《天使と悪魔と死神と。》

 

 孤児院ではブザーが止まり、先生達がやっと子供達の部屋に著いたところだった。

「みんな〜もう大丈夫だからね〜。全員いるか確認するから自分のベッドに座って〜」

 子供達は先生が來たことに安心したのか言われた通りに、靜かに自分のベッドに戻り始めた。  だが、ひとつだけ誰もいないベッドがある。それは杏樹のベッドだった。虛しくカーテンだけが風に揺れている。

「杏樹ちゃんがいない……!?」

 真夜中ながらも全員で周りを探し出す。しかし、そう簡単に杏樹は見つかる場所にもういなかった。

_______________杏樹はもっと゛遠く  ゛にいるのだ。

 夢を見た。

 何も無いただ暗い世界に立っている夢を。

 でも、誰かが私のことを呼んでいる。……行かなくちゃ。

 でもどこへ?

 ……分からない。

 ただ……ただ前に進まなくては。その先になにかある気がするから。

 時計の針の音がする。

 もう時間はない。

「……ねぇ。…………………ねぇってばっ!」

「………………ん……………?」

 杏樹はその聲で目が覚めた。

(あれ……私は確か……そうだ!誰かに連れられて施設を飛び出して……)

「はぁ……やっとお目覚めだね。」

 揺れていた視界がだんだんと焦點が定まってくる。

 目の前にいたのは奇妙な格好をした男だった。左目に眼帯、右目は前髪で隠れており、前が見えているのか心配になる。また、手には指のみが出る黒い手袋をして右腕は半袖、左腕は長袖……と実に奇妙である。だが、見た目などどうでもいい。今は他に聞きたいことが杏樹には沢山あった。

「あの……あなたは?それとここは?ここはどこなんですか?見慣れないところです……孤児院は私がいなくなって大変なことになってないでしょうか……?私以外の子は無事ですか?……あ、それと……」

「ちょっ…………!多い、多い!」

 立て続けに質問してくる杏樹を止め、男はため息をついた。

「分からないことだらけで不安なのはわかるけど、一気に質問しないで?さすがに聞き取れないからさ〜。」

 そうのんびり言うと、杏樹の質問を待つように座り直した。

「す、すいません……。えっと……、じゃあまずここは何処なんですか?」

 辺りを見渡すが見慣れないところだ。……まぁ孤児院から出たことはないが。

「あ〜…ちょっとそれは言えないんだよねぇ。」

「え?……言えないって……」

 不服そうに杏樹は男を見る。が、諦め次の質問をした。

「じゃああなたは誰なんですか?」

「僕……?僕は……僕はアペルだ。何者かは……まぁ後々わかると思うよ。」

「アペルさん……。あ、私は…………」

 男――アペルの名前を聞き、自分も自己紹介をしようと思ったその時、

「ちょっと靜かにして。」

とアペルは言い、いきなり杏樹に近づいてきた。人差し指を杏樹のに當て、杏樹を壁の方に押し付けて、杏樹を隠すような狀態だ。

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