《天使と悪魔と死神と。》
「さぁ!みんな朝よ〜!今日もいい天気ねぇ」
 いつもと同じ時間にカーテンが開き、今日もまたつまらない1日が始まった。
 ここの孤児院でそんなふうに思っているのは雨宮杏樹あまみやあんじゅぐらいだろう。
 杏樹は、大雨の降る寒い夜にこの孤児院の玄関のドアの前に置き去りにされていた。生まれつきなのかは不明だが、右目のみが赤く、がると痛がることから黒い眼帯をつけていた。また、名前もわからず、゛雨の降る日に來た天使 ゛と言うことで  ゛雨宮杏樹  ゛と名付けられた。
 孤児院には杏樹より年上の人はいるが、1番長くここにいるのは杏樹だ。だから余計に孤児院の暮らしがつまらなく思える。決まった時間に起き、食べて、寢る。ただそれだけの毎日。気がつくと夜……なんてこともしばしばある。
 そして、今日も気がつくと夜になっていた。
 1番窓に近いベッドが杏樹のベッドだ。みんなで自分のベッドにり、先生がカーテンを閉めることで一日が終わる。
 みんなや杏樹も寢そうになっていた頃、突然、孤児院のブザーがなった。
《何者かが施設に侵しました。教師は子供の部屋へ急いでください。子供はその場で待機してください。繰り返します、何者かが……》
 その放送を聞くと、小さな子は騒ぎ始めた。年上の子は小さな子を宥めるが、みんな怖がっている。
 だが、杏樹はと言うと、怖い気持ちもあったが、し心が踴っていた。これこそ待ちんでいた変化かもしれない!と。
 杏樹達は先生を待ったが、しばらく待っても誰も迎えに來てはくれなかった。さすがに杏樹も怖くなってくる。小さな子はまだ泣いていた。その子達を見ながら呆然とベッドに座っていると、
「…………………こっちに」
と、誰かが杏樹に呼びかける聲が窓の方から聞こえた。気になった杏樹は、みんながこちらを見ていないことを確認して、カーテンと窓をしずつ開けた。すると、暗くてよく見えないが人影があるのが見える。
「……………早く。今のうちにこっちに來て。……………つまらない日々から抜け出したいんでしょ?」
 最初は怖く思っていたが、最後のつまらない日々から抜け出すという言葉に杏樹は惹かれないはずがなかった。
「決まったみたいだね。……さぁ、手をばして?」
 杏樹は迷いなく、その手を摑み、厳重な警備の孤児院をその手に引かれ軽々と抜け出した。
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