《悪役令嬢は斷罪され禿げた青年伯爵に嫁ぎました。》第21話 久しぶりの再會

雪は小降りだが冬用の蹄鉄を付けた馬を走らせ中々に寒いが、ローレンス様は落ちないようにしっかりと捕まっていてくださいと言うのでもちろんしがみ付いている私だ。

というかこの人馬乗れるのね。とすら今更ながら思いまたちょっとときめいたわ。先程したキスを思い出し一人赤くなったりして。

リネットの家はファーニヴァル伯爵領からし離れた所にある。

リネット・ハンフリーは男爵家の出だが、養として迎えられ育てられた。

病気がちの義姉に変わり、10年前から実家のチェスタートン侯爵邸に働きに來て侍となったのだ。私とは直ぐに打ち解け友達のように過ごした。

怪我が良くなっているといいけど。

雪の中エルトン王子は馬を走らせていた。後ろから部下達も付いて來る。

セシリア!待っていろ!あんな後頭部禿げ男より俺の方がいいと思い知らせてやる!!ファーニヴァル伯爵め!許さないぞ!

しかしその時馬が急に怯え出した!!

『ヒヒヒヒィィン!!』

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「どうした!?」

「お、王子!不味いですよ!!狼です!!」

と部下の一人が森の中のし小高い所から狼達がこちらに向かってくるのを見つける。

「ひいいいい!!こっちへ來るぞ!!」

くっ!俺とセシリアを引き裂く狼め!!

と俺は剣を抜く。

ようやくリネットの実家に著き戸を叩くと執事が応対し慌ててリネットに知らせた。

「お嬢様!?まぁ!どうしたのですか?こんな雪の日に!寒いですから早く中へ!暖爐へ!」

とリネットは松葉杖で歩きながらやってきたのでニールが支えた。

ニールは手短に説明していた。

するとリネットは驚きつつも

「それはまぁ!大変でしたわね!ともかくしばらくはこちらでお過ごしくださいませ!直ぐに部屋を用意しますわ!お父様達にもお伝えしてきます!」

とリネットはニールと使用人と共に下がる。

私と旦那様は暖爐に當たる。

「寒かったですよね?大丈夫ですか?」

とローレンス様は火に當たりながら言う。

「ローレンス様こそ!…」

と手を握る。

照れつつもローレンス様は

「僕は平気です。王子達は今頃溫泉地に著いて僕達がいないのを見て怒っているかも知れません………で、でも!何度來たって絶対に貴方を渡したりなんかしません!」

「ま、まぁ!嬉しい!」

「えっ!?」

とローレンス様は自分で言っておきながら驚いた。クスクスと笑い

「もちろん私ももう一度あの王子の婚約者になるくらいなら死んだほうがマシですわ」

「そんなっ!セシリアさんに死なれたら困ります…」

と照れ合う。そこにウォッホンとハンフリー夫妻やリネット達が來た。お義姉さんは調が悪く寢込んでいるそうだ。冬はあまり良くないらしくけないことが多いのでご挨拶出來ず申し訳ないと言っているそうだ。

「お話は聞きましたぞ。そのようなことなら全面的にうちは協力しますよ!ファーニヴァル伯爵。夫人。いつもリネットがお世話になっております」

と頭を下げる。

「まぁ…リネットはいつも良くしてくれますわ!今回私のせいでリネットが怪我をしてしまい申し訳ありませんわ!」

「いえいえ、お気になさらず!!夫人の命を狙っていたと聞きました!リネットで良かったです!」

と言うからリネットは膨れる。

「まぁ、お父様酷いわ。養とはいえ可い娘に!」

「はは、すまないね。リネットは孤児院にいた頃からお転婆だったものでね。木から落ちてもピンピンしてたが、流石に落石だと骨折したか」

「當たり前よ!!」

とリネットがツッコミ皆笑った。

「皆さん、雪道を通って寒いでしょうから夕飯前にお風呂へ!直ぐに湯を用意します!」

と使用人に命じる。

「ありがとうございます!ありがたく頂戴しますわ」

とお風呂場に案される。

ようやく湯船につかり一息する。

ローレンス様も別室で一息ついている所だろう。リネットとも久しぶりだし、今は王子のことは忘れてしまおうと思った。

お風呂から上がりリネットに服を借りたりして夕食を共にとった。リネットは本來なら私がお嬢様の給仕を勤めなければいけないのにと悔しそうに言う。

というかリネットの実家なんだし怪我人なんだからジッとしててほしいわ。良くなってきたとはいえ。

談笑が進む中同席していたニールが濃い眉を釣り上げ張したじでいきなり

「あ、あのっ!俺はニール・デリック・ハーグリーヴズと言う者です!旦那様達の護衛騎士をしております!ここ、この度はご挨拶が遅れまして!!じ、実はリネットさんと結婚を視野にお付き合いをさせていただいてましておりましてあの!!」

と語尾がおかしくなるニール。

えっ!?リネットと人同士だったの?いつの間に!?

チラとリネットを見ると恥ずかしそうに俯いていた。

「まぁまぁ!リネット!本當なの?」

と男爵夫人が驚く。

「ええと…ま、まぁ…」

「なんでもっと早く言わないのだね?だったらもっと豪華な食事にしたものを!」

「いいのよ!お父様!冬の蓄えだってあるんだから!贅沢は止よ!」

と言う。

「リネットおめでとう!」

「!!お嬢様!!なんでしょう?お嬢様に祝われたことがとても嬉しいですわ!!」

と言うから男爵夫妻は笑い

「リネットは昔からセシリアお嬢様についての手紙を毎週ビッシリと手紙に書いて寄越したのですよ!こんなの元で私が侍として働けて最高です!とか、お嬢様の髪は毎日綺麗で絹糸みたいとかうるさいくらいのお嬢様…いえ、ファーニヴァル夫人の熱狂的ファンと言った所かしら?ふふふ」

と男爵夫人がバラしたのでリネットはますます赤くなる。

「ありがとう!リネット!貴方もそのつぶらな黒い瞳や茶の髪とても可らしいわよ!これからもよろしくね?怪我を治してまた戻ってきてほしいけど…」

「もちろんですわ!!セシリアお嬢様!!バリバリ働いてこのうちにお金をぶち込むのが私の仕事ですから!」

と豪快に言い、

「お、おい、その前に俺と結婚式してくれよぅ…」

とニールが眉を下げてけなく言うから皆また笑っていた。

その頃狼と必死で戦う王子は遂にがぶりと頭を噛まれたがなんとか狼の腹を刺して狼達は逃げ帰った。部下達は青ざめ急いで馬を呼び王子を乗せて伯爵領に引き返し手當てさせた。頭から出し王子は倒れた。

何日かして王家から迎えが來て王子はとりあえず立派な馬車に乗り帰って行ったと早馬で連絡が來た。雪道を馬車でここまで來るなんて相當大変だろうに…。

ともかく春まで王子にはしっかりと監視を付けるとまた陛下からこっそりと手紙が屆いて私達は安心して伯爵領に戻ることにした。

          

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