侍で仲も良かったから応援すると思っていたのに！？何か違和をじた。

「一目見た時から俺…あなたの虜で…してます奧様…。は綺麗と聞きました」

とガバッとセシリアさんに抱きついたウォルトくん！ザワリとが痛み、怒りも込み上げた。

しかしセシリアさんはドンと思い切り突き飛ばした！

「隨分と臭いのね貴方！」

「えっ！？お風呂にはってますが」

と言うウォルトくん。可く小首を傾げていたが

「違うわよ！変な香水か何かつけているわね？薬の一種かしら？それで達を騙してきたわね？リネットも最近様子が変だもの」

と言うとウォルトくんはニコリからニヤリと悪い顔になる。

「なあーんだ？この類に慣れているとは？罪な方だね！」

「誰の差し金か検討つくわ！エルトン王子ね？私が旦那様を差し置き若い男と浮気しているという噂を夜會で流すためね？

生憎私はその類の薬は効かないわ！食事に盛られそうになり毒味役の使用人がおかしくなったのを何度か見たから分を分析してそれが効かないお茶を毎日飲むことにしたのよ」

と睨むセシリアさん。リネットさんはそれに真っ青になり震えてその場から消えた！！

しかしウォルトくんは

「確かに王子からの命で言われました。ですが、貴方もあんな禿げた旦那より俺の方に靡くはずと自信があったのでね！」

とセシリアさんの手首を木にい付け顔を近づける。

ヤバイ！！

僕は頑張って小石をウォルトくんに投げた。

コツン。

「ん？何だ？…おや、旦那様」

聞いていたのを知っているようだった。

「ふふふ、妻が僕のものになるのを見たいようで」

そんなわけがない。

「セシリアさんを離しなさい！き、君はクビだよ！」

「おやおや、禿げた旦那様。貴方は奧様に手を出されないでしょう？醜いその容姿ですし」

と笑うウォルトくんだったが…。

セシリアさんはウォルトくんの間を思い切り蹴り上げ悲鳴を上げたウォルトくんの隙を付き、ゴアっと回し蹴りをして突き飛ばしウォルトくんはついに土に倒れた所をドカドカと上から顔を踏ん付けた！

「ぐあっ！！やめっ！！いでっ！！」

作業著のセシリアさんは遠慮なくドカドカと蹴ったり踏んだりした。

「この不屆き者が！私に無禮をしただけではなく旦那様を傷付けるとは！痛い目にあって當然よ！帰って報告することね！ガードのい奧様にボコボコにされてしまいましたと！」

とセシリアさんは言い最後にまたウォルトくんの間を思い切り蹴り上げて彼は気絶した。

「ふん！…王子め！ここまでして私に恥をかかせたいなんて許せない！人の心をそう簡単にれると思わないことね！私はをしたら一途ですわ！浮気などするものですか！」

とセシリアさんは言うので何故かホッとした。

セシリアさんが自分にしてくれるとは思っていないが…。